バベル再興記~転生したら秘密結社の大首領になりました~   作:想いの力のその先へ

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第二章 異世界、イマジン
予期せぬ出会い


 消毒液の匂いと清潔感漂う部屋の中で、一人の少女がベッドに座っていた。

 彼女の名前は東雲秋葉、またの名を魔法少女オーラムリーフ。

 彼女は約一週間前に起きたバベル怪人による襲撃で負傷し、今はここ。バルドルの援助をしている企業、シナル・コーポレーションが運営している病院に入院していた。

 

「こんなところで、本当に大丈夫なのかよ……」

 

 外の景色を見ながら黄昏ている秋葉。本当なら彼女は今すぐにでも退院し、親友である西野春菜を探しに行きたかった。

 だが、それを行うには彼女の怪我は深刻で――。

 

 主なところだけでも、全身の骨にヒビが入り、筋肉も少し硬直を起こしている。

 これだと何が問題なのか分からないかもしれないが、簡単に言うと体を動かすたび、全身に痛みが走っている、ということだ。

 事実、彼女の表情にも余裕はなく、痛みにしろ、焦りにしろ我慢しているのが見て取れた。

 

「――くそっ!」

 

 苛立たしげに吐き捨てる秋葉。

 まともに動かない身体も、親友を見つけることが出来ない焦りも彼女を精神的に追い詰めるには十分だった。

 

「あ、ぐぅ……」

 

 苛立ちを吐き捨てた時、微かに身体が動いたことでまたもや痛みが走り呻く秋葉。

 彼女の心中にあるのは、こんな痛みで動けなくなる自身に対する情けなさと、何よりこの有り様で親友を、春菜を助けられるのか、という不安だった。

 

「やれやれ、あまり無理をするべきではないよ?」

 

 突如として秋葉の耳に聞こえてきた声。

 驚き、声が聞こえてきた方に視線を向ける秋葉。

 そこにはいつ部屋に入ったのか、水色のショートヘアーに白衣をまとった女性。

 しかも、秋葉からすれば彼女に見覚えがなかった。

 少なくとも、入院した際に会った医師ではないし、それに目の前の彼女自身、医師という雰囲気がない。むしろ、研究者。科学者の類いだと感じられた。

 

「あの、貴女は……」

 

 突然現れた不審者すぎる女性を警戒しながら問いかける秋葉。

 一方、その女性は何が楽しいのか、薄ら笑いを浮かべながら彼女の質問に答える。

 

「おや、私かい? 私は()()()()。奈緒さん、とでも呼んでくれたまえよ」

 

 東雲秋葉は知らぬことだが、バベル四天王の一人。青木奈緒は、そう彼女に自己紹介するのだった。

 

 

 

 

 

 

 入院した秋葉のお見舞いするため、二人の少女が病室に向かって歩いていた。

 

「秋葉さん、無事だと良いんですが……」

「もう、なに言ってるの、かすみ。病院で滅多なこと起きる訳ないじゃない」

 

 秋葉の心配をしている霞に、渚は苦笑を浮かべている。

 いくらシナル・コーポレーションとバベル、繋がりがありそうだと言っても、少なくとも今彼女たちが歩いている病院に悪い評判など立っていない。

 それこそ、入院患者が行方不明になったやら、ここで怪人が生み出されている、などという噂があれば話は別だろうが……。

 それに、渚は幼馴染みの盛周を信頼している。そんな彼が手配した病院について心配していなかった。

 

「……あれ、話し声が聞こえる?」

 

 軽い雑談をしながら秋葉がいる病室に近づいた二人。その病室内から話し声が聞こえてきた。どうやら、病室の扉が僅かに開いていたようだ。

 

「今日、わたしたち以外に秋葉ちゃんのところにお見舞いに行く話ってあったっけ?」

「いえ、なかった筈ですけど……。でも、この声……?」

 

 今日は自分たち以外にお見舞いの予定はなかった筈、と首をかしげる渚。

 霞もまた覚えがなかったが、それ以上に病室から聞こえてくる声に聞き覚えがあるように感じられて、眉間にシワを寄せている。

 

「どうしたの、かすみ? こわい顔して」

「いえ、なんでも――。とにかく、中に入りましょう」

 

 緊張した面持ちで扉に手を掛け、ごくり、と唾をのみながら開け放つ霞。

 そんな彼女の視線の先。そこには目的の人物である秋葉の他に、水色のショートヘアーの人物が――。

 

「なるほど、なるほど。ほかに――」

「……あ、先輩方」

「……ん?」

 

 声の質から女性と話していた秋葉は、病室の出入り口に立つ二人を見て声をあげる。

 彼女の反応に、件の人物も見舞い客が来たのか、と振り返り――。

 

「――おやおや、見舞い客と思えば、まさか君たちだったのかい?」

「……なぜ、貴女がここに」

 

 振り返った人物、バベル四天王の一人。青木奈緒を見て霞は驚き、絶句する。

 そんな彼女に、渚は不思議そうに声をかける。

 

「ねぇ、かすみ。お知り合い?」

「あぁ、そういえば君は奈緒さんのこと知らないんだったねぇ」

 

 霞に問いかけたにも関わらず、奈緒から声をかけられると思わなかった渚は、どこか困惑した顔になる。

 

「……えっと、貴女は――」

「君には私の娘。かすみくんが世話になっているようだし、自己紹介しておこうか」

「……娘? かすみが?」

 

 奈緒の言葉を聞いて不思議そうな顔をする渚。当然だ、霞は人と同じ姿をしているもののガイノイド。生物学的には生き物ではない。

 奈緒はこほん、と咳払いを一つすると彼女の疑問に答える意味でも自己紹介する。

 

「私の名は青木奈緒。その娘の生体部品は、奈緒さんの遺伝子情報を使用しているからね。奈緒さんの娘と言っても過言ではない、と思うよ」

「……遺伝子情報?」

「それとも、君にはこう言った方が分かりやすいかな。奈緒さんはその娘の制作者の一人で、()()()()()()()()()だと」

 

 にやにやしながら情報を開示する奈緒。それを聞いて渚と秋葉に緊張が走る。

 秋葉からすると、自らが今ここにいる原因を作った組織の重鎮という意味で。渚からすればまさかそれほどの大物が護衛も付けず、単身でここにいるとは思わずに。

 そんな二人の驚きを、奈緒は面白そうに見つめていた。

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