バベル再興記~転生したら秘密結社の大首領になりました~   作:想いの力のその先へ

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新兵器、予想外の威力

 戦闘態勢に入った二人のヒロインと、二体の怪人。

 最初に動いたのはガスパイダーだった。

 

「まずは分断する! フシュルルルルルルッ――!」

 

 その宣言とともにガスパイダーは二人に向かって粘着糸を放つ!

 

「……くっ!」

「なめないでよねっ!」

 

 粘着糸をそれぞれ回避するレッドルビーとブルーサファイア。しかし、粘着糸が二人の間を通るように放たれたことから、ガスパイダーの宣言通り二人の距離が離される。

 そして間髪いれず今度はサモバットが動く。

 

「ふはははははっ! 今度こそ決着をつけるぞ、ブルーサファイア!」

 

 そう言って飛翔したサモバットはブルーサファイアに突撃!

 ガスパイダーの糸を回避したばかりの彼女は、体勢を立て直す暇もなく――。

 

「……しまった!」

「――付き合ってもらうぞ、ブルーサファイア!」

 

 サモバットに突撃され、さらには拐われるように大空を飛翔する。そして、草原にはレッドルビーとガスパイダーだけが残された。

 物理的にヒロインたちの分断に成功したガスパイダーは、改めてレッドルビーと相対する。

 

「これでここには貴様と二人だけ……! いつぞやの雪辱、はらさせてもらうぞ、レッドルビー!」

「……ふん、だ! また、返り討ちにしてあげるんだからっ!」

 

 そう言うと二人は申し合わせたように、互いに拳を振り上げると叩きつけあう!

 その衝撃で辺りには暴風が吹き荒れ、ばたばたとレッドルビーの外套と髪をなびかせる。

 

「……っ!」

 

 まさか、ガスパイダーが自身と拳を打ち合わせ、さらには一歩も引かないことに驚きをみせるレッドルビー。

 少なくとも、一番最初に戦った頃はPDCを持たないレッドルビーと互角程度の力しかなかったのだから、最早別物といって良い程パワーアップしていることになる。

 

(……確かに、この間の戦いで仕留めれなかったから、パワーアップしてるのはわかってた。けど……!)

 

 内心驚きながらもレッドルビーはさらに拳を、脚を叩きつけるように連撃を加える。

 だが、ガスパイダーはそれに合わせるように拳を、腕を、膝を、脚を使い防いでいく。

 それはまるで、レッドルビーの行動パターンを完全に把握したいるようで――。

 

「ふははっ、無駄、無駄ァ! レッドルビー! 貴様は手札を晒しすぎたのだぁっ――!」

 

 ガスパイダーの言うとおり、これまで行われたレッドルビーとの戦いで彼女の行動パターン、いわゆる癖とでもいうべきものをバベルは研究し、怪人たちの人工知能にアップデートしていた。

 もちろんその戦闘経験には、ガスパイダーやサモバットたち旧怪人たちのデータも使われていたため、今この場に於いてはかなりの確度をもって使用できるデータとなっている。

 即ち、ある意味に於いて現在、ガスパイダーたちからすれば未来予知に近い精度で彼女の攻撃を回避できる状態にあった。

 むろん、それはあくまで癖であり、彼女が気を付ければある程度やり方を変えて攻撃すれば防げる程度のものでしかない。

 しかし、ならばなぜガスパイダーがそのようなことを敢えてレッドルビーに告げたのか。それは――。

 

(……っ、本当に? でも、ガスパイダーが回避できてるのも確かだし……)

 

 いわゆる盤外戦術。レッドルビーから冷静さを少しでも奪うのが目的だった。

 これがもしレッドルビーが冷静であったのなら、すぐさまガスパイダーが自身に揺さぶりをかけようとしていることに気付き、一笑に付しただろう。

 だが、今の彼女は相棒であるブルーサファイアと分断され、なおかつ何度か勝利したことのある怪人に攻撃を回避され続け、焦りが出始めていた。

 そして、その状況でガスパイダーの騙りである。

 今までのことから、もしかして本当に……? と、疑心暗鬼になるのも仕方ない状況に陥っていた。

 

 そして疑心暗鬼に陥る。言い方を変えれば戦いの最中、別のことに気を取られているということは即ち、敵に対して隙をさらすに等しい。

 しかも、このガスパイダーには彼女が知らない能力がある。

 もともと搭載される予定だったが、性能の関係で出来なかった能力が。

 

「ふははっ、もらったぞレッドルビー! ――カアァァァァァァァァァ!」

「な、なん――?!」

 

 突如としてガスパイダーの口部分からガス状の気体が噴射される。

 それに驚くレッドルビー。しかも、気が動転していたこともあり口を塞ぐことも出来ず、吸い込むこととなってしまう。

 

 ――どくん。

 

「は、ぁっ……!」

 

 ガスを吸い込んだ瞬間、レッドルビーは身体に違和感を覚える。

 ……身体が、熱い。それと痺れる感覚がある。だが、痺れは身体を拘束するような感じではなく、むしろ……。

 

 ――どこか心地よい、と感じてしまう。

 

「なん、なの。これぇ……」

 

 いきなり表れた自身の身体の異常に困惑するレッドルビー。

 しかし、この場に他の人間。あるいはブルーサファイアがいたら彼女がどのような状態にあるか気付いただろう。

 

 今の彼女、レッドルビーは悩ましげな表情を浮かべ頬を紅潮させ、どこか艶やかさを感じさせる。端的に言ってしまえば少しばかり性的な興奮状態に陥っていた。

 もちろん、それは普段ならあり得ない。そのあり得ないことの原因となったのが、先ほどガスパイダーが噴射したガスだ。

 

 かつて盛周が奈緒に確認したように、ガスパイダーは複数の効果を持つガスを噴射できる能力を初期から構想されていたが性能不足で搭載できず、今回の性能上昇によってようやく付与出来るようになった。

 そして今回、ガスパイダーがレッドルビーに使用したガスは感度向上。身体全体が敏感になる、というものであった。

 ……まぁ、ガスパイダーに彼女を辱しめる意図はなく、今回の場合。ただ単に非殺傷のガスがそれしかなかったというオチだったりする。

 そもそも、レッドルビー。真波渚が大首領たる盛周の幼馴染みだということから、彼女の命を積極的に奪おうというバベル構成員は、現状いない。

 それは怪人たちも共通の認識であったため、ガスパイダーは毒ガスや神経ガスを使用するのを躊躇ったのだ。

 そして催涙ガスでは無効化できない可能性もあったため消去法で感度向上のガスを使用した。もっとも、ガスパイダーとしても彼女の状態はいささか予想外だったようで、多少狼狽えていた。

 

「お、おぅ……。まさか、ここまでとは……」

 

 双方にとって予想外のことで、辺りにはなんともいえない空気が流れるのだった。

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