【完】転生したら倒産確定地方トレセン学園の経営者になってた件 作:ホッケ貝
「あーだこーだあれだこれだ!」
「「ソートモイウ!」」
俺は今、札幌にあるホッカイドウシリーズの本部にて、一年に一回、シリーズ本部の重鎮と加盟校の重鎮が将来について語り合う(意訳)会議で、迫真の熱弁()を奮っている。
題材として真っ先に上がったのが、我が校の新しくなった制服であった。
未だに旧来の伝統に則ってセーラー服を使い続けている帯広や北見といった加盟校の受験者数がかろうじて横ばいを維持している中、ブレザーに更新したわが校だけ唐突に例年の三倍近く爆上がりするという異例な数値を叩き出した。
地元を中心とした広報戦略が最大限に効果を発揮した形となったのだが、思いのほか火力が強く、道北や道南といった地域や、僅かながら本州からわざわざここへやってきて受験するほど、想定していたよりもはるかに大きな影響を及ぼすことになった。
おまけに、地元のマスメディアから始まって、全国規模のマスメディアにも注目の眼差しを向けられ、このお祭り騒ぎに中央のトゥインクルシリーズは沈黙を保っているが、噂によるとあのシンボリルドルフが反応していたりと、割と真面目にホッカイドウシリーズ史上最大の注目を浴びることとなった。
また、受験者数増加による受験費という収益が増加したり、取材料によって決して少なくない額を稼げたのである。
あまりの成功っぷりにこれは将来の不穏の前フリなのではないのかとさえ思うほどであったが、この際はいっそのことこのまま勢いに乗って改革を推し進めてしまおうと決意を固めた。
そのため、改革の必要性を必死に説いているのだが、ぶっちゃけホッカイドウシリーズ全体の経営状況が厳しくてそれ以前の話であった。
「どこもかしこも予算不足ですか……」
「「ソーナノダ!」」
学園の存続、職員の雇用、生徒の青春、シリーズの繁栄の為には利益を増加させることが最適というのは満場一致だった。
しかし、他人から見て俺の改革はやや急進的に映るらしく、「分からなくもないけどねぇ…」といった具合に難色を示す。あと、単純に金がかかりすぎるというのもある。
また、制服改革の成功による弊害も追及される事となった。
なので、俺はこう提案した。
「ならいっそのこと、あなた方も制服を更新してみては?」
「「ファ!?」」
一度に全ての制服を更新するとなると、生徒を管理する側である学園はとんでもない負担になる。
しかし、その様な負担を背負ってまで実行する価値はあると俺は確信しているし、ホッカイドウシリーズ重鎮や他の加盟校の重鎮も、やや下がり気味の横ばいの状況から打開できる最も安価な方法であると薄々気付いていた。
制服の大規模更新に関して、差別化するかそれとも統一するかに意見が別れる。
もしも各加盟校がバラバラに制服を制定した場合、それぞれの個性が生まれて話題性が向上するだろう。
ただそうなった場合、解決すべき問題である加盟校間の競争は避けられないだろう。
統一した場合、同規格の大量発注による費用の低下を望める事や、存続のデザインを流用できることからデザインの依頼費を浮かす事ができるなど、費用面でメリットがある。
また、統一することによって差別化を無くすことで、競争を避ける事ができる。
しかしそうなった場合、それぞれ別の制服を採用した場合と比べて話題性がいまいちに終わる可能性が高い。
メリットがあって、デメリットがある。
この二つを慎重に選考した結果、我々は統一した制服を選ぶ事になった。
この程度なら予算的にギリギリいけるというのもデカかったが、やはり身内の間で競争できるほどの体力がないというなんとも悲しい理由が一番デカかった。
次に俺は、レース開催の曜日の変更と、夜間開催を提案した。
これは、中央と競争している土日の開催を(中央に真っ向から立ち向かって勝てるわけがないから)避け、代わりに平日に行うことで授業終わりの学生や仕事終わりの社会人を取り込もうという算段である。
体験入学やレース場、さらには街頭で配った膨大な量のアンケートを元に作った資料を元に、いかに平日開催と夜間開催に可能性があるかをこれでもかと力説する。
また、学生個人でレース場に行けるようにするため、公共交通機関であるバスの増発も要だとする。
平日と夜間開催は十分稼げる可能性があるが、いかんせん金と時間がかかるのがネックである。
夜間開催用の設備建築費用、周辺住民やバス会社、さらにはばんえいレースを管理する行政との交渉と、様々な壁が立ちはだかるので、なかなか苦難の道を歩むことであろう。
これはあくまでも一理事長の意見という扱いであるため、絶対に実行されるとは限らない。
この提案が受け入れられることを願うばかりである。
最後に、これからは地元に愛されるような組織を作ることが重要だと提案する。
これは文字通りすぎて逆に説明が難しいのでふんわりと説明すると、地元の住民や企業、そして行政に好意を持ってもらえるような組織にする事で、ヤバい時になったら団結して苦難に立ち向かおうという目論みである。
好かれるに越したことはないのである。
その後も会議は続いていき、「本当に成功できるのか?」という猜疑心は未だに晴れていないが、なんやかんやあって改革の風を吹かす事に成功したのであった。
これからは、より大規模な改革を実行することができるようになったのである。
もちろん、予算と格闘しながらの話だが……
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