バベル再興記~転生したら秘密結社の大首領になりました~   作:想いの力のその先へ

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殺す、ということ

 レオーネとオニキスが死闘を繰り広げている頃、レッドルビー、渚もまた苦戦を強いられていた。

 

「くっ……」

「どうした、どうした! それが全力か、レッドルビー!」

 

 レッドルビーにハサミを叩き付けるべく、振り下ろしながらのたまうロブラスター。

 ルビーは彼の攻撃を躱すために大きく飛び退く。

 外れたハサミは勢いよく地面に叩き付けられ、アスファルトを砕き陥没させる。

 その隙を突きルビーはロブラスターに拳を叩き込もうとするが――。

 

「……っ、なんで――」

 

 懐にも飛び込める、拳を振りかぶることも出来る。しかし、いざ叩き込もうとすると、どうしても力が抜けてしまう。

 なんで? どうして?

 自身の意味が分からない不調に困惑するルビー。

 それは彼女が自ら封印した記憶、そして優しすぎる性格が原因だった。

 

 以前、レオーネの謀略(イタズラ)によって盛周の、想い人の両親を手に掛けてしまったことを知った渚。

 その事自体は記憶の奥底に封印する、という手段で何とか精神の安定を図っていた、が。それでもその事を知った、という事実は消えず、彼女の中で無意識のトラウマとなってしまっていた。

 そして、怪人たちと戦う時、それが表面化しているのだ。

 

 なにせ、先代大首領と副首領。二人の怪人の正体が()()だったのだ。

 今、目の前で戦っている怪人もまた、かつては一人の人間として、何かを夢見て、誰かのために戦っているのかもしれない。

 そんな()()と戦い、倒すことが正しいのか。

 倒すとは、()()とはその人の一生を奪う行為。そんなことをする権利が己にあるのか。

 それ以上に、かつて盛周を守ることを誓い、多くの人を助けるため戦うと決めた己が、誰かの幸せを奪い、涙を流させることになるのが怖かった。

 

 もちろん、心では怪人は倒すべき敵であり、彼らを倒さなければ、多くの人が涙するのは分かっている。

 しかし、ふと頭によぎるのだ。

 もしかしたらあったかもしれない、怪人となる前の人が、大切な人と笑い合い、幸せに生きてきたであろう景色が。

 それを思ってしまえば、どうしても拳を振るうことを、敵の命を絶つ、ということを躊躇ってしまう。

 これは弱さ、なのかもしれない。しかし――。

 

「わたし、わたしは……!」

 

 本来、レッドルビー。渚は超能力を持っただけの女子高生でしかない。

 もし、バベルの活動がなければ、レッドルビーとして戦う必要がなければ、彼女は友人や想い人たちと学業に励み、放課後には部活に遊びに、と日常を謳歌していただろう。

 

 果たして何が正しくて、何が間違っているのか?

 それが分からない、でも――。

 

「ここで終わりだなぁ! レッドルビー!」

 

 ロブラスターのハサミの中に光が瞬く。彼の必殺武装、ロブラスターキャノンだ。それをレッドルビーに放とうとしている。

 もし、直撃を受ければいくらサイキックエナジーのバリアがあるといっても、彼女は耐えきることは出来ないだろう。

 そうすれば、彼女はもう悩む必要はなくなる。

 そう考えたレッドルビーであるが……。

 

「……死にたく、ない。わたしは、まだ――!」

 

 ……まだ想い人に、盛周に好きだと。異性として共に過ごしたいと伝えていない!

 それなのに、こんなところで終わるわけにはいかない!

 

「わたし、はぁ――!」

 

 無意識に自身の前方へサイキックエナジーの膜を張る。しかし、これはバリア。守るためのものではない。

 

「あ、あぁぁぁぁぁぁぁ――――!」

 

 死にたくない、その一心でレッドルビーは大きく拳を振り絞り、膜を貫くように放つ!

 それとともに膜を通してエネルギー波が放たれた。

 サイコバスターの収束モードだ。

 

 ロブラスターも負けじとロブラスターキャノンのチャージが完了し、発射する。

 レッドルビーとロブラスター、二人が放った光線が激突する!

 拮抗する二つの光線、しかしそれも一瞬だった。レッドルビーのサイコバスターがロブラスターキャノンを撃ち破り、ロブラスターのもとへ迫る!

 

「……な、なぁ――」

 

 己の必殺、ロブラスターキャノンが破られ驚くロブラスター。それが彼の最後の言葉であった。

 収束した光に呑み込まれたロブラスターは、その身、その身体が力の奔流を受け、崩壊していく。そして――。

 

 ――爆発。

 

 ロブラスターを撃破したレッドルビー。彼女は――。

 

「はぁ……、はぁ……。う、ぐ、ぁ――」

 

 ロブラスターを倒したことで、トラウマが反応して吐き気を催す。

 

「なんで、わたし……。こんな、ぁ――」

 

 その場に踞るレッドルビー。

 しばらく、ブルーサファイアが彼女のもとへたどり着くまで動けなくなるのだった。

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