【完】転生したら倒産確定地方トレセン学園の経営者になってた件   作:ホッケ貝

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エセ理事長、氷上で開催する

 ホッカイドウシリーズには、致命的な弱点がある。

 

 それはなにか?

 

 ずばり、"冬"である。

 

 北海道は日本有数の豪雪地域であり、ヤバい時には数メートルも雪が降り積もる事がある。

 学園も、レース場も、コースも、少し気を抜いただけでえげつないぐらい降り積もるのだ。

 

 そう、雪が降り積もってレースもトレーニング(屋外)もできないという、あまりにも致命的過ぎる弱点があるのである。

 

 冬季に開催することができないが故に冬季分の売り上げがゴッソリ抜け落ちるのはもちろんのこと、走るという王道のトレーニングが(雪上でやれなくはないが)実質不可能と化す事で、トレーニングの幅が大幅に狭まってしまう事で、選手の弱体化に繋がってしまうのである。

 しかも、中央で言うクラシック期が始まる4月頃にようやく雪解け完了という有り様であり、これは、クラシックを狙うウマ娘達にとって数ヵ月に及ぶ致命的な時間ロスが発生してしまうのである。

 

 かくいう事情が原因で、冬季になったらホッカイドウシリーズのウマ娘は、冬季でも継続してトレーニングと出走できる本土のトレセン学園(地方、中央両方)に転校してしまうというのが、従来の問題であった。

 

 しかし、就職支援等様々な取り組みにより"残る理由"に説得力を増させる事に成功したことで、ここ数年の冬季転校率は大幅に下がっている。

 そのお陰で、冬季にゴッソリ抜け落ちるはずだった学費等の諸々の利益は継続して得られる事となり、各学園の経営状態が改善される事となった。

 

 本土流出を防ぐ事に十分成功したが、それでもガッチリ固められているとは言い難い。

 

 なんとかして冬季に北海道でレースを開催できないかと、様々な案が今まで考案されてきた。

 

 例えば、冬季に雪で覆われるコースをとにかく除雪しまくって強引に開催可能状態に持っていこうかと検討されたが、重い除雪機を何度もコースの上で往復させてると、コースにダメージを与えてしまう。

 除雪機が重いのなら人力で!と思うかもしれないが、ウマ娘の力を借りても人力だとかなり時間を掛けてしまう上、正規雇用なりバイトなりなんなりそれだけのために人員を雇う費用が勿体ない。

 

 いやはや、どうしたものかと色々と検証している最中、俺がヨーロッパでコネを作りまくってる時にとある情報を手に入れた。

 

 それは、"サンモリッツレース場"である。

 

 サンモリッツレース場とは、アルプスの少女でお馴染み武装永世中立国家スイスのサンモリッツと呼ばれる観光地の"湖にある"レース場である。

 

 え?湖にある?水上???ってことは、ウマ娘は烈○王みたいに走るってコト?????

 

 もちろん、そんなことはない。

 

 凍った湖の上で雪を圧縮し、擬似的に馬場の柔らかさを作る事で完成する氷上レース場である。

 その特性上、湖上とも水上とも氷上とも称されるが、紛らわしいのでこれからは氷上という表現でいこうと思う。

 

 このレース場を知ったとき、これぞまさしく俺らが求めていた解決案だと衝撃を受けた。

 なんせ、今までレース場でどうにかやりくりしようという前提で話を進めていたため、凍った湖の上で行うという案は全くもって思考の範囲外だったのである。

 世界は広いなぁ、と思わせる発見であった。

 

 ともかく、いよいよ弱点を埋められるかもしれない起死回生の解決策を見つけてきた。

 

 となれば、あとは本気で挑むのみ。

 

 てなわけで、早速行動していく。

 

 まず、俺も含めてサンモリッツレース場に人員を派遣して経営や湖上設営の技術を学ぶのと平行して、湖の選定を進める。

 近くにホテル等観光施設がある、インフラが整っている、ネームバリューがある、まぁまぁデカイという条件で、阿寒湖・支笏湖・洞爺湖の三つに絞られたものの、これら三つには意外な落とし穴があった。

 

 まず、某黄金旅程さんの勝ち鞍の影響で絶妙な影響力を持つ阿寒湖は、凍るとアイスバブル現象というものがよく起こるらしいことが、現地調査で発覚した。

 

 アイスバブル現象とは、簡単に言うと氷の中に気泡が閉じ込められる現象である。

 端から見ると神秘的で美しいものの、恐ろしい事に、このアイスバブルは破裂するらしい。

 つまり、外に出ようとする気泡が氷を割る事で、表面がボコボコになってしまうのである。

 

 上から雪を圧縮することでなんとかできないかと思ったが、雪圧縮機の重みでさらにアイスバブルが弾けるというループに陥るため、選手と観客の安全を考えて泣く泣く阿寒湖を選定から外すことにした。

 

 次に、支笏湖はどうなのか?

 近くに国際空港の新千歳空港と大都市札幌がある事から、集客力はかなり高いので、実行できればかなりの利益になりそうだ。

 だが、そもそも支笏湖は"凍らない"ため、早々に選定から外れる事となった。

 

 洞爺湖は近くリゾートホテルなどたくさんの娯楽施設があり、おそらくこの三つの中で最もネームバリューがあるのだが、こちらもまた"凍らない"ため、これまた選定から外れる事となった。

 

 選定した三つが早々に脱落した事はさすがに想定外であり、恐れていたやり直しとなってしまった。

 

 どうすりゃいいんだと皆で頭を悩ませていると、思いの外近くに突破口は存在した。

 

 それは、"さっぽろ湖"である。

 

 さっぽろ湖とは、定山渓ダムのダム湖であり、こちらはちゃんと凍るらしい。

 また、近く…というか隣には観光地としてかなり有名な定山渓があり、ネームバリューや宿泊施設は十分にあるので、さっぽろ湖が選定ラインに出てから決まるまで、あまり時間はかからなかった。

 

 そうと決まれば、あとは交渉するのみ。

 

 土地の所有者、行政、定山渓の観光会社やバス会社と交渉して、実行の為の最後の攻勢を仕掛ける。

 

 幸いにも、コネ作りの一環で殆どの者と交友があったため、利益の提供と友情補正もあって、案外すんなり話は進んだ。コネは正義、はっきりわかんだね。

 

 さすがに今年度には間に合わないが、進み具合からして、来年度には実行できる筈だ。

 

 かくして、ホッカイドウシリーズは弱点を少なからず克服したのであった。

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