バベル再興記~転生したら秘密結社の大首領になりました~   作:想いの力のその先へ

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想定外

 渚や霞、レオーネと意見交換し、解散したあと。千草はバルドル基地内に宛がわれた私室に戻ると頭を抱えていた。

 

「あぁ、もう。想定外にもほどがあるわね……!」

 

 そう言いながら彼女は頭を掻くと机に突っ伏す。

 なぜ彼女がそのような奇行に走っているのかというと――。

 

「ちゃんと背後関係洗ってた筈なのに、思いっきり漏れてるじゃないの……。シナル・コーポレーションがバベル傘下とか、聞いてないわよ……」

 

 彼女が言うとおりレオーネにもたらされたシナル・コーポレーションについてだった。

 と、いうのもバルドルもまた少なからずシナル・コーポレーションとの関係があったのだ。その関係とは……。

 

「まさか、バベル壊滅の実績を餌にスポンサーをつけてもらったら、それがバベル関係の企業とか、なんの冗談よ。本っ当に……」

 

 つまり、そういうことであった。

 もっとも、それだけなら()()なんとかなった。しかし、問題はそれだけではなかったのだ。

 

「何より一番の問題は、あの企業。()()()()()()でスポンサーに就いてるってことよね……」

 

 そこまで言って、千草はうわぁぁぁ。と吠えながら仰け反る。それと同時に彼女の座っていた椅子からぎしり、と嫌な音が……。

 その音を聞いて一先ず冷静さを取り戻した千草。しかし、その顔は苦悶の表情に満ちていた。

 

「これがまだ。政府が気付いていない、というだけだったら救いがあるのだけど。もし、気付いて放置しているのなら……」

 

 本当にどうするべきなのか、と再び頭を抱える千草。

 ただ気付いていないだけなら、告発すればそれで治まる話だが、もし気付いていた場合。

 しかも、気付いていた場合でも、敢えて泳がせている場合と、万が一。本当に万が一、何らかの裏工作を受けている場合で対応が異なってくる。

 そして今、政府がどの場合なのかが分からないのだ。……まさか、バベルに侵食されている可能性がある状態で、バカ正直に問いかけるわけにもいかないわけで。

 

 さらに言えばシナル・コーポレーション代表取締役の葛城朱音。彼女の立場も問題だった。

 確かに千草の義娘、霞の情報では旧バベルのNo.3だというのは正しい。ただ――。

 

「彼女、あくまで裏方に徹していたから、これといった犯罪行為に手を染めてないみたいなのよねぇ……。まさか、バベルに所属していた可能性がある。なんてことで、警察や自衛隊が動くことは流石に無理があるし……」

 

 そう、彼女。朱音は旧バベル時代でも主に事務方面で活動していたため、これといった情報が存在しないのだ。

 これがまだ、旧バベル秘密基地で情報を取れていたら話は違っただろう。

 しかし、最終決戦の余波で破損したか、もしくは情報秘匿のために破壊されたか、ともかく秘密基地のコンピューターからデータを回収できなかったのだ。

 つまり、葛城朱音の情報はあくまで義娘の霞。ブルーサファイアの証言のみで、疑惑止まりなのだ。

 

 そして疑惑止まりの人間を罰することは彼女らはもとより警察、自衛隊でも不可能。はっきり言ってしまえば八方塞がりだった。

 もちろん千草は霞が嘘をついている、などと欠片も思っていない。が、確たる証拠がない以上動けないのもまた事実。

 もしも、この情報をもたらしたのが渚やレオーネであれば多少動ける確率は上がったかもしれない。だが、ブルーサファイア。霞は千草と養子縁組、家族となっている。これが厄介だった。

 つまり、千草(母親)(可愛い義娘)の寄越した不確かな情報を信じて行動した、という痛くもない腹を探られる可能性が出来てしまったのだ。

 

 むろん、千草も霞もそんなつもりはない。ないのだが、その可能性がある、という時点で問題になってしまう。

 それで組織を私物化した、として千草が罷免される。というのが、まだましな話で、最悪の場合。ブルーサファイア、霞がバルドルという組織から排除される可能性すらある。

 そうなってしまったら、単純に考えても戦力は半減(レッドルビーのみ)になり、もし今後バベルが本格的に活動した場合、破壊活動を防ぐのが困難になる可能性が高い。

 流石にそんなリスクを背負ってまで追求する蛮勇は、千草も持ち合わせていなかった。

 しかし、だからといって放置するのも問題。と、彼女の頭の中ではそんな考えが堂々巡りしていた。

 

「はぁぁぁ……。本当にどうしたものかしら……」

 

 千草の私室にため息とともに重たい空気が漂う。

 しかも、悪い時には悪いことが重なるもので――。

 

 ――基地内に警報が響く。

 

 バベル襲撃の合図だった。その音を聞いた千草は痛みだした頭を振る。

 そして、己に気合いを入れるように頬を叩く。

 そこには、先ほどまで悩みに悩んでいた女性の顔ではなく、バルドル司令官の顔があった。

 

「ともかく、今は襲撃に対処するのが先ね!」

 

 そう言って彼女は足早に指令室へ向かうのだった。

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