バベル再興記~転生したら秘密結社の大首領になりました~   作:想いの力のその先へ

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レオーネと渚

 自衛隊駐屯地から帰還した翌日。渚は静まりかえったバルドル基地の一室で手持ち無沙汰になっていた。

 そもそも、なぜ彼女がそんなことになっていたか。それは――。

 

「……やぁ、待たせちゃったかな」

「い、いえいえ。そんな待ってないですよ」

 

 静まりかえった部屋に一人の少女が入ってくる。

 白髪の、年齢よりも幼く見える少女。渚、レッドルビーの先輩にあたるヒロイン、レオーネだ。

 

「いや、ごめんね。わざわざ時間とってもらっちゃって」

「あはは、……私もレオーネさんの話を聞いてみたかったから」

「そう言ってもらえると、ボクもありがたいよ」

 

 そう言ってクスクス笑う二人。

 互いにとって、互いが気になる存在だったということもあり、一度お話――別に会議などの堅苦しいものではなく、お茶会のようなもの――をしたいと思っていた。

 渚にとってレオーネは、自身がバルドルに所属する前に活躍していたヒロインであるし、レオーネとしても彼女も交戦経験のあるバベルを壊滅させた彼女に興味があった。

 

「それで、なぎさちゃんはたしか……。そう、三年前ぐらいに千草さんにスカウトされたんだよね?」

「ええ、そうですね――」

 

 そうして渚は、千草にスカウトされた後の事についても語っていく。

 

 ――最初期は超能力を増幅させるPDCもなく、一応防具としての変身バックルはあったものの、それ以外は文字通り身一つで怪人たちに立ち向かったこと。

 ――ほどなくして、増幅装置が完成した後は怪人たちとの戦いもかなり楽になったこと。

 ――そうしていくうちに、自身の名前。レッドルビーというヒロインが有名になっていき、バベルから優先的に狙われるようになったこと。

 ――それらを撃退していくうちに業を煮やしたバベルが霞、ブルーサファイアを刺客として送り込んできたこと。

 ――その彼女をはじめて見た時ガイノイドではなく、バベルが誘拐し洗脳した被害者だと勘違いしていたこと。

 ――誘拐された、という勘違いは解消したが、紆余曲折あって彼女が組織を裏切り、こちらに着いたこと。

 ――そして、彼女の情報からバベルのアジトがある場所を把握することになり、二人で奇襲を仕掛け、結果。大首領と副首領を倒し、バベルを壊滅させたこと。

 

 それらの事を聞いたレオーネはなるほど、と納得したように頷いていた。

 しかし、同時に疑問もあるようで、そのことを渚へ問いかける。

 

「そうなんだ……。でも、なぎさちゃん。よく、ヒロインを続けられたね。なんで、そこまでして戦おうと思えたの?」

「……えっとぉ。それ、はぁ……」

 

 レオーネの問いに渚は頬を染め、視線を右往左往させ挙動不審になる。

 そんな彼女を見たレオーネはにたり、とチシャ猫のように笑う。

 

「……ふぅん? やっぱり、好きな人のため。とか?」

「…………はぃ」

 

 レオーネに図星を指された渚は、恥ずかしさからか顔を俯かせて、消え入りそうな声で返事した。

 彼女の態度を見て渚の想い人に対して興味津々な様子のレオーネは、声を弾ませて問いかける。

 

「へぇ……! それで、その人のどこが良いの?」

「あ、あうあぅ……」

 

 レオーネの追撃に、たじたじとなる渚。

 その後、しばらくあ~、だの、う~、だの呻いていたが、意を決したように話し始める。

 

「チカくん、えっと、私の幼馴染みなんですけど、昔から色々と助けてもらってたんです」

「うんうん、それで?」

「私がこの力――超能力をちゃんと使えるようになったのも、嫌いにならなかったのも彼がいたからで、それで――」

「まるで白馬の王子さまみたい、とか?」

「……はぃ」

 

 渚の消え入りそうな返事に、レオーネはきゃー、と黄色い悲鳴を上げる。

 その彼女の声を聞いた渚は、今度は照れた様子で頭を下げる。

 しかし、すぐに頭を上げると――。

 

「だから、千草さんにスカウトされた時、この力でチカくんを、()()()()くんを守れるなら――!」

「へぇ……」

 

 渚が盛周の名前を出した時、背筋に冷たい感覚が流れる。

 

「…………レオーネ、さん?」

「ん? どうしたの?」

 

 一瞬感じた冷たい感覚、それがレオーネから流れてきたと感じていた渚だったが、それがまさしく一瞬であり、彼女がにこにこ、と笑っていたこともあって気のせいだったのかな、と思う。

 

「それじゃなぎさちゃんは、その盛周くんのためにも頑張らないと、ね」

「……はい!」

 

 レオーネからかけられた激励の言葉に、やっぱり先ほどの感覚は気のせいだと判断した渚は元気よく返事する。

 そんな彼女をレオーネは、にこにこ、と笑い――。

 

 

 ――そして同時に感情のこもらない瞳で見つめるのだった。

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