【完】転生したら倒産確定地方トレセン学園の経営者になってた件 作:ホッケ貝
1993年…この年は、競馬、もといウマ娘レース史でかな~り濃い時代となる。
そう、ビワハヤヒデ、ナリタタイシン、ウイニングチケットの三人が鎬をバッチバチに削りあった伝説の"BNW世代"の年なのである。
三人それぞれのドラマ性と、手に汗握るレース展開、それを巧みに利用したURAによるマーケティング戦略により、人々にとって思い出に残る年になると共に、莫大な利益を叩き出すのであった。
ちなみに、この商機を逃すまいと俺らホッカイドウシリーズはURAと協力し、ホッカイドウシリーズのレース場内に少数ながらBNWのグッズを展開したり、BNWの面々を招いたトークイベントの開催を計画したりと、URAとの友好をアピールしつつ自分らも儲ける為の行動をする。
それはともかく、守るだけでは戦に勝てぬというのが世の常……向こうがBNWを推すのなら、こちらも負けじと戦略を打ち出すのだ。
我々が推すものとは何か?ズバリ、氷上レースである!
昨年より計画を進めていた氷上レースプロジェクトは、特にこれといった問題なく順調にプロジェクトを進められている。
強いて上げるとすれば、機材の購入に掛った費用がなかなかだったというところだろうか……。
まぁ、多少の出費なんてどうにかなるぐらいのリターンがあるはずだから大丈夫だろう。ヨシ!
という事はさておき、日本初の氷上開催というアドバンテージと売り文句を最大限に生かすべく、よりいっそう広告に力を入れる。
例えば、旅行代理店と組んで観光ルートに氷上レース観戦を組み込んでもらったり、地元のバス会社や鉄道会社と業務提供して臨時便を運航してもらったり、テレビ局を通して全国に向けて発信したりなど、認知、移動、サービスなど諸々の面で隙を詰めていく。
氷上レース以外にも、バラエティー番組を通じてタイ米料理をアピールしたり、坂路建設の見積りを立てたりなど、仕事に次ぐ仕事の毎日を過ごしていたとき、ついにあの出来事が発生する。
それは、"1993年米騒動"である。
平成初期にコメ騒動が起きたという事は知ってはいるが、そもそも、なぜそうなったのかという事はよくわからない人は多いであろう。
ざっくり言うと、梅雨が長引いたせいで、日照不足と過剰な降水によってイネが生育不良を起こしてしまい、収穫に大ダメージを負ってとんでもない量の米が不足してしまったという事件である。
「明日からコメが食べれなくなるってそれマ?」と不安に思った民衆によってコメの購入戦争が勃発したり、政府の対策が中途半端だったりマスコミがガンガン燃料投下したことによって、稀に見る大混乱が巻き起こったのである。
そんな豆知識(?)はさておき、ウマ娘の一日平均カロリー摂取量はヒトミミと比べて何倍にも多い。
もはやこれ以上述べなくてもわかるだろう。
コメ価格上昇の影響をもろに受けるのである。
むかし、石油危機によって石油価格が高騰して、運送業者や航空会社などが大打撃を受けたように、大飯食らいのウマ娘を養う業種は、食料価格の影響をもろに受けるのだ。
中央は資金力とコネのごり押しによって平常通りに日本米を確保しているとのことだが、経営状態が厳しい地方はかなり大変なことになっているらしい。
このような絶望的な現状で先行きに不満を思うのは、何も経営陣だけではない。
学校に生徒を預ける親もまた、「食料をまともに確保できない学校に預けて本当に良かったのだろうか…」と、不安に思うのである。
"もしも何もしていなかったら"、間違いなく大損害を被っていただろう。
俺のコネを総動員しても、相当の被害が出たはずだ。
だが、今は違う!
そう、前々からこうなることを想定して、日本米を備蓄するなどしてちゃんと食糧危機に対する対策を施していたのである。
というわけで、ついにコメ倉をドバーッ!と開放する。二年越しの置き土産が今、炸裂する!
『ホッカイドウシリーズ、冷害に備えて食糧を備蓄。満を持して開放す』
『ホッカイドウシリーズ理事長より発表。"コメはこれまで通りに食べれる"』
倉庫一杯に備蓄してあったコメを使って"ホッカイドウシリーズにはこれだけのコメがある!"とメディアを通じてアピールすると、さすがに経営が厳しくなるんじゃね?と懐疑的だった世論は安心する。
「しゃあ!決まった!」
うまい具合にハマったことに対して、俺は大喜びする。未来知識万歳だ。
とはいえ、驕れるもの久しからずというのが世の常、喜ぶ気持ちを抑えて、購入に応じてくれた農家や倉庫を貸してくれた賃貸主に対して、備蓄していたコメを影響が出ない程度にちょっと分け与えて言葉と一緒に感謝の気持ちを伝える行脚をする。
謙遜の気持ちこそ正義だって、はっきりわかんだね。
「――よし、着いた」
感謝行脚の一環で、とある牧場の駐車場に車を止める。
遠くの方にサイロが見えて、長大な柵の内にてホルスタイン牛がモーモーと鳴いている…そんな、北海道のありふれた牧場だった。
ちょっと曇り始めたなと天気模様を心配しつつ、この牧場の主が住む家までの道のりを歩いていると、不意に目眩に襲われる。
「ゲホッゲホッ!う"やばい…」
今度は視界が大きく揺れ、足元がおぼつかなくなる。
景色は残像を何度も繰り返したような荒いものとなり、まともに立っているのが困難な状況に陥る。
バタンと横に倒れたその瞬間、俺は悟った。
最期の時が近い―と。
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