Fate/IdeateBliss‐Ib‐美術館聖杯戦争 作:放仮ご百物語
「もう、一体なんだっていうのよ!?」
深夜の某所。人っ子一人いない路地裏を走る男がいた。年齢は20代ほど。三白眼の紫髪で長い前髪で左目が隠れており、頭頂部から紫色のメッシュが生えている奇抜な頭が特徴的な青年だ。ボロボロの濃紺のコートの下は緑のタンクトップを身に纏った男はなにかから逃げるようにしきりに背後を振り返りながら全力で逃げていた。
「寝れないからお酒を飲みに出ただけなのに、なんでこんな…」
「あはは………、あはははははははは!」
「ひっ!?」
すると恐怖の笑い声が響き渡り、壁を突き破ってそれは現れた。
「なぜ逃げるのですか!?男でしょう、あなた!みっともない!実に無様で見苦しい!」
「屈強な男だろうが誰だって貴方から逃げるわよ!?」
その手に日本刀と槍を手にした僧兵を思わせる和風の戦装束を纏い黒いメッシュの入った長い銀髪を持つ、ハイライトの無い目で狂った笑みを浮かべる女性。男は、この女が別の誰かと戦っているところに遭遇し、殺されかけたので全力で逃げていた。今も投擲された槍を咄嗟に飛び退いて避けて、そのまま駆けて行く。
「あはははは!やりますね、そうでなくては面白くない!」
アスファルトに突き刺さった槍を引き抜きながら狂笑を浮かべてあえて走ることなく歩いて追いかけてくる女に恐怖を抱きながら男はあるビルに逃げ込んだ。しかし入ってすぐ後悔する。誰かの死体が魔方陣の書かれた床に転がっていたからだ。
「えっ…?」
「おやおや、これはなんの因果ですかねえ。マスター候補の魔術師の工房じゃないですかあ。まあ私が殺したんですけど」
扉を蹴破って入ってくる女に心底恐怖して腰が抜けてしまい、血だまりに濡れながら後ずさる男に、女は手にした日本刀を振り上げる。
「ねえ、待ってよ…なんで私を殺そうとするの…?」
「こんな時間に出歩いた自分を呪ってください。見さえしなければ死ぬこともなかったんですから、ね!」
振り下ろされる刀に咄嗟に目を瞑る男が小さく、助けてと呟いたと同時に床の魔方陣が輝いた。
「むっ!?」
ガキンッと、鉄と鉄のぶつかった音が聞こえて男が目を開けると、そこには手にした彫刻刀で日本刀を受け止めている少女という衝撃の光景があった。白のブラウスに赤いスカーフにギリギリ膝上の赤いスカート、紺のハイソックスに赤いリボンのついた同色の靴の上から絵の具で汚れたエプロンを身に着けた茶髪のロングヘアに赤い瞳をした可愛らしい9歳ぐらいの少女は背後の男を見て驚いた表情を浮かべた。
「ギャリー…?」
「隙ありですよ!」
それを好機と見た女が手にした槍を叩き付けんとするが、少女はそのまま彫刻刀で受け止めていた刀を脱力することでずらして槍に当てて弾かせると、もう片方の手でパレットナイフを取り出して一閃。腹部を斬り裂かれた女は大きく後退して逃れる。
「…サーヴァント。まさか貴方が最後のマスターだとは、わからないものですね。…はいマスター。わかりました、戻ります」
そのまま一瞬で姿を消してその場を去った女がいなくなったことを確認して、少女はエプロンのポケットに彫刻刀とパレットナイフを直すとエプロンを消して、尻餅をついたまま立てない男に手を伸ばした。
「…私はイヴ。アル……キャスターのサーヴァント、イヴ・ゲルテナ。あなたが私のマスター、だよね?」
「はえ…?」
出入り口から覗く月光を受けて幻想的な雰囲気の少女に、男は間抜けな声を上げるしかなかった。
同時刻。ある部屋の一室で、壁に飾られている絵に描かれた大きな口が動いてなにかを伝えられた少女が嘆息する。
「ありがと、「告げ口」。…やっぱり、貴方達は巡り合うんだね。…イヴ、ギャリー」
「町中に描いた「聞き耳」からの連絡?知り合いでもいたの?ゲルテナ」
「…友達で、敵…かな?立香、それちょうだい」
深い緑のワンピースに青いリボンスカーフを身に付けている金髪碧眼の少女は、遠い昔に思いを馳せるかのように、同じ机の席にてマカロンを食べる少女の手から食べかけのマカロンを摘み上げて口に含んで怪しく笑った。
プロローグなので短いのは勘弁してください。
ギャリーの前に現れた絵の具で汚れたエプロンを身に着け彫刻刀とパレットナイフを手に戦う少女のサーヴァント、イヴ・ゲルテナ。自称キャスター。
それとは別にゲルテナと呼ばれてる少女と立香と呼ばれる少女も。
次回も楽しみにしていただければ幸いです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。ここすき機能などで気に入った部分を教えていただけたら参考にします。