【第9歩】
ボクは、究極のドスファンゴになるのを夢見て、旅をしている。
ネルス卿の卑劣な交渉に、チュー助の心が揺らいでる今、ボクは……もう何も言うまいと腹をくくった。
万が一、チュー助がネルス卿側へ寝返ったとしても、ボクは君を責めたりしない。
君が決断した選択肢を、ボクは甘んじて受け入れるよ。
「ぐぬぬぬっ……」
チュー助は力んでいるのか、小さな身体をプルプルと振るわせている。
さぁ、ジャッジメントのお時間ですのっ!
「……ぐぬぬっ! お客様は……神様でチュウーーーっ!! 一度失った信用は、二度と取り戻せないでチュウ!! オイラは、このファンゴの信用を一度裏切ってしまったから、倍以上の働きをしないとチャラにならないでチュウーーーーっ!!!」
金色の小さな身体から、まばゆい金色の後光が輝きだした。
やだ、なにこれ……かっこいい!
覚醒、したのかっ!?
コイツ、ニュータイプだったのかっ!
「ほぉ、こけだけの好条件を
カチカチっと、ネルス卿は顎を鳴らしている。
「オイラが君に合わせて動くでチュウ。イザという時、盾になるでチュウよ!」
「今度は、さっきのヤツなしだぞっ!」
「本能に飲み込まれないよう、理性をガッチリゴッチリ保つでチュウっ!!」
途端に、チュー助が頼もしく見えた。
このネルス卿めっ!
こんな小っちゃいチュー助をここまで追い込むとは!
それでは、命にかかわるタッコゥーをかましますよ?
ボクらは、戦闘態勢に入った。
さあ、狩りの時間だっ!
すると、ネルス卿はトリッキーな動きで軌道を変えながら、ボクらの背後へ一気に近づいた。
……っ!?
速いっ、速すぐるっ!
なんだ、この動きはっ?
速すぎるその動きに、ボクはネルス卿を捉えるどころか、避けるので精一杯だった。
「アイツにも必ず隙はあるハズでチュウ。それを見逃さないでチュウっ!」
「がってんっ!!」
ネルス卿も、なかなか捕らえられないボクらに業を煮やしたのか、素早い動きを止め、前脚でカシャカシャと繭のような物を作り始めた。
「今でチュウよっ!」
ボクは、ネルス卿が動きを止めている隙に、真ん中の脚を目掛けて、パーフェクトタッコゥをかました。
前脚で繭を作り、実質4本脚で立っていたネルス卿は、少しだけバランスを崩した。
ボクの観察眼が、その隙を見逃すはずもない。
ネルス卿の腹下へ素早く潜り、腹の内側の柔らかい場所を目掛けて、ボクのハイパー鋭い牙をプッ刺そうとしたその時、ネルス卿はすかさず腹部に隠していた睡眠針を出そうとした。
視界に針が迫ってくるのが、スローモーションのように映った。
ま、マズイっ!
しかしながら、勢いに乗っているボクの四肢は、自分でも止められない。
ボクの飽くなき道の冒険譚は、まだまだ続く?
【第10歩】
ボクは、究極のドスファンゴになるのを夢見て、旅をしている。
目の前に迫るネルス卿の針に、ボクの脚はもう止まらないっ!
と、その時!
カッキーン!
あれ?
前が見えないぞ!
どーなってるんだ!?
チュー助が、盾となってボクの顔面に張り付いていた。
盾となったチュー助の堅い殻に当たったネルス卿の針は、音を立てて折れたようだ。
そのおかげで、ボクのハイパー鋭い牙は、ネルス卿の腹へ見事に命中した。
やるじゃない、チュー助。
ぐぬぬっ……息が……gっ……!
おい、早く剥がれろっ! ksgっ!!
急所を貫かれたネルス卿も、ぐぬぬと嗚咽を上げながら、どこかへ去っていった。
「やったでチュウね!」
「君のおかげで助かったよ、トンクスなっ!」
やればできる子なんだよ、君ってヤツは。
「いやいや、ファンゴの一撃が効いたでチュウよ」
まぁ、ボクは本気だったんで。
「えーと、これで戦闘回数が2回でチュウね。戦闘料金はオプション(有料)でチュウから、追加料金が1回に付き300ゼニーで、2回で……900ゼニー。今回は特別に、後払いで結構でチュウから」
チュー助のブレない計算は、デフォだった。
「ん? ちょっと待てよ、2回ってなんだよっ? テツオさんの時は、君がテツオさんにくっ付いてたじゃまいかっ!? だから、戦闘回数は1回だぞ? 戦闘回数は1回、なっ。1回だぞ? とても大事なことだから、3回言いましたっ!」
「しょうがないでチュウね。それでは1回で500ゼニーでチュウ。2回以上だと割引制度があったでチュウよ」
コイツの銭ゲバ度は、本物だった。
ってか、オプション(有料)ってなんだよっ!?
聞いてないぞっ!!
まったく、君ってヤツは本当、そういうとこあるよね。
「そういや、今時点でお金はいくら貯まってるんだい?」
「うーん、貯蓄額としては正直かなり良い状況でチュウね」
「へー、そーなんだー」
しかしながら、ギルドを建てるっていっても協力してくれるモンスターが果たしてお金を受け取るのだろうか?
ま、チュー助のことだから、その辺はうまくやるんだろうな。
ボクらの飽くなき道の冒険譚は、まだまだ続く。