【完】転生したら倒産確定地方トレセン学園の経営者になってた件   作:ホッケ貝

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エセ理事長、レースを魔改造する

 紅葉が舞い、見る者を圧巻させる北海道の雄大な自然が、紅葉の赤や銀杏の黄色などによって秋らしい色合いに染まる季節になった。

 

「おー!これは……すごいなぁ……!!」

 

 倉庫一面に広がる勝負服の数に、俺は思わず声を上げて歓喜する。

 

 部分的勝負服化が決定されたのは、ちょうど去年辺りだろうか。

 

 白熱した議論や生産者側との折り合いで、始めの一歩を躓いてしまったものの、その後はうまいこと態勢を立て直して、今は順調に納品が進んでいるところだ。

 

 背中で手を組んで、棚に畳まれて置いてある無数の勝負服を、ゆっくりと眺め回る。

 ―あぁ、遂にここまで来たのだな―と、感無量の光景であった。

 

「お、これは上河辺さんのものだな……これはタイキさんところの……」

 

 試作段階でお披露目させてもらった勝負服が、今は正式な形でここに並べられている。

 ゴスロリ風のパーカーや、六掛けボタンの軍服風だったり、和服を模したものや民族衣装のようなものまで、様々な勝負服がここに置かれている。

 これとこの部位を組み合わせたら、こんな感じになるんじゃないか?と、想像する楽しさに俺は気づいてしまう。

 

 それはともかく、待ちに待った"一部レース勝負服化改革"は、来年に実行される予定である。

 

 それと平行するように、別のレース方面の改革も、来年度に実行される事となる。

 

 例えば、多方面に混乱を及ぼす移動開催方式を止める"開催地固定化"改革や、レース名を好きなように付けられる"協賛レース"の実施などが挙げられるだろう。

 この二つは以前にも紹介したため、今回は割愛する。

 

 実は、これ以外にもレース関連の改革をしている。

 

 それはずばり、"三冠路線の整備"である。

 

 そもそも三冠とは何か?

 ある程度知識がある人なら、クラシック限定のG1レース――皐月賞、日本ダービー、菊花賞――を指す事だと直ぐに察せられるだろう。

 

 実は、クラシック以外にも様々な三冠レースがある。

 

 例えば、大阪杯、天皇賞(春)、宝塚記念という春に施行される一連のG1レースを指す春シニア三冠や、天皇賞(秋)、ジャパンカップ、有馬記念を指す秋シニア三冠なんてのがある。

 

 また、これら芝レースの他に、ダートの三冠が再整備されていたらしいが、残念なことに生で見る前に俺は転生してしまったので、あまり詳しく知らない。

 ダート三冠見てみたかった……(叶わぬ願い)という事はさておき、三冠と付くレースはたくさんあるのだ。

 

 そして、たくさんの三冠レースがあって尚、今している改革は、恐らく日本国内に限れば我々が初の試みとなるものになるだろう。

 

 そんな三冠レース改革、実は一つだけではなく複数ある。

 結構数があるから箇条書きにすると

・HSクラシックダート三冠

・HSクラシック洋芝三冠

・HSシニアダート三冠

・HSシニア洋芝三冠

・HS短距離三冠

・HSマイル三冠

 こんな形になる。

 ちなみに、HSはホッカイドウ・シリーズの仮略称だ。

 

 そもそもホッカイドウシリーズには、洋芝とダート、それに加えてばんえい用の特殊コースという三つの種類のコースがある。

 なお、今回は一般的な平地レースのお話であるため、申し訳ないがばんえい周りの話は除外する。

 

 それはともかく、見て分かるように、今回の改革は三冠と区別されるレースを細分化するものとなっている。

 

 例えば、HSクラシックの洋芝・ダート三冠は、従来より行われてきたホッカイドウ三冠に焦点を当てたものとなっている。

 具体的には、従来のホッカイドウ三冠をHSクラシックダート三冠へ受け継ぎつつ、洋芝の方は一部レースを昇格するか、新しく新設するなどして整備しているところだ。

 

 また、古バの方も同じように、レースの昇格や新設、又は既存のレースを指定したりして整備している。

 

 では最後に、短距離とマイルの三冠についてお話しよう。

 これもまた、文字通りの意味を持つ。

 強いて言うとすれば、開催場所や三冠を作りすぎるのはさすがに如何なものか?という諸々の問題でダートと洋芝を分ける事ができず、結果ダートと洋芝が混合し、格式はG2級という絶妙に中途半端な事になってしまった。

 

 完全な予定通りには行かなかったものの、短距離三冠とマイル三冠という枠組みを作れた時点で十分な成果があるはずだ。

 

 いったいなぜそこまでして短距離とマイルの三冠に拘るのか?それは、レース距離ごとの人気という問題が関わってくる事となる。

 

 ぶっちゃけな話、競馬はレースの王道と称される中距離以外の人気があまり無いのである。

 

 中央のG1が基本的にだいたい2000m級の中距離が多い事や、サクラバクシンオーが大活躍したことによって短距離競争に注目が向くようになったという史実の逸話があるように、中距離以外あまり人気ではない。

 

 まぁ、そもそも"中"距離と付くからには"標準的"という意味があると読み取れる訳で、必然的に標準的なところに人気が集まるのは当然の摂理っちゃあ摂理なのかなと俺は考える。

 

 そのような不遇な扱いを受ける短距離、マイル、そして長距離やダートを適性に持つウマ娘は当然いるワケである。

 

 努力、努力、努力……努力に次ぐ努力の末、やっとの思いで栄光の座に至ったとしても、民衆の興味という環境的要因次第で、世間からあまり見向きされないという事態は、それこそ人気が無いが故に目立たなかっただけでたくさん起きていたかもしれない。

 

 なにも「中距離だけが優遇され過ぎてズルい!」と言いたい訳ではない。

 ただ単に、努力が公正に報われないのはちょっとおかしいんじゃないの?環境的要因ならなんとかできるんじゃないの?と、俺は疑問に思ったのだ。

 

 レースそのものに人気が無い……そんな個人だけじゃどうしようもならない理由で、悲しい想いをする者を減らすべきなのである。

 

 しかしながら、経営に感情を持ち込むと、ほぼ間違いなく碌な事にならない。

 

 なら、人気が無い=採算性に乏しい短距離やマイルのレースを見捨てて、従来通りに中距離に注目すべきという訳なのか?

 

 否、それを避ける方法があるのだ。

 

 そう、今までやって来たような"人道精神と利益を結びつける"というやり方である。

 

 という訳で、俺はかなり思いきった改革を推進する事にした。

 それこそが、短距離三冠とマイル三冠の開催である。

 

 中央が実施しているサマーシリーズのようなやり方も検討したが、もし本気で推したいのなら、もっと思いきった策でインパクトを与えるべしという入念な役員会議でのやり取りの結果、生ぬるいやり方では力不足と判断される。

 結果、立案者である俺が言うのも変な話だが、初手三冠化というぶっ飛んだ改革案にまとまる事となる。

 

 ある意味大博打を打つ事となるこの改革案であるが、やはり"三冠"という名称が持つブランド力はインパクトが決して侮れない規模である筈だ。

 それに、『エキセントリックな改革の推進者』とメディアで称される俺もといホッカイドウシリーズが創設したとなれば、さらに効果を上乗せできる可能性がある筈だ。

 

 また、短距離、マイル、ダートに付加価値を付ける事によって、各距離のレース界隈に活性化を促す事に繋がり、ひいては利益にも繋がる事だ。

 

 最後に、これら三冠レースが一気に増殖したワケとしては、選手の質が向上した事が結構大きな理由だったりする。

 

 制服、就職、トレーニング等様々な改革を堅実に成功させたためか、ちょっとずつ歴史が変わってきているのだ。

 ―歴史が変わる―これは比喩でも何でもなく、ガチな話だ。

 

 歴史が変わるだなんて捻った言い方をしたが、実態としては"正史だと中央へ行っていたスターウマ娘がホッカイドウに来ている"というワケである。

 その代表的な例として、ドクタースパートなんかが挙げられるだろう。

 史実だと北海道三歳優駿を勝利した後、中央に移籍して皐月賞を勝利するのだが、この世界では一連の改革によってホッカイドウに留まり、その後はホッカイドウ無敗三冠を達成するなどして大活躍をしている。

 

 ドクタースパートのように、将来中央で大活躍するスターウマ娘がホッカイドウに留まった結果、中央級の実力を持つ選手が留まる事によって選手の質が上がるというサイクルに繋がったのである。

 

 つまり、格式の高い三冠レースを実行できるに値する人材(地方水準)が整ってきたという事情もまた、三冠レース創設の後押しになったのである。

 

 また、単純にレース場入場者数がドクスパブーム抜きに見ても順調に増えてきており、つまりこれは、民衆の興味が集まっている事を指し、従って、インパクトの効果を上げやすい環境にあると説得して回った事も、創設の後押しになったのだ。




Qダート、短距離、マイルがあって何で長距離がないの?

Aレース場の規模的に長距離が厳しいから

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