バベル再興記~転生したら秘密結社の大首領になりました~   作:想いの力のその先へ

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護衛……?

 盛周と霞が密会している教室内。その室内には、霞が気付いていないだけで彼女たち以外の()()()がいた。

 カメレオンと西洋竜、そして人を掛け合わせたような怪物。バベルの頭脳である奈緒に産み出された怪人、カメンリザードだ。

 彼は以前サモバットが使用していた特殊兵装。光学迷彩を装備していた。と、いうよりも本来、彼専用の装備として開発されていた、というのが正確だ。

 そして、正式に配備する前にサモバットで実地試験を行い、その後正式に、というのが流れだ。

 その結果産み出されたカメンリザードだが、本人は……。

 

(なぜ、俺はこんなことを……?)

 

 と、鬱屈した雰囲気で黄昏ていた。

 彼がこんなことになってしまっている理由、それは――。

 

 

 

 

 

 

 盛周のもとへ渚が訪れた翌日、バベル秘密基地にて。

 彼は四天王のうち二人、草壁楓と青木奈緒を私室へ呼び出していた。

 

「大首領。草壁楓、お呼びと聞き参上いたしました」

「奈緒さんまで呼ぶなんて、いったい何があったんだい?」

 

 楓は盛周の直接召集に緊張した面持ちで、奈緒はいつもの会議室ではなく、彼の私室に呼び出されたことに疑問を抱いていた。

 

「二人とも、良く来てくれた。ちょっと確認したいことがあってな」

「はっ――!」

「まず博士。新しい怪人、確かカメンリザードだったか? そいつはいつ頃完成する?」

「えっ……? うぅん、そうだねぇ……」

 

 いつもは怪人開発の進捗について、そこまで拘らない盛周がわざわざ名指しで聞いてきたことを訝しげに思いながら奈緒は答える。

 

「後は最終調整だけだから、やろうと思えば明日にも。……あと、ついでに報告しとくとエレキクラーゲンは完成済み。起動待ちの状態だよ」

「……なるほど」

 

 奈緒の答えを聞いた盛周は、しばし思案のため黙り込む。そして、考えがまとまったのか、今度は楓に視線を送る。

 

「……楓、襲撃計画の方はどうか?」

「はっ、そちらは抜かりなく。既存の怪人、新しく完成予定の怪人含め立案済みです」

「そうか、仕事が速いな」

「……いえ」

 

 盛周に誉められた楓は謙遜の言葉をもらすものの、その顔を嬉しさからほんのりと紅潮していた。

 嬉しそうな楓に、盛周は内心申し訳なく思いながら語りかける。

 

「すまないが楓、カメンリザードが完成次第、一度こちらで借り受けたい」

「……は? はぁ、借り受けたい、ですか……?」

 

 盛周が発した突然の言葉に困惑する楓。借り受けるもなにも、バベルはもともと盛周、大首領があってこそ。と考えている楓からすれば、わざわざそんなことをいう必要を感じない。それこそ、楓に対して命令を出せばそれで済む話だ。

 なのに、なぜ敢えて盛周は断りを入れるのか?

 疑問を抱く楓だが、その答えは盛周の口からもたらされる。

 

「近々あいつと、ブルーサファイアと話がしたくてな」

「……なっ!」

「だが、流石にサシで会うのは楓、お前としては認められないだろう?」

「当然ですっ!」

 

 半ば絶叫に近い声を上げる楓。当然だ、まさか、いくら表では友人関係を築いてるとはいえ、敵対しているヒロイン。しかも、正体がバレている相手に一人で会うなど正気の沙汰ではない。

 と、いうより仮にカメンリザードが完成していたとしても認められないのが楓の本音だ。いくらなんでも危険すぎる。

 しかし、そう言ったところでこれは()()()()()()。なぜなら、これはあくまで楓の顔を立て、断りを入れているだけだと理解したから。

 楓はじくじく、と痛み出した胃を押さえながら盛周を見る。

 そこにはやはり、既に決定事項だ。とばかりに真剣な顔を見せている盛周。それを見て、楓は助けを求めるように奈緒を見るが……。

 

「あっはっはっ……。いいんじゃない? 大首領がしたい、と言ってるんだから。それとも、奈緒さん製作の怪人たち。彼らの力が信じられないのかな、楓くんは?」

 

 ――そういう問題じゃないです!

 

 思わず叫びそうになって我慢する楓。

 もちろん、奈緒が今まで製作した作品たちの性能は楓もよく知っている。それに、場合によれば自身も教師という立場を利用して近くに待機しておくことも出来る。

 特に、楓は未だ霞に、ブルーサファイアに正体はバレていない。

 これはバベル壊滅前、彼女はあくまで上級戦闘員でしかなかったことが功を奏したといって良い。

 だから、万が一の場合。自身が素知らぬ顔で二人を注意するていで乱入すればなんとかなるだろう。

 だが、それはあくまで楓が間に合えば、の話。

 万が一にも間に合いませんでした、では済まされないのだ。

 なので、楓からすれば盛周の考えは論外なのだが……。

 

「う、ぐぅ……」

 

 催してきた吐き気で口を抑える楓。

 たとえ盛周を、大首領を諌める言葉を吐いたところで当の本人は、まさしく聞くだけで済ませるであろうことは想像に固くない。

 内心、もういやぁ……。と、泣きべそをかきながら、盛周の提案を了承することしか楓は出来なかった。

 そんな彼女の心情を知ってか知らずか、盛周は二人に退室を促すのだった。

 

 

 

 

 その後、カメンリザードは起動直後に直属の上司である楓から、くれぐれも、くれぐれもと念押しされながら盛周護衛の任を与えられた。

 与えられたカメンリザードからすれば、起動直後からこれほどの大任を任せられるとは! と、感動にむせび泣いていたのだが……。

 

 ……今目の前で展開されているのは、傍目に見れば男女がいちゃついている姿。

 所々正体がバレた、などの不穏な言葉が聞こえるが、それでも危険な状況とは縁が遠そうな雰囲気。

 せっかくの大任だった筈なのに、完全な肩透かしを食らったカメンリザードからすれば、やさぐれるのも無理からぬ話だ。

 ……命令である以上、きちんとこなしはする。が、最初の頃に比べると、気が抜けてしまうのはどうしようもないことだった。

 

 そんな気が抜けたカメンリザードの聴覚に、一人の足音が聞こえてくる。誰か早歩きでこちらに迫ってきているようだ。

 そして、そう時を待たず教室の扉が開く。

 

「こら、二人とも何をやっている。以前、生徒は速く下校するように、と伝えただろう」

 

 入ってきたのは二人の担任教師であり、カメンリザードの上司。草壁楓であった。

 楓に見つかった二人。特に霞はしくじった、とでも言いたげな顔をしている。

 彼女からすれば、担任教師の楓はあくまで一般人であり、下手をするとバベルとバルドル。二勢力の抗争に巻き込まれる、と考えてしまったからだ。

 実際のところは巻き込まれるどころか、完全な当事者であり、むしろ己の心配をするべき状況なのだが……。

 そんなことは知らない霞は慌てた様子で謝り倒す。

 

「す、すみません先生。もり――池田さんと、ちょっとお喋りに夢中になって……」

「ほう……」

 

 楓は霞の弁明を聞くと、盛周へ視線を向ける……振りをする。

 実際のところ、楓は今回、二人が話していること自体は承知していたため、最低限話が終わったのかを目配せで確認していた。

 その確認に盛周は小さく頷くことで答える。

 それを見た楓は、ふっ、と表情を和らげると二人に語りかける。

 

「そうか……。まぁ、話をするな。とは言わないが、切りの良いところで帰るように。危険なことに変わりないのだからな」

「はい、すみませんでした……」

「わかりました」

 

 楓の優しい声掛けに、霞は心底申し訳なさそうに、そして盛周は霞に悟られないように返事を返すのだった。

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