バベル再興記~転生したら秘密結社の大首領になりました~   作:想いの力のその先へ

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親愛と親バカ

 盛周がレオーネに詰問している頃、奈緒は制服を脱がされ半裸となった霞のメンテナンスを行っていた。

 とはいえ、実際のところ彼女の状態を見た奈緒からすると、磨耗した部品の総入れ替え。もはや新造と言って良いほどの消耗具合だった。

 

「やれやれ、ここまでなってるなんて……。無茶しすぎだよ?」

 

 そう言いながら作業する奈緒。その表情は慈愛に満ちていて、とても敵対者に対する処置を行っている風には見えなかった。

 それはそうだろう。なぜなら、奈緒もまたもともと霞の誕生に関わった科学者の一人であり、娘、あるいは妹のような存在として、彼女がバルドルに裏切るまで猫可愛がりしていたのだ。

 そして、それは彼女が裏切った後も変わっていない。

 霞の、そして大首領である盛周も知らないことだが、奈緒は自身の技術。その粋を結集してスパイ衛星やステルスドローンを作成。それを使い、霞の成長アルバムをひそかに作っていた。

 ……ちなみに、そのアルバムは現在三冊目に突入し、いまだに増え続けている。

 

 なぜ奈緒がそこまで霞を愛しているのか?

 それは、霞が先代との協同で作製したこと。即ち、彼女にとって霞は先代との愛の結晶と言っても過言ではないのだ。

 しかも、その娘が盛周の、先代の嫡子との縁組みが決定されている。などとなれば、先代に対して狂的なまでの忠誠心を抱いていた奈緒からすれば、まさに彼女は自らの夢、自らの願いの証として愛するのは自明だ。

 

 もっとも、その本人である霞が、親友で盛周の顔を幼馴染みである渚に遠慮し、一歩下がっていることに関して、少し歯痒く感じているのとともに、私の娘は奥ゆかしいなぁ、と親バカ全開な感情を抱いていたりする。

 

 ……それはともかく、奈緒にとって現状は久々にくたくたに疲れて帰ってきた愛娘に、存分にリフレッシュしてもらおうと懸命にマッサージしている心境に近い。

 つまり、久々。本っ当に久々に帰ってきた愛娘とのスキンシップを楽しんでいた。

 

「あらら、ここも磨耗しちゃって……」

 

 そう言って霞の内部を弄っている奈緒。

 その手管を受けている肝心の霞は――。

 

「んっ……。ぁ――」

 

 なぜか、頬を赤く染め、眉間にシワを寄せながら艶かしい声を出している。

 まぁ、彼女にとっては初めての経験であり、全身に蓄積された疲労が取り除かれる快感にわずかな興奮を覚えていた。

 それでも彼女が起きないのは、単純に奈緒の権限で強制スリープモードに移行されていたからだ。

 そうでなければ彼女は目を覚ますとともに、今まで感じたことのない感覚にパニックを起こしていただろう。

 そうして霞に処置を施していた奈緒だが、どうやら終わりが見えてきたようで……。

 

「……よし、ここで最後かな?」

 

 最後の確認を終えた奈緒は、一仕事終えた達成感とともに、額に流れる汗を拭う。

 しかし、彼女の仕事はここで終わりではなかった。

 

「……さて、ここからは――」

 

 霞から離れた奈緒は部屋の中にある大型の施設を操作する。すると、片隅に人が一人。そのまますっぽりと入りそうなシリンダーが出現。

 それは、以前ロブラスターが製造される時、使用されたシリンダーに酷似していた。

 

「さてさて、それじゃ行こうか?」

 

 そう言って霞の頬を優しく撫でると、彼女が着ていたものをすべて脱がし、背負ってシリンダーへ近づく。

 そして彼女は霞をその中に入れると、シリンダーに付属している機械を操作する。

 すると、シリンダーが稼働し、霞は完全に閉じ込められる。その直後。こぽこぽ、という音とともに液体が中に注入。内部に満たされていき、最終的には液体で中が完全に満たされる。

 その中で霞は起きることなく、安らかな表情を浮かべたまま浮いている。

 

 本来、彼女も活動に酸素を必要とするのだが、中に満たされた液体は、酸素を供給する機能もあるようで窒息している様子はない。

 霞の安らかな寝顔を見ていた奈緒は、満足そうに頷いている。

 

「うんうん、これで良い。……後は、この娘の全身を、この液体。ナノマシン入りの液体金属を使ってアップデートされるのを待つだけだね」

 

 それとともに彼女はもう一つの仕事。そちらを片付けるように動き出す。

 

「じゃあ、待ってる合間こっちのパワードスーツやブルーコメットの強化改修もやっておかないとね」

 

 その言葉とともに、奈緒はあらかじめ霞から回収しておいたブルーコメットとパワードスーツを手に取り、部屋から出ていこうとする。

 そして、出ていく直前。

 

「それじゃ奈緒さんは行ってくるからね。また後で、ね?」

 

 そう、優しく告げるとともに部屋を去る。

 ……気のせいかもしれないが、奈緒がそう言った時、霞の顔が少し寂しそうに見えた。

 まるで、家族と離れるのを惜しむように……。

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