バベル再興記~転生したら秘密結社の大首領になりました~   作:想いの力のその先へ

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フロンティアへの懸念

 千草に呼び出され司令部に顔を出した二人。そこで二人はある意味よく知っている、そしてここで見る筈のない顔を見て驚愕していた。

 

「よくきてくれたわね、二人とも」

「どうも、お久しぶりです」

 

 口を開いた男性を見て、なんとか返答しようとするものの声がでない渚は、口をパクパク動かすだけの間抜けな姿をさらしてしまう。

 そういった意味では相棒の霞もそうだったのだが、彼女はいち早く精神を再建させる。

 

「さ、鮭延一尉。なぜここに……!」

 

 しかし、まだ完全に落ち着いた訳でなかったようで、思わず上ずった声をあげてしまう。

 そんな彼女を見た当の鮭延は――。

 

「おや……? 聞いていらっしゃらないので? わたしたち特務小隊が、この度バルドルへ出向になったのですよ」

「…………は?」

「……どうやら、本当に聞いていないご様子ですね」

 

 鮭延の説明を聞いて呆けた声をあげた渚。二人の様子に本当に聞いていないことを確信した鮭延は千草を見る。

 鮭延の視線が突き刺さった千草は冷や汗を流して顔をそらすと、言い訳じみた口調で話す。

 

「だって、流石にここまで急に。しかも、トントン拍子で話が纏まるとは思っても見なかったんですもの」

「いえ、それは……。しかし――」

 

 なおもなにかを言おうとする鮭延であったが、その言葉をため息で流す。

 鮭延からの追求がなかったことに安堵する千草は改めて渚と霞、二人へ話しかけた。

 

「ともかく、そういうわけで。今回、鮭延さんたちメンバーが私たちに協力してくれることとなりました」

「は、はぁ……」

 

 いまでもいまいち実感がないのか、渚は間抜けな声をあげている。その間にも霞は少し落ち着いたようで。

 

「それで南雲司令。鮭延一尉たち小隊が出向とのことですが、それは全員、ということでよろしいのですか?」

「ええ、そうよ。ありがたいことに、ね?」

 

 霞の確認を肯定する千草。それを聞いた霞は口に手を当て考え込む。

 

「なぜ急に……? いえ、それはともかくとして。いくら小隊規模の増派だとしても、いままでのわたしたち三人に比べたら大分人員が増えるから。今後の行動も楽になる?」

 

 己の考えを口にしながら整理する霞。しかし、それだけだと違和感がぬぐえない。なにか見落としが……。

 

「……そうか、逆侵攻を――」

 

 霞がたどり着いた答えに千草は頷く。

 

「ええ、そうよ。とはいえ鮭延一尉たちはこちらの防衛、という形になるけど」

「なぜ……と、そうか。当然でしたね」

「えっと、かすみ? なにが当然なの?」

 

 千草と霞の打てば響くような会話にキョトンとした渚は質問する。

 そんな渚に他の全員は微笑ましいものを見るような笑みを浮かべている。

 

「なぎさ、彼らの所属はあくまで『自衛隊』です。自衛隊があくまで専守防衛を旨としている以上、積極的な攻勢に出るのは避けるべきなんです。いくら、積極的自衛権の行使、というお題目があったとしても」

「でも、そうしないと普通の人たち。日本の国民が危険にさらされるよ?」

 

 渚は己が感じていた純粋な疑問をぶつける。霞も、渚が感じている疑問はもっともだ、といわんばかりに頷きながら話を続ける。

 

「ええ、それはもちろんです。その事を国や政府も容認するつもりはないでしょう。しかし、今回の場合場所が問題になる」

「……えっと、それは。異世界、だから?」

 

 渚がたどり着いた答え。それを聞いた霞は満足そうに頷く。

 

「そうです、今回の場合イマジンという()()()だからこそ問題になり得るんです。それは――」

 

 そのとき、司令部の扉がかしゅ、という空気が抜ける音とともに開き第三者が入ってきて、霞が話していた話題。その続きを話す。

 

「――1つは未知の感染症や病原菌。あの世界の住人には問題なくても、こちらは耐性がなくて大問題、という可能性は往々にしてあり得るから、ね。そうじゃないと風土病なんて言葉は生まれないし」

「……レオーネさん」

 

 そう、入ってきた人間はレオーネであった。

 

「そして、もう1つはあの世界が新たなるフロンティアとなる可能性が十分にあり得ること。領土しかり、資源しかり、ね」

 

 そのレオーネの言葉で、彼女がなにを言いたいのか察した渚は納得したように頷いている。

 

「そっか、レアメタルとかレアアース。化石燃料の枯渇問題とか色々言われてるもんね」

「そーいうこと!」

 

 渚がたどり着いた答えに、良くできました。とばかりに満面の笑みを浮かべるレオーネ。二人のやり取りを見ていた千草は、急にバルドルへ来訪したレオーネに疑問を抱いて話しかける。

 

「でも、急にどうしたのレオーネちゃん? こちらに来るって連絡はなかったけど……」

「ごめぇん、千草さん。今回、半分はボクの個人的な用事も含まれてたからさぁ……」

 

 そういうとレオーネは鮭延へ向き直る。彼女の仕草に鮭延もまたなんの用事か理解したようでにこやかに話しかけた。

 

「レオーネさん、今回は骨を折っていただきありがとうございました」

「ううん、ボクはあくまで仲介しただけだからね。お礼なら伊達総理や片倉さん。それに()()()()へ言ってもらえると助かるかな?」

「ははは、そうですな」

 

 事情を知らない面々からすると、なにを言ってるのか分からず頭に疑問符が飛んでいた。

 

「それで、こっちに派遣されたとなると()()()()の方はもう大丈夫?」

「ええ、成熟訓練は――」

 

 なごやかに話していた二人だが、それは突如として中断される。司令部内にけたたましいサイレンが響いたからだ。

 

「何事ですか!」

 

 緊急事態を告げるサイレンに、千草はオペレーターたちへ報告を求める。ほどなくして彼女が求めていた報告が上がってくる。

 

「立塔市郊外に魔物が出現……! いえ、それだけではありません! 正体不明の怪物が魔物の中心に――」

「――モニターに写して!」

「了解!」

 

 千草の指示どおりモニターに写される魔物たち。その中心には全身に岩を纏ったゴーレムらしきものが――。

 

「……魔人、ね」

 

 それは以前、報告に上がってきていた岩の魔人と特徴が一致していた。

 

「あれが魔人かぁ、実物は初めて見たよ」

「……レオーネちゃん?」

「で、どうするの千草さん? このまま、放置って訳にもいかないでしょ?」

「ええ、そうね。秋葉さんを呼び出して!」

 

 オペレーターへ指示を出す千草。そしてその後鮭延へ向き直ると。

 

「鮭延一尉、早速お願いしても?」

「了解しました南雲司令。微力を尽くさせていただきます!」

 

 そう言って千草に見事な敬礼を見せる。そしてレオーネもまた千草へ話しかける。

 

「念のため、ボクもいかせてもらうね。今後のことを考えると攻撃が通用するか試しておきたいし」

「ええ、お願いするわレオーネちゃん」

「了解、まかせてよ!」

 

 そういうとレオーネはにこやかな笑みを浮かべるのだった。

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