バベル再興記~転生したら秘密結社の大首領になりました~   作:想いの力のその先へ

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ファンタジー《幻想》の洗礼

 少し時を巻き戻して、盛周たちが戦場へ乱入していた頃。レッドルビーこと真波渚。そして最強のヒロインにしてバベル四天王のひとり、レオーネは彼らとはまた違う魔物たちの襲撃地点。立塔郊外にある工場跡地にて激戦を繰り広げていた。

 

「はぁっ!」

 

 レッドルビーが気迫とともに手甲部分のPDCをガコン、とスライドさせる。ぷしゅう、と湯気にも似た力の残滓。薄緑の粒子が拡散された。

 

「てぇいっ!」

 

 そのまま力場を形成して魔物、豚面をした巨漢。オークともいうべき魔物へ拳を繰り出す。

 その拳を受け止め、防御しようとするオーク。

 しかし、忘れてはならない。真波渚は、レッドルビーはかつてバベルの怪人たちを相手にその身だけで撃破してきた英雄(ヒロイン)

 それが、多少身体能力が優れていようが、ただの生物に防がれる謂れはない。

 

「……ぶぎぃ!」

 

 オークが防御のために繰り出した腕。しかし、その腕は拳に触れた途端、ぐきり、と鈍い音を奏でる。それだけではない。拳はそのまま肉を抉り、直進。ずぱぁん、と音を置き去りにしながらオークの肉体を貫く。

 

「ブレイクっ!」

 

 その言霊とともに、さらにオークの肉体のなかでルビーのサイキックエナジーが解放。暴力的なエネルギーを浸透させる。

 そして、彼女がバックステップし、オークから離れた瞬間。

 

 ――どぉん!

 

 オークは倒れるとともにまるで爆弾のように爆発四散。その後、肉体は粒子となり散っていった。

 

「次っ……!」

 

 それを見届けることなく、次の獲物。魔物を見るルビー。心なしか魔物たちはルビーから、ざり、と一歩足を退かせていた。

 

 そんな魔物たちの一部が薄緑の煌めきに巻き込まれる。その直後、まるで空間自体がズレたかのように、上下が、上半身と下半身が分断された。

 そして、その中心には己が得物。ぽぅ、と薄く緑色に輝く刃のデスサイズを振り切ったレオーネの姿。

 そう、先ほどの薄緑色の煌めきはレオーネのデスサイズの軌跡。魔物たちにはまさしく死神の鎌であった。

 

「よっと……。ルビーちゃんだけに注目するのは頂けないなぁ。ちゃんと、ボクにも注目してくれないと」

「レオーネさん!」

 

 喜色の中に驚きを含めた声を上げるルビー。それも当然だ。なにしろ、本来レオーネは身体能力だけで最強の座についた傑物。

 だが、それゆえに物理攻撃に対してバリアのような耐性をもつ魔物たちとは相性が悪かった筈。なのに、いま。目の前の現実は彼女がデスサイズに、その名の通り、死神の鎌によって命を刈り取っている。ルビーが驚きの声を上げるのは必然だった。

 そして、その答えはレオーネ自身からもたらされた。

 

「にひひ、ボクだって改良された『これ』があれば、魔物相手でも戦えるのさ」

 

 そう言って、これ見よがしにデスサイズを掲げる。それは確かに、以前に比べると物々しい機械のようなものが刃の根本に取り付けられているとともに、刃が薄緑色に煌めいていた。

 そして、それこそが魔物を屠れた要因。一種の疑似PDCの一種だった。

 

 そもそも、彼女もバベル四天王のひとり。即ち、草壁楓、ブラックオニキスと同じく、バベルが誇る天才科学者。青木奈緒から改良を授けられることの出来る人物のひとりだ。

 そして奈緒、彼女もまた渚の超能力の他に東雲秋葉。魔法少女-オーラムリーフの魔法に対する知見もある。なれば、その対応。魔物に対する防壁突破の方法を授けるのは簡単な話だ。

 

 その刃の根本にある機械、疑似PDCがガコン、とスライドし、薬莢が排出され、からん、と整備されずひび割れたアスファルトへ落ちる。その光景を見ながら、レオーネは今後の戦い方を考える。

 

(さて……。あと、シリンダーに残っている弾は5発。使い所は考えないと)

 

 そう、レオーネが使用しているPDCはブラックオニキスとは違い弾数制。そも、ブラックオニキスはパワードスーツに小型原子炉を搭載し、そこからエネルギーを引っ張ってきていた。

 しかし、さすがに、レオーネのデスサイズに原子炉を搭載できるだけのスペース、天才の奈緒でも用意できなかった。そのため、代替案として使用されたのが先ほどの薬莢。即ち、疑似PDC起動用の弾丸であった。

 そして、薄緑の輝きが薄れていく。疑似PDCの効果が切れたのだ。

 

「……たしか、『これ』の効果は10秒って言ってたっけ」

 

 ぽつり、と一言こぼすレオーネ。彼女は確かに奈緒からそのような説明を受けていた。即ち、魔物相手の全力戦闘はシリンダー6発×10秒。つまり、1分が最長であった。

 むろん、シリンダーの弾丸を入れ換えればその限りではないが、入れ換える間は無防備になる。使い所を間違えれば、逆にレオーネが危機に陥るのは間違いない。

 もっとも、だからこそ経験豊富なレオーネに弾丸制の疑似PDCを託したとも言える。彼女もまた、歴戦の英雄(ヒロイン)、なのだから。

 

「さてさて、それはともかく」

 

 残る魔物たちを見やるレオーネ。いつの間にか、ルビーも彼女の横に並び立つように移動していた。

 

「じゃ、ルビーちゃん。ちゃっちゃと――」

 

 横に立つ渚、ルビーへと話しかけるレオーネ。しかし、突如彼女たちの頭上が暗くなった。

 

「なに……?!」

「レオーネさん、下がって!」

 

 ごう、と空気が裂かれる音。ルビーの掛け声とともにふたりは示し合わせたかのようにその場から飛び退く。

 直後、アスファルトを砕くように巨体が落下。飛散した土煙の中からその姿を現す。

 

「うっそぉ……」

「いくらファンタジーだからって、なんでもありすぎだよ」

 

 驚きの声を上げたふたり。彼女たちの目には翼が生え、巨大な体躯を持つ爬虫類に似た姿でありながら人形の魔物。人の2、3倍はあろうかという体躯を持った怪物、否、怪人。竜人(ドラゴニュート)とでもいうべき化物の姿があった。

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