ペルソナ3 ~愚者と破壊者は旅をする~   作:Third+s

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決意は力に

綾が姿を消した。この情報が行き渡ったのは、彼が鳴滝に連れ去られた約数時間後のことだった

 

 

「しまった!彼を昼だからと単独行動させたのが間違いだった!」

 

「桐条先輩、気持ちは分かりますが先ずは彼の居場所を探さないと!」

 

 

巌戸台分寮では、美鶴とゆかりが慌てて彼の居所について話し合うが、昨夜置いてけぼりにされた明彦は、そこでハッキリと現状を口にした

 

 

「おいお前ら!こんな時に何を言ってる!もうすぐ影時間だぞ、もし八笠の推測が正しければ、今夜も誰かが襲われる。それを放っておくと言うのか!」

 

「だが!仲間の安否も大事ではないのか!」

 

 

必死に明彦へ訴えかける美鶴だが、彼は何の気なしに、さも当然と言わんばかりの口調でこう返した

 

 

「あいつがその程度でくたばるとは思えん。その内帰って来るさ」

 

「そんな悠長な!」

 

「仲間を信じることも、大切なことだとは思わないか?」

 

「「っ!」」

 

 

そこへ来て漸く、二人は冷静さを取り戻した。そしてそれをハラハラしながら見ていた幾月も、ホッと胸を撫で下ろした

 

 

「ありがとう真田くん。では、本題に入ろう。八笠くんが纏めた話によると、敵は独自の文化を発達させた種族、グロンギ。奴らは我々人間を殺すことをゲームとして楽しむ極めて残忍な連中である。そこまではいいかい?」

 

「はい、また彼の捜査協力を行っている黒沢氏によると、奴らにはルールに則った行動パターンがあると言っていたそうです。それにより、彼は一旦第一発見者の護衛と、目撃者の監視を行っているようです」

 

「ふむ、となるとグロンギとやらを見つけるには、最低巌戸台か辰巳ポートアイランドを二手に別れなければならないことになる」

 

「その点だが、恐らく見回るのは巌戸台だけで十分だ」

 

「どういうことですか?」

 

 

ゆかりの質問に対し、美鶴は一度間を空けてから口を開く

 

 

「奴らはこの二件で共通した行動を取っている。"巌戸台で殺し、ポートアイランドへ運ぶ"…この行程は二件とも変わらない」

 

「成る程、つまり奴らの犯行を阻止するなら、巌戸台を回れということか。それなら話は早い、影時間には早いが見回りに行くぞ!」

 

「アキ!お前は怪我人だろう!」

 

「今は圧倒的な戦力不足だ。グロンギは複数と分かっている以上、一人でも人手は多いに越したことはない」

 

 

明彦の言い分も尤もな為、美鶴は仕方ないと言わんばかりの溜め息を吐く

 

 

「…分かった。ただし、無茶はするな」

 

「よし、任せろ!」

 

 

ガッツポーズを取るこの男を見て、美鶴は更なる不安を募らせる

 

 

「…岳羽、お前はどうする」

 

 

そしてもう一つの不安要素が、ゆかりであった

 

 

「…行かせて下さい。もう、昨日みたいな事はしません」

 

「…分かった。よろしく頼む」

 

 

だが彼女の強い目が、美鶴の不安が杞憂である事を物語っていた

 

 

「ははは、いい感じじゃないか!一夜布団で寝たら、不安も"ふっとん"だ~!なんちゃって、プププー!」

 

 

彼らのモチベーションは、一発で絶対零度にまで下がりきった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…くっ!ここは」

 

 

時は少し遡り、綾が鳴滝によって強制転移された直後のこと。彼はカーテンの先で広がる光景に疑問を浮かべた

 

 

「見たことも無い場所だが…」

 

 

そこはヤケに広く正面には階段と、黄金の時計のようなオブジェに入り口らしいものが見て取れた。さながらそこは『エントランス』にも見えた

 

 

「っ!?」

 

 

するとその直後、彼の周囲を灰色のカーテンが覆い、それが消え去るとおおよそ百人もの黒服の男たちが彼を囲んでいたのだ

 

 

「…変身」

 

「変身!」

 

「変身」

 

「へんしん!」

 

 

その集団は全員同じベルトを巻き、各々が携帯電話型のツールを握り、ベルトにセットしていく。次の瞬間、彼らはベルトにより全員が同一の姿に変身を遂げた

 

 

《complete!》

 

「成る程…人海戦術ってやつか」

 

 

その姿は、綾が以前変身したファイズが酷似しているが、基本カラーがブロンズで、複眼も灰色でOを模していた。彼らの名を、『ライオトルーパーズ』と呼ぶ

 

 

「鳴滝ってやつが何者かは知らないが、ここでくたばる気は無い!」

 

 

綾はバックルを腰に当て、ベルトを装着すると、既に右手に持ったカードを前に構えた

 

 

「変身」

 

『kamen ride! decade!』

 

 

彼はトルーパーズの中心で変身を遂げると、ライドブッカーをソードモードに切り替え、切っ先を拭う

 

 

「来るなら来い、全て破壊してやる!」

 

《オオオオオオオオオオ!!》

 

「はああっ!」

 

 

そしてディケイドの刃がトルーパーズの一体を切り裂くと同時に、終わりの見えない乱戦が幕を開けた

 

 

 

 

 

 

 

 

2009年4月12日(日) 影時間

 

時間は元に戻り、現在は影時間。綾の埋め合わせに明彦が加わった捜査班は、巌戸台にて再びグロンギと相対していた

 

 

「あれがグロンギか、腕が鳴る!」

 

「気をつけろ!敵は複数だ、まだどこかに潜んでいるやもしれん!」

 

「取り敢えず隠れて下さい!ここは私たちに任せて」

 

「ひっ、ひぃぃぃ!」

 

 

彼らは運良く新たな被害者を出す前に、グロンギと接触を果たしていた。そして敵を取り囲むと、目の前の飛蝗の容姿に赤いマフラーをしたグロンギは、鬱陶しそうに舌打ちする

 

 

「ザボゾロザ(雑魚どもが)」

 

「生憎我々は言葉を交わせないんでな!ペルソナ!」

 

「この時を待っていた!ペルソナ!」

 

 

美鶴を筆頭に、先ずは上級生組が飛蝗のグロンギに攻撃を仕掛ける。美鶴のペンテシレアが『ブフ』を、明彦のポリデュークスの『ジオ』が中心に向かって放たれ、着弾する

 

 

「何!?」

 

「跳んだ!?」

 

 

だが雷と氷塊は標的を掠りもせず、グロンギは月夜の空を舞う

 

 

「ギベ・リント(死ね、リント)」

 

 

驚異の跳躍力を見せるグロンギは空中から美鶴を狙い、急襲する

 

 

「ペルソナッ!」

 

「ッ!」

 

「岳羽!」

 

 

すると次の瞬間、飛蝗のグロンギを疾風が襲い掛かる。グロンギは空中で一度体勢を整え、難なく着地するが、彼はこの現象を起こした岳羽を一瞥し、鼻を鳴らした

 

 

「…引き金を、引けたんだな」

 

「…私には、私なりの戦う理由がある。それに、言ってもらったんです。私って案外、弱くないって!」

 

 

ゆかりの決意は形となり、彼女の背後に権限された。牛の頭部が空中に浮き、そこに両手足を枷で縛られた女性が腕を交差させ、静かに座っている

 

 

「あぁ、君は弱くない!我々の仲間に、弱い奴はいない!」

 

「行くよ、『イオ』!」

 

 

ゆかりのペルソナ、イオは静かに主に従う。それを見たグロンギもまた、どこか笑っているように見えた

 

 

「ボギ・ガゴンゼジャス(来い、遊んでやる)」

 

「食らえ!」

 

『ガル!』

 

 

ゆかりの指示によりイオから放たれた風、『ガル』の疾風がグロンギを襲う。だがそれを真横に飛び跳ねることで回避すると、真っ先にゆかり目掛けてグロンギが駆け出した

 

 

「させると思うか!」

 

「ズン(ふん…)」

 

 

そこへ横から明彦のストレートが放たれ、グロンギの頬を捉えた。だが敵はそこから一歩も動かず、ゆっくりと明彦の腕を掴み返した

 

 

「な、に!」

 

「マンヂ・デデンパ・ボググ・スンザジョ(パンチってのはこうするんだよ!)」

 

「ぐはっ!」

 

「っ!アキ!」

 

 

お返しとばかりに放たれたグロンギの拳が明彦にクリーンヒットすると、彼は壁際のダンボールの山へ突っ込み、盛大に煙を上げて見えなくなる。美鶴はそれを見て咄嗟にレイピアを構え、グロンギの腹部を突き刺す

 

 

「ぐっ!?」

 

「ザゴダ・ゲボバギ(歯ごたえの無い…)」

 

「うあっ!」

 

 

しかしグロンギの腹筋は鋼のように固く、レイピアの切っ先をも通さず、美鶴は首を締められながら横に放り投げられ、地面を転がった

 

そこへすかさず、グロンギの目に向かって矢が放たれた

 

 

「…ジャスバ・ゴンバ(やるな、女)」

 

「次は、当てる!」

 

 

目に当たる寸前に片手でキャッチされたが、ゆかりの戦意は衰えない。互いの目が交差し、緊張が走る

 

 

「ぎゃあああああ!!」

 

「っ!?しまっ、きゃあ!」

 

 

だがその緊張を破ったのは、襲われた男の断末魔だった。その隙を突かれる形で、ゆかりは飛蝗のグロンギに張り倒され、地を這い蹲りながら見た光景は、男の首に噛み付いた、蝙蝠のグロンギの姿だった

 

 

「ぁ、ぁあ!」

 

「ジャラゾ・グスバ・ゴオマ(邪魔をするな、『ゴオマ』!)」

 

「デゾバギ・デジャダダ・ザベザ・バヅー(手を貸してやっただけだ、『バヅー』)」

 

 

蝙蝠のグロンギ、ゴオマを責めるように喋る飛蝗、バヅー。だがゴオマは窘めるような調子で言葉を返すと、不服そうにバヅーも引き下がった

 

 

「ボスラザ・ゴパシザ・ヅビボ・ゲロボザガザ・ラデデギス…ギブゾ(ノルマは終わりだ。次の獲物も定まってる…行くぞ)」

 

「ギボヂヂ・ソギ・ギダバ・ゴンバ(命拾いしたな、女)」

 

 

バヅーはゆかりに何かを吐き捨てるように言い残すと、ゴオマと共に、遺体を担いで消え去った

 

ここに、彼らの敗北が無情にも叩き付けられた

 

 

 

 

 

 

 

『attack ride! slash!』

 

「はぁぁああ!」

 

《ぐあぁぁぁ!》

 

 

一方、影時間に入った深夜の中、ディケイドは未だに襲い来るトルーパーズに苦戦を強いられていた

 

 

「かはっ!はぁ!はぁ!はぁ…クソ」

 

 

ディケイドはここ数時間、ほぼぶっ通しでトルーパーズを一人で相手取り、その数も残り十にまで減らしていた。しかし既に満身創痍の体を、彼は動かすだけでも億劫となっていた

 

 

(何故だ…他のカードだけじゃなく、ディケイドのカードまで制限が掛けられている)

 

 

実は彼が今扱えるカードは、『スラッシュ』、ディケイドの『ファイナルアタック』のみなのだ。彼はそんな極限状態の中で数時間の地獄乱戦を戦い抜いている。普通ならば、これだけでも大金星なのだが、生憎これにそのような制度は無い

 

 

「何か、突破口になるものがっ、あれば!」

 

 

トルーパーのエッジを力任せに振り払い、顔面にストレートを入れると、背後から来るトルーパーに裏拳を叩き込み、片手に持つ刃で袈裟斬りを浴びせた

 

 

「…待てよ」

 

 

するとディケイドがライドブッカーから一枚のカードを取り出す。それは最近の夢で見た、クワガタを模した赤い戦士、クウガのカードだった

 

 

「これは、使えるのか?」

 

 

ディケイドが持つそのカードは、何かを示すように明滅しながら輝いていた。そして彼はこの状況を打破する為に、カードを装填した

 

 

『kamen ride! kuuga!』

 

 

ディケイドの全身にエネルギーが供給され、その姿が変わる。そこに立つのは、"白い戦士"

 

 

「…赤じゃない?」

 

「ふっ!」

 

「っ!?クソ!」

 

 

白いクウガは襲い掛かるトルーパーをかわしつつ後ろから回し蹴りを放ち、正面に来たトルーパーに連続パンチを浴びせ、顔面にエルボーを叩き込んだ。しかしそれだけの攻撃を受けたトルーパーに、余り効果が無いような素振りが見えたことで、クウガは驚愕する

 

 

「力が不完全なのか!」

 

「はっ!」

 

「がはっ!?」

 

 

彼が狼狽える間に、別のトルーパーが去り際にエッジの一撃を与え、別方向から更に一体がクウガの後頭部を殴りつける

 

 

「何かが…足りないのか」

 

「「はあ!」」

 

「うあああああ!」

 

 

そしてクウガの正面から二体のトルーパーがエッジを掬い上げるような軌道で振り上げ、後方へ大きく吹き飛ばした。その影響により、クウガの変身が解け、ディケイドに戻る

 

 

「一か…バチかだ!」

 

『final attack ride! de de de decade!』

 

 

ディケイドの様子を好機と見たトルーパーズが一斉に襲い掛かる中、ディケイドはカードを装填した。彼の正面に十枚のカード状のホログラムが等間隔で現れ、彼が跳躍するに合わせて配置が斜めに変わる

 

 

「はあああああ!!」

 

 

ディケイドがカードを通過する度に右足にエネルギーが収束し、次元を潜り抜けるようにワープする。そして十枚目を通過した瞬間、10体のトルーパーズの元へ必殺技、『ディケイドディメンジョン』が繰り出され、跡形も無く爆散した

 

 

「かはっ!はぁ、はぁ!ぅ…」

 

 

フラつく体をどうにか押し留め、限界を迎えた体に従い変身が強制解除される。元の姿に戻った綾の体に痣と出血が見られ、装甲越しからも相当なダメージを受けたことが分かる

 

 

「今なら、出られるのか…?」

 

 

綾は必死に体を引きずり、出口を潜り抜けた。そして彼が振り向いて見た光景は、驚愕に値した

 

 

「何だ…これは!」

 

 

それは建物なのか、塔なのか。空を衝かんばかりに高く伸びた、建物を適当に積み重ねたような異様な建造物は、綾の記憶の中では見たことが無い

 

 

「こんな場所、巌戸台には無かったはずだ。これは、一体…ぐっ」

 

 

しかし彼の酷使された体は悠長なことを考えさせてはくれなかった

 

 

「…そうだ、影時間!また誰かが、襲われる!」

 

 

それでも、綾の中で決められた優先事項が、自分の安否を切り捨て、その足を進めた

 

 

「皆、上手く…やれてる、のか?黒沢さんは…どう、して…る」

 

 

そして彼の意識は途絶え、体は地に沈む

 

 

 

この瞬間、影時間は終わりを告げ、彼は通行人に発見されることとなる




次回で番外編ラストでしょうか

次回は本日19時を予定しております。では
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