Fate/IdeateBliss‐Ib‐美術館聖杯戦争 作:放仮ご百物語
「くううっ…」
ガギン、と。鍔競り合っていたパレットナイフで大斧を上に弾き返すイヴ。とんでもない力だ。これがサーヴァントの力…?いや、今のは単純なパワーじゃない。相手の…バーサーカーと呼ばれた大斧の半裸男のパワーは明らかにイヴを上回っていた。見ればイヴの赤い眼が忙しなく動いている、あの眼でバーサーカーの動きを予測したと言うのか。
「コロスッ、コロスッ!コロスァアアアアアッ!」
「ギャリーは逃げて!」
両手に構えたパレットナイフと彫刻刀で次々と襲いくる大斧の攻撃を捌きながら、イヴがそう言ってくる。
「で、でも…」
「私は大丈夫だから!」
私は少し躊躇するも、イヴに怒鳴られて踵を返して逃げるしかなかった。情けない、大の大人があんな子に戦わせて逃げるしかないだなんて…!
ギャリーが逃げてくれたことに安堵し、バーサーカーに向き直る。【観察眼A】私のスキル。あの美術館で違和感に気付き答えを見つけ続けた眼の力。ゲルテナの美術的視座も加えることで、対象の一挙手一投足まで観察し、わずかな動きからどう動くか、どこに力が働くかを見抜くことができる。これでどうにかなっているけど、私の全盛期がよりにもよってこんな9歳の子供の頃だというのが足を引っ張ってる。せめてあと8年ぐらい大きければ…。
「コロス!コロス!」
「ぐうっ…」
あの子のものとも違う、真っ直ぐな殺意に怖気付きながらも手は止めない。止めたら殺される、ギャリーも殺される。そんなの嫌だ。絶対に嫌だ。あの子は無理でも、ギャリーだけは…!
「なにか、なにか……」
手を動かしながらも観察はやめない。なにか、この状況を打開する突破口がある筈だ。大斧をパレットナイフで斬り弾いてブロック塀が破壊され、あることを思いついて斬り弾かれたのを利用して私も彫刻刀でコンクリートのブロック塀を削って行く。敵の攻撃も利用して、ここで作品を作る。初めてだけどやるしかない。
「そこは駄目!こっち!」
「ウウアア…?」
見当違いなところに大斧を振り下ろそうとしたので彫刻刀で受け止め、無理やり左斜めに逸らす。石膏像と同じだ。思い出すのは遥か昔に美術館で見た、あの作品。下は細く、緩やかなラインを描いて、しかして痛々しく、花々の茎の如く。上部はディティール細かく、八重咲きに。あとは、色。だけど……こんなに塗っている暇がない。なにか、何か隙があれば……!
「一か八か…!」
パレットナイフで右足の腱を斬りつけてバーサーカーの体勢を崩し、肩にかけるように霊体化を解いた大きめのショルダーバッグからスケッチブックを取り出し、ページをめくって二枚の頁を破って扇の様に構える。お願い、力を貸して!
「“キャンバスの中の女たち”!」
投げつけた頁にあらかじめ描いていた「作品」。紙の端をむんずと掴むようにそれぞれ赤い袖と青い袖の手が飛び出して、引き摺り出る様にして“赤い服の女”と“青い服の女”が出てきて、上半身だけ紙から出ている異様な姿で二本腕で這って突進。バーサーカーの脚から上半身まで這い上がり、両腕に組み付いて離さない。混乱し、その場で大斧を振り回して暴れるバーサーカー。今がチャンスだ。
「茎は塗り終わった、後は赤……!」
緑色の絵の具と絵筆で豪胆に色を塗りつけ、次の赤色の絵の具を取り出したところで、赤い服の女と青い服の女が振り払われ、怒り心頭のバーサーカーが赤色の絵の具を弾き飛ばしてしまった。あれしかないのに…!?
「きゃっ!?」
胴体を大きく斬り裂かれて、吹き飛ぶ私の身体から鮮血が噴き出る。あ、不味い……いくらあれがあるからって、これは……。そう、諦めかけたその時だった。
「ああもう!女の子が傷ついてから動くだなんて、情けないったらありゃしないわ……!」
「うが?」
「ギャリー!?」
吹き飛んだブロック塀の一部を両手に持ったギャリーがいつの間にかバーサーカーの背後にいて、後頭部に勢いよくブロック塀を叩きつける。サーヴァントだからビクともしないが、バーサーカーの興味が私からギャリーに移った。ここしかない…!血に塗れた手を叩き付け、鮮血を塗りつける。
「イヴ…?」
「…ギャリーはほんと、私のためにいつもいつも、危ない真似をして…でもありがとう。おかげでできた、私の血で彩った渾身の一作。バラとあなたは一心同体。命の重さ、知るがいい!」
できあがったのは、巨大な一輪の赤い薔薇の彫像だった。まるで生きているかの様にそよそよと動いたそれは茨の棘の付いた茎から茨の蔦を伸ばしてバーサーカーを雁字搦めに拘束、締め上げて全身から血を噴き出させる。
「ウガァアアアアッ!?」
じたばたと暴れるも茨の蔦は締め付けるばかりで血が噴き出すだけ。そんなバーサーカーの首に向けて、私はパレットナイフを手にして跳躍する。
「まずは一人…!」
「駄目よイヴ!殺しちゃ駄目!」
「っ!?」
しかし制止の声に強制力を感じて体が止まる。これは、令呪…?「殺しちゃ駄目」って、そんなことに令呪を使ったの…!?
「ギャリー、なんて命令を……」
「逃げるわよ、イヴ。貴方も傷の手当てをしないと。こんな筋肉ダルマに付き合っている暇はないわ」
文句を言おうとするが、返り血を浴びながらも私を横抱きにして走り出すギャリーの顔に、何も言えなくなった。…ずるいよ、そんな泣きそうな顔。
イヴ・ゲルテナ
クラス:キャスター
真名:■■■・ゲルテナ
性別:女性
出典:Ib
地域:■■■
属性:中立・中庸・地
イメージカラー:赤
特技:観察、お絵描き
天敵:北斎、ゴッホ、炎を使うサーヴァント
イメージCV:茅野愛衣
ステータス:筋力E 耐久D 敏捷C 魔力B 幸運C 宝具EX
スキル
・道具作成B:キャスターのクラススキル。人心に強く働きかける魔力を帯びた絵画や彫像を作成する。
・陣地作成(絵画)A:キャスターのクラススキル。絵仕事に都合のよい陣地を作り上げる。
・観察眼A:謎に包まれた美術館で違和感に気付き答えを見つけ続けた眼の力。それにゲルテナの美術的視座を得たことで、対象の一挙手一投足まで観察し、わずかな動きからどう動くか、どこに力が働くかを見抜くことができる。非力をカバーするために必須な技術。
・専心美術C+:ある一つの目的のためにひたすら美術品を作り続けた生涯と、独自の美術的視座を持ったゲルテナの画才が融合したスキル。虚数魔術と似て非なる独自理論体型の技術。スケッチブックに速筆でゲルテナの作品を描いて実体化させ行使する。ただし描かれた部分しかスケッチブックから出すことはできず(「赤い服の女」を描くと上半身だけ出てきて這い回る)、また「マネキンの首」などの彫刻品は出しても数分で消滅してしまう。
・■■の■■■A:???
・いつまでも■■A:???
・■■EX:???
次回も楽しみにしていただければ幸いです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。ここすき機能などで気に入った部分を教えていただけたら参考にします。