【第33歩】
ボクは、究極のドスファンゴになるのを夢見て、旅をしている。
リノッチから、大事にしているこの青いスカーフについて聞かれたボクは、これを入手した時の話を思い出しながら語った。
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ボクは、パパの顔を知らずに育った。
パパは、ボク達が生まれると同時に長旅に出掛けたそうだ。
好奇心が猪一倍旺盛だったボクは、ママの目を盗んでは、一匹で密林を探索するのが日課だった。
「オマエみたいなチビ助は、ここを通さないぞ」
「そーだ、そーだ」
「ブタ助は、向こうでブヒブヒ言って遊んでろ」
……ブ、ブタっ!?
コイチュら、カニミチョほじくってやるじょっ!
いくら幼いボクでも、ブタと言われて引っ込むほど、おモン好しではない。
あわや乱闘寸前という時、一頭のドスファンゴが現れた。
「こらこら、君達! 多勢に無勢で、よってたかって小さなファンゴを虐めるのは、よろしくないよ!」
ドスファンゴの姿に、ヤオザミ達は一目散に逃げていった。
「……まったく。ところで君、怪我はないかい?」
「あ、ありがとうございまちゅ」
「うん、実に礼儀正しいお子さんだ。おや? その模様……そしてその面影は……」
ドスファンゴは、ボクの顔をジロジロと見つめた。
「もしかして、君のお母さん……左目の下に小っちゃい星形の模様がないかい?」
「えっ? ボクのママ知ってるんでちゅか?」
「あぁ、やっぱりそうか。どうりで似てると思ったよ」
ドスファンゴは、何やら感慨深い表情をしていた。
確かにボクの左目の下には、近くで見ないと気付かないほど、小さな星形の模様があり、ママにも今では崩れかけた星形の模様があった。
「お母さんは元気かい?」
「あいっ、元気でちゅう」
「それはなによりだ。君のお母さんはね、ここいら一帯では美モンさんで有名だったんだよ」
えっ?
今ではデップリとした貫禄で何かと口うるさいママが、若かりし頃は美モンで通っていたとは、びっくり以外の何物でもなかった。
「よく君のお母さんを巡って、こぞって取り合いになってたなぁ」
「……マジでちゅか?」
「そうだ、君にコレをあげよう」
ドスファンゴは、左前脚に巻いていた青いスカーフを解くと、ボクの首に巻いてくれた。
「勇気ある君へのささやかなプレゼントだよ。うん、これで君も立派な戦士だ!」
「あ、ありがとんでちゅ」
「それでは、お母さんによろしくね」
「あっ、あいっ!」
そうしてドスファンゴは、立ち去っていった。
ドスファンゴが見えなくなるまで、その後ろ姿を見つめていたボクは、あんなドスファンゴになりたいという目標が芽生えた。
首に巻かれたスカーフが、慣れないせいか少しくすぐったい感じがしたが、これでボクは戦士になった! という小さな誇りを胸に家路に着いた。
巣穴で待っていたママが、帰りの遅いボクにお小言を言おうとした時、首に巻かれたスカーフに気付いた。
「ちょっと……それ、どうしたの?」
「えっへんっ。いいでちょ~、ドスファンゴから貰ったんだっ!」
「えっ?」
ママはポっと顔を赤らめ、ボクへのお小言も忘れ、無言で巣穴の奥に引っ込んでいった。
なぜに赤面?
……まさか、あのドスファンゴって……パパだったのかっ?
パパだったとしたら、パパはどうしてここへ顔を出さなかったんだろうか?
ボクには分からない大人の事情でもあったのかな?
幼かったボクは、初めてパパに出会えた喜びを噛みしめていた。
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「……と、こんな感じかなっ」
「へぇ~。シュールな偶然の再会、ってとこか」
幼き日の思い出が、まるで昨日のように思えたボクは、しばらくその思い出にひたっていた。
ボクの飽くなき道の冒険譚は、まだまだ続く。
【第34歩】
ボクは、究極のドスファンゴになるのを夢見て、旅をしている。
しばらく歩き続けたボクらだったが、どうやら道に迷ってしまったようだ。
「あれ? おかしいな。もう天空山に到着してもいい頃だと思うんだけど……」
「天空山?」
「ああ、地底火山でリサーチした時、ここを真っ直ぐ行けばシュールな天空山ってところに着くって聞いたんだけど、どこにも山らしきものなんてねぇよな?」
確かに、この辺りは枯れ木が多く、モンスターの姿はどこにもない。
それどころか、生命の息吹すらまったく感じられない、なんとも殺風景な景色が続いている。
すると、途中に看板らしきものを発見した。
[この先、禁足地につき立入りを禁ずる]
「きんあしち?」
「要するに、入るなってことだな」
「入るなって言われたら……入りたくなるよねぇ~(ニヨニヨ」
「ったく、おまえは。シュールにルールを守らないヤツだな」
ボクらは、禁足地とやらにおそるおそる足を踏み入れた。
しかしながら、そこは、やけにだだっ広い場所で真ん中にポツンと大きな岩があるだけだった。
想像していた場所とかけ離れた光景に、ガッカリ感が否めない。
「なんだ、ここは? シュールに何にもねぇじゃねぇか」
「……ん? ちょっと待って。あの岩の向こうに何かいるっ!?」
ボクは、岩の向こうで何かが動いたのを見逃さなかった。
ボク達がそこをじっと見ていると、岩影からゆっくりと何かが姿を現した。
全身が黄金色に近い白に輝き、大きな翼と長い尻尾、そして黒い2本角を生やしたモンスターだ。
あれは……ネ申、なのか?
実はここは、神の棲まう神聖な場所だったとか?
いや、待てよ。
よく見ると……黒ゴマちゃんにも似てる気がしなくもない。
「お、おいっ! コレはちょっと……シュールにマジでヤバい場所だったんじゃねぇのかっ?」
「いや、もしアレがモンスターの神様だったとしたら、初めて神に近付いた男となれる絶好のチャダンスじゃまいかっ!」
「おまえ……そのうち、シュールなバチが当たんぞっ!」
ボクらは、白ゴマちゃんの逆鱗に触れないよう、慎重に、ゆっくりと笑顔で近付いていった。
白ゴマちゃんは、そんなボクらに気付いたらしく、こちらをジーっと見ている。
「こっ、こんにちわっ! ボク達は怪しい者では……」
挨拶をしようとした時、突然、白ゴマちゃんは空へ舞い上がった。
そこで咆哮をすると、白ゴマちゃんを中心に、あちこちに光の柱のようなものが出現した。
そのあと、光の柱は音を立てて爆発した。
「か、神のシュールな怒りに触れたぞっ!? どーすんだよっ??」
隣でリノッチが慌てている。
むむむ、これではお供え物もできないじゃまいかっ。
白ゴマちゃんの無慈悲な怒りに、ボクは不満を募らせていた。
「禁を破っておきながら、怪しい者ではないと?」
白ゴマちゃんは口から煙を吐きながら、ゆっくりと地上に降り立つと、ボクらへ問いかけた。
「だから言ったじゃねぇか」
リノッチがブツブツと文句を呟いている。
「あ、えーとでつね、お、お供え物をしようと……」
ボクは、スカーフに隠し持っていた小さなキノコを差し出した。
「ほぉ。そんな粗末な供えを出すとは、私も
白ゴマちゃんは、再び空に舞いあがって一際大きな咆哮をすると、紫色のオーラをまとった。
それと同時に、あちこちの地面が点々と紫色に光り出した。
むろん、ボクらの立っているこの地点も怪しく光り出した。
「あっ、リノッチ避けてっ! これは孔明の罠だっ!!」
「お、おぅっ!」
ボクらは、慌てて今いる場所から光のない場所に避難した。
すると、ボクの直感通り、光っていた場所から紫色の光柱が出現して爆発した。
ボクは、白ゴマちゃんの絶対領域へ足を踏み入れてしまったことに、珍しくも後悔していた。
「リノッチ……悔しいが、ここは大人しく退散しようっ」
「そうだな。初めてシュールに意見が一致したな」
ボクらは、白ゴマちゃんからの追撃を食らわないうちに、禁足地から脱出した。
ボクの飽くなき道の冒険譚は、まだまだ続く。