【完】転生したら倒産確定地方トレセン学園の経営者になってた件 作:ホッケ貝
=ホッカイドウシリーズの現状=1993
・持ちこたえている経営状態
バブル崩壊は二度と癒えぬトラウマを残した。
土地価格はJu87を彷彿とさせる急降下を起こし、企業は新卒採用を絞った結果、就職氷河期が発生している。
しかし、今までコツコツと堅実に積み上げてきた経営により、なんとか持ちこたえている。
[ 危険 ]■■■■●■■■[ 安定 ]
・分離した景気
バブル崩壊によって北海道経済は深刻なダメージを負ったが、本土程ではない。
この不思議な現象に対して専門家は「まるで北海道が国のようだ」と称している
成果が出始めた
経済力が少し低下する
やる気が少し低下する
・起爆時期不明のリミッター爆弾、北海道植民銀行
先送りするな!今ならまだ間に合う!急いで爆弾を解除しろ!
経済力が少しずつ低下する
・レジェンド理事長
今代の理事長は、改革に意欲的なようだ
もっとも、成功するかどうかは置いておいての話だが……
話題性が少しずつ増加する
経済力が少しずつ増加する
やる気が少しずつ増加する
・中央、地方、北海道
ここ最近、レースの世界を志すウマ娘と親に新たな選択肢が浮上してきている。
スポーツ医学の大々的な導入や、卒業後の進路サポートなどといった改革が功を奏し、新たに北海道という枠の概念が浸透しつつある。
話題性が増加する
経済力が増加する
エースウマ娘出現率がUP
・希望の避難地
中央の怠慢は地方のチャンスであり、現状維持は緩やかな後退でもある
先見の明ある人材が、希望を求めてホッカイドウへ流れてきている
話題性が増加する
経済力が増加する
エースウマ娘出現率がUP
・陰の実力者
官・民・軍、名家、そして世界まで友好関係を広めた今代の理事長の活躍によって、我々の事業は成功しやすくなっている。
背中には気をつけろ
やる気が大幅に増加する
「え、もしかして応募すらしてないんですか?ルドルフ」
「はい、そうなんですよ…これはもう、うちらは完全に見切りを付けられたというか…」
氷上レース実施に必要な機材購入を目的としてスイスへ行くため、空港に訪れた時、偶然にもラウンジで中央の一大派閥の長で一定の影響力を持つ人物である秋川
この人は、名前や地位から察するに、おそらくアプリウマ娘の中央トレセン学園理事長である秋川やよい女史の祖父に当たる人物である。
ちなみに、肝心のやよい理事長はまだ生まれていない。果たして、俺が生きているうちにやよい氏が理事長を務めているところを見れるか疑問である。
好雄氏とは地方所属のまま中央のレースに出る交渉の際から関係を続けている顔なじみの仲であり、お互いに"ウマ娘のための改革"という理念が一致しているためか、二人でいるときはわりと親しい雰囲気の会話になりやすい。
理念自体は同じであるが、決定的に異なるところがある。
好雄氏の改革は、従業員のリストラや給料引き下げ、採用絞りに加えて徹底的な実力至上主義化によって非効率な従業員を振るい落とし、さらには諸々の手当の引き下げや廃止など、俺と比べるとスリム化による経営効率化……いわば緊縮財政寄りの改革を掲げているのだ。
ただ、ヒトミミに厳しくする代わりに、俺がしたような母子家庭向けの奨学金制度制定や、レースの賞金額を上げてモチベーションを向上させたりなど、一概に金がかかるのが嫌いという訳ではないことを、名誉のため述べておく。
従業員を手厚く支援することで、長期的に効率化を目指す俺とは全く違うがゆえに、この手の話題になるとやや険悪な雰囲気になってしまうので、お互いに自分の信念を尊重して、この話題は避けようという暗黙のルールがある。
何が嫌いかよりも、何が好きかで語ろう!という訳である。
それはともかく、適当にだべっていると、自然な流れでルドルフの話題になる。
そこで判明したことが、ルドルフは中央に応募していないという事実だ。
「まぁ、自業自得なんでしょうね。こうなることは予測できたのに、ひどい仕打ちをし続けた……普通に考えて、味方になるわけがありませんよね。ハッハッハ……」
今までのツケが回ってきたことに対して、好雄氏は苦し紛らわせの苦笑いをする。
「そういう身勝手な判断を訂正できる権力が、うちにあれば……」
「えぇ…あ、だからと言って闇落ちはやめてくださいね!そういうことすると、最後の最後に自分のところに返ってきますから!」
「ハッハッハ、なにをご冗談を!もちろん、うちは清く正しく、正攻法でやりますとも。"正しさあっての改革"ですから――」
結論から述べると、ルドルフを特別扱いせず、他の新入社員同様のスタートラインに立たせるという事になった。これは、役員会議で慎重に決めた結果である。
まず、世間から目を付けられている以上、いきなり部長だったり秘書だったりと縁故主義的な職位にしてしまうと、真っ先にシンボリ家とのコネを疑われてしまうだろう。
一度疑われると、疑惑を晴らすことはかなり難しい。
なので、相手に隙を与えないことが重要である。
だから、ここはホッカイドウシリーズとシンボリ家両者の名誉と信頼、そして"公平"さをよりアピールするために、皇帝といえども特別扱いしないのである。
また、ルドルフには生徒会とは違った環境を経験してもらうことで、組織運営と人材管理のノウハウを学んでもらうという目論見がある。
中央トレセンの制服更新改革が捻じ曲げられてしまった原因はほぼURAによる妨害なのは、やるせない気持ちで重々承知だ。
が、あえて言わせてもらうとしたら、もうちょっと"妥協する術"を身に着けていたら、ここまでひどい結果にならなかったのでは…?と、俺は推理する。
いかんせん、ルドルフはライオンと言われるだけあるほど自分が抱く正義感と理想が強く、それゆえに真正面から挑んでしまった。
それは、要塞に対して真正面から生身で突撃を仕掛けるような行為である。
実際に要塞を攻略するときは迂回して攻撃するように、妥協という名の迂回攻撃をしなかった…いや、もしかしたら眼中に無かったのかもしれない。他人に頼らず、自分の力だけで完全な改革を成し遂げようとしたのだろう。その結果、妥協で得た不完全なものよりもさらにひどい結果に終わってしまった。
まぁ、皇帝といえどまだ子供、失敗することだってあるのだろう。
失敗しない人生なんてないし、ましてや、経験がないゆえに無策に突っ走ってしまいがちな若いうちだから、失敗なんてありふれたものだ。大事なのは、失敗から学んで次に生かすことである。
ルドルフには、生徒会時代の苦い経験と、これからの社会人生活で培われるであろう経験を糧に、他人に頼るという考えや交渉術など、組織の長としての能力を伸ばしてもらいたいところである。
ルドルフが中央へ行かなかったことが世間に知れ渡ったのは、すでに入社した後のことであった。
『ルドルフ、ホッカイドウへ!?』
『皇帝はなぜその決断を!?ルドルフURAに行かず』
『シンボリ家との裏取引か?!理事長!』
当時のメディアは、あることないことを騒ぎ立てて、人工的にネタを大きくしようと試みた。
しかし、「ルドルフの未来はルドルフ自身が切り開くべきであり、私はルドルフの判断を尊重すると同時に阻害しないし、公平に扱う」という信念を貫き通し、今更そのような悪いことをする人間ではないという人物像で世間に認識されていたこともあって、あまり民衆の心には響かず、騒動は思いのほか呆気なく鎮火するのでした……
―2022年、理事長亡き後に放映されたドキュメンタリー番組のフレーズより引用―
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