【第16歩】
ボクは、究極のドスファンゴになるのを夢見て、旅をしている。
ゲネりんの猛攻でガラガラを撃退したあと、なぜか謎の病が完治したゲネりんと、ボクは次のエリアを目指した。
おっ!
お魚ちゃんっ!
行く手を
「魚食いたいのか? 捕ってやろうか?」
「いや、ボクは生魚はちょっと……ってか、見てるとなんだか落ち着くよね。癒されるというか、いわゆるアクアリウム効果ってヤツだよね」
「そうか。ま、無駄な殺生をすると、生態系が崩れるしな。これ常識」
しばらくの間、ボクらは悠々と泳いでいる魚達を眺めていた。
ドサッ!
背後から、何かが降り立った音が聞こえた。
振り返ると、そこにはシャカシャカによく似た黒っぽいモンスターが、ギシャーっと鋭い牙を露わにしている。
「まずい! ティガレックス亜種だ!!」
亜種?
どうりで……シャカシャカ2号かっ!
「アイツは非常にマズイ! ここは逃げるのが常識だ!!」
「えーっ? さっきのハイパー破壊神タイムになれば、コテンパンにできるんじゃまいか?(ホジホジー」
「いや、今はあんな状態になれる感じは、まったくしないんだ」
なんだとおぉっ!?
それじゃぁ、本気でマズイ状況じゃまいかっ!
そうこうしているうちにシャカ2は、まさにシャカシャカとこちらに向かって突進してきた。
ボクらは間一髪、ヤツの突進を避けたが、アイツは確か……そう、とてもしつこく追いかけまわしてくるタイプだ。
かといって、ここには隠れられそうな場所はどこにもない。
も、もちつけ、ボクっ!
「ここは二手に分かれて、隣のエリアで落ち合おう」
「おk。……って、ボクはどっちに行けば?」
「君は一度さっきの場所まで戻って、右側沿いに次のエリアを目指してくれるかい? 僕は別の方角からそのエリアに向かうからさ!」
「らじゃあっ!」
ゲネりん、無事に逃げ切れるかな?
足の早さなら、ボクのほうが速いと思うけど……って、おいっ!?
ゲネりんは、すぐそこにある隣のエリアに通じる場所へ姿を消した。
近っ!!
ボクが目指すはずのエリア境界線まで、あの3倍の距離はあるぞっ?
くっそ、ゲネりんめっ!
ハメおったな?!
この湧きたつ憤りをスピードに乗せ、ボクは超三倍速走行モードで、悔し涙と鼻汁を辺りへ巻き散らしながら、湿地帯を駆け抜けた。
二匹それぞれ違う方向へ走って行くのを、シャカ2はどちらを追い掛けるべきか、少し迷っていたようだ。
このわずかの時間が、後にシャカ2にとっての誤算となった。
シャカ2は、ボクより足の遅そうなゲネりんへ狙いを定めた。
しかしながら、ひょろっとしてマズそうな肉食ゲネりんよりも、ボクのほうがプリプリと美味しそうな後ろ姿をしている。
ボクに狙いを変更したシャカ2は、ボクのほうへシャシャカ突進をしてきた。
ボクの飽くなき道の冒険譚は、まだまだ続く。
【第17歩】
ボクは、究極のドスファンゴになるのを夢見て、旅をしている。
二手に分かれ、シャカ2を回避しようとした結果、ボクがオトリになってしまった。
いくらボクの足が早いとはいえ、シャカ2とは歩幅が違う。
絶対に止まってはいけない湿地帯!
ボクは、がむしゃらにバシャバシャと水音を立てながら、湿地帯を駆け抜けた。
あと少しというところで、ボクはシャカ2に追い付かれるよりも先に、エリチェンできた。
もしも、シャカ2が最初から迷うことなくボクを狙っていたら、今頃ボクは、あの鋭い牙の餌食になっていたかもしれまい。
はぁはぁ……ぐじょぅ~っ!
ゲネりんは、とんだ香具師だっ!
合流したら、文句の一つくらい言ってやらないと、ボクの気がおさまらないぞ!
ブツブツと呟きながら、ゲネりんの言っていた通りに道を進み、待ち合わせ場所のエリアに向かった。
ようやくたどり着くと、待ちくたびれた様子のゲネりんがいた。
「やあ、やっと来たね」
やあ!
じゃねぇよ、bkgっ!!
「ゲネりん……もしかしてさ、ボクをオトリにしなかった?」
「オトリになんてするハズはないさ! だって、仲間だろ? 仲間をオトリに使うなんて、常識外れもいいところだよ!」
「いや……だって……ゲネりんが逃げた方向より、ボクのほうが三倍も距離があったし……」
「そうか。僕の考えた作戦は、君に誤解を生ませてしまったようだね」
え?
「僕と君の足の速さを考えた時、断然、君のほうが速いのは事実だ。お互いの時速と逃げられる距離を計算した結果、あの方法がベストだったと今でも思っているよ。戦闘時は、いかにしてリスクを減らすか、いかにして生存率を高めるか、というのが定石だと思うんだ」
ふむふむ、確かに。
なんて最適解な戦略っ!
そんなふうに考えていた時期が、ボクにもありました。
それなのにゲネりんを疑ってしまって、ボクは恥ずかしいれす。
「ごめんよ、そうだよね。うん、まぁ、その作戦のおかげで、こうしてお互いに無事で合流できたんだもんねっ」
「そうさ! こう見えても実は僕って仲間思いなんだよ」
仲間っ!
ジィィーーンっ!!
「最近は、仲間と思える仲間がいなかったから、初めて仲間らしい仲間に巡り合えて、僕は今最高潮だよ」
仲間、ナカマ、なかまっ♪
なんて心地よい響きなのかしら。
ボクのことを仲間と認めてくれたゲネりんは、素敵ngですの。
肉食と草食の壁を越え、紡がれる禁断の絆!!
「……ん? なんか、あっちのほうから嫌な気配がするな」
え?
どっち?
「な、何っ? 何かいるのっ?」
「……前にもあったこの感じ。……いや、気のせいかな。でも、これは……」
隣のエリアに目を向けたまま、ゲネりんの顔からは緊張が消えない。
いったいそこに何がいるのか?
その緊張は、ボクにも感染したようだ。
「い、行ってみようか?」
「もしも、アイツだったら……気を引き締めていかないと!」
アイツ?
そこに待ち受けているのは、いったいどんなモンスターなのか?
ボクのハートは、好奇心と緊張で満たされていた。
ボクの飽くなき道の冒険譚は、まだまだ続く。