ペルソナ3 ~愚者と破壊者は旅をする~   作:Third+s

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我ながら纏められない事に肩を落としています…


破壊者と死神

これは4月8日の夜のことである

 

 

「ようこそ、我がベルベットルームへ」

 

 

その日、この謎の部屋にある客人が招かれた。言うなれば、綾を二人目とした一人目の客人である

 

 

「私の名はイゴール。お初にお目にかかります、"有里湊"さま」

 

「…これは夢?」

 

 

そう、一人目の客人。彼の者の名は有里湊、何の因果なのか、綾と同じ寮に住む転校生である

 

 

「ここは夢と現実、精神と物質の狭間にある場所…人を迎えるなど何年ぶりでしょうな。おっと、紹介が遅れましたな。こちらはエリザベス。同じくこの部屋の住人だ」

 

「エリザベスでございます」

 

 

順番がバラバラなような説明に疑問だらけな湊だったが、イゴールはそれをも見透かしたように、引きつった笑い声をあげる

 

 

「あなた様がここへ来たということは他でもありません。ここは何らかの形で『契約』を果たされた方のみが訪れる部屋。よって今からあなたはこのベルベットルームの…お客人だ」

 

「!…それは」

 

 

イゴールがどこからともなく出したもの。それは湊が寮へ来た日、謎の少年に書かされた署名だった

 

 

「あなたは『力』を磨く運命にあり、必ずや私の手助けが必要となるでしょう。あなたが支払う代価は一つ…契約に従いご自身の選択に相応の"責任"を持ってもらうことです」

 

「…わかった」

 

 

湊自身そこまで分かっていた訳では無いのだが、取り敢えずといった感じで返事をした

 

 

「これをお持ちなさい」

 

 

するとイゴールは彼に『青い鍵』を渡す

 

 

「それと一つご忠告を」

 

「何?」

 

 

だが話はそこで終わらず、湊はもう一度イゴールと向き合う

 

 

「あなたが進む旅路は前例の無い険しい道となるでしょう。しかし、傍らに寄り添う『破壊者』と共にあれば、自ずと道は開けることでしょう…それではまた、お会いしましょう」

 

 

その言葉の後、湊は8日の朝を迎えた

 

 

 

 

 

 

 

そして時間は過ぎ、4月9日の影時間。彼はクラスメイトの岳羽ゆかりに起こされ、何事も知らぬまま屋上へと連れられていた。"何か"に追い立てられるように

 

 

「…岳羽さん、これって何?」

 

「いいから着いて来て!命懸かってるんだから!」

 

 

その表情は焦りを浮かべ、今にも来る何かに怯えるようだった。だが彼は

 

 

「死ぬって、"そんなに怖い"?」

 

「……何、言ってるの?」

 

 

到底普通なら言わない、余りに可笑しな言葉にゆかりは思わず思考が止まる。人が潜在的に恐れる死を、まるで怖いとも思わないその言葉は、未だ齢17の少女にとって衝撃的だった

 

 

だが彼らを追う"影"は、その足を止めはしない

 

 

 

 

 

 

 

「…ディケイド、か」

 

 

そして現在、謎の戦士に姿を変えた綾は、頭に響いた名を反芻させた

 

 

「八…が、さ?」

 

 

そんな中、美鶴は驚愕を通り越して思考が止まりかける。彼女からして、先程までの綾への評価は、影時間に適応しない一般人。又は何らかの影響で偶然適応してしまった保護対象だった。だが彼女の評価は悉く裏切られ、今、目の前には未知の力を宿した謎の男が存在していた

 

 

「……はっ!」

 

 

困惑する美鶴をよそに、変身を遂げた綾は左の腰に取り付けたカードホルダー、『ライドブッカー』を変形させて形状を銃に変えると、明彦を締め上げる怪人と、美鶴に近付く牛の怪人をそれぞれ容赦なく撃ち抜いた

 

 

「グウウ!」

 

「ゥゥ…!」

 

「破壊してやるよ。その命を、な…」

 

 

さも涼しそうな物言いをしつつも、彼改めディケイドは、ライドブッカーを更に変形させてソードモードに切り替えると、指でソードを刃先に沿って拭き上げる

 

 

「はぁぁあ!」

 

「フンォォ!」

 

「ハァァ!」

 

 

そして始まる二体一の戦い。初めに襲いかかってきた牛の怪人をすれ違い様に切り払い、何処からともなく出した剣を握る炎のような怪人の剣を同じく剣で受け止め、鍔競り合いを始める

 

 

「ふん!はあ!」

 

「グォォ!?」

 

 

だがそれも一瞬で、ディケイドの前蹴りによってよろけた怪人を袈裟斬りすることで、一気に状況を打破した

 

 

「モォォォ"ォ"」

 

「ぐほっ!のぉぉぉぉぉ!?うわわわ!」

 

 

その時、ディケイドが体勢を整える一瞬に牛の怪人が横合いから突進し、彼を掬い上げてそのまま前に突き進んでいった

 

 

「どわっ!この…暴れん坊めっ!?」

 

 

10m程吹き飛ばされた彼は即座に剣を構えるが、背筋を襲う悪寒に従い、咄嗟に剣を水平にして後ろを振り向いた

 

 

「ガゥゥ!」

 

「ぐっ!不意打ちとは卑怯だな!」

 

 

そこには、またも前触れもなく現れ剣を振り下ろす炎の怪人がいた。だがディケイドは事前に察知したことで難を逃れ、剣を押し返して距離を取らせると、怪人は突然影の中へ飛び込み姿を消した

 

 

「影に入り込めるのか。なら!」

 

 

するとディケイドはライドブッカーからカードを取り出して反転させた

 

 

『kamen ride!』

 

 

カードを再び装填すると、同じ様に彼はバックルを閉じるように内へ押し込む

 

 

『wizard!ヒー!ヒー!ヒーヒーヒー!』

 

 

バックルが起動すると、突然ディケイドの左側から赤い魔法陣が出現した。彼はそのまま体勢を半身にして左腕を水平に伸ばすと、魔法陣はそれに応えるようにディケイドに迫り、彼を通過した。そこにいたのは

 

 

「姿が変わった!?」

 

 

赤と黒を基調とし、黒のロングコートを纏い赤いルビーのような頭と胴が特徴的な仮面の戦士。その名も『ウィザード』と呼ばれる異形が優雅にそこに立っていた

 

 

「さぁ、ショータイムだ」

 

「ゥゥゥ"、ワゥ"!」

 

 

すると炎の怪人が片手に大量の石を握り、目の前にバラまく。その直後に現れたのは、美鶴たちが倒した鬼の軍勢。その数、ゆうに三十は超える

 

 

『attack ride wizard! big!』

 

 

それに対応すべく、ディケイド改めウィザードはカードを装填し、起動する。そして直後起きたのは魔法陣の出現。そこへ彼が右手を突っ込むと

 

 

「腕が巨大化した!?」

 

《~~ー!?》

 

「ゴミは散らかすなって教えられなかったのか?…『ファントム』!」

 

 

ウィザードは巨大化した腕を容赦なく鬼の軍勢、ファントムへ振り下ろす。更に彼は腕を一度上に上げたと思うと、凪払うように一回転することで軍勢と炎のファントムを纏めて横にすっ飛ばした

 

そこで鬼たちは力尽きあえなく爆散。炎のファントムは辛うじて体勢を立て直し、ウィザードを警戒する

 

 

「(俺は何で、あいつらの名前を知っていた?)…っ!」

 

『form ride!land!ドッドッド!ドドドン!ドッドッドドン!』

 

 

無言で考える彼だったが、何かを察知すると新たなカードを装填する。今度は黄色の魔法陣が地面に浮かび、彼の周囲を土塊が浮遊する。そして魔法陣が上に登ると、彼は顔の形が長方形の宝石に、色は黄色に変化した別形態、『ランドスタイル』にフォームチェンジし、続けざまにカードを使用する

 

 

『attack ride wizard! defend!』

 

「通行止めだ、暴れん坊さん?」

 

「フンォ!?」

 

 

するとウィザードの真横から突如長方体の土の壁が出現し、彼に突っ込んで来た牛のファントムが壁に激突した。牛のファントムはそのまま身動きが取れず、無様にジタバタとしか出来ない

 

 

『attack ride wizard! connect!』

 

「ふっ!」

 

「ガウ!」

 

 

彼は動きを止めず次の動作に移る為にカードを起動すると、今度は彼の側に魔法陣が展開されると同時に手を突っ込み引き抜く。そしてその手には銀色の片刃仕様の片手剣が握られており、その剣を使ってまたも背後から来た炎のファントムの剣を受け止め、身を翻して攻撃をいなす

 

 

「はっ!や!やあ!」

 

「グアォォ!?」

 

 

体勢が崩れたファントムへ、ウィザードの華麗な剣舞が炸裂する。手首のスナップを利用した虚を織り交ぜた斬撃が全て敵の急所を捉え、ファントムは同じ様に影へ飛び込み姿を消す

 

 

『form ride wizard! water!スイー!スイー!スイー!スイー!』

 

 

そこでウィザードはまた新しくフォームチェンジのカードを使用する

 

青の魔法陣が頭上に現れ、水を生み出しながら下へ下降しウィザードを通過すると、頭が菱形の青い形態、『ウォータースタイル』に変化した

 

『attack ride wizard! light!』

 

「グォォッ!」

 

 

ウィザードもそう何度もやられないようで、彼はカードを装填して右手を上に翳すと突然光り輝き、闇を照らした。そして闇に紛れたファントムを明るみに晒し、ウィザードの会心の一撃が腹部に直撃し、牛のファントムの元に転がった

 

 

『kamen ride! wizard!ヒー!ヒー!ヒーヒーヒー!』

 

『attack ride wizard! bind!』

 

「グウウウ!?」

 

 

彼は再び影に逃げぬよう、新たなカードを使い敵を拘束した。牛のファントムも変わらず壁に埋まったまま動けずにいた

 

 

「フィナーレだ」

 

『final attack ride! wi wi wi wizard!』

 

 

そしてウィザードは一回転してコートを内外とはためくように翻し、右足を前に出して半身になり、両手を斜め下に広げて腰を落とす

 

 

『チョーイイネ!キックストライク・サイコー!』

 

「はっ!ふん!」

 

 

地面に赤い魔法陣が展開し、右足に炎が集中すると、二体目掛けて走り出し、ローンダートを繰り出しながら威力を高める

 

 

「だああああああ!」

 

「「グオオオオオオッ!」」

 

 

そして空中に跳び、右足を突き出して幾重にも展開された魔法陣と炎を纏い、必殺技『ストライクウィザード』をファントムたちに叩き込み、爆散させた

 

 

「ふん……ん?」

 

 

敵を殲滅したウィザードが燃える背後を振り返ると、突然彼の姿がブレだし、ディケイドに戻る。更に彼のベルトが勝手に開き、中のカードが飛び出したのでそれをキャッチすると、ウィザードの絵が浮かび上がり青い炎を上げて消え、色を無くしてしまった

 

 

「カードの力が…消えた?(そういえば、何で俺はこのカードを選んだ?)」

 

「八笠、君は一体…?」

 

「っ!桐条さん、怪我は!?」

 

 

そこに背後から聞こえた声に振り向くと、腕を押さえながらこちらに近付いて来た美鶴を発見し、慌てて容態を気にし始めた綾。その突然の気の遣われように、美鶴は美鶴で戸惑いを隠せず生返事でしか返せなかった

 

 

「取り敢えずあの人と一緒に中へ!えっと名前は…」

 

「真田、だ…」

 

「アキ!無事か!?」

 

「あぁ、油断した…ぐっ」

 

 

そうして一旦全員の安全を確認した三人だが、綾はあることに気付く

 

 

「美鶴さん、湊と岳羽は?」

 

「彼らならきっと」

 

『ウォォォォォ"ォ"ォ"ォ"』

 

《っ!!?》

 

 

だが美鶴の返事を聞く前に、三人の耳に届いたのは、聞くだけで底冷えするかのような、獣の雄叫びだった

 

 

「っ!しまった、デカい奴を見失っていたんだ…!」

 

「マズい、二人が危ない!」

 

「ちっ!確か声は屋上だったか!」

 

『attack ride decade! machine decader!』

 

 

綾は屋上の声の元へ向かうため、カードを起動させると、突然彼の正面に灰色のカーテンが展開して横にスライドした。そこにはディケイドの容姿にどこか似た、大型バイクが出現していたのだ

 

 

『kamen ride! faiz!』

 

「うわっ!」

 

 

そして綾は新たなカードを取り出して装填し、新たな戦士に姿を変える。彼の胴体に血のような赤い閃光、『フォトンブラッド』が走り、そこから重厚な銀色の装甲が装着されて、Φを模した黄色の複眼がフォトンブラッドと共に闇を照らす

 

 

「また変わった…」

 

「説明出来る程何も分かってないんで、割愛します」

 

『attack ride! faiz! autobathin!』

 

 

闇を切り裂く光の戦士、その名も『ファイズ』は、カードの能力を使い今度はバイクを銀色の中型バイクに変化させた。だがそれだけに終わらず、バイクは突然変形し、全長約3m程のロボットになると、ファイズが捕まるに従いしっかりとホールドし、背中のエンジンを使って浮遊を始めた

 

 

「美鶴さんと真田さんは手当てを優先して屋上に来て下さい!後は俺がやります。『オートバシン』!屋上へ!」

 

 

ファイズの命令を聞き取ったロボット、オートバシンはそのままジェット噴射を使い、湊たちがいるであろう屋上へ飛ぶ

 

 

 

 

 

 

 

 

綾がディケイドに変身し、戦闘に入り出した頃のこと。湊、ゆかりの二人は謎の敵、シャドウから逃げ続け漸く屋上の鍵を閉め、一息ついていた

 

 

「はぁ、はぁ…ここなら。ぐっ!」

 

「…大丈夫?」

 

 

だがここまで来るのに、ゆかりは太ももにガラスによる切り傷を負っており、その足には血が流れていた。しかし感情が元から乏しい湊といえど、その傷が自分を庇って出来たものであるために心配をしていた

 

だがーー

 

 

ヒタリ…

 

「っ!?…嘘」

 

 

背後から聞こえた、壁に何かが張り付く音。それは振り返ることを躊躇させるには十分な程の恐怖を彼女、ゆかりに与えていた

 

 

「あれ…何?」

 

 

湊が驚愕する光景、それは正しく未知との遭遇。そして本能的な危機感だった

 

 

「あれがここを襲った敵、シャドウよ!」

 

 

彼らが遭遇した異形、その姿は到底生物として分類出来るものではなかった。その巨大な体を構成するのは、腕のみなのだ。無数の腕を地につけ、その内の一つが仮面を持ち、獲物を確認したそれはその腕に幾つもの剣を握り締め、二人に襲い掛かる

 

 

「はっ!~~っ!」

 

 

ゆかりはその中でもいち早く行動する。彼女は太ももにつけたホルスターから拳銃を抜き、両手で持ったまま額にそれを押し付ける

 

 

「はぁ、はあ!」

 

 

だが彼女にそれ以上は出来なかった。引き金を引けば時間稼ぎ位はできることは分かっている、しかし生物の原始的な恐怖本能が彼女の行いを拒絶し、その指を止めていた

 

そしてその躊躇は隙となり、シャドウの攻撃が彼女を襲う

 

 

「あ…」

 

 

その光景を目の当たりにした湊は、未だその状況を飲み込めずにいた。彼も念の為とはいえ、小型の剣をゆかりから渡されてはいる。だが目の前の怪物にそれが通じるとはとても思えない

 

だが彼の足元には、ゆかりが持っていた拳銃があった。彼女自身気絶しているようで、それを使えるのは彼のみとなる

 

 

「…」

 

 

彼女が取った自殺とも呼べる行動の真意は分からない。だがあそこで意味のない行動ではないことは理解できた。よって彼はその銃を手に取り、右手でグリップを握る

 

 

【さぁ、始まるよ】

 

 

すると彼の目の前に、何故か署名を書かせたあの少年が笑ってこちらを向いていた。今にもこちらに襲い掛かろうとする怪物を背にして、だ

 

 

【君に出来るかい?】

 

 

少年は右手でピストルの形を作り、米神に突き付け妖しく笑う。だがふと意識を戻すと、その姿は消え失せる

 

 

「…は」

 

 

そして彼、有里湊は笑う

 

 

「ぺ…ル」

 

 

米神に拳銃を突き付け、笑うその姿は狂気を感じさせる。元の雰囲気も相まってか、彼のその姿は一層際立っていた

 

 

「ソ…ナ」

 

 

彼はただ感じるままに、その名を呼び…引き金を引く!

 

銃声とガラスが割れる音が響き、彼の体から青いオーラが噴き出し、心の海より心の力を具現化する

 

 

「うっ…あたし、気を失って…っ!有里くん!」

 

 

すると気絶していたゆかりが目を覚まし、その光景に驚愕する。死を受け入れ、力を引き出した彼の姿に

 

 

『我は汝ーー汝は我

 

 我、汝の心の海より出でし者

   

  幽玄の奏者、『オルフェウス』なり!』

 

 

そして現れた仮面の力。巨大なハート型の竪琴を背負い、全体的に白が目立つ巨人は、顔つきが何処か湊に似た所がある

 

だが敵のシャドウは待ってはくれない。シャドウはその剣を全て敵と見なした巨人、オルフェウスへ向けて斬り掛かる

 

オルフェウスはそれに対して巨大な竪琴を両手で握り応戦する。更に一度目を細めたと思えば、オルフェウスの目が一層大きく見開かれる

 

 

『アギ!』

 

 

直後シャドウを襲う爆発。その衝撃でシャドウは吹き飛び、オルフェウスを警戒する

 

しかしそれもお構いなしにオルフェウス、もといそれを操る湊は炎の爆発、『アギ』を連発させる。だが警戒するシャドウはそれを動き回ることで回避し、機会を窺う

 

 

「ぐっ!?」

 

 

そして湊は知る由も無いが、ペルソナは持ち主の精神を削る。初召喚に加え技の連発が仇となり、彼の精神は早々に限界を迎えた

 

シャドウはこの好機を逃さず、オルフェウスへ突貫する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うあ"あ"あ"あああああ!!」

 

 

だがそれは、好機ではなく、敵の死が確定した瞬間だった

 

 

『ォ、ォォォオオ"オ"オ"!』

 

 

オルフェウスが突如苦しみ出すと、ペルソナの首もとから腕が飛び出した。骨が不自然に折れる不気味な音がその場を支配し、オルフェウスをまるで脱皮したかのように、新たなペルソナが姿を現した

 

 

『ウォォォォォ"ォ"ォ"ォ"!!』

 

 

そこに現れたのは、死の象徴。棺を8つ鎖で繋ぎ翼に見立て、銀色の鋭さの宿る仮面をつけ刀を帯刀したそのペルソナは、この世に顕現した喜びなのか、はたまた現世に死を呼び寄せる鎮魂歌なのか、あらゆる者を恐怖で支配する雄叫びをあげ、向かって来るシャドウの腕を一閃した

 

 

「すごっ…」

 

 

ゆかりはただ絶句する。そのペルソナが現れてからの、一方的な蹂躙劇に

 

突き立てられた剣を腕ごと一凪で斬り落とし、握力のみで他の腕を握り潰す

 

 

『グルルル…オオオ"オ"オ"!!』

 

 

そして最後の一太刀が、シャドウの仮面を横一文字に切断する。瞬間、シャドウはその体がヘドロのように溶解し、絶命した

 

 

『グルル!ゥォォォォォオオ!』

 

 

だが謎のペルソナはそこで留まらず、突如横へ移動し刀を振り下ろす

 

 

「くっ!」

 

 

そしてその直後に知覚したのは、苦悶の声と屋上に転がる人型の"何か"。赤い閃光と黄色の複眼が輝く謎の存在は、右手に誘導灯らしきものを握り、襲って来たペルソナを見上げる

 

 

「…誰?」

 

『オオオオオオ"オ"オ"!』

 

「ちっ!厄介な!」

 

 

謎の人物、声からして男が誘導灯で刀をいなし、受け止める。ゆかりをまず驚かせたのは、人間がペルソナの一撃を受けきっていることだった。先程まであの巨大シャドウを圧倒した攻撃を人間の身で受けるなど、考えるだけでも背筋が凍る

 

 

『attack ride faiz! glanimpact!』

 

「お痛が過ぎるぞ!」

 

 

すると謎の男が誘導灯を左手に持ち替えると、右手に突然赤いエネルギーが収束し、手の甲を覆う籠手らしきものが装着され、ベルトのバックルから赤い光が右手に向かっていき、籠手を一層輝かせた

 

 

『グォォッ!!』

 

「はあああっ!!」

 

 

次の瞬間、籠手と刀が衝突し、赤い閃光が屋上を覆い尽くす。思わず目を覆ったゆかりだったが、光が収まりそちらを見ると、ペルソナと男は変わらず対峙していた

 

 

「ぐっ!」

 

『グルルル…』

 

 

ただし、お互いただでは済まず、ペルソナの刀は刃こぼれして男は右肩を押さえ、片膝を突いていた

 

 

『……』

 

 

しかし何が原因なのか、ペルソナは刀を下ろし静止すると、次の瞬間それは姿を消し、代わりに湊が初めに召喚したオルフェウスがそこにいた

 

 

「……止まった?」

 

「うっ…」

 

「っ!?有里くん!」

 

 

そして湊はついに限界を迎え、その場に倒れ気を失った

 

 

 

 

 

 

 

 

「何だあの出鱈目な強さは…あれが湊の力なのか?」

 

 

ファイズの容姿がブレだし、ウィザードの時と同じようにディケイドの姿に戻りカードが飛び出す。そしてファイズの絵が色を無くしていく光景を見ながら、ディケイドは頭の中で違和感について考えていた

 

 

(何故だ?俺は…戦い方を知っている)

 

 

先のペルソナとの戦闘、更に謎の敵ファントムとの戦闘の時、彼は何の迷いもなくカードを選び、自在に力を操り戦っていた。しかし彼、綾は勿論このような非現実を日常になどしていない

 

 

(一体何が起きてるんだ…世界に、俺に)

 

「きゃあ!」

 

「っ!またか…!」

 

 

だが彼に考える暇は与えられない。そこに現れたのは、ヘドロのような塊に仮面が乗っかっただけのシャドウ、『臆病のマーヤ』。そして全身包帯だらけのミイラがそれぞれ二体だった

 

 

「…『ヤミー』か」

 

「オォォ…!」

 

 

ディケイドがふと口にした名前。ミイラの容姿をした怪物ヤミーは、マーヤの元へ歩み寄ると、突然それを掴み取り、食い始めた

 

 

「ひっ!」

 

「随分と気味の悪い。岳羽、湊を頼む」

 

「え…その呼び方、あなたまさか!」

 

『kamen ride!』

 

さサイドハンドルを引き、新たにカードを装填すると、ディケイドは肩越しにゆかりを見る。そしてうつ伏せに倒れる湊を一瞥した後に前を向き、敵を睨む

 

 

「ォォォォ!キシャァァ!」

 

「ニャアォォ!」

 

 

ヤミーは臆病のマーヤを食い尽くすと、全身の包帯がほどけ、それぞれが人型のカマキリ、太っちょの猫に姿を変え、戦闘態勢を取る

 

 

「何か俺がいるのが異常らしいが、正真正銘…八笠綾だ!」

 

『ooo!タ・ト・バ!タトバタ・ト・バ!』

 

 

サイドハンドルを手をクロスさせるように押し込むと、奇怪な音楽と共に彼の正面に赤、黄、緑の円形のエネルギー体が出現し、頭部、胸部、脚部にそれぞれメダルらしきものが数枚回転する

 

そしてディケイドのアーマーが変化し、黒のスーツに鷹を模した赤い仮面、胸部に鷹、虎、飛蝗を模した円形、オーランドサークルが描かれ、腕は黄色に虎の爪、緑の足と上下三色の異様な姿の仮面の戦士が姿を現す

 

 

「さ、稼がせてもらうぞ」

 

 

その戦士の名は、欲望の王『オーズ』。全てに君臨する無限を超越した戦士は、二体のヤミーへ突貫した

 

 

「はっ!はあ!」

 

「キシャッ!シャァ!」

 

 

オーズはまずカマキリヤミーへ挑むと、敵の鎌を右、左と腕で弾き、右足の蹴りを腹に叩き込む

 

 

「はぁぁ…セイヤー!」

 

「ギィィ!?」

 

 

更に距離が出来た隙をつき、オーズは足に力を込めると、緑の足が輝き、より一層強力な蹴りを連続してカマキリヤミーに放つ

 

 

「ニャア!」

 

「ぐぉ!?邪魔だ!」

 

「ニャニ"ャァ!?」

 

 

そこへネコヤミーがそのデップリとした腹でボディアタックを仕掛け、オーズはその弾力によって吹き飛ばされた。だが逆に距離が出来たので、オーズは左腰からライドブッカーを取り、ガンモードに変えて顔面に撃ち放つ

 

 

「悪いが時間は掛けない!」

 

『attack ride ooo! ooobash!』

 

「はぁぁぁ!」

 

 

オーズは勝負を決めるカードを起動すると、ライドブッカーをソードモードに変え、腰を落とす。するとソードの切っ先が青く光り、エネルギーが蓄積された

 

 

「セイヤーー!!」

 

「「ギシャァァァァ(ニャァァァァ"ァ")!」」

 

 

次の瞬間、オーズが振るった剣閃が敵と共に世界を斬り裂く!しかし世界は法則に従いゆっくりと空間を元に戻すと、切り裂かれたヤミーのみが真っ二つにされたまま、メダルを撒き散らしながら爆散した

 

 

「…次元を、斬った!?」

 

「ちっ!これもか」

 

 

だがオーズはまたも姿をブレさせ、ディケイドに戻り、カードは色を無くした。余りにも出鱈目をやらかした事で驚き続けているゆかりを置いて、彼はカードについて考える

 

 

「何故だ、力が長く保たない」

 

「や、八笠くん…あのぉ」

 

「え?…あ、岳羽!大丈夫だったか!?」

 

 

そこへゆかりが一声掛けてみると、ディケイドは状況を思い出したように慌てて二人の元へ駆け寄る。更に彼は二人の元に辿り着くと変身を解除して綾の姿に戻る

 

 

「やっぱり八笠君なんだ…」

 

「その説明は後だ。取り敢えず湊を!おい、聞こえるか?湊!」

 

「三人とも!無事か!」

 

 

湊の安否を確認する最中、軽い手当てを終えた美鶴たちが合流したことで、4月9日の長い悪夢は終わりを告げた




取り敢えず主人公覚醒まで行きましたが、勢いで書いたので、主人公の性格が一貫していない気がしています。その辺り何かあればご意見いただけると有り難いです

これで書き溜めは終わりです。もう一つの作品も執筆中なのでそちらもよろしければ拝見の方、よろしくお願いします
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