バベル再興記~転生したら秘密結社の大首領になりました~   作:想いの力のその先へ

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強行突破

 ブルーサファイアを奇襲した怪人。その姿は基本形態は熊をベースとしつつも、頭部から背中にかけてサメの姿をかたどり、腕にもヒレが装着されている。といったなんとも不格好な姿であった。

 その怪人の名は――。

 

「ぐふふぅ、まさかまさか、大首領のへやにとつげきするなど不届き千万。この【シャークマー】さまが成敗してくれる!」

 

 ――熊とサメを掛け合わせたキメラ怪人、シャークマー。

 

 奈緒によって産み出された新生バベル産の怪人、そのうちの一体であった。

 

 

 

 シャークマーの奇襲を何とか防ぎきったサファイア。彼女は油断なくシャークマーを見据える。

 彼女にとって見覚えのない怪人。即ち、それはバベルの新しい怪人だということは明白だ。

 そんな怪人を相手に油断できるほど、今のサファイアに余裕はなかった。

 そしてそれ以上に問題として――。

 

 ――後ろから彼女を見つめる視線。

 

 盛周の存在が挙げられた。彼がどういった行動を取るのか、今でこそなにも行動をしていないが、少しでも隙を見せればどうなるか分からない現状、どうしてもある程度の注意を彼に向ける必要があった。

 そのことがサファイアの行動を多少なりとも束縛する結果となっていた。

 

 二人、否、三人の合間に漂う硬直した雰囲気。それを壊すように盛周の言葉がサファイアに投げ掛けられた。

 

「おいおい、ブルーサファイア。ここがどこだか忘れてないか? 今は目の前のシャークマーしかいないが、時間を掛ければそれだけこちらの増援が駆けつけてくるぞ?」

「……っ!」

 

 そう、ここはバベルの本拠地。他の怪人はもとより奈緒の姿があったように、サファイアは存在を知らないがバベル四天王もいるのだ。

 そんなところで時間を掛けたらどうなるか。その程度のことが分からないほど、サファイアも愚かではない。

 

 このまま挟まれた状態では進展がつかめない。ここは虎口であろうと進むしかない、ならば――!

 

「……はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 ――今は前に進むしかない!

 シャークマーを突破してこの場を離脱する。それがサファイアが選んだ答えだった。

 そして、それは正解だった。

 

「……ぬぅ?!」

 

 まさか、自身に向かって突撃してくると思わなかったシャークマーは、彼女の行動の前に少しとはいえ怯んでしまう。

 そして、それは決定的な隙となった。

 

「――せいっ!」

「……ぐぉっ!!」

 

 怯んだことでサファイアの攻撃、ブルーコメットによる刺突を回避できなかったシャークマーは胴体に直撃を受けた。

 そしてそのまま吹き飛び、部屋を壁を粉砕するシャークマー。

 部屋の壁を破砕した結果、もくもくと立ち上る煙を見たサファイアは違和感を覚える。

 今までのサファイアの攻撃力であれは、シャークマーを吹き飛ばすことは出来ても、流石に部屋の壁を粉砕するまでの威力は出なかった筈だ。

 しかし、現実としては吹き飛んだシャークマーを部屋の壁ごと外へ退場させている。

 

「まさか、これが……?」

 

 奈緒がパワードスーツをパワーアップさせた結果なのか。と、考えるサファイア。

 しかし、その考えは正確ではない。

 今回、奈緒が施したバージョンアップは主に防御方面。疑似PDCをはじめとするものが中心だ。その中に攻撃力向上のものはなかった。

 ならば、なぜサファイアの攻撃力はここまでの威力となったのか?

 それはパワードスーツではなくサファイアの、霞の体内に定着させたナノマシンの恩恵であった。

 そもそも、本来であれば今回のような攻撃を出来るだけのポテンシャルを、ブルーサファイアはもともと持ち合わせていた。

 しかし、度重なる戦闘と肉体をまともに整備できない環境にいた彼女は、いつしか自身の肉体にかかる負荷を軽減するため、無意識に力をセーブするようになっていた。

 もちろん、その状態でもヒロインとして活躍できるスペックを誇っていた彼女であるが、いつしかそれが自身が使える全力であると認識するようになっていた。

 

 それが今回、サファイアが勘違いする要因となっていた。

 それはともかく、前門の虎であるシャークマーを一時的にとはいえ無効化できたサファイアは後ろで自身を見つめていた盛周を見る。

 

「……」

「……くっ」

 

 サファイアのことを褪めた目で見つめている盛周。

 そんな彼を見たサファイア、霞は視線を逸らすと脱出するため部屋を飛び出す。

 それを見送った盛周は――。

 

「……さて、これからどうなるか」

 

 と、独りごちる。

 そんな彼に声が掛けられる。

 

「やぁやぁ、大首領。無事かな?」

 

 その声の主を見る盛周。そこにはいつの間にか部屋に訪れていた奈緒の姿があった。

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