バベル再興記~転生したら秘密結社の大首領になりました~   作:想いの力のその先へ

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レオーネの秘密、霞の苦悩

「破、あぁぁぁぁぁぁぁぁ――――!」

 

 レオーネに突撃するルビー。そして彼女はレオーネの目前にて身体を深く沈みこませると――!

 

「てぇぇぇぇいっ――!」

 

 ――渾身のアッパーカット!

 しかし、レオーネとてその程度は予測していたようで後ろへスウェーすることで躱し、今度はこちらの番、と――。

 

「……っ!」

 

 攻撃のためにデスサイズを振るおうとして、なにか嫌な予感を感じたレオーネは、そのまま、さらに後ろに飛び退く。

 そして彼女の直感は正しかった。なぜなら先ほどまで彼女がいた地点。そこに模擬弾とはいえ弾丸の雨。さらにはサイキックエナジーまで降り注いだのだから。

 

 先ほどまでレオーネがいた場所に着地するルビー。その彼女のとなりには縦断の雨を降らせた犯人であるサファイアの姿もある。

 サファイアは、一人先に仕掛けたルビーをたしなめるように声をかける。

 

「ルビー、一人で先走りすぎですよ? 今は貴女と私でチームなんですからね?」

「あっはは……。ごめんね?」

 

 サファイアの苦言に、ルビーは苦笑いを浮かべて謝罪する。

 そんな二人を見つめているレオーネ。

 そして彼女はデスサイズを振り上げる。だが、三人の合間はどう考えても斬撃が届く距離ではない。

 

 ……なのだが、ルビーの直感が特大の警鐘を鳴らす。もし、そのままここに留まれば大惨事になる、と。

 それを感じたルビーは、言葉を紡ぐ暇も惜しい、とサファイアを蹴り飛ばすと、己もまたその場から離脱。

 その素早い行動を見たレオーネは称賛の声を上げる。

 

「……へぇ、感が良いこと」

 

 そのままレオーネはデスサイズを振り下ろす。すると、振り下ろした風圧が凄まじく、突風が――否。

 

「……なっ」

 

 自身の直感を信じたルビーは、目の前で信じ難い光景を目にする。

 レオーネが放ったデスサイズによる突風がどんどんと強まり、渦を描くように回転。端的にいえば竜巻となって襲来。もし、二人がまだその場に留まっていれば、なす術なく吹き飛ばされていただろう。

 

「……っ」

 

 事実、急に蹴り飛ばされたサファイアは、ルビーに文句を言おうとして、今の光景を見て絶句している。

 それは今の規格外の攻撃もそうだか、それ以上にレオーネには、ルビーが持っている超能力や、ガイノイドであるサファイアなどと違い特殊な能力を持っていない筈なのだ。

 にも拘らず、今回の攻撃だ。

 サファイアの頭の中では、今、高速に思考が回転。あらゆる可能性を精査している。

 だが、彼女が悩んでいる答え。それは思わぬところからもたらされることになる。

 

「……ふふ、どうやらボクがこんな芸当を出来ることに驚いてるみたいだね?」

「……レオーネさん?」

「君たちが疑問に思うのも無理はないよね。なんてったって、ボクは特殊な能力を持ってる訳じゃないからね」

 

 そう言いながら得意気な顔をするレオーネ。

 そして、彼女は今起こした現象のカラクリを説明する。

 

「……確かに、ボクはなぎさちゃんのような超能力()持ってない。精々()()()()()()()()()()()()()だけさ」

 

 そう告げて不適な笑みを浮かべるレオーネ。そして彼女は決定的な言葉を口にする。

 

「気、オーラ、プラーナ……。ま、呼び方はなんでも良いけどね。いわゆる生き物がもとより持つ生命力を使ってあらゆる能力を強化してるのさ」

 

 今レオーネが言ったこと、それこそが彼女自身が持つ高い身体能力の秘密。その一端であった。

 その言葉を聞いたサファイア、霞は苦々しく顔を歪める。

 彼女の言葉、それが真実だとするならば、それは――。

 

「……そんな、馬鹿げたこと――!」

 

 ガイノイドとして、人を越える存在としてバベルに産み出された筈の己が存在意義を否定されるに等しい。

 そんなこと、到底容認できるものではない。

 

 ルビーに負けるのはまだ良い。彼女には超能力という理外の力を持っている。

 だが、レオーネが言う力。生物が持つ普遍的な力。彼女が持つ力がそれだけだと言うのなら……。

 

「そうなったら、私は……!」

 

 ――ブルーサファイア、南雲霞はガイノイドである。

 で、ある以上彼女は身体的な能力の向上は望めない。なぜなら、彼女は生まれた時点で既に全盛期の、もっとも力を持つ状態でデザインされているのだから。

 もちろん、戦闘経験を積むことで技術的な成長。身体の動きを最適化させるなどの成長は望める。……だが、それだけだ。

 大元の力である身体能力が成長しない以上、絶対途中で頭打ちとなってしまう。それではいずれ皆の足手まといに……。

 

 ――違う!

 

 今はそんなことを考えている状況ではない。そのことを思い、サファイアは改めて油断なくレオーネを見据える。

 今は私に出来ることをするだけ。それだけを思い。

 

 

 

 サファイアがそんな葛藤を抱いている合間にも状況は刻一刻と変化していた。

 

「ふっ……! つあぁっ!」

「疾っ! ……やるね!」

 

 ルビーとレオーネ。二人はダンスを踊るように互いを攻撃し、回避している。

 実際、レオーネがデスサイズを振るうたび、床や壁が斬り裂かれるもののルビーには一切当たらず。逆にルビーが攻撃に転じた時、攻撃の余波によりあらゆるところが粉砕されるものの、その攻撃はレオーネに届かない。

 幾度も繰り返される二人の攻防。しかし、それは意外なところで終わることとなる。

 

『二人とも、ストップ、ストォォォップ!』

 

 模擬戦場内に響く歩夢の切羽詰まった声。それに反応して思わず手を止めるルビーとレオーネ。

 レオーネの、彼女としては、ようやく身体が温まってきた状態での制止に不満を持ち、文句を言おうとして……。

 

『ちょっと、貴女たち! バルドルの基地を崩壊させるつもり?!』

 

 次に聞こえてきた歩夢の叱責に閉口する。

 そして、ルビーもまた冷静になった状態で当たりを見て絶句。

 あちらこちらで部屋の中が原型をとどめないほどに破壊され、まるで台風一過後の被災地の様相を呈していた。部屋がこの状態なら歩夢が怒るのも無理はない。と、思わず納得するルビー。

 

 そして彼女たちは互いを見つめ、苦笑いを浮かべると、ともに武器を納めるのであった。

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