バベル再興記~転生したら秘密結社の大首領になりました~   作:想いの力のその先へ

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別たれた者

 千草の話に頷いていた渚と霞。その横でレオーネは頭の中で考えを巡らせていた。と、いうのも千草が言った不審な事件。それが盛周の言っていた新たな勢力によるものだ、という可能性を捨てきれなかったからだ。

 

(でも、いくらなんでも早すぎる……。まぁ、仮に宇宙人や異世界人がこちらの事情を汲んでくれる、何て考えるのはナンセンスだけど)

 

 そう思いながら、苦虫を噛み潰した顔になるレオーネ。

 もし、本当に新しい勢力の侵攻ならこちらが完全に後手にまわった形になるから、そうなるのも仕方ない。

 

 霞と渚、二人の返事に安堵していた千草は、そんなレオーネの表情を見て心配そうに声をかける。

 

「レオーネちゃん、大丈夫?」

「えっ、あ、うんっ。大丈夫だよ、千草さん。うん、大丈夫」

 

 自身の内心を見抜かれたのか、と一瞬ヒヤリとしたレオーネ。しかし、千草の口調は単純にこちらを心配するものだったため、安堵しながら答えた。そして彼女は、余計な追求をされないためにも、さらに一つの提案をする。

 

「そ、そうだ。ボクの方でもその、不審な事件? を、調べてみるよ。それにもしかしたら別口から情報が降りてくるかもしれないし、ね?」

「そう? そうね……。お願いして良いかしら? レオーネちゃん」

「うん、任せてよ。こういうのはボクの分野だしね」

「ええ、ありがとう」

 

 そう言って互いに笑顔を浮かべるレオーネと千草。

 その笑顔は、かつての思い出を懐かしむような顔でもあった。

 そうして笑顔を浮かべていたレオーネであったが、善は急げとばかりに部屋から出ていこうとする。

 

「それじゃあ、早速調査のために行くとするよ。またね、千草さん。それに、なぎさちゃんとかすみちゃん」

「ええ、行ってらっしゃいレオーネちゃん」

「頑張ってくださいね、レオーネさん!」

「御武運を」

 

 千草と、渚と霞。三人から激励を受けたレオーネはそのまま部屋を後にするのだった。

 

 

 

 

 彼女たちのもとを離れたレオーネは、バルドルの基地内通路を足早に歩いていた。

 それでもすれ違う職員たちに会釈など軽い挨拶はしているが、やはり顔に焦りが滲んでいるのか、職員たちから怪訝そうな顔で見られていた。

 そんな中、歩いているレオーネだったが不意に声をかけられる。

 

「あれ、レオーネちゃん? どうしたの、何か重大な用事でもあった?」

「……えっ? あっ、水瀬さん」

 

 レオーネに声をかけた人物。それは千草の業務を代行している筈の歩夢であった。

 なぜ、彼女がここに? と、訝しむレオーネ。

 しかし、彼女の手元にビニール袋。そしてその中には食べ物。はっきりと言えば弁当が入っていたことから食事休憩だということが分かった。

 それを見たレオーネは、少し心配そうに歩夢を見る。

 

「水瀬さん、今から食事なの? 大変そうだね……」

「え、ああ、これ? まぁ、必要なことだからね」

 

 そう言ってふんわり、と微笑む歩夢。その言葉に気負った様子はなく、彼女の本心からでた言葉だというのが分かった。

 そんな彼女を見てレオーネは、少し罪悪感を覚える。なんと言っても彼女は今、スパイとしてここにいる。それなのに歩夢も千草も、レオーネのことは一切疑いもせず、仲間として接してくれている。

 ……あるいは、彼女たちからしたら少し歳の離れた妹、あるいは娘として接しているつもりなのかもしれない。

 

 昔、彼女らとともにヒロインとして活動していた時は分からなかった。それも仕方ない、家族というものを知らなかったのだから。

 だけど、今なら分かる。きっとあの二人はそう思って接してくれていたというのが。

 ()()()という家族を手に入れた今のレオーネなら――。

 でも、今さら分かっても遅い。もう、既に道は別たれたのだから。

 今の三人は、バベルとバルドルに所属する敵対者。それ以上でもそれ以下でもない。それでも――。

 

「もう、水瀬さん。あんまり無理しちゃダメだからね?」

「大丈夫、レオーネちゃん。ちゃんと休む時は休んでるから」

 

 彼女たちを心配する。その程度なら許されるだろうか……?

 歩夢とともに微笑み、談笑しながらもレオーネは内心で、そう思うのであった。

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