バベル再興記~転生したら秘密結社の大首領になりました~   作:想いの力のその先へ

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奇妙な共闘、交差する思惑

 突撃するように飛翔した俺だが――。

 

「ちっ……。やや形勢不利、か」

 

 空へ上がったことで眼下の戦況が確認できた。

 確かに、個々の戦力としてはこちらが優勢だ。

 いまもオーラムリーフが、ブラックオニキスが、ブルーサファイアが八面六臂の活躍をみせている。

 オーラムリーフが炎の剣、ファイアブレイドで敵を焼き払い、消し炭にすれば、ブラックオニキスは魔物たちの防壁をも貫く豪腕で肉塊を量産している。

 

 もともと火力で劣っているブルーサファイアは敵を貫く手段を持って()()()()()

 しかし、それも工夫次第だ。あいつは、ブルーコメットをライフルへ変質させると三点バースト。寸分の狂いなく頭部を狙い撃つ。

 ……確かに、一撃では敵の防壁を破れない。だが、それは一撃で終わらせようとするから。

 

 一撃目で防壁に食い込ませ、二撃目で押し込み、そして――。

 

 ――バ、リィィン……。

 

 ――三撃目にて防壁を貫く。貫いた弾丸はその勢いのまま、頭部を穿つ。貫通する弾丸に追従するよう血飛沫が、脳漿が撒き散らされる。

 

 ……ブルーサファイアには敵を倒す力はない。だが、力はなくとも技術(わざ)がある。一朝一夕では身に付かない、バベル時代に戦ったレッドルビーとの、そしてバルドルへ裏切った以降、数多の怪人と戦った戦闘経験から裏付けされた技術(わざ)が。

 

 ――だが足りない。

 

 圧倒的に手数が足りない。

 一番効率的に戦えるのはオーラムリーフだが経験が、逆に一番経験豊富なのはブルーサファイアだが、こちらは三点バーストを寸分違わず放つという絶技を求められ、どうしても集中力が必要で消耗も激しい。

 そういった意味で平均的なのはブラックオニキスだが……。

 

「覇ッ――!」

 

 それでもブルーサファイアと比べると経験という意味で、悪い方で差がある。

 そも、現在でこそバベル四天王であるが、もともと楓は上級戦闘員。しかも、新人だったことから戦闘に投入される前に先代バベルは壊滅した。

 ゆえに、バベルの草壁楓としての初陣は新生バベルとなってからだ。

 

「それを考えると上出来だが――!」

 

 俺は再びバーニアを噴かせて、地表へ向けて加速。ガシャン、と乱暴に着地するのと同時に――。

 

「――雄、ォォォ!」

 

 ぶぉん、と大太刀を、タマハガネを横凪にする。

 一瞬、壁に阻まれたような手応えを感じたが、そのまま力任せに凪払い、魔物たちを上下に両断していく。

 だが、これだけでは戦果として少ない。まだまだ屠らなければ互角まで持ち込めない。だから――!

 

 ――突撃!

 

 力強く地を蹴るのと同時にタマハガネを正眼に構え、またもバーニアに火を灯す。俺は、俺自身を弾丸に見立て敵陣へと突っ込んだ。

 そのまま、タマハガネに刺さる敵は突き刺し、フツヌシに当たる敵は撥ね飛ばす。まさしく見た目で言えば大惨事だ。

 しかし、撥ね飛ばした魔物たちのダメージは致命傷とはほど遠い。やはり、生半可なダメージでは完全突破は厳しいようだ。だが、それならやりようはある。

 

「ブルーサファイア!」

 

 俺は霞に叫びながら、腰にマウントしていたヒナワを外して、彼女に向かって投げ渡す。

 

「……えっ! ちょ――!」

 

 まさか、そんなことをするとは思っていなかったであろう霞。ブルーサファイアはわたわた、と焦りながらもなんとかキャッチした。

 いま、ブルーサファイアに渡したヒナワは光学、熱線兵器だ。通常の実体弾よりも効果がある、という試算はされている。

 それを彼女が扱えば魔物は効率的に処理できるだろう。それに、あれが仮にバルドルに渡ったところで問題ない。

 なにせ、既に廉価版がモムノフとともに納入済みだ。まぁ、多少出力は違うが、それは誤差の範囲。バベルの、博士の技術をもってすれば量産など造作もない。

 もっとも、それを容認できないものも当然として存在する。

 

「……だ、大首領?!」

 

 ブラックオニキス、楓だ。まぁ、彼女視点からすると正気の沙汰ではないのは間違いない。しかし、いまはそんなことに拘っている場合ではない。

 

「オニキス、貴様も出し惜しみはするなよ!」

 

 周囲にいる魔物を大太刀でなます切りにしながら発破をかける。現にサファイアは戸惑いながらも既にヒナワで敵を次々と焼滅させている。その戦果は一番有効打を持っていたオーラムリーフに迫るほどだ。

 

「は、はっ……! 疑似PDC解放!」

 

 どちらにせよ、いまは魔物を屠らなければ話にならないと気づいたようで、楓。ブラックオニキスも切り札ともいえるレッドルビーの超能力を模倣した機構を解放。薄緑の膜が周囲を覆う。そして上がった出力をそのまま拳に込めて魔物へ殴りかかる。

 その威力はすさまじく、バリアが豆腐のように砕けて、敵を容赦なく破砕していく。これならば殲滅力は問題ない。直に周辺の魔物は掃討できる。

 それを確認できた俺はもまた、少しでも魔物を早く掃討できるようにギアを上げるのだった。

 

 

 

 

 

 そして、そう時間もかからずに魔物の掃討が完了できた。いまは、バベルとバルドル。俺とオニキス、オーラムリーフとブルーサファイアが対峙していた。

 正直な話、出来ればここは撤退した方が良い。なにしろ、現状。比較的周囲の被害は少ない。が、このままここで交戦しようものなら拡大するのは火を見るより明らか。さて、どうしたものか……。

 

 そう頭を悩ませていた俺に、サファイアがヒナワを投げ寄越してきた。

 

「おっと……」

 

 ガシャン、とヒナワを掴む。しかし、どういうつもりだ?

 

「ふむ、そのまま戦利品にするかと思ったが」

「さすがに、そんな恥知らずな真似は出来ません。それに、易々とそれを基地に持ち帰れるほどあなたを信用しているわけでもありません」

 

 ……なるほど。ヒナワに発信器をつけられている可能性を嫌ったか。確かに霞の立場なら警戒するのは当たり前だ。

 シナル・コーポレーションも直接バルドルの基地へ品物を納品しているわけではない以上、公的な意味ではバベルはバルドルの基地の所在は知らない、となっている。

 ……実際は、四天王のレオーネが出入りしているのだから、既にバレバレなのは置いておく。

 まぁ、良い。その思惑にこちらも乗らせてもらおう。

 

「……良いだろう。オニキス、退くぞ」

「なっ……! お待ちください、大首領!」

 

 俺の言葉に三人とも驚愕している。まさか、俺があっさり退くとは思わなかったようだ。呼び止める楓の声には明確な焦りがあった。だが、この好機。逃す手はない。

 

「思惑はどうであれ、あちらが誠意を見せたのだ。なれらばこちらも見せなければ笑い者となる」

「……了解、しました」

 

 納得はしてないし、歯痒いのだろう。ぎり、と歯を軋ませているのだから間違いない。だが、互いに戦力を浪費させたくないのだから、なんとしても飲んでもらう。

 

「では、また会おう。ヒロインたち」

 

 そう言って俺たちは戦線を離脱するのだった。

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