バベル再興記~転生したら秘密結社の大首領になりました~   作:想いの力のその先へ

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ヒロインたる所以、渚の覚悟

 水瀬歩夢はルビーとサファイア、そしてレオーネが戦い始めてから一連の模様を固唾を呑んで見守っていた。

 ルビーとサファイアが強いのは理解している。しかし、それでも彼女。レオーネには敵わないと思っていたからだ。

 そして模擬戦の流れは彼女の予想通りに推移していた。唯一予想外のことがあるとすれば……。

 

「レオーネちゃん……。いくらなんでも――」

 

 そう言いながら自身の顔が引きつっていることを自覚する歩夢。そうなってしまうほどに三人の戦いは一方的だった。

 歩夢としては、レオーネが自ら提案したこともあって、あくまで教導のように手加減しながら、少しづつ強さのギアを上げていくのだと思っていた。しかし、現実は――。

 

「あの娘、最初から本気出してるじゃない……」

 

 そう、一切の手加減なしで二人を相手にするレオーネ。

 そんな彼女を見て、歩夢は先ほどの言葉が無意識のうちにこぼれでてしまっていた。

 だが、しかし。それでも歩夢はまだ少し安心している。

 なぜなら、確かにレオーネは本気を出している。が、いまだ()()は出していない。

 恐らくは、それが唯一の救い。そう思っていた矢先、歩夢は眼前の光景を見てさらに顔を引きつらせることとなる。

 

 

 

 

 

 

 

 それは強者の絶対的な余裕か。レオーネは相手となるルビーとサファイアの二人を油断なく見つめながらも、彼女たちが体勢を立て直すのを見守っていた。

 そのことを察していたルビーとサファイア、二人は屈辱を――――感じてはいなかった。

 特にルビーはレオーネに対して感謝しているともいって良い心境だった。なぜなら――。

 

「……こふっ。ふ、ぅ……。もう、大丈夫。サファイア、ありがとう」

 

 そう言って支えてもらっていたサファイアから離れると、地面を力強く踏みしめるルビー。

 その目はギラギラと、好戦的に、そしてかつてバベルが壊滅する前、怪人たちと戦うときのように、挑戦者の瞳でレオーネを見つめていた。

 

 そう、ルビーはレオーネという絶対強者を前にして初心を、かつてバベルと戦っていた時の気持ちを思い出していた。

 

「……ありがとうごさいます、レオーネさん」

「……ん?」

 

 突然レオーネに頭を下げ礼を告げるルビーと、なんのことか分からず困惑するレオーネ。

 そんな彼女をよそにルビーは、渚は己が感じたことを吐露する。

 

「私はバベルを倒したから、大首領を倒したから。その実績を笠に着ていつの間にか油断。……いいえ、驕っていた」

 

 そのルビーの独白を興味深そうに聞き入るレオーネ。特に彼女もまた、似たようなことがあったのだからその感情は一入だろう。

 そんな彼女をよそにルビーの独白は続く。

 

「でも、違うんだ。バベルを倒したのは私一人の力じゃない。サファイアが、千草さんが、歩夢さんが、そして――」

 

 そう呟きながら、ルビーの脳裏には一人の男。想い人である盛周の姿が描き出される。

 

「何より、彼を守りたい。そんな気持ちがあったから、私は戦えた。バベルという強大な組織に勝てたんだ。でも私は――」

 

 ルビーは今までの自身、驕り高ぶっていた己にいらだつように歯が噛み砕けそうなほどに噛みしめ、ギリ、と拳が震えるほどに握りこんでいる。

 

「……私はいつの間にか、その気持ちを失くしてた。ううん、私が、私こそがバベルを倒したヒロインなんだ。なんて驕り高ぶっていたんだ……!」

 

 彼女に、ルビーにとってそれは許されざる蛮行だった。

 自身のだけではなく、人の手柄まで自身もののように扱うことだけでも恥知らずであるのに、それを誇るなどと……。さらにいえばそんな状態で想い人に、盛周に自信を持って顔を合わせるなどとどうしてできようか。

 

 そんな時にレオーネと、彼女と戦うことでルビーはかつての気持ちを、初心を取り戻すことが出来た。

 それがなければ、いつかルビーは敗北を。……いや、敗北ならまだましだ。それ以上に、ルビーはいつか()()に成り果てていただろう。

 

 そもそも、ヒロインが英雄(ヒロイン)たる所以とはなにか?

 

 ――力があるから?

 否。

 ――正しい行いをしているから?

 否。

 

 力があるだけなら、そもそもヒロインなどとは呼ばれない。

 では、正しい行いをした、というが。では正しい行いとはなんだ?

 そも、正しさなど人の数だけ存在する。その中で正しい行いなどといっても意味はないだろう。

 

 ならば、ヒロインがヒロインたる要因とは?

 それは、誰かを守りたい。そう思える意思だ。

 

 そう思える心がなくなれば、いずれ彼女らはただの暴力装置。怪人と同じ存在へと成り果ててしまうだろう。

 だからこそ、ヒロインには英雄には心が、そして大切に思える、思ってもらえる人たちが必要なのだ。だから――!

 

「貴女には本当に感謝してます! そして、その感謝の気持ちを伝えるのなら――!」

 

 そう言いながらルビーは力強く構える!

 彼女はヒロインであり、レオーネもまたヒロイン。ならば、彼女に真の意味で感謝を伝えるなら、己がヒロインとして相応しい。誰かを守れる力を示すべきだ。だからこそ――!

 

「ここからは、本気の本気で!」

 

 その言葉とともにPDCが起動し、ルビーの身体がサイキックエナジーに包まれる。

 それがルビーの覚悟。ルビーの想い。

 私は貴女の後輩として、恥ずかしくない姿をみせるのだ、という意思の現れ!

 そのことを感じたレオーネは破顔する。そして――!

 

「……行きます!」

「――来なさい!」

 

 その言葉とともに三度、二人のヒロインは激突する! だが、それは今まで以上に激しさが増したものだった。

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