甚八は、今日も傘を作っている。すると、戸の方からドンドンっと音が鳴る。甚八は、作業中で手を止めることが出来ない。なので、まちに頼んで出てもらった。
「はーい。」
ガラガラ
「どちら様でしょうか?」
「幕府からの使者です。甚八殿に用があります。いらっしゃるかな?」
「はい。今呼んで来ますので、居間の方でお待ちください。」
「かたじけない。それでは、失礼する。」
居間に使者のお侍を案内し、甚八を呼びに行ったまち。
「おまえさん!幕府のお侍さんがお見えなったよ。」
「うん?幕府?なんでまた?」
「さあ?取り合えず居間に案内しといたよ。」
「わかったありがとうございます。」
甚八は、ある程度の切りの良いところで手を止めて向かう。居間では、まちが入れたお茶をすすっている侍がいた。そして、甚八の方に顔を向ける。
「おお!まっていたぞ。」
「たく、来るなら文を寄越せ。」
「はっはっは、それは、すまない。」
「で、お前が来るなんてどういう了見だ。五郎。」
「……。」
五郎は、持っていた湯呑を置いた。
「甚八、これに見覚えは、あるか?」
「!」
五郎が取り出したのは、名前がない封筒だった。
「お前の反応を見るからに、ここにも来ていたか。」
「それの裏は、とれたのか?」
「いや、まだだ。これを見つけたのは、持ち主の知人だったらしい。」
「して、持ち主は?」
「どうも数日戻っていないそうだ。」
「そうか……それで、幕府は、おれに何て?」
「全く、お前の前にいるのは、役人だってこと忘れてないか?まあいい。この文によって各地の実力者がこの街に集めれている。幕府では、今回の件は、幕府への反逆つまり国家転覆の疑いがある。そこで、幕府の役人を通じて腕のある者を集めて調査に行くこととなった。」
「そこで、俺にもか?」
「ああ。お前の腕は、俺も買っている。同じよしみで頼みたい。」
「……少し考えさせてくれ。」
「うむ。では、期日と集う場所を渡しておく。」
五郎は、懐から紙を置いて立ち上がり甚八の家を後にした。甚八は、居間で少し静かに考えていた。すると、まちが入ってきた。
「お前さんどうするんだい?私としては、あまり危険なことに足を運んでほしくないんだけど…。」
「聞いていたのか。今回の件、いつもなら無視するところなんだが。今回の件に俺の同じ道場の奴が何人か消えているらしい。だから、五郎の奴も気になったのだろうな。」
「それじゃあ……。」
「すまない。」
「……ふう。わかりました。なら、約束してください。無事に帰ってくると。」
「ああ。約束する。」
夫婦の約束交わした甚八。それから、数日の間に身支度を整えて当日を迎える。