ペルソナ3 ~愚者と破壊者は旅をする~   作:Third+s

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タイトル通り、主人公が起きるまでのオリジナルです


『彼』が目覚めるまで

ー世界の滅びを遅らせ、トイカメラの青年と写真館の女性、その祖父は旅に出た…その写真館ごと

 

ー青年が次に外へ出た時、彼は警察官になっていた。そして繰り広げられる、異形と異形との戦い

 

ーそこで出逢った仮面の戦士…彼は超古代の遺産『アークル』をその身に宿し、人々の笑顔の為に戦う義の超人。その名も……

 

 

 

2009年4月9日(木)

 

「『クウガ』…か」

 

 

彼、八笠綾が謎の戦士、ディケイドに変身を遂げた翌日。世界は今日も規則通りの流れを人々に与える

 

 

「ここに来た日から見る"自分のじゃない記憶"…これは俺に何を伝えたい」

 

 

現在、学校は昼休みを迎えており、綾は一人屋上の人気が少ない場所から周りの景色を見ていた。しかし彼は徐に懐から一枚のカードを取り出し、暫し眺める

 

そこには夢の中で見た、記憶に残された仮面の戦士と同じ姿が写っている。ただし、それは力を失っていることを如実に表すように、色を無くしていた

 

 

「でも、この記憶がとても無駄には思えない。もしかしたら…力の使い方を知った原因も、これかもしれない」

 

 

自分が体験した事を意義のあるものとすることで、彼は今胸中にあるモヤモヤを振り払い、再びカードを仕舞う

 

 

「ここにいたんだ」

 

「ん?岳羽か…」

 

 

すると彼の背後から近付いて来たのは、彼の事情を知り、誰も知り得ない事情を知る人物。岳羽ゆかりだった

 

 

「湊はどうだった?」

 

「…うん。過労みたいなもんだって。しばらくしたら目が覚めるだろうって、お医者さんが言ってたから、問題無いよ」

 

「そっか、良かった…」

 

「何?一人で黄昏ちゃってる感じ?」

 

「へ?いやぁ…だって信じられるか?今もこうしてボケ~っと過ごしてる日常に、実は隠れた時間があって化け物が人を襲ってます。そしてそれを倒せるのは選ばれた人間だけで、自分もその一員です!とか…」

 

「ははは…確かに」

 

 

結局、結論だけ説明するのなら、綾はあの戦いのあと質問責めを受けたのだ。しかし彼は何も分からずに変身し、何故か知っていた戦い方に従って動いただけなので、ベルトとカードは謎の老人に貰ったとだけ伝えた

 

まぁ、それで納得が行くはずもないので、美鶴に威圧全開で問いただされたのだが、本当に知らないと分かった彼女は渋々退いてくれた。そして代わりにといっては何だが、彼はこの世界の実状を知らされたのだ

 

 

適性のある者以外は知ることすら無い裏の世界、『影時間』

 

そこでさ迷う人間の精神を喰らい、今世間を騒がせる『無気力症』を引き起こす怪物…人を生きた屍に変える存在『シャドウ』

 

そしてその全ての原因の鍵であろう、影時間にのみ姿を現す謎の塔『タルタロス』の踏破

 

 

どれも出鱈目にしては出来過ぎた話で、それを経験してしまった綾は頭を抱えた

 

 

 

そしてその極めつけとなるモノ……適性持ちより更に稀有で、死の恐怖を克服し己の内より引きずり出す仮面の力、『ペルソナ』

 

 

「ねぇ、八笠くん。本当に何も知らないの?その…君の力のこと」

 

「あぁ、それは嘘じゃない。こんなもの見たことすら無いし、戦えたのだって…まるで知っている"誰か"の記憶通りに動いてたようなもんだから」

 

「誰か?」

 

「例えって話だよ。いきなり脳みそに戦い方の情報だけを無理やりねじ込まれたみたいな、そんな気分だ」

 

「何か…聞くだけで頭痛がしそう」

 

 

例え話に顔をしかめるゆかりを見て、綾は苦笑いを浮かべた

 

 

「それよりも、もっと何か聞かないとダメなんじゃないか?"お目付役"でも頼まれてるんだろ?桐条さんやあの理事長に」

 

「え…いや、そんな訳じゃなくて!」

 

「隠し切れてなかったぞ?チラチラ休み時間ごとに視線感じてたから。あれ岳羽だろ?」

 

「……うぅ」

 

 

どうやら的を射たようで、ゆかりはすぐに頭を垂れ、気まずそうに視線をさ迷わせた。実際、ゆかりは美鶴から彼の監視と行動に注意を払えと言われている

 

 

「そう落ち込むなよ。一学生でそこまで完璧に出来やしないよ」

 

「ううん…そんなんじゃないの。君を疑うような事してるのが、嫌だっただけ」

 

「疑われるのは仕方無いんじゃね?だって正体不明の、ペルソナでもない力で化物を圧倒したクセに知らぬ存ぜぬしか言わない。警戒して然るべきってやつ?」

 

 

出来るだけゆかりの罪悪感が消えるように、多少おどけた態度で接する綾。しかしそれを見て、ゆかりは一層下を向き、口を開く

 

 

「ねぇ…君は怖くなかったの?その…シャドウが」

 

「へ?怖いに決まってるだろ」

 

「え?」

 

 

すると余りに拍子抜けする返答が返って来たので、ゆかりは思わず顔を上げた。そこには、嘘などついた様子の無い、真剣な眼差しを向ける綾がいた

 

 

「どんなに戦えたって、強かったって、一つ間違えたら死ぬ。あそこは"そういう場所"ってぐらい、すぐに分かったよ」

 

 

自分の掌をゆかりに向け握り締めると、彼はもう一度景色を眺める

 

 

「誰だって死ぬのは怖い。怖くないなんて言えるのは、間近で死を実感したことのない奴が軽はずみに言うか、死の先に何かを見た奴…そんな変わり者くらいだ」

 

「……」

 

 

その言葉で思い当たる節があった。それは、昨夜の影時間での…今病院で眠り続けている『彼』の言葉

 

 

『死ぬってそんなに怖いこと?』

 

「(有里くんは、"あの事故"で何かを見たのかな)…怖いのに、どうして戦おうって考えたの?怖いなら立ち竦むとか、逃げることだって出来たのに」

 

 

どこか必死な様相で疑問をぶつけるゆかりに何かを見た綾は、彼女の言葉から少し間を空け、今一度答えた

 

 

「消えそうな命を見るのが、"怖かった"…それだけ」

 

「っ!」

 

 

そして彼女は気付いてしまった。偶然だったのかもしれないが、この時垣間見えた綾の表情は、間違い無く昨夜見た、あの表情に似通っていた

 

 

("同じだ"…死ぬことをまるで怖がってない、あの不気味な雰囲気)

 

 

普段何を考えてるのか分からない湊ならば、その雰囲気は一つの特徴として捉えられただろう。しかし今彼女の目の前にいる少年は、まだ数日しか言葉を交わしていないが、間違い無くこんな感情を抱くはずのない人間だと、誰もが思う印象を持つ人間だった

 

だからこそ、ゆかりは一抹の不安と同時に、湊以上の不気味さを彼から感じていた

 

 

「それと、気になる事がある…?岳羽?」

 

「…へ!?あ、いやごめん。何?」

 

「いや、思い過ごしかもしれないんだけど…もしかしたら敵は"シャドウだけじゃない"かもしれない」

 

「っ!?ちょっ、それ詳しく!」

 

 

だが次に綾から出された事柄は、今までの考え事を丸投げ出来るほど重要なものだった

 

 

「確信が無かったから桐条さんにも言わなかったんだけど。ほら、俺達を襲ったシャドウ、ヘドロみたいな奴がいたろ?あれを食って姿を変えたミイラ…あれは恐らくシャドウじゃない」

 

「あぁ、確か君がヤミーとか言ってたよね?あれ…何で名前知ってたの?」

 

「それも同じ、何故か俺の記憶に刷り込まれたように名前を覚えてたんだ。そしてその記憶の通りだと、ヤミーは元々『セルメダル』とかいうメダルの寄せ集め。人間の『欲望』を糧にメダルをより溜め込んで、親玉である怪物『グリード』に還元するための、言わば駒だ」

 

「え、え?メダル?グリード?何の話?てかあれに親玉いんの!?」

 

 

一々反応が大袈裟なゆかりを見て、綾はまたも苦笑すると、話を続ける

 

 

「それだけじゃないぜ、頭にある連中は。魔力の素養がある人間、『ゲート』を絶望させて負のエネルギーを膨張させ、その人物の死と共に生まれる亡者ファントム。きっと敵はもっといる…つまりはだ。もう敵はシャドウ一択じゃなくて、もっと訳の分からない化物が壁になるってことだ」

 

「じょ、冗談じゃないわよ!そんな連中今まで確認すらされたこと無いのに今更何で!?」

 

「さあ、な。だけどこれだけは言える…戦いはもう、止められない」

 

「…何よ、それ」

 

 

いまいち納得の行かないゆかりを余所に、綾はどこでもない遠くを睨んだ

 

 

(ディケイドの出現とファントム、ヤミーの出現。これはもう偶然とは言えない、か。とすると"誰か"がこの状況を意図した可能性がある……誰だ?裏で手を回してるのは)

 

 

彼が睨むのは、どうやら景色ではなく、その先。自分たちが向かう未来を危ぶんで、綾は今ある現状から必死に推測を立てる

 

 

(…案外、俺の記憶に色々ねじ込んでる奴だったりしてな)

 

 

だが考えられる事など、今の状況では少なすぎるので、彼は軽い答えだけ出してその思考を止めた。その頭の片隅で嫌な胸騒ぎを抱えたまま

 

 

キーンコーンカーンコーン!

 

「「あ…」」

 

 

そのタイミングが幸か不幸か、午後の授業の始まりをチャイムが鳴る、ほぼ同時だった

 

 

 

 

そして事件は起こった

 

 

 

 

 

 

 

 

2009年4月10日(金)

 

この日、学園のHRでは緊急の連絡が各教室で生徒へ伝えられた

 

 

 

内容は、"辰巳ポートアイランドの海辺にて起きた怪死事件"だった

 

 

 

「えぇ以上の内容により、本日の授業は措置として全て10分繰り上げし、部活も中止。速やかに自宅へ帰るように。いいな」

 

 

そして2年E組でもそれは同じで、担任の連絡事項が終わり、教室を離れたことで周りは一気に騒然とした

 

 

「この辺で事件が起きただなんて…怖いな」

 

「あぁ…そうだな」

 

 

隣の風花へ気のない返事を返す綾は、その事件がただ事でないと直感し、目が険しくなる

 

 

「あ、あの…八笠くん?どうしたの、そんな怖い顔して…」

 

「え…あ、あぁゴメン!物騒だよなぁ、て考えててさ?」

 

「あ、そうなんだ…出来れば早く解決してくれないかな。怖くて夜道なんか歩けないよ」

 

 

綾はこの時、彼女のその態度に少し驚いた。何故なら他のクラスメイトは、授業が楽になっただの、ポロニアンモールの店が閉まって遊べないだのと一切他人事と扱っており、普通ならここまで事件に肩入れする人間などいないと思っていたのだ

 

 

「…必ず何とかなるさ。必ず」

 

「え?」

 

 

だからこそ、彼は一層に事件解決の為に動く事を誓った

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後、早々に終えた授業の後、生徒は速やかに帰宅を命じられた。生徒もまた、ここでは遊べる場所が無いため、意地でも残るなどと考える者がいなかった

 

 

「お前、今日は速やかに帰れと言われなかったか?」

 

「…すいません、"あなた"に用がありまして」

 

 

しかし一人、警察官の制服を着た男性に咎められる少年がいた

 

 

「黒沢さん、俺に今回の事件の協力をさせて下さい!」

 

「何?」

 

 

警察官、黒沢にそう申し出たのは、察しの通り綾である。彼は事件に関わるのであれば、それに関与するためのコネがあると踏んで、黒沢の元を訪れたのだ

 

 

「…ダメだ。ただの一般人で、しかもたかだか学生であるお前を人死に関わる事件に関わらせる訳には」

 

「"ただの一般人じゃなければ"いいんですか?」

 

「……どういう意味だ?」

 

 

そして綾はここに来て、初めの手段に打って出る

 

 

「もし、1日の中で隠された時間があり、そこでしか現れない化物がこの事件に関わってるとしたら…信じますか?」

 

「っ!?まさかお前、桐条の関係者か?」

 

「ん?何で桐条さんが出てくるんです?」

 

 

しかし彼は知らなかった。実は彼、黒沢がどういった人物であるかを

 

 

「……つまり黒沢さんは、直接影時間の適性は無いけど、シャドウと戦う為の武器を横なが…ゲフンッ!調達してくれていると」

 

「まぁ勤務中にやることではないんだろうがな。何にせよ、この街を守ることが私の仕事だ。俺が知らないものを頑なに否定するのは簡単だが、あるのならそれを解決してくれる者たちを手助けするのは、当然だ」

 

「…信念、てやつですか。凄いですね」

 

「そんな大したもんじゃないさ」

 

 

黒沢の仕事に対する熱意に感嘆の念を抱く綾だったが、彼は事件について話題を変える

 

 

「それじゃあ、本題に移りましょう。まず詳しい詳細を教えてほしいんですが」

 

「その前に聞かせてくれ。何故お前はこれに影時間とやらが関わっていると思った」

 

「メディアの詳細で感じたことなんで、実は確証が無いんです。教えてくれた方が、信憑性が増します」

 

「お前…そんなんで良く話に来たな」

 

「正直影時間について信用されれば、話は聞けるだろうな~っとは思ってましたんで」

 

「ふん、意外と図太いな」

 

 

その後黒沢から聞いた詳細はこうだ

 

 

発生時刻はおおよそ本日深夜0時1分。辰巳ポートアイランドの港区に突然巨大なものが落下した音を聞きつけた第一発見者は、そこで落下して無惨な死を遂げた男の遺体を発見した

 

男は巌戸台で働く会社員。しかし彼は奇妙なことに、昨夜23時50分に巌戸台で目撃されていたのだ。その目撃位置から遺体発見現場までの距離を調べても、とてもその間に移動することは不可能だ

 

また彼が落下した地点を見回しても、その位置に人を落とす建物など見当たらない殺風景な場所で、更に被害者は殺された後に推定上空200mから落とされたというのだ。つまり先程の通り、本人が最後に目撃された場所から"本人が"移動しても不可能なはずが、恐らく"何者か"が死体を誰にも見られず建物もなしに空から人を落とした、ということになる

 

 

「正しく不可能犯罪。怪死事件というのは、人が人を殺す条件が一切当てはまらない為、一番当てはまる項目を報じた結果だっただけだ」

 

「……完全に影時間が関与してますね。でも…おかしい」

 

「どうした?」

 

 

すると綾は軽く握り拳を作り口に当てながら、黒沢に説明を始める

 

 

「今回の事件は間違い無く"人の仕業じゃない"。だけどシャドウでもない」

 

「何だそれは?まるで別の化物がいるような言い方だな」

 

「います。少なくとも、俺はその一部と関わりました」

 

「っ!?クソ!面倒なことになったな!」

 

「これはほぼ確信してることなんで、簡単に説明します」

 

 

そう言うと、綾は人差し指を立て、順を追って話を続ける

 

 

「まず被害者が落下した時点で"殺された"こと。例外があるのかも知れませんが、基本的にシャドウは精神を喰う存在です。そんな連中がワザワザ人を殺して別の場所に放り投げるなんて行動を、取るとは思えません」

 

「成る程、続きを」

 

「二つ目は、遺体が"影時間の後に"落下してきたこと。これは端的に、"影時間でしか活動できないシャドウが、影時間の後に遺体を落とした"という事実を証明しています」

 

「待て、さっきシャドウとやらが影時間でしか活動できないと…そうか、それでシャドウじゃない怪物の存在、か」

 

 

そして黒沢は、彼の意図を読むと納得したと大きく頷いた。しかし彼の世迷い言とも言える話を聞き入れられる器量の大きさは、ただただ感服するばかりである

 

 

「以上の点で、今回の怪死事件は影時間を利用した、極めて悪質な殺人事件と断定します」

 

「…筋は通っている。だがこれを捜査本部に報告した所で鼻で笑われるだけだぞ」

 

「ええ、ですからここからは"俺達で"突き止めます」

 

「桐条を頼るのか…」

 

「どちらにせよ、その怪物は影時間を自由に移動出来る存在だから、適性のある人間じゃないと尻尾すら掴めません。それに奴らは強い、いくら力を持っていようと、気を抜けば返り討ちは必死ですから」

 

「そう、か…」

 

 

黒沢が帽子を少し深く被り、下を向く。だが綾にはその行動の意図がヒシヒシと伝わり、今一度言葉を紡ぐ

 

 

「…黒沢さん、絶対に終わらせてみせます。こんな下らない死を振り撒く存在が、この街の人間を泣かせるだなんて、納得行きませんから」

 

「…あぁ、その通りだ。頼んだぞ、八笠」

 

「綾でいいです。結果は随時、報告させてもらいます」

 

「ふん、良い報告を期待してる」

 

 

ここで二人は話を打ち切り、別れることにした。何にしろ、準備は早い方が良いのだから

 

 

 

ー汝、"正義"の仮面を纏う時、失われた力を与えん

 

 心優しき戦士、その多才な姿で邪悪を打ち払わんー

 

 

 

「っ!?(何だ、今の声…)」

 

 

すると綾の頭に不思議が声が囁いた。彼は周りを見渡すが、いるのは背を向け去っていく黒沢のみ

 

 

「…変身した時と、同じ声?」

 

 

その声が何を示すのかは分からない。だが今は目先の事柄を解決することから始める綾だった

 

 

 

 

 

 

 

「それで、本日の影時間は見回りをすると?」

 

 

同日の夜、綾は湊、真田を覗く寮生並びに理事長、幾月を会議室に集め、事の顛末を説明した

 

 

「成る程、確かに今回の事件は、シャドウの仕業にしては不可解な点が多かった。だが君の説明ならば話が纏まる。早速影時間に向けて準備を始めよう」

 

「お願いします」

 

「ふむ、シャドウとは別の存在か…中々に興味深い」

 

「理事長…不謹慎ですよ」

 

 

いち研究者としての興味が沸いたのか幾月の発言を、ゆかりが咎める

 

 

「いやあ済まない。今までに無いケースだから、どうしても調べておきたくてね」

 

「そういう事でしたら、それに関して詳しそうな人物が目の前にいると思いますが…」

 

 

美鶴がそう言って顔を向けたのは、もちろんのこと、綾である

 

 

「ちょっと桐条先輩!そんな言い方」

 

「いいよ岳羽。そう思われたって仕方無い…俺だって不気味に思うよ。何でこんな事を知ってるのか、何で今になってなのか。それを知るには、やっぱり戦う他に道は無い」

 

「……」

 

「済まない、私も大人気なかった。君も混乱しているのにな…先輩としてどうかと思うよ」

 

 

何だか調査以前から微妙な空気が生まれ、綾は一抹の不安を抱く

 

 

「その考え方は、立派ですよ。不確定要素は疑ってかからないと、仲間を失います」

 

「…ふっ、君は強いな。その言葉、ありがたく受け取らせてもらうおう」

 

 

だがそれも杞憂に終わるようで、拍子抜けしてしまう

 

 

「八笠君、この際だからいっそ、仲間にならないかい?君のような人間がいれば、こちらも助かるんだ」

 

「理事長、それは湊が起きてからお答えする約束です。返答を焦ってしまえば、思わぬしっぺ返しを食らうんで」

 

「そう、か…いやぁ焦らす気は無かったんだが、失言だったね」

 

 

幾月が言う仲間とは、彼が顧問を勤めるとある部活の勧誘である。その名も『特別課外活動部』、通称『S・E・E・S』。表向きは部活動だが、実際はシャドウ討伐を目的とした選抜チームを指す

 

 

「それにしても、八笠くんってホントに同い年に見えないね?実は年齢偽ってる?」

 

「って失敬な!?俺はまだ若い!」

 

「いや、その返しはおかしいでしょ…」

 

「そうだな、君の鋭い推察や立ち振る舞いを見る限り、既に私なんかより立派に見えるよ」

 

「手放しで褒めすぎですよ……今更出来たって何も戻って来ないんだから」

 

 

綾が一瞬だけ見せたあの表情を、ゆかりは見逃さなかった。そして彼が放った言葉も、だ

 

 

(八笠くんも、何かを"失った"?)

 

「…桐条さん、そろそろ準備を。恐らく犯人は、今日も現れる。もし推測が正しければ、単独行動は御法度、よってメンバー三人での調査を行います。効率の悪さが目立ちますが、安全第一ってことで」

 

「了解した。では作戦開始まで、各準備を行おう。解散!」

 

 

美鶴の号令が響くと、綾はいち早く部屋を跡にした

 

 




この伏線、分かり易い…

次回は本日7時を予定しています

この小説は書き溜めて小出しのスタイルを取ります。キリが良いところで出すため、更新が遅い代わりにスッキリ読めると思います。では!
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