2009年4月12日(日)
辰巳ポートアイランドに建設された医療施設、『辰巳記念病院』。ここには今も眠る湊、怪我をしている明彦もお世話になっている病院で、そこには丁度、特別課外活動部の面々が顔を揃えていた
「…八笠くん、一体何があったの」
彼らが今見つめる先には、意識を失い、傷だらけの綾が眠っていた。見つかった時にはかなり酷い有り様だったようで、ゆかりを始め、メンバーは血相を変えて病院に駆けつけていた。しかし彼らも、所々に包帯や絆創膏をつけていた
「クソ、私のミスだ…彼をこんな目に合わせたのは」
「美鶴、止めろ。どの道いつかはこうなる事くらい、分かっていたはずだ」
「そんな事分かっている!だが現状を見ろ!殺人を止められず、八笠が倒れた!我々は…何も成し遂げていない」
「先輩…病室ですから、静かにしましょう」
力無く美鶴を咎めるゆかりは、ただ目を閉じる綾を見る
「…ねぇ、八笠くん。初めて、人が死ぬ所を見た…何も出来なかった自分に嫌気が差す気持ち、殺した奴への憎しみ、色んな気持ちがグチャグチャになって…上手く纏めらんない。君はどうして、守りたいって思えたの?こんな辛い思いをして、どうしてそんなに前向きで、強い言葉を言い続けられるの?」
まるで助けを請うように、ゆかりは俯き、膝の上に置いた両手を握り締めた
「ゴメン、君が傷ついてる時に、君を頼ろうとしてる。最低だよね…あたし」
「岳羽…」
「…すいません。ちょっと出ます」
耐えきれなくなったゆかりは、綾の傍らから離れ、病室の扉に向かった
「おっと、すまない。取り込み中だったか」
「っ、黒沢さん」
だが思わぬ来客により、彼らの状況が一気に好転する
ー「俺は、あんたに褒めてもらえるのが嬉しかった!」
ー「俺は、皆の笑顔を守る!」
ー二つの信念、2人の戦士。人が違えど、その根幹は同じ
ー『知ってるか?こいつの笑顔、悪くない』
ー誰かが言った。笑顔を守る男の笑顔は、輝いていると
ー彼は名乗る己が何者なのか……
『俺は…』ーーー
「敵のルールが絞れた?」
病院の外に出た面々は、黒沢の話を聞き始めると、意外な事実を告げられた
「あぁ、奴らは恐らく"被害者を最後に見た人間"を標的にしている」
彼の捜査によると、グロンギは最初、同じ会社員を狙って襲っていると思われていたが、今回の被害者は無職の男だったのだ。また、生年月日その他の共通点も見当たらず、辰巳ポートアイランドへ遺体を運ぶ意図は分かっていないが、第一発見者を襲う傾向が無いことから、必然的に最後に見た人間が襲われるという結論に至ったのだ
「そうか、それなら説明がつく!」
「この短期間で良く気付きましたね」
「いや、俺だけの成果じゃない。実はこの推測も、あいつから懸念されていたものの一つに過ぎん」
「…八笠ですか」
美鶴の言葉に頷いた黒沢は、それについて語る
「あいつは、連中の動きには必ずルールがあると言った。そしてその中に、最後に見た人間も可能性がある中で…彼は敢えて私に監視を依頼した」
《っ!!?》
その事実に驚愕する面々を、彼は一度手で制し、続きを話す
「確かに危険な行為で、言わば囮作戦だ。だがあいつは出来れば断って欲しいとも言った。あくまで次の動きを読みやすくする為とはいえ、俺の前の被害者を救えば問題無いと言ったが、確証も無いとも言われた」
「それでもあなたは、引き受けたのですか?」
「いい加減手をこまねいて死に行く人達を黙って見たくないんでな。出来る事なら、私はいくらでも手を貸す。それが俺の信じた道だからだ」
「…信じる、道」
ゆかりは黒沢を見て、何かを思うように言葉を反復させた。そして一度拳を握りもう一方の手で包み込むと、真っ直ぐ黒沢を見て言い放った
「私も、みんなの笑顔を守りたい!黒沢さん、協力お願いします!」
「…ふっ、良い目だ。強い目をしている」
「ある人の受け売りですけどね」
その"ある人"が誰などと、ここにいる者が今更問う必要は無かった
ーこれはある少年の話…
ー少年の両親は中小企業の社長と、その秘書だった。それなりに不自由の無い生活を送っていたが、事態は一変した
ー世界有数の大企業、桐条グループが両親の中小企業の経営に多大なダメージを及ぼしたのだ。これには父親が訴訟を起こしたが、圧力によってそれは取り上げられず、会社は倒産した
ー父親はその後急な発作を起こし亡くなった。母親はそれに耐えきれず、自ら自宅で首を吊った。この出来事は、現在から丁度十年前のことである
ーこれが引き金となり、少年に莫大な遺産が入った。保険が適応された結果だ。しかし彼の周りにいたのは、金の亡者
ー少年は初め桐条を恨んだ。そして周りに纏わりつく人らしき"何か"へ冷めた目を向けた。彼はその目を見ていく内に、その感情を読み取れるようになっていた
ーだが彼に、一つの出逢いが訪れた。それがいつ、どこでなのかは覚えていない。だが彼は確かに出逢った。今の彼になるきっかけとなった"恩人"とも言える誰かに
ー確固たる信念を宿した、深く無限に広がる可能性の目を持つ人間に
2009年4月13日(月) 影時間
「…これは!」
この日、影時間に一人の男が迷い込んだ。警察の制服を着込み、その手は拳銃のホルスターに掛けられていた
彼、黒沢巡査は待ち構えていた異形の時間に、嫌な汗を浮かべて立っていた
「リヅベダ(見つけた)」
「っ!?」
そして現れる、残虐なる種族。ここポロニアンモールの正面階段の上に、飛蝗のグロンギ、バヅーが座り込み、黒沢を眺めていた。黒沢はすかさず振り向き、その手に拳銃を握り、照準を合わせる
「ルザザ・ギベ(無駄だ、死ね)」
「っ!ぐう!」
だがバヅーの驚異的な身体能力により、肉眼で捉えられない速度で黒沢へ肉迫すると、一足で至近距離に迫り、首を締め上げた
「食らえ!」
「!?」
その瞬間を待ちわびるように、バヅーの元へ風を切り裂く程の速度を孕む矢が飛来し、急いでバヅーを黒沢から引き離した
『ソニックパンチ!』
『マリンカリン!』
そこに更なる追い打ちとして、長髪の巨人ポリデュークスの瞬速のパンチと、フリルの騎士ペンテシレアのスキルがバヅーを追い立てる
「ッ!」
ここでバヅーは直感的にポリデュークスの攻撃を受け、ペンテシレアのスキルを全力で回避した
「流石に『状態異常』を食らうヘマはしないか」
「そのお陰で拳が通った。これで昨日の仕返しが出来た!」
「…ゴボセ(おのれ!)」
そして黒沢を囲むように現れたのは、特別課外活動部、『S・E・E・S』の面々。彼らは各々のペルソナを従え、リベンジを挑む
「さあ、今度こそ覚悟しなさい!」
ゆかりの宣戦布告を合図に、疾風魔法『ガル』を纏った風の矢が戦場を駆けた
一方、こちらは影時間中の辰巳記念病院
「……ぅ」
この時、綾の病室で微かに呻き声が響いた
「目覚めたようだね」
だがここに、予想を外れた招かれざる客が何時の間にか訪れていた
「…ここ、は」
「君はボロボロになってここに運ばれて来たんだよ。それにしても、酷くやられたね」
「き、みは…?」
朧気な意識の中、綾は自分が横たわるベッドに腰掛ける、囚人服のような服装をした少年に意識を向けた
「今は何とも言えないから、名乗れないんだ。だけど君、このままでいいのかい?」
「何が、だ」
徐々にハッキリしてきた意識の中、彼はゆっくりと上半身を起こし、少年に向き直る
「今はもう影時間だ。そして今日もまた、奴らは人を襲ってる」
「っ!?俺が気絶してどれほど経った!」
「まだ1日も経ってないよ。だから今襲われてるのは…君の知り合いじゃないかな?」
「…黒沢さん!」
綾は慌てて体についた医療機器を外し、ベッドを降りるが、体のダメージが動きを制限し、盛大に地面に転んでしまった
「今君の仲間が、知り合いの側にいるみたいだ。それでも行くの?」
「別に、皆を疑ってる訳じゃない…!だけど、俺は行かないといけない!」
「それは何故?」
「俺の…選んだ"道"だからだ!」
彼は震える足に力を込め、体に巻かれた包帯を取る。そしてそれを後ろで見ていた少年は、さも面白そうに笑みを深めた
「そっか、なら止める必要も無いね」
「どういう意味だ?」
綾の質問に、少年は答えなかった。不思議に思い振り向くと、先程まで話していた少年は忽然と消え、その場所には代わりに、一つの資料が置かれていた
「…っ!これは!」
棚にあった制服に着替え、資料を見ると、そこには黒沢の調査内容が書かれており、綾は颯爽と病室を跡にした
『ジオ!』
バヅーの背後から雷が飛来する。しかし彼はそれを見る必要も無く首を傾けるだけで避け、ペンテシレアのレイピアをいなした
「こいつ、見た目通りの化物だな!」
「まだ一体いるというのに厄介な!」
二人はバヅーの戦闘能力に辟易としながら攻撃を繰り返していた。そしてゆかりはと言うと、黒沢の護衛兼弓での援護、更に彼女だけが持つ回復魔法『ディア』によるサポートに回っていた
だがペルソナは使うと共に精神を疲栄させ、更に影時間の間は、通常よりも体力を削られてしまうという悪条件の中で三人は戦っていた
「はぁ、はぁ」
「くっ!私に戦える力があれば!」
目に見える疲れを見せるゆかりの背で、黒沢は悔しさのあまり歯噛みした。しかしそれを否定したのは、近くにいたゆかりだった
「黒沢さんは、強いですよ」
「…何?」
「誰かの笑顔を守るために、命を張れる人って…そういないと思います」
「…そうでもないさ。俺は信じてる、人は自分の欲の為に争うだけの生き物ではないんだと」
黒沢の言葉を背に、ゆかりは顔を綻ばせた
「ハァ"ァァ!」
《っ!!》
だがその一瞬の隙が、敵の好機となる
「岳羽!黒沢巡査!ぐっ!?」
ゆかりと黒沢を襲った蝙蝠のグロンギ、ゴオマを視認した美鶴だったが、ここへ来て更なる猛攻をかけるバヅーに足止めを食らう
「ボザバギギ・ギベ(小賢しい、死ね!)」
「くっ!イ、きゃあ!?」
ペルソナを召喚しようと拳銃を構えたゆかりだが、ゴオマは既にその動作を見切り、拳銃を横にはたき飛ばすと、ゆかりを横へ吹き飛ばし、黒沢の首を締め上げた
「がっ…!」
「ドグゲザ・ヂゾグデデジャス(どうせだ、血を吸ってやる)」
するとゴオマはゆっくりと口を開け、その口を黒沢の首に運んでいく。彼は為す術が無く、せめてもの抗いに、ただゴオマを睨み続けた
「や、止めろーーー!!」
「ぐっ、クソ!」
美鶴と明彦も、バヅーに完全に足止めされてしまい、救援の見込みが無い
(ねぇ…君が動けないのは分かってる。君が今苦しんでるのも分かってる…だけど!)
召喚器が手元に無いゆかりは、ひたすら願う。ここにいない男の登場を
「た、…す、け…て」
ブゥゥゥゥゥン!
《っ!!?》
その時、影時間の陰鬱な闇に、一筋の光が灯る
「ガ?グオ!?」
光の光源は正に噛みつかんとするゴオマに突撃すると、ゴオマはそこから10m程吹き飛ばされ、バヅーの元まで転がった
「…ぁ」
そしてゆかりは、ゴオマの拘束から離れた、黒沢の手前に止まる大型バイクに跨がる、ある男を見上げた
彼はバイクから降りると、ヘルメットを外しながら黒沢へ手を差し伸べた
「…遅くなりました」
そしてその背を見たゆかりは、安堵と共に呆れに近い感情が湧いた。待ちわびていた、黒髪に整った顔立ち、月光館学園の制服を規則通りに着こなした、謎の多い二人目の転入生が、自分たちの前に立ち上がっていたことに
「何だかなぁ…タイミング良過ぎだよ、八笠くん」
ここに、最も必要とされた役者が、姿を現したのだ
「狙い澄ましたようなタイミングだな…」
「グロンギが狙う標的が、最後の目撃者の可能性が高いって分かった時は焦ったんですよ?片っ端から探す時、まず心当たりで一番近いここにして正解でしたよ」
「あぁ、助かった」
黒沢は綾の手を取り立ち上がると、二人はこちらを警戒するグロンギを睨む
「全く、やってくれる!」
「八笠…!」
「約束、守ってよね!」
「三人とも、後は任せて」
ヘルメットをバイクに乗せ、彼は悠然とグロンギに近付く
「ビガラ・バビロボザ(貴様、何者だ!)」
「何者かって?…お前たちに合わせるのも面倒だから、このまま名乗らせてもらう」
そして綾はバックルを装着し、カードを引き抜く
『俺は…』
その時、彼の頭に響く声が、新たな記憶を刻み込む
「俺は…」
それは、己の力の名。ペルソナと呼ばれる力の名と同じく、戦士にも名前があった。それが、それこそが
「『通りすがりの仮面ライダーだ!』」
もう一つの仮面の力、仮面ライダー
「変身!」
『kamen ride! decade!』
15のシルエットが彼の前方横一列に並び、収束する。そして現れるマゼンタの戦士、仮面ライダーディケイド
「ビガラ…ディケイド!」
「さぁ、いい加減に破壊してやる…このイカレた茶番を」
ディケイドは両手の汚れを払うように右左と手をはたき、バヅー、ゴオマに歩み寄る。そして二体はそんな悠長な姿を見ている訳も無く、自ら走り寄る
「ハァ"ァ!」
「フン!」
ゴオマの振るう腕を左手でいなしカウンターの右ストレート、バヅーの力任せなパンチを素早い掌底で無力化し、左エルボーを顔面に一発叩き込むと、バヅーの腹を蹴り飛ばした
「ギィィ!」
「くっ、こんの!」
するとゴオマが背後からディケイドを拘束するが、彼は肘打ちを脇腹に叩き込み、背負い投げするように前方へ投げ飛ばした
「っ!くっ!」
「っ!八笠くん!?」
だがディケイドは先刻のダメージが未だ深刻で、膝をついた
「ギベ・ディケイド(死ね、ディケイド!)」
「ボソグ(殺す!)」
二体のグロンギはディケイド目掛けて駆け、その命を狙う
「そうはさせんぞ!」
だが彼の前に立ちはだかったのは、黒沢巡査であった。彼はリボルバー式の拳銃をグロンギに向け、正面から発砲する。例え効果が無く、衰えない速度で近付いて来ても、彼は絶対に逃げない
そして拳銃の弾が尽き、空を打つ撃鉄の音が響き、二体が黒沢を襲わんと飛び掛かる
「今だ!」
『ガル!』
『ジオ!』
『ブフ!』
その瞬間、二体の周辺に風が、雷が、氷塊が殺到し、あらぬ方向へグロンギを吹き飛ばした。彼らは油断していたのだ。何の脅威でも無いと踏んだ黒沢の攻撃を、特別課外活動部のペルソナの力を
「…無茶しますね」
「ふん、これぐらい、君たちに掛けた負担に比べれば安い」
黒沢はディケイドに手を差し伸べ、ディケイドはそれを掴み立ち上がる
「さっきの借りは返した…だが俺にこれ以上は出来ない。だから、お前に託す。必ずやってくれ、仮面ライダー!」
「…当たり前です!」
ー我は汝、汝は我
汝、"正義"の仮面を纏う時、失われた力を与えん
心優しき戦士、邪悪なる者あらば希望の霊石を身に付け、炎の如く邪悪を打ち倒すー
その瞬間、ディケイドの頭の中でまたも不思議な声が響いた。その直後、ディケイドのライドブッカーからカードが飛び出すと、白いクウガが描かれたカードが元の赤いクウガに戻り、クウガを象徴するエンブレムが描かれた黄色のカードが色を取り戻した
「絆を紡ぐ…そういうことか」
ディケイドは一人納得すると、サイドハンドルを引き、今しがた色を取り戻したクウガのカードを前に構え、反転させる
『kamen ride! kuuga!』
「ふっ!」
そしてディケイドがバヅーの元へ駆け、顔面を殴りつける。すると彼の腕が突然腕輪のついた赤い腕に変化した
更に彼は横から襲い来るゴオマの顔面を左手の裏拳で牽制すると、左手も同じく変化した
「はっ!ふん!おらっ!」
二体の殴りつける度、その姿が変貌していき、遂に首から下が赤を基調とした仮面の戦士に変わり、ずっと鳴っていた待機音が激しさを増した
次の瞬間、ディケイドの頭を含め、遂にその全貌が変化を終えた
「変わっ、た…」
「見たことの無い戦士だ」
「ダ・ダババ(ば、馬鹿な!)」
その戦士、クウガを見たゴオマが狼狽えた
「ビガラグ・バゼビ・クウガ(貴様がクウガに…何故!)」
「ゴセバ・ガブラザバサ・ジャバギボバ(俺が悪魔だからじゃないのか?)」
「ゴロギソギ・ボギ(面白い、来い!)」
クウガは右手の指の力を抜きながら斜め前に突き出し、左手を腰横につけた状態でグロンギと相対し、バヅーと同じタイミングで正面から突貫した
「はっ!はあ!」
「フン!ォォ!」
互いの格闘術が拮抗し、バヅーが膝蹴りを放つが、クウガはそれを両手で受け止め、左フックを頬にクリーンヒットさせ、顔面、胸部を順に殴りつける
「シャァァ!」
「っ!おりゃ!」
そこへ背後からゴオマの急襲が入るが、クウガは振り向き様に体勢を大きく変え、体を投げ出すような形で空中のゴオマを蹴りつけた
「グゥゥッ!…シャァッ!」
「っ!ちっ!逃がすか!」
『final attack ride! ku ku ku kuuga!』
「ふっ、はぁぁぁ…!」
ゴオマが戦況の不利を悟ると、一目散に戦闘を離脱した。それを見逃さないクウガはカードを装填し、右足を前に出し腰を落とし、両手を斜め下伸ばして構えを取った
「くっ!届けよ!」
クウガの右足にエネルギーが充填され、炎が足を覆う。そしてクウガは空中のゴオマ目掛け走り出し、跳躍する
『ガル!』
「行っけぇぇええええ!」
だがその時、背後から一筋の風がクウガを追い抜き、ゴオマの翼を貫いた
「ギ、ギィィィィィ!?」
「ナイスだ、岳羽!」
それはゆかりの放った風の矢の一撃だった。ゴオマは空中で制御を失い墜落する中、クウガの右足が眼前に迫る光景を直視した
「ゴ、ゴボセェェェェェェ(おのれぇぇぇぇぇぇ!)」
「おりゃぁぁぁああああ!」
次の瞬間、クウガの必殺技『マイティキック』がゴオマの胸の中心に直撃し、封印の紋章が刻まれると共にエネルギーがベルトへ到達し、断末魔を上げる中で爆散した
「クックック…ギギゾ・ロドド・ボギ(いいぞ、もっと来い)」
「…とっとと終わらせる!」
クウガはすかさず残ったバヅーに肉薄すると、バヅーもそれに合わせて拳を繰り出す
しかしバヅーのスピードはクウガを上回り、徐々に形勢を傾けていく
『マッハパンチ!』
「避けろ八笠!」
「っ!うお!?」
「グボォォォォ!」
その時、横合いから飛び出したポリデュークスのパンチがバヅーを直撃し、地面を転がった
「今だ!やれ八笠!」
そこでクウガの姿がブレ、彼はディケイドの姿に戻ると、ディケイドのエンブレムが描かれたカードを装填、起動した
『final attack ride! de de de decade!』
「はあああああああ!!」
ディケイドはホログラムを通過し、高速でバヅーに接近し、最後の一枚を通過する。そしてその右足はバヅーの胸の中心を蹴りつけ、バヅーは断末魔と共に爆散した
「はぁ、はぁ…ふぅ」
「八笠くん!」
「八笠!」
「ご苦労だったな!」
この瞬間、この怪死事件の元凶は潰え、この悪夢の数日に終止符が打たれた
「……ぁ」
だが彼が綾へと戻った後、保っていられた意識はここまでだった
「おのれディケイド…」
そしてその光景を、ポロニアンモールの屋根の一角から見下す、綾を追い詰めた張本人、鳴滝の姿があった
「これはまだ始まりに過ぎん…貴様が全てを破壊し、ライダーの力を呼び覚ましたその時こそ、世界の滅亡となるのだからな!」
それだけ言い残す彼は、次の瞬間には灰色のカーテンで姿を消した
2009年4月13日(月)
「倒れた時はホント心配したんだからね?てかあの怪我誰にやられたの?仮面ライダーとか言ってたけどそれがあの力の名前?鳴滝って誰?てかあんな無茶絶対にしないでよね、まぁ助けてって願ったのはあたしだけど君が無事な時だけでいいからさ」
「ゴメン!ゆっくり、はっきり、正確に言い直して?」
綾は意外と早く意識を回復させ、再び辰巳記念病院のベッドに寝かされていたのだが、目を開けて早々飛び交ったのがゆかりの質問攻めである。どうにかちょこちょこ質問を返していたが、やはり彼の許容量が早くも限界を迎えたので、そのまま質問を止めさせていた
「てか桐条さん、それに真田さんも。いるなら止めて下さいよ」
「ふっ、自業自得だ」
「アキ、人の事を言えるのか?」
「う、うるさい!」
美鶴たちにヘルプを求めたのだが、余り期待は出来ないようだ
「ちょっと!話は終わってないよ!」
「はいぃゴメンなさい!」
ゆかりの二度目の猛攻に苦笑いを浮かべると、綾は今回感じた"違和感"について考えた
ー本来グロンギとは、殺しを行う際は常に"単独"で、独自の法則に従って動いていた。だが彼らはそんなルールを無視した集団での殺しを実行していた。それは何故なのか
ー何故奴らは遺体をポートアイランドに運ぶ必要があったのか。それに何の意味を見出していたのか
ーそして何より、我の強いグロンギを纏め、こんな惨劇を"誰がけしかけた"のか…鳴滝の存在もあり、この事件は何か巨大なものが動いていると、綾は確信していた
(全てはまだ旅の途中、か…焦っても何も分かりはしないよな)
「コラ八笠くん!黄昏たって何も解決しないんだから!」
だが今は地獄の質問攻めを耐え忍ぶことが優先だと思い始めた綾は、言われた事を丁寧に返していった
そして時は流れ、愚者はその眠りから覚める
クウガ覚醒のお話、どうでしたか?
事件後の黒沢については、追々出て来ます
これで書き溜めは終わりです。次回はペルソナ主人公が戻り、新たな展開が始まります
それでは次の投稿の時に、またお会いしましょう