バベル再興記~転生したら秘密結社の大首領になりました~   作:想いの力のその先へ

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追撃

 一方その頃、ガスパイダーとサモバットは二人のヒロインと自衛隊員たちの手によって、徐々に、徐々に追い詰められていた。

 

「ぐむぅ……。まさかここまでとは……」

「おのれ、自衛隊の新兵器め。きゃつらの装備さえなければ我らの悲願、達成できたものを――!」

 

 そう言う彼らの肉体には複数の弾痕が、あのバトロイドのを解析して創られたライフルの銃弾によって傷が、そこかしこに刻まれていた。

 彼らにとってもライフルの高威力は想定外だった。

 そもそも、事前調査の時点では新型パワードスーツの件しか判明しておらず、それは完全に盲点だった。

 しかも、今回は奇襲のためにバトロイドたちを連れてこれなかったのも仇となった。

 サモバットが装備している光学迷彩。これはとある怪人に搭載予定の試作品であり、本来であれば単体にしか作用しないものを、急拵えで――極端に範囲が狭いとはいえ――周囲にも影響を及ぼすように改良されたものだ。

 それゆえガスパイダーも同行させることが出来たとはいえ、流石にそれで精一杯。バトロイドたちを同行させるのは望むべくもなかった。

 これでもしバトロイドたちも同行させることが出来ていれば――最終的に撃破されていただろうが――それなりの足止めは望めていただろう。

 

 もっとも、それもたらればの話でしかない。

 今の怪人たちにとっては追い詰められていることが現実で、それをどうこうする手立てはなかった。

 だが、彼らとてバベルの怪人としての意地がある。

 やられるかもしれない、といって、はい、そうですか。と納得するほど諦めはよくない。

 ゆえにたとえ刺し違えたとしても最後まで抵抗するのが彼らの意思で意地だ。

 

 ……一つ、彼らにとって無念なことがあるとするならば、いくらリアルタイムで自身らに装着された新型コアのデータがアジトに送られているとはいえ、現物を持ち帰ることが出来ない。というところだろう。

 生のデータもそうだが、現物をさらに解析することで新たなる改良点が見つかる可能性も十分あるのだから。

 

 そうして不退転の覚悟を決める怪人たちだったが、不意に――本来、作戦中には入らない筈の――通信が入る。

 

『ガスパイダー、サモバット両名へ。緊急指令です』

「なんだ、このような時に――!」

『現在地から北に20Km先に廃棄された採石場があります。そこにレッドルビー、ブルーサファイアを誘き出してください――』

「なぜその様なことを……!」

『――最優先命令です。理解できますね?』

 

 それまでなにかと反論していたガスパイダーだったが、通信から聞こえた最後の一言で押し黙る。

 最優先命令、つまり大首領が動いた。という言葉を聞いて。

 即ち何らかの作戦変更があった、と考えるべき事態。それを感じながら、ガスパイダーは己の不甲斐なさに血反吐を吐く思いで返答する。

 

「…………了解、した」

『では、ご武運を』

 

 その言葉を最後に通信が切れる。

 それと同時にガスパイダーは、人の顔があるのならば唇の端が切れるほどに歯噛みする。

 だが、それで現状が変わる訳ではない。今は新たに与えられた指令をこなすしか道はない。

 そして同じく通信を聞いていた筈のサモバットに話しかける。

 

「聞こえていたな?」

「……あぁ、分かっておるとも」

 

 ガスパイダーの問いかけに悔しさを滲ませ、吐き捨てるように告げるサモバット。

 そして彼らは、微動だにしないことで逆に警戒していたルビーやサファイア。自衛隊の面々に告げる。

 

「悪いがここで討たれる訳にはいかなくなった。――もし、我らを倒したい。と言うのであれば追ってくるが良い!」

 

 そう言うと二体の怪人は、サモバットは空を飛び、ガスパイダーはそのサモバットの足を掴むことで即座に撤退行動に入る。それを見た鮭延は――。

 

「……逃がすか! 各員、発砲。弾幕を張れ!」

 

 その指示とともに再び合流した小隊の全てのライフルから、実体弾が放たれる。

 だが、それをサモバットは枯れ葉が舞うようにひらり、ひらり、と躱していく。

 それでも、と撃ち続ける隊員たちだったが……。

 

「……くそ、弾切れかっ!」

 

 ライフルの装弾数の少なさが仇となった。そも、今まで戦闘をして消費していたにも関わらず、ここで弾幕を張ればそうなるのも道理だ。

 しかし、だからといって手負いの怪人たちを逃がす訳にはいかなかった。

 ここで逃がした場合、どんな被害が出るか予測がつかないのだから。

 

 そのため、この中で比較的継戦能力がある二人のヒロインが追撃に名乗りを上げる。

 

「鮭延さん! ここは私たちが追撃します、だから皆さんは一度補給に――」

 

 ……正直、鮭延としては彼女らに危険なことはしてほしくなかった。だが、同時にそれが一番効率が良いことも理解できる彼は、彼にとって苦渋の決断を下す。

 

「二人とも頼みます。こちらも補給が済み次第応援に向かいますので……」

「了解! 安心して、私たちも無理するつもりはないから。それじゃ!」

 

 鮭延を安心させるように、はにかにながら告げるルビー。

 そして彼女とサファイアは、怪人たちを追撃するために飛び出すのだった。

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