バベル再興記~転生したら秘密結社の大首領になりました~ 作:想いの力のその先へ
自衛隊駐屯地での騒動から数日後。盛周は立塔学院高校の廊下で黄昏ていた。
「……はぁ」
なんとも面倒なことになった、と内心思っている盛周。
そんな彼の背中に、とん。と誰かが抱きついてくる。
「チーカくんっ、どうしたの?」
盛周へ抱きついてきたのは渚だった。
彼女にとって盛周に抱きつくのはもはや挨拶に等しく、毎回何気ない調子でやってくる。
だが、盛周としては幼馴染み――しかも見目麗しい――が抱きついてくるのは、少し気恥ずかしいというのもあり、正直、少しこまっている部分もある。
なにせ、渚は抱きついてくる時に毎回、意識してか、無意識かは分からないが、自身の胸を押し付け、さながらマーキングするかのように抱きついてくるからだ。
それが、彼女の中にある盛周に対する好意の発露、というのは理解している。
盛周としても、渚が、幼馴染みが自身を異性として好いているのは分かっているのだ。
……ただ、自身が転生者で前世の年齢と合わせると親子ほど歳が離れていることと、なぜ彼女が自身を好いているのか、その理由が分からないこと。そして何より、バベル大首領とヒロインという敵対関係にあることから、気持ちに答えることに尻込みしているのが実情だが。
そんな盛周の内心を知らない渚は、不思議そうな顔をして盛周の顔を覗き込む。
そんな彼女の、昔から変わらない小動物のような仕草に盛周は盛周は苦笑する。
昔からこいつは変わらないな、と思いながら。
「なんでもない、なんでもないよ」
「――わぷっ!」
渚をなだめるように頭を撫でる盛周。
唐突に頭を撫でられた渚は、最初は驚いていたが、途中からは頭を撫でられることが気持ちいいのか、目をほそめてリラックスしている。
そんな彼女の様子を見て微笑む盛周。
しかし、すぐに思案顔に戻ると考えにふける。
(とりあえず時計の針を進めたのはいいが……。さて、どうしたものか)
――前回の自衛隊駐屯地襲撃。それにより、盛周たちが目標としたことの半分は達成された。だが、同時に彼にとって頭の痛い問題も発生していた。
一言で言うなら、前回の襲撃失敗の件で楓と四天王最後の一人。
彼女らの関係性がかなりギクシャクしていた。
まぁ、それをある意味仕方ない。
なにせ、そもそも襲撃のための情報は最後の一人からもたらされ、それをもとに計画を策定したにも関わらず、結果は失敗。
しかも盛周を、大首領を危険にさらす、というおまけ付きで、だ。
いくらイレギュラーが発生したとはいえ、はいそうですか。と、納得できるものではなかった。
特にもとから二人――というよりも、楓が一方的に――の仲が悪いのもあり、今の関係性は険悪どころの話ではない。
だからといってどちらかを更迭するほどの余裕は今のバベルには存在しない。
それに何だかんだで、二人とも自身の仕事に関しては全力で行っていることから、そもそも罰せられるだけの理由すらないのだ。
つまり、端的に言って八方塞がりと言ってよかった。
(……まったく、人間関係というのは面倒なもんだ)
半ば現実逃避のように考える盛周。事実、明確な解決法が存在しないのだからしょうがない。
とはいえ、一時的になら方法もなくはない。
単純に盛周が大首領の権限をもって命令すればいいだけだ。
ただ、その方法は本当に一時しのぎにしかならず、しかも二人の間にしこりを残すことになるのではっきり言って悪手でしかない。
それが分かるだけに盛周は頭を抱えているのだ。
(まぁ、今は成り行きを見守るしかない、か……)
結局、最後にはそこに行き着くか。と考えを閉める盛周。
そんな風に考え込んでいた盛周は気付いていなかったが……。
「……はふぅ、ちか、くぅん――」
一人考え込んでいる合間もひたすら撫で続けていた結果、渚は気持ちよさから完全に蕩けた顔で彼を見つめていたのだった。