バベル再興記~転生したら秘密結社の大首領になりました~   作:想いの力のその先へ

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戦力増強

 救護室で渚の状況を確認した千草たち。その後、彼女たちは一度千草の執務室へ移動していた。

 千草の執務室ということもあり、他の目を気にしなくてもよくなった二人は渚が目を覚ましたことに安堵と、今後のことを考えると不安を覚える意味で複雑なため息をついていた。

 

「……とりあえず、なぎささんが目覚めたのは良かったのだけど」

「そう、ね。すぐに戦線復帰、というのは難しいと考えた方が無難ね」

「……ええ、どうしたものかしら?」

 

 頬に手を当て悩ましげに顔を歪める千草。そのとなりで歩夢も難しい顔をしている。

 正直、渚が目を覚ました後、自暴自棄にならなかったことは素直に喜ばしい。

 しかし、今回の場合。あくまで渚の記憶が曖昧だったからこそだ。

 今後、想い人の両親を手に掛けたという記憶を思い出した場合。もしくは記憶の奥底にへばりついた敵を倒すことに対する忌避感が顕在化する可能性は否定できない。

 その時どうするべきか?

 そのことに頭を悩ませる二人。

 そんな時、二人のもとへ通信が入る。

 

『司令、今よろしいですか?』

「……ええ、良いけど? どうかしたの?」

『……その、レオーネさんからお話がある、と』

 

 通信から聞こえた困惑の声、それに千草もまた同調する。

 少なくとも今までレオーネの出入りを制限した覚えはないし、彼女からそんなかしこまった対応をされる覚えもないからだ。

 しかし、それでもレオーネがわざわざそんなことをしたということは、それなりの理由があるのは想像に難くない。ならば――。

 

「ともかく一度会いましょう、こちらに呼んでもらえる?」

 

 レオーネの話を聞くため、千草は通信越しに指示を出すのだった。

 

 

 

 

 

 

「ごめんね、千草さん。急に押し掛けちゃって」

 

 通信に指示を出して数分後、執務室に通されたレオーネは申し訳なさそうに顔を歪めて謝罪の言葉を口にする。

 その言葉に千草は問題ない、というように微笑むと今回のことに関して問いかける。

 

「そんなことないわ。それよりどうしたのレオーネちゃん? 急にそんな他人行儀になっちゃって」

「あはは……」

 

 千草の問いかけに誤魔化すように曖昧な表情で笑うレオーネ。

 しかし、すぐに真剣な表情になると本題を切り出してくる。

 

「……小耳に挟んだんだけど、なぎさちゃんが倒れたって本当? それに、かすみちゃんの件も」

 

 切り出された本題。レオーネの問いかけを聞いた千草と歩夢は息を呑む。

 霞の件はともかくとして、渚の件はバルドル内部まで話題として処理されていた筈。それなのにレオーネの耳に入っていることに驚いたのだ。

 そして、レオーネの耳に入っている、ということは――。

 

「……もしかして、あの方たちの耳にも?」

「……うん」

 

 千草の抽象的な物言いに同意するレオーネ。

 それを聞いて内心頭を抱える千草。

 あの方たち、即ち政府筋に今回の件、バルドルの保有戦力が壊滅したのが露見したことを悟ったのだ。

 もっとも、保有戦力が二人しかいないのがもともとおかしいともいえるのだが。

 それはともかく、今後のことを考えて頭が痛くなる千草。

 今回の件に対する責任もそうだし、それ以上に今後について本格的に検討する必要が出てきたのだから仕方ない。

 しかし、続くレオーネの言葉に彼女は驚くことになる。

 

「それで、ね。千草さん。あの人たちから伝言。しばらくの間、ボクがここに出向。それと折を見て特務小隊、あの試製パワードスーツをテストしてる小隊をバルドルの下に付けるつもりみたいだよ」

「……は?」

 

 その伝言に驚く千草。

 レオーネが一時的とはいえ、再びバルドルと共闘するのもそうだが、それ以上に特務小隊。つまり、かつてレッドルビーやブルーサファイアと模擬戦を行った鮭延率いる小隊がバルドル付けになるということにだ。

 いくらバルドルが自衛隊と同じく政府の直属組織とはいえ、別の指揮系統である以上、本来横紙破りとなりかねないことをするとは予想できなかった。

 だが、今回。それが行われると告げられたのだ。千草でなくとも驚くのは当然だった。

 そんな千草の驚きを察して、レオーネは付け加えるように説明する。

 

「さすがに今すぐ、という訳じゃないよ。あくまで今後の予定、でしかないし。それがいつ頃になるかまでは……」

 

 言外にまだ異動についての根回しが終わっていないことを告げるレオーネ。

 それでも彼女に言い方から、鮭延小隊がバルドルに異動するのは彼らの中で決定事項なのだということを悟る千草。

 

「……そう、了解した。と先方に伝えてくれるかしら」

「うん、わかったよ」

 

 驚きの中でもなんとか声をひねり出した千草はレオーネにそう伝え、レオーネもまたそれに同意するのだった。

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