バベル再興記~転生したら秘密結社の大首領になりました~   作:想いの力のその先へ

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忠誠

 千草が渚に頼み事をしている頃、バベル本拠地にて盛周と楓、そして朱音が会議室に集合していた。

 だが、会議室に集合しているにしては三人の顔は互いに困惑した表情を見せている。

 それはなにか三人の中で意見の食い違いでもあったかのように。

 盛周は雑念を払うようにかぶりを振ると楓に問い掛ける。

 

「それで、なにか? 奈緒から、君の補佐する怪人について聞いた、と?」

「……はい」

「確かに、そんなことも話したことはあったが、なぁ……」

 

 どこか困惑した様子で話す盛周。彼に同意するように、朱音もその時の様子を話し出す。

 

「はい、盛周さま。ですが、あの時はあくまでも予定であって、実際に計画は開始していない筈なのですが……」

 

 そう、互いを見つめながら話す二人を見て、楓はどこか決まり悪げにしている。以前のように奈緒に担がれた、そう思っているのだろう。

 楓がそう感じていることを察した盛周は、奈緒をかばう訳ではないが、今後の二人の関係を考えて彼女をなだめようとする。

 

「ま、まぁ実際、それを造る前に技術を成熟させる必要があるからな。別に空手形という訳ではないよ」

「……そう、なのですか?」

「あぁ、近々新型コアを使用した怪人が完成予定だ。それでデータ収集、ならびに改良案を作成した後、改めて計画を。と、言ったところかな」

「なるほど、そうだったのですね」

 

 盛周の説明に得心がいったのか、噛みしめるように何度も頷く楓。

 そんな彼女の様子を見て、調子を取り戻したことを確認した盛周は安堵の微笑みを浮かべる。

 

「とはいえ、その前段階として今までの怪人。ガスパイダーやサモバット、ダンゴバックラーも換装させている」

「あの三人にも、ですか?」

「あぁ、それで多少性能の向上が見込める、という報告も入っているからな」

 

 盛周の話に目をぱちくり、とさせ驚いている楓。

 既に完成されている三体に対して、さらなる改造をほどこすとは思っていなかったようだ。

 だが、そこで彼女は奈緒が部屋に訪れた際、汎用怪人コアの起動実験と言っていたことを思い出す。

 そして、同時に新しい怪人はまだ製作していないということも言っていたこと。

 そのことから、既存の怪人を使って実験を行うつもりだった、という奈緒の考えを察する。

 そのことに気付いた楓は納得したように頷いている。

 

 逆に盛周は、そんな楓の反応に訝しげな様子をみせる。

 

「どうした、楓?」

 

 盛周から急に心配された様子で声を掛けられた楓は、少し驚きながらも返答する。

 

「いえ、問題があるわけでは……。ただ、あの時奈緒さまが含むような言い方をしたのは、それが理由だったのかな、と」

「……ふむ」

 

 どこか言い訳がましい楓の言に考え込む盛周。

 そんな彼に不安をもったのか、楓は少し顔色を悪くしている。

 もっとも、盛周としては楓に何か含むところがある、などという訳ではない。

 ただ単に、奈緒が何を考えているのか気になっただけだ。

 

 そもそも、奈緒のドMな性格などの扱いづらい面を抜きにしても、彼女は少々特殊といっていい。

 なぜなら、彼女の忠誠。それはバベルという組織でも、現大首領の盛周でもなく、先代である盛周の父親に向いているからだ。

 それでも一応、盛周が先代の息子ということと、何より己の邪魔をしないことからある程度良い関係は築けている。

 それと同時に友人であり、同じくバベルの古参。先代の右腕であった朱音が忠誠を捧げている、ということも少なからず関係するかもしれないが……。

 

 だからこそ、彼女は時々によって盛周を試すような真似をする。

 それは以前のサモバットを暴走させた件でも同様だ。……単に自身の趣味嗜好を満たせるから、という点も間違いないのだが。

 

 そこまで考えた盛周だったが、いくらなんでも本筋から離れすぎだと思い、思考を追い出すようにかぶりを振る。

 そして彼は自身を心配そうに見つめている楓に話しかける。

 

「それで楓、君の方は大丈夫なのか?」

「……はい?」

 

 急に心配された楓は、意味がわからない。といった感じで首をかしげる。そんな彼女に苦笑しながら盛周は、自身が懸念していることについて告げる。

 

「……次の襲撃計画は任せてほしい。と、言ったのは君だろう?」

「……あっ」

 

 近頃は奈緒や、盛周の件で悩むことが多かったことでそのことがすっぽりと頭から抜け落ちていた楓は間抜けな声を上げる。

 そんな彼女に盛周は頭を抱え、朱音は困ったような表情を浮かべながらもくすくす、と笑っている。

 そして当の本人は、恥ずかしさから顔を熟したリンゴのように真っ赤に染めて、あわせる顔がない、とでも言いたげに俯いていた。

 そんな彼女をフォロー、あるいは叱咤激励するように盛周は――。

 

「――ともかく、君はまず襲撃計画の策定をするように。良いね?」

 

 と、告げるのであった。

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