バベル再興記~転生したら秘密結社の大首領になりました~   作:想いの力のその先へ

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秋葉の悩み、そして覚悟

 あの人、バベル大首領。池田盛周、って人がバベルの、あの組織の目的を話してくれた後のことはあまりよく覚えてない。

 アタシはバベルが、秘密結社バベルがただの悪者で世界を征服するために集まった組織だとしか思ってなかった。

 もちろん、あの人。盛周さんは信じるかどうかはアタシ、東雲秋葉。魔法少女-オーラムリーフ。そしてバルドル次第だと言った。

 

 ……信じるかはアタシ次第。でも、あの人。盛周さんが嘘を言ってるように見えなかった。

 

「……それに、レオーネさん」

 

 アタシたちを騙していた……、ううん。きっと、あの人にもなにかあったんだ。そうでなきゃ、盛周さんをご主人さま、なんて慕うわけがない。

 そんなレオーネさんに連れられて、アタシはバルドル基地内の部屋へ戻ってきていた。

 

「……秋葉、大丈夫だもん?」

「…………あぁ、うん。アグか」

 

 ぼふっ、とベッドに制服のまま寝っ転がってるアタシを心配そうに見つめてくる。

 ……ダメだなぁ、相棒を心配させちゃってる。

 

「大丈夫だよ、大丈夫。うん、大丈夫……」

 

 そう、自分に言い聞かせなきゃ心が折れそうだった。

 バルドルが、ヒロインが絶対的な正義でバベルが絶対的な悪。そんな単純に考えてた。でも、そうじゃなかった。

 バベルが悪、それは間違いない、と思う。街を破壊してるし、怪我してる人、被害者も出してる。それは間違いなく悪いこと。でも、それだけじゃなかった。

 

「ぎゅむっ――」

 

 ごろん、と寝返りを打って考える。

 

「あ、秋葉。重いんだもん……?!」

「あっ、ごめん……」

 

 アグのこと忘れてた。寝返りを打った拍子に押し潰しちゃってた。慌ててアタシは身体を退かした。

 でも、もやもやして考えがまとまらない。どうしよう。こんなこと、誰にも相談できないし……。

 

「はぁ……」

 

 泣きたくなる。アタシはどうすれば……。いや、待って……。レオーネさんは、バベルの秘密基地に行ったことは言いふらさないように、って言ってたけど、それ以外のことは……。

 

「聞いても良い筈、だよな?」

 

 もちろん、レオーネさんがバベルの構成員。しかも大幹部だってことを話したらダメだろうし、下手しなくても命を狙われそうだけど。だけど、直接バベルに関係ないことなら……?

 

「渚さん、ルビー先輩に聞いても問題ない?」

 

 それだって、盛周さんがバベル大首領だってバラさないこと前提だけど。それなら、きっと問題ない筈。

 

「……うん、そうだよな」

 

 うじうじ悩んでても仕方ない。女は度胸、分からないことを聞くしかない。そうしないと、先に進めない。なら、やることなんてひとつ!

 気合いを入れるため、ぱちん、と頬を打つ。

 

「うっし! やるぞっ!」

 

 アタシはアタシ、なら、猪突猛進でもやるっきゃない!

 ……きっと、ここに春菜がいたらくすくす、笑ってた。アタシらしい、なんて言って。それで良い。アタシはアタシらしく!

 

「アグ、留守番よろしく!」

「……きゅ、急にどうしたんだもん?」

 

 アタシはしどろもどろになってるアグを置き去りにして外へ出る。目指すは渚さん、ルビー先輩のところ!

 

 

 

 

 

 

 部屋を飛び出したのは良かったけど、肝心の渚さん、ルビー先輩はどこにいるんだろ。そこを忘れちゃダメだろ、と途方に暮れてたけど、案外すぐに見つかった。

 

「あれ、秋葉ちゃん?」

「あっ、渚さん」

 

 取り敢えず、訓練場に行けば良いかな。と歩いてるときにばったり。どうやら訓練帰りだったみたいで、薄く汗をかいて、身体からほかほか、と湯気が出てた。

 ……会えたのは良かったけど、これ、お話聞けるのかな。これからシャワー浴びるんだろうし。

 でも、アタシの心配は杞憂だったみたいで――。

 

「レオーネさんと外出てたって聞いてたけど、帰ってきてたんだ?」

「え、あっと……。はいっ」

 

 もしかしたら、アタシを訓練に誘うつもりだったのかも。それだったら、悪いことしたかな?

 それはともかく――。

 

「その、レオーネさんに聞いたことで、ちょっと渚さんに聞きたいことがあったんですけど……」

「わたしに……?」

 

 不思議そうに首をかしげる渚さん。まぁ、レオーネさんとあんまり関わりなさそうだし、おかしくないのかな?

 ともかく、首をかしげてた渚さんだけど、良いこと思い付いた、とばかりにぱん、と手を叩いてアタシに話しかけてきた。

 

「それは良いけど、どうせだからいまから一緒にシャワーにいかない? そっちのほうがゆっくり話せるだろうし」

「……えっ?!」

 

 まさかのお誘いに、少し、本当に少しビックリしちゃった。でも、これも良い機会かもしれない。

 裸の付き合い、なんて言うけど。こんなときじゃないと、そんなことできないし……。

 

「はいっ、喜んで!」

「良かったぁ……」

 

 そう言って微笑んでる渚さんの顔、同じ女から見ても、すごく可愛くて、ちょっと羨ましかった。

 

 

 

 

 

 

 

 シャアァァァ、ともジャアァァァとも聞こえるシャワーヘッドから流れるお湯がアタシ()()の汚れを、疲れを洗い流してくれる。

 

「気持ちいいねぇ」

「え、あぅ……、ぅん」

 

 ……確かに渚さんは一緒にシャワーに行こう、って言ってたけど。まさか、一緒の個室で、なんてこと予想してなかった。

 それがすごく恥ずかしくて、頬がかぁ、とあつく火照ってる。これは、決してお湯が暖かいから、なんてことだけじゃない。

 アタシの、その……。なだらかな起伏を見られるのも恥ずかしいし、えっと……。サファイア先輩、霞さんが前言ってたけど、渚さんも、小さいのを気にしてるって……。でも、アタシに比べるとおっきいし、形も良くて。それにすらり、と痩せつつも少し筋肉質で、うっすらと腹筋が割れてるのと腰が括れてて羨ましい――て、そういうことじゃなかった。

 二、三歳しか違わないのに、こんなにも違うの。理不尽だと、本当に思う。……って、だからそうじゃなくて――。

 

「それで、わたしに聞きたいことってなんなのかな?」

 

 髪からぴちゃ、ぴちゃ、と水滴をしたたらせながら問いかけてくる。そうだよ、聞くためにここに来たんだから。

 

「その、レオーネさんに聞いたんだけど。幼馴染みの、池田盛周、さん? その人のこと――」

「え、えぇ……?! チ、チカくん……?!」

 

 うわ、びっくりした。急に渚さんが上擦った声を……。て、身体がみるみるさくら色に染まって、両腕で大事なところ。それと胸を隠すようにぎゅむ、と押し潰してる。

 こんなとこで急に言ったから、盛周さんに見られてるみたいに感じちゃったのかな。

 それよりも、この反応。たぶん渚さん、盛周さんのことが好き、なんだよな?

 

「きゅ、急にどうしてそんなこと……?」

 

 渚さんはなるべく冷静に返そうとしてるんだと思うけど、声が完全に上擦ってる。なんか、羨ましいや……。アタシも男の子の幼馴染みがいたらって、だから、そうじゃない。

 

「えっと、なんて言えば良いのかな……」

 

 本当になんて言えば良いんだよ。アタシはあたまをがしがし掻きながら悩む。

 ……うん、こういう言い方で良いかな。

 

「アタシ、男の幼馴染みなんていないから。どんな人なのかな、って気になっちまって――」

「あぁ、そういうことなんだ」

 

 アタシの疑問に、どこか困ったような、ホッとした様子の渚さん。もしかして、アタシが盛周さんに興味を持ったように思えたのかな。ある意味、間違いではないんだけど。

 でも、それが恋愛的なもんじゃなくて、安心した。そんなとこ、かな? まぁ、そうだよね。他の女が好きな人に興味を持ってたら、色々緊張するし、嫌だよな。

 そんなこと、アタシが思ってるのを他所に渚さんはうっとりとした顔をみせている。……綺麗だな、好きな人がいると、そういう風になるのかな。

 

「チカくんはね、すごい人なんだ――」

 

 

 

 

 

 

 どこか上の空な、渚さんのぽわぽわした様子で語られた盛周さんの人物像。それを聞いてアタシは確かに、と感心しきりだった。

 だって、ちっちゃい時から渚さんの超能力で怪我するのも厭わず側で寄り添ってあげたり、友達ができるように頑張ってくれてたり……。

 話を聞いてるだけのアタシでさえ、キュン、てするくらいに王子さまみたいなんだもん。そりゃあ、渚さんが好きになるのも無理ないわ。アタシだって、渚さんと同じ立場なら――。

 

「………………っ」

 

 ……想像して、ぼっ、と頬があつくなるのを自覚する。そういえば、秘密基地の中でもあの人。アタシのこと、女の子扱いしてくれてたし……。

 また、別の意味で渚さんが羨ましくなった。

 盛周さんが渚さんのこと、好きなのかは分からない。でも、大切にしてるのは間違いない。だって、あそこでもあの人は渚さんのこと、気にしてたから。きっと、レッドルビーの正体が渚さんだって、気付いてるにも関わらず。

 

「すごいなぁ……」

「そうでしょ!」

 

 無意識にポツリ、とこぼしたアタシの言葉に反応する渚さん。その顔が本当に嬉しそうで、盛周さんが大好きなんだ、って分かる。

 ……うん、やっぱり。盛周さん、バベル大首領が言ったことに嘘はないんだと思う。

 だって、こんなにあの人を信じてる渚さんが、恋する女の子がいるんだから。

 

「うん、本当にそう思うよ。アタシも……」

 

 でも、だからこそ言えない、よね。レオーネさんのことだけじゃない。……もしも、真実を知ったら渚さんが傷つくかもしれない。だから、アタシがいまできること。

 あの人が言ってた、と思う。もしものときはレオーネさんを頼れ、って。そうすればこちらに伝わるから、って。

 だから、アタシも頑張ろうと思う。人を騙す、嘘をつくってのは苦手だけど、陰ながらバベルのお手伝い、くらいはできる筈。

 それに、そうすれば春菜を助けるとき、協力してもらえるだろうし……。

 まぁ、あの人なら。きっと、そんなことしなくても助けてくれると思える。そんな、優しい人に見えたから。

 だから、これは先の恩返し。それに人の悲しみを、苦しみを減らすことがヒロインのお仕事。

 

 ――アタシはそう、信じてる。

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