Fate/IdeateBliss‐Ib‐美術館聖杯戦争 作:放仮ご百物語
「ギャリーの家、ここ?」
「ええ、ここよ…死ぬかと思った……」
「ごめんね?」
空を跳びながら聞かれて方向を教え、やってきたのはアタシの家。といっても実家から出て住んでるアパートメントだが。しっかし情けない悲鳴を上げてしまった。恥ずかしい。なのにこの子、全然表情変えないの凄いわね。
「お、お邪魔します…」
「ど、どうぞ…」
おずおずとしながらもの珍しそうに見渡しながら入るイヴに、途轍もない犯罪臭を感じる。だ、誰も見てないわよね?とキョロキョロ見渡すと、玄関でイヴが不思議そうに首をかしげていた。
「どうしたの?ギャリー。入らないの?」
「え、ええ。今入るわ。…!?」
入ろうとして、一瞬誰かの視線を感じてバッと振り返る。え、なに、おまわりさん?…気のせいか。
遠く離れた木造の屋敷にて、金髪ロングヘアーの男が水晶玉から視線をずらして楽しそうに笑う。
「ただの変な一般人かと思えば……遠見の魔術を見破るとはね。さすがは最後のマスターってだけはあるのかな?」
「可愛い人ね。お茶会がしたいわ。それで、どうするのかしら?」
傍で優雅に紅茶を飲んでいた赤いワンピースを着た少女がにっこりと笑いながら尋ねると、短い棒を振るいながら男は不敵に笑む。
「…どうやら僕たちに出番はないらしい。暴れん坊のお出ましだ。彼、とことん運が無いね?」
「イヴって見るからにお嬢様なんだろうけど…こんなところ、大丈夫?狭くない?」
いわゆる1Kの部屋にイヴを案内すると、クッションの上にちょこんと座るイヴの姿に違和感をバリバリに感じる。するとイヴはキョロキョロと興味深そうに見渡すとふるふると首を横に振った。
「ううん。大丈夫。…ギャリーが巻き込まれた聖杯戦争について改めて教えるね」
立ち上がったイヴ曰く、聖杯戦争はサーヴァントを召喚した七人のマスターと呼ばれる魔術師たちの殺し合いだということ。勝ち残ればどんな願いも叶うということ。そして、令呪という三画の絶対命令権がマスターの証であるということ。
「令呪って…これのこと?」
右手の甲に刻まれた「Ib」と描かれた三画の赤い文様を見せると頷くイヴ。…これが絶対命令権ねえ。なんでも遠くにいるサーヴァントを傍に呼び寄せたり、サーヴァントを強くしたりできるらしいけど…サーヴァントってイヴみたいな小さな子もいるのよね?…変なことに使おうとする輩もいるのかしら。
「もし私と逸れて危ない時に使って」
「ええ、わかったわ。それにしても私なんかが魔術師なんてね…」
「魔術回路があるだけみたいだけだから、間違っても戦おうとしないでね」
「…そんな危ない真似をするつもりは毛頭ないわよ。ところでなにしてるの?」
何やら取り出した色鉛筆で壁や床に色々書いているイヴに思わず訪ねてしまう。なんのつもりなのかしら?落書きというか微笑ましいとは言えないぐらい上手い絵だけど。本当にあのゲルテナなのね、タッチがそっくり。
「私はキャスターのサーヴァント。陣地作成ってスキルがあるの。ここを工房にして防御を固めてるところだよ」
「工房?」
「魔術師の……お城みたいな?」
「なるほどわからないことがわかったわ」
しかし絵が上手いからわかるけど書いているのは時計、かしらね。なんか変な時計だけど。時計の天使…?これはなんの…?するとイヴの様子が変わった。なにかに気付いたようにジーッと壁を見つめている。
「どうしたの、イヴ?」
「ギャリー、逃げて!」
そう言って私を庇うように立ち懐から取り出した赤い薔薇の花弁を一枚千切って時計の絵に投げるイヴ。
「お願い、時の番人!」
瞬間、世界が灰色に染まり、ゆっくりと壁を破壊しながらそれは現れる。角を生やした、半裸の大男。その手には血走った様にしか見えない巨大な斧が。しかしその動きもゆっくりで、その空間の中私を抱えたイヴは辛そうな表情で入り口から外に飛び出した。
「ウラララララララッ!コロスッ、コロスゥウウウウウウッ!」
「多分、バーサーカー…!ギャリー、離れてて!」
そして世界が色づき始めて突進して斧を振り下ろしてきた大男の一撃を、ポケットから取り出したパレットナイフで斬り弾くイヴ。そんな無茶な…!
「もう絶対に…ギャリーは死なせない!」
その目には私でもわかるほどの、決意がみなぎっていた。
イヴはキャスター()なので陣地作成が可能です。その能力の片鱗を発揮。次のお相手は大斧のバーサーカー。遠見の魔術で覗いていた謎の男女も。いったいどこのだれなんだー(棒読み)
次回も楽しみにしていただければ幸いです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。ここすき機能などで気に入った部分を教えていただけたら参考にします。