ペルソナ3 ~愚者と破壊者は旅をする~   作:Third+s

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お久しぶりです

区切りついてませんが書き貯めを投稿していきます


愚者の目覚め

ーベルベットルームー

 

「再び、お会いしましたな」

 

 

意識を失っている湊は現在、ここベルベットルームにいた

 

 

「僕は…どうなったの?」

 

「あなたは力を覚醒させたショックで意識を失われたのです。しかし、ご心配なさらず…少し休まれるといい」

 

 

湊の質問に答えたイゴールは、その後何かを見透かすかのように湊を見る

 

 

「ところで…ほぉ、覚醒させたのはオルフェウスですか。なるほど興味深い」

 

 

そしてイゴールは語る。曰わく、その力の名はペルソナ…もう一人の自分自身なのだと

 

また、ペルソナは自分が自分の周りで起こる事象に向き合った際浮かび上がる"人格"、困難に立ち向かう『仮面の鎧』ともされるのだそうだ

 

 

「(仮面の…鎧?)…ねえ、だとしたら"あれ"は何だったの?」

 

「と、申されますと?…おぉ、成る程。ディケイドですな?よもやコレほど早く巡り会うとは、運命とは数奇なものだ」

 

「ディケイド?それがあれの名前?」

 

 

湊は鎧と聞いて真っ先に脳裏を過ぎったのは、己の力が暴走し、姿が変わったペルソナと互角に渡り合っていた、あのマゼンタの戦士だった。そして彼は純粋に知りたいと考えた。否、知らなければならないと感じたのだ

 

 

「…あれもペルソナ?」

 

「あれはペルソナとは全く異なる"仮面の力"、異世界の戦士なのです。ある者は『悪魔』、ある者は『破壊者』…そう、呼ばれている者。それがディケイド、仮面ライダーディケイドでごさいます」

 

「仮面、ライダー…」

 

 

まるで特撮のような存在に、湊は何故か危機感を感じていた。それが一体何を意味するのか、今の彼には分からない

 

 

「…破壊者って、何を破壊するの?」

 

「全て、とでも言うべきでしょうか…本来彼の者の意義は"他のライダー全てを滅ぼす為の仮面ライダー"。しかし同時に彼は"旅人"…あなたと同じ、"絆"によってその力を磨く者」

 

「…僕と同じ?」

 

 

そこで彼は不思議に思った。自分以外のライダーを倒す存在が、他のライダーとの絆によって強くなるという矛盾が起こっていることに

 

 

「とはいえ、これから先の話はご自分で掴んでみなされ。しかし、今の貴方の力はまだ弱い」

 

「…分かった」

 

「ご理解が早く助かります。…ペルソナ能力とは"心を御する力"、心とは絆によって満ちるものです。他者と関わり、絆を育み、貴方だけの"コミュニティ"を築かれると宜しい。コミュニティの力こそが、ペルソナ能力を伸ばしてゆくのです。よくよく覚えておかれますように」

 

 

するとイゴールは話を一度区切り、再び口を開く

 

 

「さて、現実の世界では、多少の時間が流れた様子。これ以上のお引き留めは出来ますまい…今度お目にかかる時には、貴方は自らここを訪れる事でしょう。では」

 

「待って」

 

 

話が終わる寸前、湊は今一度イゴールを引き止め、告げる

 

 

「ディケイドは…味方なの?」

 

「…私が貴方へ最初に申した通り、 進む旅路は前例の無い険しい道。そして傍らに寄り添う『破壊者』は、既に貴方と共にある…共に道を切り開らくも良し、はたまた別の道を選んでもよろしいでしょう。ただし契約通り…その後責任は貴方に取っていただきますが、ね 」

 

 

そこで湊の意識は微睡みに沈み、意識が遠退いた

 

 

 

 

 

 

 

2009年4月17日(金)

 

湊が次に見たのは、白い天井だった

 

 

「……ぁぁ」

 

「…あ、気がついた…?気分はどう?」

 

 

そして頭を少し傾ければ、そこには傍らの椅子に座ったクラスメイト、ゆかりの姿があった

 

 

「…どうして君が?」

 

「はぁぁ、良かった~…やっと起きたよ。まったくいつまで寝てる気よ。今日で一週間だよ?本気で心配したんだから…」

 

 

あれから既に一週間経ったのか、と未だ覚醒しきらない頭で湊が考えたのは

 

 

(…授業、出遅れた)

 

 

と、何とも平和な思考だった

 

 

「助けてもらったってのに、放っとけないよ」

 

「…ごめん」

 

「ううん、謝んないでいいから。それと体は心配無いって。過労みたいなもんらしいよ…まぁ、さすがに起きないから心配したけど…」

 

 

するとゆかりは僅かに言いよどむが再び口を開く

 

 

「…ごめんね?あの時何にも出来なくて。先輩達には、お前が守れって言われたんだけど…でも驚いた。凄いね、あの力」

 

(力…)

 

 

彼女が言う力とは、恐らくイゴールからペルソナの事だろうと当たりをつける湊。そして彼は同時に、彼女が凄いと言ったペルソナが、自分が覚醒させたオルフェウスのことではないだろう、とも考えていた

 

 

「…あの怪物は、何?」

 

「…シャドウの事ね」

 

 

するとゆかりは深刻そうな顔をして、語る

 

 

「シャドウは、私たちが戦っている敵。それであなたが使った力が、ペルソナって呼ばれてる。…まぁ、説明は後でちゃんとするから。ごめんね、隠し事して」

 

「シャドウ…」

 

 

言葉を反芻させて思い出すのは、あの異形。この世のものとは思えない得体の知れなさを感じていた

 

 

「…えっと、さ。いきなりで何だけど…私もね、あなたと同じなんだ」

 

「?」

 

 

そして彼は聞かされる事となる。岳羽ゆかりの、戦う理由を

 

 

 

 

 

 

 

一方、同刻にして場所も同じく辰巳病院のとある一室では

 

 

「怪我の具合はどうだ、八笠」

 

「あれ、黒沢さん?勤務中でしょ!?」

 

 

先日の怪死事件の解決に際して、全身打撲を言い渡された綾は、学園の休校解除までの間入院する事になっていた。そんな最中に現れたのが、警官の制服を着て差し入れを持った黒沢だったというわけだ

 

 

「パトロールの合間を縫って来た。長居をするつもりはない…ほれ、ゼリーなら食いやすいだろ」

 

「ありがとうございます。…申し訳ないですね。何だか」

 

「何を言うか、今回の事件は"お前一人が解決したんだ"。これくらいの礼はさせてくれ」

 

「そう、ですね…」

 

 

綾は少し言い淀む素振りを見せたが、すぐに立ち直り差し入れを受け取る

 

黒沢が口にした通り、彼は綾とグロンギ以外の"影時間に関する記憶のみ"がすっぽ抜け、改竄されていた。つまり、記憶の混乱が特別課外活動部とのやり取りまでも消し去られ、黒沢の中の事実には、綾一人がすべてを解決したという事になっている

 

 

「それでは、私はもう行く。安静にな」

 

「はい…あ!黒沢さん!」

 

「ん?何だ?」

 

 

すると去る直前に呼び止められた黒沢が振り向くと、突然のシャッター音が病室に響く

 

 

「どうせだから一枚、と思いまして」

 

「…はぁ、全くお前は。変わってるな」

 

 

黒沢は呆れる顔をしつつも、そんな綾に不快感を浮かべず、再び振り向く

 

 

「今度写真焼き回ししときます!」

 

「期待しておく」

 

 

それを最後に、今度こそ黒沢はその場を去った

 

 

「…何つーか、報われない皆に悪い気がすんな」

 

 

一人になった病室で、綾はここにいない事件の立役者たち、特別課外活動部の面々を思い表情に影が差した

 

 

「…あれ?」

 

 

そこで彼はある事に気付いた。それは彼が愛用するデジカメの画面、先程撮った黒沢の写真にある

 

 

「…これも何か、意味があると?」

 

 

写真は病室に立つ黒沢しか写していなかった筈が、何故かそこには半透明ながら肩越しに振り向くディケイドの顔を背景に、黒沢の隣でキックの構えを取る同じく半透明なクウガの姿が写っていた。しかも写真は全体的に画質が悪く、まるで"トイカメラで撮ったような"不思議な絵が出来上がっていた

 

 

ー我は汝、汝は我

 

 汝、"正義"の仮面を纏う時、失われた力を与えんー

 

 

そこで頭に響いたのは、これまで力を得る直前に必ず囁かれる不思議な声。綾はそれに気付くと、引き出しにしまったライドブッカーを取り出して中からカードを引き抜いた

 

 

「青い…クウガ」

 

 

そして新たに力となったのは、色が青く、フォルムが細くなったクウガのカード。それを見た綾は、カードを丁寧に仕舞う

 

 

「やっぱりか…力を取り戻すには、人との絆が不可欠ってことか。大体分かった」

 

 

ま、損得勘定で人と付き合う気はねえけど…と彼は苦笑いしつつ付け加える

 

 

(…俺はより多くと関わって、何かを果たさねえといけないんだな) 

 

 

より誰かと関わるということは、それに伴い守るものが多く、力が必要となっていく。それは彼が歩んできた道が何よりも証明し、それを成すのは至難であることなど、想像に難くない

 

 

「…結局、変わんねえかな。片っ端から守ればいい、そう考えた方が楽だし」

 

 

だがそんな重い宿命を前にしようとも、彼は変わらず笑う。まるでそれを当たり前かのように、異常なほど

 

 

「はあ、お~い八笠く~ん。起きてる?」

 

「あら?岳羽じゃん。どした今日は?」

 

 

そこへ湊と話を終えたゆかりが綾を訪ねて来た

 

 

「えっとね、有里くんが起きたんだ」

 

「お!良いニュースじゃねえか!後で顔出しに行くわ!」

 

「うん、あとね…彼にも、話した」

 

「…そっか」

 

 

何故か自分に許しを請うかのような口振りに首を傾げるも、綾はゆかりが口にした話の内容を察し、窓から遠くを見た

 

 

「元々あいつには話す予定だったんだろ?だったら良かったんじゃねえの?」

 

「どう、なんだろ…」

 

「今更後悔すんなって。自分で決めたんだから、それでいいじゃん」

 

「そんなもんかな?」

 

「そんなもんだな」

 

 

その後は何気ない会話をして、ゆかりは病室を跡にした

 

 

 

 

 

 

 

 

「お~い湊、起きてっか?」

 

「…綾」

 

 

ゆかりと別れた後、綾は言葉通り湊の部屋を訪ねた。湊も湊で、ゆかりから入院している事は聞いていたので、さほど驚くことなく彼を迎えた

 

 

「どうだ調子は?明日から学校再開するけど」

 

「問題無い。明日から学校に出るよ…そっちは?」

 

「見ての通り、明日から出るぜ」

 

 

綾は湊の傍らの椅子に座り、手に持つ袋からゼリーを取り出し、湊に渡す

 

 

「見舞いの品ってことで貰ったんだが、お前の方が腹減ってんだろと思ってさ?二つあるからお裾分けってな」

 

「…ありがとう」

 

 

湊はゼリーを貰うが手を付けず、視線を綾に向けた

 

 

「…ねえ、君も岳羽たちと同じなの?」

 

「え…あぁ、アレか?ペルソナやらシャドウやらのこと?」

 

「うん…まだ決定じゃないけど、仲間みたいなもんだって、彼女が」

 

「まあ、な。お前が起きるまでに答えは決めるから、取り敢えず保留にしてたんだけど、答えは出てるよ」

 

 

そう告げた綾は自分のゼリーを開けて一口含む。その後彼は話を続ける

 

 

「多分、いや予感か。湊、お前は他とは何か違う…具体的には言えないけど、俺はそう感じてる」

 

「…うん」

 

「きっとこの先、お前は誰よりも前に立つ日が来る。近い内か遠い未来かは別として…だから聞きたい。湊、"生きる覚悟はあるか?"」

 

「生きる、覚悟?」

 

 

綾から問われた言葉に、湊は思わず虚をつかれていた。てっきり、命を懸ける気があるのかと、問われるものと思っていたのだから

 

 

「死んだら意味ねえだろ、だからどんな時でも生きる覚悟を持たないといけねえ。…仲間が、大切な人たちが死ぬのなんか、見たかねえんだ」

 

「……」

 

 

綾が言葉と共に浮かべた表情から何を思ったのか、湊はしっかりと綾を見た。そして次に発した言葉は

 

 

「どうでもいい」

 

「…は?」

 

「生きる死ぬの覚悟は、あって悪いことじゃない。でも僕からしたら、死ぬことも苦しむことも"怖くないんだ"」

 

「…コイツはまた、面倒な事情がありそうだ」

 

 

湊の衝撃の言葉に呆けていた綾だったが、何故か彼は気味悪がる事も、問いただす事もしなかった

 

 

「分かった。お前はもしかしたら、そっちのがやりやすいのかもな。今は、それでいい」

 

「…君はどうして生きることに拘るの?」

 

 

一見すれば、当然分かるようなことを問う湊だが、彼は綾から生きることへの執着を感じ、問わずにはいられなかった

 

 

「…失ったからな。大切なもの、目の前で」

 

「っ!?」

 

 

だがその答えは、湊を再び驚かせた

 

 

(…同じ、なのかな?彼は、僕と)

 

「お前もきっと、何かを失ったんだろうな。その目、俺と似てるから」

 

「…ふふ、似た者同士、てやつかな?」

 

「どうだか」

 

 

この瞬間、湊は綾との間で何かが芽吹いた気がした

 

 

 

ー我は汝、汝は我

 

  汝、新たなる絆を見出したり

 

   汝、"愚者"のペルソナを生み出せし時、我ら新たなる力の祝福を与えんー

 

 

 

湊はこの時、綾との間で確かな絆の繋がりを感じた。頭に囁いた言葉に困惑していると、彼は奇妙なものを見る

 

目の前の綾もまた、驚きと困惑を露わにしているのだ

 

 

「…ねぇ、今何か聞こえた?」

 

「…湊、まさかお前も?」

 

 

するとその時、湊の頭が冴え渡り、ある仮説を立てた

 

 

「…綾、もしかして君は、青い部屋に招かれた事がある?」

 

「っ!?ちょっと待て、てことはお前…そうか、お前がイゴールの言っていた"愚者"か。道理で何か違うと思った」

 

 

やはりと、湊は心の中でしたり顔になる。…決して表には出さないが

 

 

「なら、これで分かった。君が"破壊者"…ディケイド」

 

「……イゴールから聞いたのか、俺のこと」

 

「ううん、君がどういった存在なのか、くらいしか教えられなかった」

 

 

綾と湊、二人の旅人は、ここに再び出逢いを成した。非なる特別な仮面の力を宿した者同士、彼らはやはり、引き合わされたのだ

 

 

「…綾、聞きたい。君はそれで何を破壊するの?いずれ…敵になるの?」

 

 

だが湊は綾へ問う。イゴールが言っていた通りならば、ディケイド…八笠綾は世界を破壊する者となる。それはつまり、湊自身が彼を敵として排除することと同義なのだ

 

 

「この手で何を破壊する、か…」

 

 

その問いに彼、八笠綾が導いた答えは

 

 

 

 

 

「分からない。その答えは…いずれ迎える旅の果て、その先にあるんだと思う」

 

 

曖昧であり、結果を先送りにするものだった

 

 

「だけど、その答えが出るまでは、俺はお前たちと共に戦う。それが、今の俺の答えだ」

 

「…そうか」

 

 

しかし、湊はその中で聞きたかった答えを知り、柔らかな表情のまま瞳を閉じた

 

 

「なら、これからよろしく…綾。いや、仮面ライダーかな?」

 

「そこは素直によろしくでいいぜ?『愚者』のペルソナ使いさん」

 

 

そしてお互いに笑みを浮かべ、日が差す病室で握手を交わした

 




次回は11月1日午前0時に投稿します
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