ペルソナ3 ~愚者と破壊者は旅をする~   作:Third+s

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第二章~マジか!?マジで?マジだ!新たな仲間は前途多難?

2009年4月18日(土)

 

本日より再開されたここ、月光館学園。短い休みを終えた学生は一様にダレた様子で、更に再び始まる授業に陰鬱としていた

 

 

「あ、おはよ。二人ともすっかり元気そうだね」

 

 

そんな周りの雰囲気でも、岳羽ゆかりはいつもの様に明るく挨拶を交わす

 

 

「おはよう」

 

「おはようさん!ところで湊と一緒に写真撮る?」

 

「遠慮しとく。ホント好きよね、写真」

 

 

彼女が声を掛けたのは会話で察しの通り、湊と綾である。ポーカーフェイスが相変わらずな湊に相対するように、綾は快活に笑う

 

 

「体調はもう平気?」

 

「…平気」

 

「ご覧の通りかな」

 

「そっか…あのさ、せっかく体調戻りだして悪いんだけど、今日理事長から話があるらしいの。有里君は私たちの事情について、綾君は…あの事の返事」

 

「分かった」

 

「寮の四階でいいよな?答えっつってもほぼ分かるだろうけど」

 

 

二人の返事を確認すると、ゆかりは苦笑いをしながら、二人に忘れないよう伝えた

 

 

 

 

 

 

 

 

所変わって、2年E組

 

 

「おはよう、八笠君」

 

「おはよう、久しぶり!元気してたか?」

 

 

綾が教室に入って真っ先に見つけたのは、隣の席のクラスメイト、山岸風花

 

 

「ふふっ、一週間でも会わないと、何だかずっと会ってなかったみたいだね」

 

「確かに、こうやって話せるってのが、どんだけ幸せなのかよく分かるよ」

 

「…?綾君、休み中に何かあった?」

 

「え?何がだ?」

 

「ん~何て言うんだろ?何か雰囲気が前より落ち着いてるっていうか、やり遂げた後の雰囲気があるというか…」

 

 

そんな風花の疑心暗鬼な言葉に、心中で少し焦る綾

 

 

「(や、山岸って、結構鋭い?)…別に何かあったって訳じゃないんだけどな。てかそんな細かいこと良く気付いたな」

 

「へ?い、いやそんな大したことじゃないよ!?」

 

 

何故か両手を顔の前で小さく振りながら焦る風花。それを不思議に思いながら首を傾げる彼だが、背後からビシビシ感じる殺気を全力で無視するのだった

 

 

 

 

 

 

 

放課後、ブランクが空いたことで出遅れた分を補填するように、授業のテンポが上がっていた。その影響でほとほと疲れた様子の生徒たちは、ポロニアンモールに足を運んでいた

 

その中に、遊ぶこともせずに駅へ足を進める二人がいた

 

 

「いやぁ賑やかになったもんだな。事件が解決して活気が戻った、てやつ?」

 

「?事件?」

 

「あれ、教室とかで聞かなかったか?巌戸台とポートアイランドで起きた連続怪死事件。休校の理由はそれだったんだぞ?」

 

「…そういえば」

 

 

表情を変えず思案するのは湊、そして隣を歩くのは綾。二人は今朝ゆかりから聞いた通り、寮にて理事長の話を聞くため真っ先に帰る途中だった

 

 

「…もしかして、それもあの事と関係してるの?」

 

「してないようでしてる、って感じかな…起こした奴らはどうも、"俺側"の

敵らしくてな」

 

「…異世界の敵」

 

 

湊が発した言葉に、綾は余り驚きはしない。彼は既に病室にて、湊がイゴールから聞いた情報を受け取っているので、湊が言った言葉を否定することも、狼狽することも無いのだ

 

 

「奴らは表も裏も関係無く活動する。出来るだけこっちの組織は秘密裏に動きたいから、こうなると動けるのは…いや、止めとこう。これも後で一括して話すわ」

 

「…分かった」

 

 

本当はもう少し聞いておきたかったが、そこは空気を呼んだようで、それ以上湊も追求しなかった

 

 

「んじゃ、さっさと帰って用件済まそうぜ」

 

「同感、眠いし…」

 

 

無表情の裏の感情は、イマイチ締まらない内容だった

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、帰って来たね。理事長も中で待ってるから、入って」

 

 

二人が寮に帰り、言われた通り四階に上がると、そこにはゆかりが迎えとして待っていた

 

 

「やあ、来たようだね。さ、座って」

 

 

そして部屋の中で座っていた理事長、幾月に促されソファに座るが、ゆかりがあることに気付く

 

 

「あれ?真田先輩は?」

 

「ああ、彼はもう一人の迎えに出ている。恐らく、もう戻る」

 

 

美鶴のその言葉の後、丁度良いタイミングで明彦が部屋にやってくる

 

 

「遅れて済まない、入寮の際手間取ってな」

 

「あの、真田先輩。ホントに見つかったんですか?」

 

 

ゆかりは恐る恐るといった様子で明彦に問うと、彼は一度頷く

 

 

「実はあの日の夜、偶然にも見つけてな。適性があることが分かったんだ…おい、何をしている!早く来い!」

 

「ちょっ、待って!おもっ!?」

 

 

だが次に声を聞いた瞬間、ゆかりだけでなく湊、綾までもが聞き覚えのあるものだった。というか、湊とゆかりに関しては、つい少し前まで一緒にいた男である

 

 

「ま、まさか…」

 

「紹介しよう、2年F組の伊織順平だ」

 

「テヘヘ、どうもっす。今日からここに住むことになりました!」

 

 

そして案の定現れたのは、髭を生やして制服の下にドレスシャツ、坊主頭にキャップを被った彼、順平である

 

 

「順平!うそ、何かの間違いでしょ!?」

 

「その話は後にしよう。理事長、説明をお願いします」

 

 

三人の中で特に驚くゆかりだったが、美鶴の一声で一旦話は打ち切られ、幾月の説明が始まった

 

 

 

 

 

 

 

 

幾月の説明は、綾が聞いていたものと概ね変わらず、話の流れは自然と仲間への勧誘に変わった

 

 

「要するに、僕たちに仲間になれと?」

 

「そういうことだ…君たち"二人"の召喚器は用意してある。力を貸してほしい」

 

 

そう告げると、美鶴はアタッシュケースをテーブルに置き、拳銃と赤い腕章を湊、順平に差し出した

 

 

「お、俺はやるっす!なんかカッコイイじゃないっすか!正義のヒーローみたいで!」

 

「……」

 

 

順平は乗り気で勧誘を受けるが、湊は一人顎に手を当てて考えていた

 

 

「深刻に考える必要もないだろ?ちょっと付き合えって」

 

「…私からもお願いしたい」

 

「ちょ、ちょっと先輩!そんな頼み方されたら彼が困っちゃうじゃないですか!そりゃ…仲間になってくれるなら、心強い…ですけど」

 

 

先輩組の有無も言わせぬ言い方に抗議するゆかりでも、やはり仲間が増えることに越したことはないと考えているので、彼女は湊をチラリと見やる。そして彼は徐に顔を上げて

 

 

「分かりました。取り敢えずそういうことで」

 

 

意外にあっさりと了承するのだった

 

 

「二人とも、感謝する…そして残るは」

 

 

そう言って美鶴がある方向を向くと、全員がそれに釣られてそちらを向く。そこには、湊と同じ思案顔の、綾の姿があった

 

 

「八笠君、あれから一週間と少し経ったが、結論は出たかい?」

 

「八笠、君の力はかなり特殊だ。それに最近になって現れたグロンギの件もある…是非、仲間になってほしい」

 

「え?グロンギ、って何すか?シャドウじゃないんすか?」

 

 

先程の説明には無かったものが唐突に出てきたので、順平は首を傾げる。それをよそに、綾は顔を真っ直ぐ幾月たちに向けた

 

 

「はい、俺も仲間になります。奴らは本来、俺がカタをつける敵みたいなんで。シャドウ討伐と平行していこうと思います」

 

「そうか…君がいると大いに助かるよ」

 

「改めてよろしく頼むぞ、八笠」

 

 

良い返答に初期メンバーの面々はホッと一息つくと、幾月が新たに話題を変える

 

 

「っ!?」

 

 

その時、湊の頭で声が囁く

 

 

 

ー我は汝、汝は我

 

  汝、新たなる絆を見出したり

 

   汝、"愚者"のペルソナを生み出せし時、我ら更なる力の祝福を与えんー

 

 

 

この瞬間、湊は特別課外活動部との間に絆が芽生えたのを感じた

 

 

「……」

 

 

そして湊はそっと綾へ視線を送ると、彼も同じく湊と視線を合わせており、互いに起きた現象について確認しあった

 

 

「さて、有里君、伊織君にまだ説明していなかったね。悪いけど八笠君、説明をお願いしていいかい?これに関しては、君の方が上手だからね」

 

「まあそれほど知っている訳ではありませんが…じゃあ、改めて知っている事、ていうより頭の中にある話だけでも話す」

 

 

そこから即座に切り替えた綾は、一つずつ話を進める。それを聞く周りの面々も、その表情は固い

 

 

「シャドウは影時間でしか行動せず、人を襲うにしても精神を喰らう。つまり、本当の意味で人死にはない。だがこの世界に、別の勢力が現れて、人を襲っている。その内の一つがグロンギ、連続怪死事件の犯人は奴らだ」

 

「なっ、あれって死体を遺棄した野郎が起こした騒ぎだって!」

 

「それは警察のとある関係者と協同して捜査した後、桐条グループの力を借りて真実を隠蔽したんだ」

 

「…嘘だろ」

 

 

衝撃の事実を知らされ、伊織は呆然とした後に声を荒げた

 

 

「そんなのオカシイだろ!俺達の近くで人殺しの化け物が彷徨ってるんだぞ!?何で表沙汰にしねえんだよ!」

 

「順平、言いたい事も分かるが、それで被害が治まるなんてことはない。寧ろ、混乱が街を覆い、更なる被害が拡大しかねないんだ」

 

「でも!」

 

「奴らは一個体の能力が馬鹿げてる。それだけじゃない、グロンギ以外にも影時間外で活動出来るだろう種族は確認されてるんだよ。湊と順平以外は、その脅威を嫌って程味わったんだ…人が目の前で殺された瞬間だって見た」

 

「……」

 

 

綾の言葉を聞き、影が差した初期メンバーを見て、順平も何かを察したのか、少し落ち着いて話を聞く姿勢になった

 

 

「現時点でペルソナ使いが束になろうとも、グロンギや他の種族に有効打は与えられない。唯一、奴らと同じ法則で生まれた力を持つ俺くらいしか…今の所解決策が無いんだ。そんな状況で公に事が明かされてみろ。きっと世間は近い内にペルソナの存在を知り、全てを俺達に押し付け、罵倒するだろうな」

 

「八笠君!それはいくら何でも考え過ぎだよ!」

 

「岳羽、人は案外残酷なんだ。無論、大多数であって全てがそうとは言わない。けど、そんな人間ばっか見てると、それが良く分かるんだ…」

 

「…八笠」

 

 

綾が口にした理由を知る美鶴は、一人悲痛な面持ちで彼を見た

 

 

「要はだ、誰一人余計な犠牲者を出さない為に隠す。例えそれが重大であろうとも、それは全て、俺が背負ってみせる」

 

 

だが彼は決して過去を卑下しない。八笠綾はあくまで、今を進む姿勢を見せる

 

 

「…何なんだよ、お前」

 

 

その姿に圧倒されるように呟かれた順平の言葉に、綾は不敵な笑みと共にこう返す

 

 

「通りすがりの仮面ライダーだ、覚えておけ」

 

「仮面ライダー…ペルソナとは別の法則の仮面の力か。…まあとにかく、当面は彼が提示した話で事を進めよう。それに三人には感謝してるんだよホントに。これで漸く始められそうだ」

 

「確かに、これだけ頭数が揃えば"あの場所"に挑める」

 

 

すると場の空気を和らげる様に幾月が話題を変えると、ゆかりはそれに便乗する

 

 

「それってタルタロスですよね」

 

「タル…?何すかソレ?」

 

「タルタロス、いわばシャドウの巣だ。あそこに恐らく、影時間の謎を解くカギがある…そういう場所だ」

 

「…今日はもう遅い、これまでにしよう」

 

 

そして近々タルタロスの探索をする予定を口にし、明彦と綾は怪我の心配を考慮して探索を控える事となり、解散となった

 

 

 

 

 

 

 

 

全ての説明が終わり、二年生4人は各々の表情でエントランスへ下っていた

 

 

「…にしても驚いたぜ?お前らもペルソナ使いって聞かされて、綾に至っちゃ妙な力持ってるだなんてさ」

 

「こっちも驚いたわよ」

 

「一体何の因果なのかね…まるで引き合うかのように、ペルソナ使いが、俺が一カ所に集まるってのは」

 

 

三人が各々話す中、湊は一人ポーカーフェイスのまま着いて歩く。その頭で何を考え、思うのか…

 

 

(お腹空いた)

 

 

平常運転である

 

 

「な、なぁ綾。さっきは悪い…俺もどうかしてた」

 

「何で謝んだよ、順平が言ってた事も正しかった。それを良いように言い換えてる俺に原因がある」

 

「…おめぇ凄いな。あんだけ言われた後だってのに、全然怒らねえんだな」

 

「人にはそれぞれ主張があって当然だし、考え方だって皆一緒なワケが無い。それは色々渡り歩いて、知った事だから。はい、チーズ!」

 

 

その時、綾が突然三人の前に立ち、いつも手元に持ち歩くデジカメを構えると、シャッターを切った

 

 

「え、何だよ突然!?」

 

「新しい仲間が増えた、その記念ってやつさ。また皆にも渡す」

 

「もう、唐突なんだから。撮られる身にもなってよね!」

 

「人の本心は唐突な時に見えるんだよ。だからこうやるんだ」

 

「…どうでもいい」

 

 

綾の写真論をバッサリ斬り捨てる湊にずっこける綾に、順平とゆかりは苦笑いを浮かべた

 

 

 

 

 

 

 

 

2009年4月18日(土) 影時間

 

不気味な空間が世界を覆う。その中で、眠りについていた湊は、人の気配を感じて目を覚ます

 

 

「やあ、元気かい?」

 

「…君は?」

 

 

その正体は少年、囚人服のような白黒のストライプ柄の服を着た彼は、何の前触れもなく彼の部屋に現れたのだ

 

 

「ふふ、前にも会ったはずだよ。僕は、いつだって君の側にいる」

 

「…もしかして、署名の」

 

 

湊が記憶から呼び起こしたのは、彼が初めてここへ訪れた時、契約の署名を渡して来た謎の少年だった。少年はそれにただ微笑むだけで、肯定も否定もしないが、話を進める

 

 

「それよりとうとう"力"を手に入れたようだね。それもちょっと"変わった力"みたいだ…"何にでも変われるけど、何にも属さない力"、それはやがて"切り札"にもなるものだ。君の在り方次第でね…」

 

「…何にでもなれる、力」

 

 

湊はイゴールの言っていた絆の力、それは恐らく綾や、特別課外活動部の間に生まれた繋がりを差すのだろうと当たりをつけていた。だがそれは何を生み出すのかまでは知らずにいた。しかし、少年の言葉が真実ならば、自分の持つ力は、何らかの変化をもたらす力なのかもしれない。彼がそこまで考えると、少年は更に続ける

 

 

「あ、そうだ。もうすぐ…"終わり"が来る」

 

「っ!…終わりって?」

 

「"すべての終わり"さ…って言っても実は僕自身、ハッキリとは分からないんだけどね」

 

 

その言葉は、湊の中でほんの少しだけ胸騒ぎを覚えさせた。…全ての終わり、それは別の言葉で、それを成し遂げるであろう存在を耳にしていたからだ

 

 

「…それは、"すべてを破壊する者"のこと?」

 

「……ふふ、彼のことを言ってるのかい?」

 

 

少年が彼と呼ぶ存在、ディケイド…イゴールは彼をすべてを破壊する者とも言っていた。もしも少年が言う終わりが、彼を指しているのならば…と、湊はここまで考えた時、ふとその考えを止めた

 

 

(どうでもいい)

 

 

例え彼が終わりに関係していようが、湊はそれを知ってどうこう出来るほど強くはない。しかし、今はまだというだけの話。いずれその日が来ようとも、湊自身がそれに備えて強くなる他は無い。それに彼は、八笠綾は自分と似ている。だからこそ、止められる可能性があるかもしれないと、心のどこかで確信めいた何かを抱いたのだ。故に、今はどうでもいいのだ

 

 

「彼は確かに世界を破壊出来る力を持っているけど、それとは別の終わりみたいだよ?…まあ、彼と僕の言う終わりが同時に訪れるのなら、それこそ止めようが無いけど…」

 

 

少年は意味深な言葉を告げると、ドアの方へ歩みを進めた

 

 

「だけど初めに会った時、交わしたあの約束は守ってもらうよ…僕はいつでも君を見てる。例え君が僕を忘れててもね…じゃ、また会おう…」

 

 

その言葉を最後に、少年は姿を消した

 

 

 

 

 

 

 

ーその者、絶望を希望に変える者ー

 

ーその者、人々の最後の希望ー

 

ーその者…今を生き、絶望と戦う"指輪の魔法使い"ー

 

 

 

破壊者は夢を見る。新たな旅の道を示す、予言にも似た夢を




次回は11月1日午後12時です
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