【第35歩】
ボクは、究極のドスファンゴになるのを夢見て、旅をしている。
禁足地から命からがら逃げ出したボクらは、また長い道のりをしばらく無言で歩いていた。
すると、天にも昇るような高い崖の山々がそびえ立つ場所にたどり着いた。
「やっとシュールな天空山に辿り着いたか?」
「へー、ここが天空山かぁ」
「だとしたら、ここの崖は
く、崩れるだってぇー?
なんて危うい場所なんだ、ここはっ!?
ボクらは崖に近付かないよう、なるべく平たんで安全そうな場所を歩いた。
あちらこちらに、キラキラと輝く鉱石の塊のようなものが見える。
もしかして、この鉱石をフンターどもがホリホリし過ぎて、地盤が脆くなったんじゃまいのかっ?
まったく、フンターどもには……まっことけしからんっ!
今日からここは、ホリホリ禁止区域なっ!
隣のエリアに入った時、ボクらの目に留まったのは、一匹のアルアルだった。
「あっ! アイツ、アルアルって言うんだけど、お尻からイケナイ汁を出すから、リノッチも気を付けてっ!」
「おいっ、アルセルタスだろっ! いい加減、モンスターの正式名称はシュールに覚えろよっ」
Booooーーっ!
どいつもこいつも名前が覚えづらいんだよっ。
ブーンと低空で羽ばたいているアルアルの元へ、ドドドドっと装甲車のような大きな虫のモンスターがやってきた。
「げげっ、虫が二匹っ!?」
「あれはゲネル・セルタスで、雌らしい。おまえに会う前に、一度だけ見たことがあんぞ」
「ほぉ、して、
「い、いや……ちょっと遠目に見ただけだから、よく分からなかったよ」
さすがのリノッチ。
さては、すぐに逃げたな?
じっくりとヤツらの様子を窺っていると、アルアルがゲネゲネを重たそうに持ち上げながら飛び始めた。
「あいつらっ、夫婦漫才でもやる気なのかっww」
「ああやって合体しながらシュールに攻撃するんだとよ」
合体技っ!?
なんという心地よい響き。
それじゃあ、ボクらの合体技は……手を繋いで突撃、か?
それこそ、ギャグだろっww
そうこうしているうちに、合体した虫夫婦は、ボクら目掛けて尻尾を縦に振り回し、空中ムーンサルトのような攻撃を仕掛けてきた。
「わぉっ! 雑技団のような隙のない技だなっ」
「一匹ならまだしも、二匹いるとなると厄介だな、ここはシュールに……」
「その先は言わずもがなっ」
どうせ、リノッチのことだ。
逃げるぞっ! と、かますに決まっている。
そうは
ボクは虫夫婦、特にゲネゲネのほうをよく観察した。
全身堅そうな甲殻、四肢も堅く太い、尻尾も堅そうだ。
……となると、残るは顔面、か。
こちらの戦力は、最速俊敏のボクと、堅さが命のリノッチ。
ピッキーーンっ!!
この合体技なら、もしかしてっ!?
ボクは、リノッチへ耳打ちをした。
「本当におまえってやつはシュールだな。って、また俺がアレかよっ!?」
そう、リノッチには再びアレを上回る働きをしてもらう必要があるのだよっ。
アルアルは、空中で持ち上げていたゲネゲネをドスンと落とし、ボディプレスをしてきた。
「今だっ、リノッチ!」
リノッチは、気合いと根性を据えるために、ブモーっ! と一鳴きすると、果敢にも地べたに降り立ったゲネゲネに突撃をした。
ボクの飽くなき道の冒険譚は、まだまだ続く。
【第36歩】
ボクは、究極のドスファンゴになるのを夢見て、旅をしている。
虫夫婦に立ち向かうべく、ボクらは作戦を決行した。
勇気を振り絞ったリノッチは、地べたに降り立ったゲネゲネに向かって突撃し、その顔面に強烈な頭突きをお見舞いした。
一瞬、怯んだゲネゲネだったが、その次の瞬間、リノッチは素早く真横に避けた。
そして、そのすぐ背後からボクが奇襲をかける。
「とぉーーぅっ!!」
ボクの全体重を乗せた重く堅い両前脚の蹄が、ゲネゲネの顔面をさらに直撃した。
名付けて『リノッチの後ろにはボクがいるっ!』作戦だっ!
一瞬で二段攻撃を食らったゲネゲネは、フラフラとよろめきながらアルアルを呼び寄せると、アルアルを捻じ伏せて、その身体に顔を押し付けた。
そして、何やらモゾモゾと顎を動かしている。
……おわかりいただけただろうか?
なんとっ!
ゲネゲネは、アルアルをムシャムシャと食べていたっ!
なんという悪妻っぷり?!
これはいい子のみんなには見せられない、スプラッターホラーさながらの光景だ。
「……おえっぷ。アイツ、なんてことしやがんだ! ったく、シュールじゃねぇ女だぜっ」
「うぇ~、いくらこのボクでもアレはちょっと……」
ボクらは、ゲネゲネが回復する心配もよそに、おぞましい光景から早く離れようと、そのエリアを早々に脱出した。
「いやー、参った、参った。勘弁してくれよ」
「本当さ。当分、虫には会いたくないよっ。さっきのを思い出してしまうからねっ」
肉体よりも精神的にバテていたボクに、空中から魔の手が近寄ってくるのを、その時のボクは気付いていなかった。
ヒョイっ!
あれ?
幻覚、かな?
体がフワフワと軽くなって、地面が……遠く離れていく。
「おいっ! ファンゴーーっ!!」
あれ?
リノッチが、段々と米粒のように小さくなっていく。
ボクは天を見上げた。
……え?
その瞬間、ボクはこの現状を把握した。
一匹のガブラスが、ボクを持ちあげて飛んでいた。
「……たつけてなうVer2.0」
テッテレ~♪
リノプロスと別れた!
ボクの飽くなき道の冒険譚は、まだまだ続く。