バベル再興記~転生したら秘密結社の大首領になりました~ 作:想いの力のその先へ
その後、ブルーサファイアたち三人は無事、バルドル基地へと帰還できた。
そのことを喜び、安心していた千草と歩夢。
しかし、帰還したサファイア。霞の口から色々な報告を聞くこととなり、新たな悩みの種が出来てしまっていた。
そのことで頭を抱えていた千草。彼女は基地内にある私室でため息混じりに愚痴を吐く。
「はぁ……。可能性は考えていたけど。やっぱりなぎさちゃんは
「そちらも問題ですが……」
千草の愚痴に付け加えるように、彼女に部屋へ招待されていた歩夢もまた、憂鬱な表情で元気がない。
それも仕方ない。悩みの種は渚の分だけではなかったのだから。
「池田盛周くん、なぎささんの好きな人がバベル大首領、か……」
本当にやるせなさそうに呟く千草。
それがブルーサファイア、霞から伝えられた復活したバベル。その首魁の名前だった。
だが、そこで歩夢から疑問の声が上がる。
「しかし、それは本当なのでしょうか? ……いえ、かすみちゃんを疑うわけではないんですが……」
「ええ……、歩夢が言いたいことは分かるわ」
態とではないにしても、義理の娘である霞へ疑いを向けたことに慌てて弁解する歩夢。しかし、当の千草は彼女の言い分にも一理ある、と理解を示す。
その事に驚きをみせる歩夢。
そんな歩夢を見て、千草は苦笑しながら理由を話す。
「かすみさんの話では、彼は望まれたからなった。そう答えたと聞いたわ。……でも、それはどういった立ち位置で、なのかしら? 本当に自ら立ったのか。それとも旗頭として、御輿としてなのか? それで、大分変わってくると思うわ」
「そう、ですね……」
千草の言葉を聞いた歩夢もまた考え込む。彼女たちからすると盛周という人間はあくまで渚の幼馴染み兼想い人であり、彼という人となりを渚越しの、かなり片寄った目線でしか知らないのだ。
故に、彼女らからすれば池田盛周、という青年の情報は極端に、それこそ世間一般的な情報しかないため、判断材料が少なすぎた。
しかし、だからといって渚に確認するのは論外だ。ただでさえ、彼女自身は気付いていないが精神が不安定になっている状態なのだ。そんな状況で、さらに追い詰めるようなことが出来る筈がない。
にっちもさっちもいかない状況に、思わず嘆息したくなる千草。
ブルーサファイア、霞が無事帰還できたというのに素直に喜べない。それが一番千草を憂鬱にさせた。
「どうしたものかしらねぇ……」
途方にくれた顔をしながら頬に手を当てる千草。
歩夢もまた、どうしたものか。と悩ましげな表情をみせる。
二人がうんうん、と悩んでいるところに部屋の扉がこんこん、とノックされる。
今、特に仕事関係の用事は入れてなかった筈だけど……。
そう考えていた千草の耳に、ノックした主の声が聞こえてくる。
「ねぇ、千草さん、水瀬さん。ちょっと、良いかな?」
「え、レオーネちゃん? ……ええ、良いわよ」
どうやら、ドアの外側にいたのはレオーネだったようで、声色からして二人に相談があるように聞こえた。
二人とも、考えに煮詰まっていたこともあり、気分転換という訳ではないが、彼女の話を聞くため入室を許可する。
千草の返事を聞いたレオーネは、がちゃり。とドアを開けて入ってくる。
その彼女の身体には、治療のため幾箇所か包帯が巻かれており、少々痛々しく見えた。
そんな彼女を心配するように千草は声をかける。
「レオーネちゃん、怪我の方は大丈夫?」
「うん、ボクは大丈夫。他の二人もそこまで傷は負ってなかったから心配しなくても良いと思うよ」
千草の質問に、自身だけではなく渚と霞のことについても答えるレオーネ。
しかし千草からすると、一番重症だったレオーネの心配をしていたのとともに、二人の怪我が軽いのは把握していたため、レオーネの返答に苦笑がこぼれる。
「レオーネちゃん、あんまり無理しちゃだめよ?」
「はぁい、分かってるって」
そう言って二人はくすくす笑う。千草の顔から先ほどまでの悩ましい表情が抜けていることからも、多少は気分転換にはなったようだ。
だが、気分転換はあくまで千草側の話。
レオーネも千草たちに何らかの用事があったからこそこの部屋に訪れている。
その用事について問いかけるため、千草は改めてレオーネに話しかける。
「それでレオーネちゃん? 何があったの?」
「……うん、実は――」
そう言って彼女は話し始める。その話を聞いて千草と歩夢は驚愕することになった。
その話とは、ブルーサファイア。霞からもたらされたバベルが持つ技術力の一端。レッドルビー、渚の超能力。そのほんの一部とはいえ再現した、というものであった。
それはつまり――。
――可能性であるが、今後敵側にレッドルビーのクローンが現れてもおかしくない、ということでもあったのだから……。