バベル再興記~転生したら秘密結社の大首領になりました~   作:想いの力のその先へ

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バルドルへの疑念

 霞がこぼした言葉を聞き、渚はぎょっとした表情を見せる。

 

「かすみ、それ本当にあり得る。と、思ってるの?」

「……いえ、まだ確証を持てないのが本音です。しかし……」

 

 渚の問いに自信がないように目を背ける。だが、それでもなにか懸念があるのだろう。ふたたび渚を見つめると話し出す。

 

「以前、南雲司令――お義母さまに聞いたことがあります。バルドルの前身となる組織が対バベルの組織として再編されるとき、当時地位が高いわけでもなかったお義母さまが何故か司令官に抜擢された、と……」

「……なにそれ?」

 

 その話を聞いて不可解そうな顔になる渚。普通ならそうなるにしても、ある程度人事は継承。最低でもある程度地位のある人間が司令官になる筈だ。それなのに、実際は千草が司令官となってしまっている。しかも――。

 

「それだけではなく、その組織に所属していた人間で残っているのは水瀬さんだけだと……」

「………………は?」

 

 あまりのあり得なさに目が点になる渚。それはもはや組織の再編ではなく、新たに一から作り出したというのが正しいのではないだろうか?

 

「…………えっと、千草さんって実はどこかの由緒ある家系だったりする?」

「そこまでは……。お義母さまも家の話はあまりされたがらないので」

「そう、なんだ……」

 

 二人の間に痛い沈黙が落ちる。身近だと思っていた人のことを、実はよく知らなかったというのを否応なく自覚させられてしまったからだ。

 

「そ、それよりも! その、前の組織? のお偉方はどこいったのよ。いくらなんでもあり得ないでしょ」

 

 沈黙を破るため、そして話を逸らすため疑問を呈する渚。しかし、その疑問に対する返答でふたたび絶句することになる。

 

「そこも詳しくは……。いちおう箝口令を敷かれた。ということらしいですが……」

「らしい……? どういうこと?」

「ええ……。実は、気になって私でも少し調べてみたのですが、その……」

「どうしたの、そんなにすごいことでもあったの?」

「別の組織に移動した、というところまでは調べがついたのですが、その後の足取りが……」

「ちょっと待ってよ、それって――」

「ええ、最悪の場合、()()()に口を封じたという可能性も……」

「……………………ウソでしょ」

 

 霞の予想を聞いた渚は愕然としている。つまり、言い換えればそれほどの大事となるなにかがバルドル成立の要因となっている、ということとなり――。

 

「だから、かすみは怪しいと思ってる?」

「ええ、あまりに不自然すぎます。お義母さまのことも、バルドル設立の経緯も」

「確かに、そう考えると……」

 

 霞の疑念を聞き考え込む渚。確かにそう考えるとおかしい点が多々ある。そもそも、バルドルが政府直属の組織、という点でもそうだ。

 国防という観点でいえば、本来なら自衛隊と同じ防衛省の管轄でおかしくない。なのに、実際は防衛省ではなく政府直轄。しかも、官房長官どころか、内閣総理大臣へのホットライン付き、だ。

 そのくせ戦力は外部――ルビーやサファイア自身もそうだし、彼女らが現れる前はレオーネだけ――しかいなかった。

 それを考えると組織としても、なにより本当にバベルと事を構えるつもりがあったのか分からないほどなぐだぐだぶりだ。

 

「……もしかして、バベルと政府。裏で繋がってる?」

「そして、それを隠すため。一種のプロレスを行うためにバルドル、という組織ができた。という考えもできます」

 

 二人はその可能性を否定することができなかった。

 もっとも、二人の懸念はある意味正解で、ある意味外れだ。

 確かにバベルと政府は繋がっている。だが、それは新生バベル。レオーネが仲立ちした後の話であり先代のときはきちんと、というと語弊があるが敵対していた。……まぁ、バベルも元々政府によって運営されていた組織であり、先代が離反したゆえに敵対した、という事実を考えればある意味大当たりではある。

 問題はそれを証明できる人間がほぼいない――できるのはバベル大幹部の奈緒と朱音だけ――ということになるだろうか?

 

 しかし、ここまで疑わしいと、渚や霞もこのまま組織にしたがって良いのか、と考えてしまう。

 もっとも、だからといっていままでの千草たちの言動におかしいところはなかったわけで……。

 

「あぁ、もう。わかんないなぁ……」

 

 髪をくしゃり、と掴みながら悩む渚。霞もまた同じように悩んでいる。

 そんなとき、部屋に備え付けられていた通資金に反応が――。

 

「なぎさちゃん、ちょっと良いかしら」

「……千草さん?」

「お義母さま?」

「あら、霞さんもいたのね。ちょうど良かったわ」

 

 突然、千草からの通信に困惑する二人。しかも、バルドルについて考えていたことから渚は、最悪疑っているのがバレたのか、と冷や汗を流す。

 

「ちょっと会わせたい人たちがいるから司令部まで来てもらえるかしら?」

「……会わせたい人? わかりました、二人で行きますね」

「ええ、待ってるわね」

 

 そのまま千草の通信は途絶える。そのことで疑われたわけではない、と理解した二人は安堵する。

 

「でも、会わせたい人? だれなんだろ……?」

「まぁ、行けばわかるでしょう」

「そうだね」

 

 そのまま二人は千草の要請どおり部屋を後にして司令部へと向かうのだった。

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