バベル再興記~転生したら秘密結社の大首領になりました~   作:想いの力のその先へ

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やりすぎたこと

 奈緒に後の事を任せ、盛周は基地内部にある自室へ帰還していた。

 彼は部屋に入ると、専用に用意されている執務机につく。席について人心地ついた盛周は、今後の事について思案する。

 

(……ブルーサファイア、霞についてはこれで最低限問題ないだろう。問題は――)

 

 そこまで考えた時、彼の背中に衝撃とともに、柔らかいものが押し付けられた感触が走る。

 

「えへへ、ご主人さまぁ。ただいまっ!」

 

 彼の背中には満面の笑みを浮かべたレオーネ。尻尾があれば、ぶんぶん。とご機嫌に振られているのが分かりそうなほど、上機嫌な彼女の姿があった。

 彼が背中に感じた衝撃は、レオーネが抱き着いたため、そして柔らかいものは、彼女の胸が押し付けられたのが原因だった。

 ……いくら彼女が、他の者に比べて貧相な身体つきだといっても、流石に多少の、女らしい肉付きはしている。

 だが、彼は幼馴染みの渚から似たようなことを繰り返されていたため、良いか悪いかは別として、多少の事では動じないようになってしまっていた。

 

 彼は部屋に潜んでいた。恐らく、盛周にドッキリを仕掛けるつもりであったのだろうレオーネを見て嘆息する。

 盛周の反応に不満そうなレオーネは頬を膨らませる。

 

「むぅ……」

「……レオーネ」

 

 しかし、盛周に呼び掛けられたことで彼女の機嫌は治り、ぱぁ、と笑顔を浮かべる。

 

「うんっ、ご主人――」

「そこに正座」

「――さま。って、へ……?」

 

 しかし、続いた盛周の正座という指示にレオーネは目を白黒させる。何せ彼女からすれば怒られる原因など全く思い付かなかった。にもかかわらず、盛周から底冷えする声をかけられる意味が分からなかった。だが、そんな考えは盛周には関係ない。

 

「……俺は正座しろ、と言ったが?」

「は、はいっ!」

 

 盛周のドスが効いた声に、レオーネは慌てた様子で盛周から離れると、ちょこん。と身体を小さくして座る。

 盛周の顔を恐る恐る覗き込むレオーネ。彼女の顔は不安とストレスで青ざめている。

 そんな彼女を見て再び嘆息する盛周。そして彼はレオーネに対して優しく、しかして問い詰めるように語りかける。

 

「……どうやら随分と好き勝手やったようだな?」

「……好き、勝手?」

 

 盛周の言う好き勝手という言葉に思い当たることがないのか、首を捻っていた。

 しかし、次に発せられた盛周の言葉で凍りつくことになる。

 

「渚の、レッドルビーの件。と、言えば分かるか?」

「…………ひぇっ」

 

 盛周の声に込められた沸々とした怒りを感じ取ったレオーネは、小さく悲鳴を上げている。

 思いっきり心当たりが、というよりも心当たりしかなかった。

 

 何せ、渚が倒れた時。彼女の近くに置いてあった資料。それを用意したのは他ならぬ彼女。レオーネの仕業であった。

 そんな彼女にとって、盛周が怒る意図はともかく、原因は容易に想像ついた。

 それ故に彼女の、レオーネの顔は蒼白になる。どう考えても今回の件。盛周の逆鱗に触れてしまっていた。

 盛周のぶちギレぶりに戦々恐々としていたレオーネは、おずおずと手を上げて話しかける。

 

「あのぉ……。えっと、そのぉ……」

「……なんだ?」

「ぴぇっ……」

 

 話しかけたまでは良かったが、盛周のドスの効いた声に思わず涙目になり、悲鳴を漏らすレオーネ。

 しかし、それではいつまで経っても話は先に進まず、彼女は数回、深呼吸をすると覚悟を決めたように問いかける。が、彼女が感じていた極度の緊張と、ストレスによって思わぬ事態が起こる。

 

「……えっと、なふぃ――!」

 

 ――がり、と舌を噛んだ。

 

 その証拠に、彼女は口元を手で押さえると、痛みでぽろぽろと涙を流している。

 そんな彼女を見て毒気を抜かれたのか、盛周はため息をつく。

 そして彼の様子で色々と察したレオーネは、蒸れたリンゴのごとく、顔どころか、耳まで真っ赤に染まっていた。

 

 そのまま、二人の間には何とも言えない不思議な、弛緩した空気が漂う。

 弛緩した空気を振り払うため、今度こそレオーネは盛周に問いかける。

 

「それで、その……。なぎさちゃんは――」

「……ふぅ、彼女が――。霞が迎撃に出てきた段階。その時点では、まだ目を覚ましていなかったそうだ」

「……っ」

 

 盛周が発した言葉に息を呑むレオーネ。

 なぜ、盛周がそこまで詳細を知っているのか?

 それは、霞がバベル基地に運ばれてきた当初。奈緒が彼女の診断をするついでに直近の記憶を覗いたことが要因だった。

 そして、その事実に気が動転するレオーネ。

 

「ボ、ボクはそこまでするつもり――」

 

 彼女の様子が明らかにおかしい。そのことに気付いた盛周は今一度、彼女へ問いかけることになるのだった。

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