バベル再興記~転生したら秘密結社の大首領になりました~   作:想いの力のその先へ

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大首領の罠

 自らが治療されていた部屋から脱走した霞、ブルーサファイアは()()の通路をひた走る。

 奈緒がここにいたことから、ここがバベルに関連する施設。直感的に、恐らく本拠地だろうと感じ取ったサファイア。

 そして、この通路も、景色も覚えている。

 ここは間違いなく、かつて自身が暮らしていたバベルの壊滅した本拠地。その跡地を修復したものであろうことを。

 それならば、話は簡単だ。かつての本拠地と同じ構造をしているのなら――。

 

「この先に、恐らく――」

 

 ――バベルの新しい大首領。アクジロー、いえ、盛周さまが……!

 

 それは確信に近い何かだった。

 先ほど奈緒が発した思わせぶりな言葉、それに裏付けるようなサファイアの知識。それらが大首領が、盛周が近くにいることを肯定する。

 ならば、問い詰めなければならない。なぜ、バベル大首領になったのか。今までの自身たちとの関係はお遊びだったのか。

 ……なぜ、今になって活動を再開したのか。

 

 彼に問い詰めたいことは山ほどある。そのためにも――。

 

「……見えたっ! あそこ――!」

 

 通路をひた走っていたサファイアの目に目的地が写る。もし、場所が変更されていなければあそこに盛周さまが――!

 

「……はぁぁぁぁぁぁぁぁ――――!」

 

 目的地に繋がる扉を渾身の力を以て蹴破るサファイア。

 その部屋の中には、粉砕された扉を見て驚きの表情を浮かべる盛周の姿があった。

 

 

 

 

 突然の乱暴な侵入者を驚きの目で迎える盛周。

 しかし、その正体がブルーサファイアであることを理解した彼はすぐさま落ち着きを取り戻す。

 

「……なるほど、博士がもうそろそろ目覚めると言っていたが、流石に早いな」

 

 彼の落ち着いた様子に、今度はサファイア。霞が信じられない様子で彼を見つめる。

 出来れば信じたくなかった事実。だが、それが無惨にも肯定されてしまったことに対する驚きだった。

 

「……池田さん、本当に――」

「なんだ、ブルーサファイア。あの時のように盛周さま、と呼んでくれないのか?」

 

 どこか皮肉げな盛周の物言いに鼻白むサファイア。それを象徴するように心臓の、リアクターの鼓動が激しく――。

 

「……くっ、あ、あなたは――」

 

 問い詰めようと声を荒げるサファイアだったが、なにかいつもと調子が違うことを自覚する。

 先ほどの盛周が発した物言いが不快だった――訳ではない。

 そんなことよりも、彼の顔を見ると自然と顔が紅潮し、先ほどよりも鼓動が激しく……!

 

 このまま盛周を見つめていたら、何か良くないことになりかねない。そう考えたサファイアは咄嗟に目を逸らす。

 そんな彼女の態度に違和感を覚える盛周。彼女の態度、それはまるで――。

 

「……ふむ?」

 

 彼女の態度に既視感を覚えた盛周。それを確かめるため、彼は敢えてブルーサファイア。霞に近づいていく。

 もっとも、サファイアは動転した自身の精神を落ち着かせるのに必死で、彼が近づいてきていることに気付いていなかった。

 

「……やれやれ、人と話す時に目を逸らすのは感心せんな」

 

 目を逸らしていたサファイアだったが、盛周がそう言ったとともに、顎に触れられた感触が。それに遅れる形で無理矢理向きを変えられて目の前には――。

 

「……っ!」

 

 無理矢理正面を向かされたサファイア。彼女の眼前には、本来であればいずれ護衛として、伴侶として側に侍るはずだった盛周の顔が目と鼻の先に。それこそ、あと少し近づけばそのまま唇が触れ合う位置にあるのを自覚する。

 そのことを自覚した瞬間、彼女の顔は瞬間沸騰したかのように真っ赤になり、あわあわと混乱している。

 

「ちょ……、盛周さま、ちかっ――」

「何を慌てている? お前は本来、いずれ俺のモノになっていたんだろう?」

「あ、ぅ……」

 

 盛周の囁くような声。その声がさらにサファイアの混乱に拍車を掛ける。

 そんな彼女に対して、盛周はさらに畳み掛けるように……。

 

「それになぜ、わざわざこんなところへ来た? 普通なら逃げる場面だろう? それとも――」

 

 ――そんなに俺が恋しかったのか?

 

 耳元で囁かれたその言葉に、いよいよサファイアの精神に限界が訪れる。

 

「~~~~~~!!」

 

 声にならない悲鳴を上げながら後退るサファイア。そんな彼女を見てくつくつ、と笑う盛周。

 そして彼は、彼女がここへ来た理由。知りたかったであろう事柄について話す。

 

「それじゃ改めて自己紹介といこうか? ……とはいえ、流石に感づいているようだが。霞、お前が思っていたように俺が、池田盛周こそが新たなる大首領、悪次郎その人だよ」

「な、なん――」

「なんで、か? その質問はナンセンスだな。お前は自分がブルーサファイア、ヒロインであることに疑問を覚えるのか? ……お前が世界に求められたヒロインであるように、俺もまた求められた。ただ、それだけだよ」

 

 盛周の抽象的な語りにサファイアは理解が追い付かないようで困惑の色を強める。

 そんな彼女に対して盛周は嗤いながら問い掛ける。

 

「それよりも、そんな悠長にしていて良いのか? ……そもそも、おかしいと思わなかったのか?」

「おか、しい……?」

 

 盛周の物言いに首をかしげるサファイア。

 そんな彼女に盛周は決定的な一言を告げる。

 

「仮にも大首領に、俺の部屋に来るのに、誰一人として出会わなかったことに、だよ」

「……っ!」

「ようやく気付いたようだな――」

 

 その言葉とともにサファイアの死角から見たことのない怪人が奇襲を仕掛ける。

 それに間一髪対応したサファイア。

 彼女は即座にブルーコメットを展開すると怪人の腕に装着された()()の斬撃を受け止めた。

 

 そのことに感心しながら盛周はサファイアに対して――。

 

「お前はここに誘い込まれたんだ。流石に迂闊だったな」

 

 と、告げるのだった。

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