バベル再興記~転生したら秘密結社の大首領になりました~   作:想いの力のその先へ

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炎の魔法少女

 魔法少女オーラムリーフ、と名乗った少女が化け物相手に突撃する姿を見たヒロイン二人は困惑する。

 

「「魔法、少女……?」」

 

 フリフリした可愛らしい格好に、年頃は自分達より二つほど下に見え、肩にはマスコットであろうアライグマのぬいぐるみに似たなにか。

 そして、彼女が何もないところから炎を出していることなどから、なるほど、確かに魔法少女に見える。しかし……。

 その少女が出している炎。それが拳に宿り、化け物相手に殴り掛かっていることが、全て台無しにしていた。

 二人が知る魔法少女は、可愛らしいステッキを手に、普通の人間にはあり得ない超常現象を起こす架空の存在だ。

 ……いや、確かに普通の人間には不可能な発火現象を起こし、マスコット枠もいる。

 でも、何か違う……。それが、二人の偽らざる気持ちだった。

 

 そんな二人の気持ちをよそに、オーラムリーフは化け物、仮称アライグマ曰く魔物へ殴り掛かる。

 

「――ファイア、ブロウ!」

 

 既に炎が拳に宿っている以上、特に意味はないような気もするが、恐らく様式美というやつだろう。オーラムリーフは必殺技――あるいは魔法名――を叫ぶ。

 そして、彼女の拳は魔物の胸に直撃!

 

「グ、グゥゥゥゥ――――!!」

 

 恐らく魔物としては、たかが小娘の一撃。と油断していたのかもしれない。しかし、その威力はたかが小娘、で済むものではなかった。

 なにせ、その小娘が打ち込んだ拳の衝撃で大気が震え、打ち込まれた肉が抉れていた。しかも、抉れた内側を炎で焼かれているのだ。まさしく地獄の苦しみだろう。

 油断している相手とはいえ有効だを与えたことでオーラムリーフはガッツポーズする。

 

「よしっ……!」

「よし、じゃないんだもん!」

「えぇ~~……? なんだよ、アグ?」

 

 マスコットのアライグマ、アグからのダメ出しに不満そうな顔をするオーラムリーフ。

 しかし、アグはそんな彼女に油断するな、と告げる。

 

「まだ魔物を仕留めきれてないんだもん! 傷が塞がり始めてる!」

 

 彼――彼女かもしれないが――の言葉通り、オーガに似た魔物がオーラムリーフから受けた胸の傷。それがみるみる塞がっていっている。しかも、彼女の拳をそのまま()()()()形で、だ。

 そのことに焦るオーラムリーフ。

 

「く、この……!」

 

 慌てて引き抜こうとするが、引き抜けない。完全に固定されてしまっている!

 そして、引き抜こうとすることに必死でオーラムリーフが躍起になっていたことで気付いていないが、魔物は焦る彼女の様子を見てにやり、と笑っている。

 確かに、オーラムリーフの一撃は強烈だった。しかし、動きを封じてしまえば、見た目3メートルはありそうな魔物の体躯からすると半分程度しかない華奢な肉体だ。それを叩き潰すことなど筋骨粒々の魔物からすれば造作もないことだ。

 ……ただし、叩き潰すことが出来れば、の話だが。

 

「――はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

「させないっ――!」

 

 そう、この場にいるのはオーラムリーフだけではない。バルドルのヒロイン、レッドルビーとブルーサファイアのコンビもまたいるのだ。

 そして、彼女らは誰かがピンチである時にそのまま静観するほど薄情ではない。

 レッドルビーはサイキックエナジーを増幅させ、手刀に込め。そしてブルーサファイアはブルーコメットを双剣に変え斬撃を放つ!

 その一撃は狙い済ましたようにオーラムリーフの拳を拘束する肉を切り刻む。

 

「グギャアぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――!」

 

 その一撃に堪らず悲鳴を上げる魔物。そして、肉がズタズタにされたことで拘束が緩み……。

 

「……っ、抜けた! よっしゃあ、これで大丈夫

! ――よくも、やってくれたなぁ!」

 

 魔物からの拘束を逃れたオーラムリーフは一足飛びで魔物との間合いから離れると冷静さを取り戻す。そして彼女は再び拳に炎を宿らせる。しかし、彼女の行動はそれで終わりではなかった。

 

「は、ぁぁぁぁぁ――!!」

 

 拳に宿っていた炎の形が伸び、少しづつ変わっていく。

 それは不格好ながらも剣の、もっと言えばロングソードの形をしていた。

 

「――ファイア、ブレイド!」

 

 彼女、オーラムリーフは顕現させた炎の剣を振り払う。剣の軌跡を追うように火の粉が舞う。そのまま、オーラムリーフは剣を構えると……。

 

「――はっ!」

 

 足に力を込め地面を踏みしめ、その力を爆発させるように跳躍!

 一気に魔物との間合いを詰める。

 そして彼女は炎の剣を大上段振り上げ――。

 

「うおりゃああああああ――――!!」

 

 ――魔物に向けて振り下ろす。

 

 魔物としても、治癒したとはいえ先ほどの拳で大打撃を被ったのだ。その記憶が冷めやらぬ時点でさらに殺傷力の高い剣による斬撃。

 そんなものに当たるわけにはいかない。だが……。

 

「…………!」

 

 身体が、動かない――。

 

 いくら目の前の魔物が体躯に相応しい体力を持っていたとしても、何度も致命傷となりうる傷を癒していれば、流石に体力だって消耗する。

 そして、それが最悪の。オーラムリーフからすると最高のタイミングで表面化した。

 膝から崩れ落ちる魔物に、オーラムリーフの刃が迫る。

 魔物はせめてもの抵抗とばかりに腕を盾に、犠牲として斬撃を防ごうとする。しかし――。

 

「斬ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん――――!!」

「――――?!?!」

 

 オーラムリーフの刃はあくまで炎。一般的な剣のように切り裂くのではなく、焼き切るものだ。

 想像してみてほしい。仮に腕で炎を防ごうとして、本当に防ぐことが出来るかを。

 

 ……出来る訳がない。

 

 魔物が今、行っている行動は、自分なら大丈夫だと炎の中へ腕を差し込もうとしている愚行に等しい。

 そんなことをしたところで、大火傷をするのが関の山。自身の治癒すら満足に行えなくなった魔物では完全な自殺行為だ。

 

 ……そして、そんな愚行の結果をなにで支払うか。魔物自身の命、だ。

 

 攻撃を防ぐため掲げた腕は、灼熱の剣でじりじり、と焼かれるとともに、少しづつ炎が中に食い込んでいく。

 力を込め、筋肉を収縮させたところでそもそも固体ではない炎を止められるわけがなかった。

 そのままオーラムリーフが振り下ろした刃は、魔物の腕を焼き切ると、次こそ胴体を袈裟懸けに斬る。

 

「――――!!」

 

 ごとり、と魔物の腕が地面に落ちるとともに絶叫が響き渡り、当たり一面に肉と、鉄の焼ける臭いが漂う。

 魔物の肉だけではなく、傷口を焼くことで魔物の血をも焼いているのだ。

 唯一の、魔物にとって救いとなっていない救いでいえば、傷口が焼かれることで出血が起きない。失血死しないことだろう。もっとも、それは魔物にとって地獄がより長く続くことを意味する訳だが……。

 

 魔物は地獄の苦しみを味わっていたが、それを理由にオーラムリーフは手加減するつもりはなかった。

 彼女は袈裟斬りを振り抜くと、続けざまに今度はくるりと回って遠心力をのせた胴斬りを叩き込む。

 もはや死に体の魔物にその攻撃を防ぐ手だてはなく――。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! 爆、砕――――!」

 

 最後にはオーラムリーフが持つ、魔法を行使するための力。魔法力とでもいうべきか。その力を注ぎ込まれ、彼女の言葉通り爆散する。

 

「よっしゃ、アタシの勝ち!」

 

 剣を天高く掲げ、息を切らせながら勝ち誇るオーラムリーフ。

 そんな彼女を、二人のヒロイン。レッドルビーとブルーサファイアは複雑そうな面持ちで見つめるのだった。

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