バベル再興記~転生したら秘密結社の大首領になりました~   作:想いの力のその先へ

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襲撃

 はじまりこそ小隊規模(50人)対二人という数の暴力だった模擬訓練だが、サファイアが隊員のライフルにある明確な弱点を察知したこと。それを利用してルビーとともに連携をとったことで自衛隊側の人員はじわじわと削られていき、最終的に残ったのは小隊長兼第一分隊長の鮭延、第二分隊長の庭月を含め、わずか10名となっていた。

 いくらまだ自衛隊員の人数が上回っているとはいえ、もともと個としてのスペック差が隔絶している以上、はっきり言って劣勢だと言わざるを得ない。

 そのことを自覚している鮭延は疲労が色濃く出る顔を歪めながら、半ば予想通りだと言わんばかりに嘆息する。

 

「……確かに勝つのは難しいだろう、とは思っていたが。これほどまでに差があるとはなぁ」

「まったくですなぁ、小隊長殿」

 

 鮭延のぼやきとも取れる言葉に、しみじみ同意する庭月。

 二人がそう言いたくなってしまう程度には、圧倒的な戦力差だった。

 もっとも、だからといって諦める道理も意義もない。そもそも、ここで諦めてはいけない、という意識は彼ら全員の共通認識だ。

 なぜなら、ここで諦めたら今後も、それこそ本来の敵である怪人たちとの戦いの時ですら、相手が強いから、と諦めてしまう癖がつきかねない。

 その様なことがあっては、断じてならない。それは、己の責務を、人々を守るという意義を放棄することにほかならないから。

 だからこそ彼らは模擬訓練であろうとも手を抜くことはあり得ない。否、訓練だからこそ、か。練習の時に出来なくて、本番に出来るなどと考えられる筈もないのだから。

 

「――さて、情けないぼやきはここまでだ。いくぞ、庭月分隊長」

「了解であります、小隊長殿」

 

 どことなくおちゃらけた雰囲気で語る二人。しかし、それに反して表情は至極真剣で、気迫が乗っているのがわかる。

 そんな二人を見てレッドルビーとブルーサファイアもまた、警戒の色を強くする。

 

「……サファイア、くるよ」

「ええ、油断しないように。ルビー」

「もち」

 

 双方の間に緊張が走る。

 

 ……が、その時。

 本来ではあってはならない。聞こえる筈のない()()()の声が聞こえてくる。

 

「――我らも手伝ってやろうか? ただし、下手すると死ぬかもしれんがなぁ?」

 

 その言葉とともにレッドルビーと鮭延へ、斬撃が翔んでくる。

 

「……くっ!」

「――はっ!」

 

 とっさにライフルを盾にして防御する鮭延と、斬撃を己が拳で迎撃するルビー。

 そしてルビーと、彼女を援護するため後ろに控えていたサファイアは下手人の姿を見て驚きの声を上げる。

 

「ガスパイダーにサモバット?! 復活が早い……! それにどうしてここに!」

「そもそもここは自衛隊の駐屯地ですよ! どうやって忍び込んで――」

 

 二人の言葉を聞いたサモバットは小馬鹿にするように、ち、ち、ち。と指を振る動作をすると種明かしをする。

 

「ふふふ、我らバベルの科学力を侮ってもらっては困るな。ほぅれ、このとおり――」

 

 そう言うと二体の怪人の姿が、まるで風景に溶け込むように掻き消える。

 それに今度は鮭延が驚きをあらわにする。

 

「……なっ! 光学迷彩、だと……」

 

 その反応に気をよくしたのか、再び姿を表したサモバットは得意気に語る。

 

「ふはは、そうだ。そうだとも、これが我らの科学力の一端よ」

「その通りだ。我らの力、甘く見ないでもらおうか」

 

 サモバットに追従するように、ガスパイダーもまた語る。そこにはバベルに対する絶対的な忠誠と自負があった。

 そして、それ以上に鮭延たち自衛隊員側は緊張の色をにじませる。

 それもそうだ。今の一連の行動、時や場所を変えればそれこそ、国家の中枢を奇襲することすら可能になるのだから。

 

 額に汗を滲ませながら、鮭延は庭月に指示を出す。

 

「庭月、貴様の分隊は本部に報告と、ついでにライフルの弾薬を戦闘用に交換してこい」

「……は? ――はっ! 了解いたしました!」

 

 そのまま庭月は早急に部下たちをまとめ上げると、この場を離脱しようとする。

 だが、そうはさせじと妨害しようとする怪人たち。しかし――。

 

「……させない!」

「――やぁぁぁ!」

 

 ここにはヒロインたち。彼らの宿敵もいるのだ。そして彼女たちは敵の行動を傍観するほど甘くない。

 結果として怪人たちは第二分隊の行動を阻害することに失敗し、離脱させてしまう。

 そこで、ガスパイダーと組み合っていたレッドルビーは鮭延へ声をかける。

 

「鮭延さんも離脱して。ここは私たちが受け持ちます!」

 

 しかし、鮭延は彼女の言葉に首を横に振ることで返答する。

 

「いや、我らはここに残る。足止めくらいは出来るからね」

 

 そう言いながら鮭延はライフルを、模擬訓練用のペイント弾をガスパイダーの顔めがけて発射。

 見事に命中した結果、目潰しに成功する。

 

「お、おのれ――がぁっ!」

 

 そして決定的な隙を見逃すほどレッドルビーは甘くない。目潰しによって注意が逸れたガスパイダーの腹部に渾身の一撃をお見舞いする。

 そして拳を振り抜き、吹き飛ぶガスパイダーを見ながら彼女は鮭延へ――。

 

「なら、無理だけはしないでくださいね。……それじゃ、いくよ――!」

 

 と、告げつつ、己に気合いを入れるのだった。

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