香取隊の狙撃手   作:デスイーター

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総評/ROUND1

 

 

部隊得点生存点合計
香取隊325
漆間隊2 2
荒船隊0 0

 

「決着。荒船先輩も抵抗したけど、最後は木岐坂の狙撃と爆撃で終わったね。試合終了だ」

「惜しかったけどなぁ。ま、頑張った方だろ」

 

 真木は試合終了のアナウンスを告げ、当真は荒船の健闘を称えた。

 

 同時に、沸き上がる歓声。

 

 樹里の爆撃による盤面の蹂躙と香取隊の無双は、観戦しているC級達にとってはさぞ見応えのあるものだったのだろう。

 

 分かり易い派手な展開だっただけに、その盛り上がりはそれなりのものだ。

 

 だが、無邪気に喜んでいるのは後先を考えないC級のみ。

 

 この場にいる正隊員達は、揃って難しい顔をしていた。

 

(ま、無理もねーわな。あんなん見せられちゃあよ)

 

 その心情を、当真は理解出来る。

 

 この試合で明らかになった、樹里の脅威。

 

 それは、ランク戦に臨む者達にとって決して無視出来ない代物だったのだから。

 

 A級の当真とて、思うところがないワケではないのだ。

 

 今後彼女と直接当たるB級の面々としては、とても他人事には思えないに違いない。

 

 それだけ、樹里の見せた戦術の特異性と脅威度は圧倒的だったのだから。

 

「さて、無駄話をするつもりはない。総評といこうか」

「そーだな。二宮さんも、良いか?」

「構わん。始めろ」

「りょーかいっと。真木ちゃん、やろうぜ」

「公の場だ。真木と────────────────いや、呼び捨てにされるのも癪だな。そのままで構わん」

「へいへいっと」

 

 当真は軽い感じで返答するが、そんな彼に対し真木の鉈が振り下ろされる事はなかった。

 

 真木は何も、当真の発言が気に入らなかった時は随時突っ込み(せいさい)を下しているワケではない。

 

 彼が余計な横道に逸れたり、本題と関係ない愚を晒した時にのみ、彼女の鉈は振るわれるのだ。

 

 真木は自他共に認める暴君ではあるが、通理というものは弁えている。

 

 無分別に我を押し付けるような愚を、彼女は犯さない。

 

 ナチュラル上から目線は生来のものであるが、それはそれとして通すべき筋はきっちり通す。

 

 それが、真木理佐という女傑の在り方なのだから。

 

 彼女は正論しか言わないからこそ、その言葉には力が宿る。

 

 見当違いの野次は、誰が言おうと効果はない。

 

 正しい筋の下に放たれる正論(ことば)だからこそ、彼女の言には抗い難い圧が生まれるのだから。

 

「この試合は前提として、最初から最後まで香取隊がペースを握ってたな。当真、その根本の原因は何だと思う?」

「まず、木岐坂の入った香取隊の脅威度を見誤った事だろーな。それから、良くも悪くも荒船隊が()()()()()()ってトコか」

「そうだね。そこは私も同意見だよ」

 

 第一に、と真木は続ける。

 

「この試合、荒船隊が市街地Cを選ぶのを他の二部隊が作戦を組む上で前提として推測してた、ってのが結構大きいと私は見ている。確かに荒船隊にとって市街地Cは得意なフィールドだが、馬鹿正直にそこを選んだ事が何より不味かったね」

「ちなみに真木ちゃんは、何処を選ぶべきだと思ったんだ?」

「そうだね。候補を挙げるとすれば、市街地Aか市街地Bだね。少なくとも、極端な高低差のあるMAPだけは選んじゃいけなかったと思うよ。荒船隊は狙撃手としては木岐坂の上を取れてると思って選んだんだろうけど、彼女個人の強みを理解し切れてなかった。そこが、大きな敗因だと私は見ている」

 

 真木の言う通り、荒船隊が今回市街地Cを選ぶ事は他の二部隊から見通されていた。

 

 そして、香取隊は勿論漆間隊でさえもそれを前提に作戦を組み上げていた。

 

 加えて、樹里の駒としての性質の無理解。

 

 それが、今回荒船隊の敗因に繋がったのだ。

 

「木岐坂は確かに、当真の言う通り狙撃手としちゃ未熟なんだろうさ。けれど、荒船隊はトリオン12って数値とあいつの得意分野(のうりょく)の厄介さを低く見積もり過ぎたと言っても過言じゃない。実際、豊富なトリオンを利用した超々遠距離狙撃と爆撃の二枚の手札で盤面を滅茶苦茶にされてるからね」

「そーだな。とは言っても、これは予想しろっつーのも酷じゃねーか? まさか、木岐坂があんな真似出来るとは俺でも思ってなかったしよ」

「そうでもない。ヒントはあった筈だからな」

 

 当真の言に真っ向から反論し、真木はピシャリと告げる。

 

 樹里の、チームランク戦での脅威。

 

 それを予測出来る材料はあった筈だと、彼女は言う。

 

 つまり、それは。

 

「トリオン強者の脅威を二宮さんっていう例で知ってる奴なら、出水と同等のトリオンを持ってる木岐坂がそれをフル活用すればどうなるか、少し考えれば分かるだろう。狙撃手としての自負があるのは結構だが、後輩を甘く見過ぎだよ」

 

 ────────トリオン強者の脅威度をその身で知らしめている、二宮の存在。

 

 それが、樹里の厄介さを推測する代表例であった筈だと、真木は告げた。

 

 事実として、高いトリオンを持つ者が戦場に及ぼす影響がどれ程かは二宮の戦いを見れば分かり易い。

 

 彼程明瞭に、己の高トリオンを直接暴威としてランク戦で振るっている者はそういないのだから。

 

「こりゃ手厳しいな。ま、言い返せねーけどよ」

 

 当真は真木の指摘にそう言って、肩を竦めた。

 

 確かに、彼女の言う通りではある。

 

 樹里の12というトリオン評価値と、トリオン量によって射程が伸びるイーグレットの性質。

 

 そして、高いトリオンから放たれる爆撃という手札。

 

 それらは、二宮の例を考えれば分かる範疇の事ではあった。

 

 しかし、狙撃手の立場からすれば樹里は転向して日の浅い未熟な狙撃手というイメージが強い。

 

 副作用(サイドエフェクト)で強引に狙撃技術をカバーしているだけで、立ち回りは他の狙撃手には及ばない。

 

 樹里に関してはそういうイメージが狙撃手界隈に浸透していた事は、否定出来ない。

 

 実際、当真も以前は似たような先入観を持ってはいた。

 

 それが変わったのは、あの黒トリガー争奪戦で樹里に撃破されてからだ。

 

 佐鳥の指揮があったとはいえ、格下の狙撃手が自分を撃ち抜いたのは紛れもない事実。

 

 あの日から当真は樹里に対する偏見を捨て、「狙撃手としては格下だが駒としては侮れない相手」としてカテゴライズした。

 

 確かに、狙撃手という側面から見た樹里の練度はそう高いものではない。

 

 しかし、彼女には豊富なトリオンと射手トリガーという他の狙撃手にはない武器があった。

 

 それを軽く見てしまった時点で、荒船隊の敗北は決まっていたようなものだったのだ。

 

「それから、他の香取隊のメンバーを甘く見過ぎていたきらいもあるね。若村と三浦に時間を与えてしまったのが、何より致命的だった」

「そーだな。荒船隊としちゃ、市街地Cっていう得意MAPで上を取って樹里の火力を封殺するつもりだったんだろーが、向こうが全員バッグワームを使った時点でもう少し警戒するべきだったな。若村達が射線を作る時間を与えちまった上に、迂闊に狙撃したのも不味かっただろ」

「序盤で半崎が落ちたのが、かなり痛かったからね。あそこで単独で狙撃するんじゃなく、穂刈と同時に撃っていればまた違ったかもしれないけれど」

 

 そういえば、と当真は呟く。

 

「あの時三浦が半崎の狙撃を避けられた絡繰りは、やっぱり()()()()()か?」

「だろうね。三浦は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。いつ狙撃が来ても良いように、同じ動作を繰り返し続けていたってワケだね」

 

 真木の言う通り、三浦は半崎に狙撃で狙われる前から、カメレオンからバッグワームに切り替える際には必ずその場で屈んでから実行に移していた。

 

 そのような動作を繰り返していると知らない半崎は、三浦の屈む瞬間に合わせて頭狙いの弾を撃ってしまい位置を暴露された、というのが彼が狙撃を回避出来た絡繰りである。

 

 言われてみれば単純な、それでいて有効な手ではあった。

 

「香取隊は最初から、若村と三浦がバッグワームとカメレオンを併用して移動している事を喧伝してそこを狙撃で狙わせるつもりで動いていた。結果として半崎がそれに釣られて、まんまと狙撃の的になったって事だね」

「半崎は狙撃の腕はかなりのモンだが、撃てると思ったらすぐに撃っちまう悪癖があっからな。その性格を読まれて、まんまと利用されたんだろーぜ」

 

 

 

 

「…………面目ないです。言い返す言葉が見つからないっす」

「落ち込むな、あまり。改善点に気が付いたら直せば良いだけだろう、こういう時は」

 

 荒船隊の隊室で当真の批評を聞いていた半崎が、眼に見えて項垂れていた。

 

 確かに当真の言う通り、半崎には逸り癖とでも呼ぶべきものがあった。

 

 成果を出そうという焦りと、自身の狙撃の腕への自負。

 

 その二つが相俟って、半崎の引き金は割と軽い方ではあった。

 

 確かに狙撃の精度は驚異的だが、だからこそ読み易いという側面があるのは否定出来ない。

 

 半崎自身、そういう自分の性質について全く自覚がなかったワケではないのだから。

 

「いや、指示出したのは俺だし俺が一番の戦犯だろ。真木の言う通り、あそこは穂刈を動員してでも確実に仕留めに行くべき場面だった。それを間違えたのは、俺の方だからな」

 

 だが、荒船は落ち込む半崎に待ったをかける。

 

 今回、半崎に単独で三浦を狙うよう指示を出したのは荒船だ。

 

 故に責任は自分にこそあると、荒船は言う。

 

 だから、半崎だけに非があるワケではない。

 

 彼は、そう言ってフォローしていた。

 

「荒船先輩…………」

「確かに今回は散々だったけどよ、課題は見つかったんだ。なら、次に繋げれば良いだけの話だろーが。ちょいとヒデェ負け方をしたくらいで、お前は折れるのかよ?」

「────────いえ、そんな事はないっす。今回ポカした分は、今後の働きで取り戻させて貰います」

 

 半崎もまた、荒船の激励を受けて何も思わない筈がない。

 

 力強くそう言って、頷いてみせた。

 

 そんなチームメイトの姿を満足気に見守る、荒船と穂刈。

 

 今回は惨敗だったが、この敗北を次に繋げる糧とする。

 

 そう志し、荒船隊の面々は決意を新たにするのだった。

 

 

 

 

「漆間隊は、正直あの条件の中じゃ最善の行動をしたって言えるんじゃないか? 正直、目立った突っ込みどころがないね」

 

 つまらん、と小声で呟く真木に対し、当真はまあまあ、と宥めつつそうだな、と彼も同意を示した。

 

「強いて言えば、もう少し置きメテオラを仕掛ける数を増やしていれば、と思わなくはないな。余計な手間をかけるリスクはあっけど、やりようによっちゃ逃げ切れたかもしんねーしな」

「そこは、考え方の違いだろう。この試合で漆間が最優先したのは、確実に点を取る事だ。生き残る事じゃあない。欲張って初志貫徹出来ないような真似をするよりは、リスクを最小限に抑えて確実なリターンを取る。あいつは、そういう奴だからね」

 

 真木はそう断言し、漆間隊の在り方を語った。

 

 彼女の言う通り、漆間は決してイチかバチかでは動かない。

 

 取るなら確実な点を狙い、標的を仕留める算段をする上で棚から牡丹餅が降って来るような場面になったとしても無理には拾わない。

 

 まずは、狙った目標を確実に処理する。

 

 それを最優先事項として設定し、その上で余裕があれば次の目標を片付ける。

 

 漆間の行動原理は、このようなものだと真木は推察している。

 

 そして恐らく、これは間違っていないだろうとも。

 

 彼女は、確信していた。

 

「漆間は、確実性を第一にする男だ。業突く張りに見えて、中々に堅実な男だからね。あれは」

 

 

 

 

「…………好き勝手言ってやがる。まさか、これ言う為に実況引き受けたんじゃねーだろーな」

「え、えっと。そ、そんな事はないと思う、けど」

「それが有り得るのがあの女の最悪な所なんです。覚えといて下さい」

 

 漆間隊の隊室では、好き放題に理解者面を晒している真木の言動に漆間があからさまにむくれていた。

 

 対する六田はおろおろしているが、何処となくもやもやしているようにも見える。

 

 それを目敏く察し、漆間は眼を細めてため息を吐いた。

 

「とにかく、あの女から見ても俺等の立ち回りは合格点だったって事です。性格最悪な女ですけど、他者の評価に私情を交えない所だけは信用出来るんで、そこは誇って良いと思いますよ」

「そ、そうなのかな。でも、それは漆間くんが巧くやったから────────」

「六田先輩のオペレートがあったからです。つかそれ前提なんで、間違えないで下さい」

「う、うん…………?」

 

 漆間なりの激励の言葉を受けた六田だが、どうやらイマイチ彼の真意は伝わってなさそうではあった。

 

 まあ、漆間自身正確に自分の気持ちを伝える事などまず無いと断言出来るので、わざわざ訂正したりはしない。

 

 よくよく聞いていると漆間は六田を肯定する言葉しか言っていないのだが、口調が刺々し過ぎる為にそれが上手く伝わっていないのだ。

 

 二宮語(最悪な例)よりは大分マシだが、それでも日頃から敵を作りまくる言動を繰り返す漆間は今日もまた平常運転であった。

 

「とにかく、取れる点は取ったんだし文句を言われる筋合いはありません。香取隊もこれできっと上位に復帰出来るでしょうし、万々歳です。あんなクソゲー、二度とやりたくないですからね」

 

 

 

 

「香取隊は、最初から最後まで盤面をコントロールしていたな。強いて言えば穂刈の点を横取りされた事や若村が倒されたのがネックだが、この条件下で漆間相手にむしろ良くやったと言うべきだろうな」

 

 一方、総評は香取隊の話題へと移る。

 

 香取隊は真木の言葉通り、最初から最後まで試合の流れを牽引していた。

 

 確かに穂刈が横取りで倒された事と若村が落とされたのは痛かったが、それもまた許容範囲であったと言えるだろう。

 

 荒船隊と漆間隊という、B級中位の中でも厄介さは群を抜く2チーム相手に勝つ事が出来たのだから。

 

「兎に角、生存点を得る事が出来たからね。取り難い駒ばかりが集まった試合で5点は、決して無視出来る数値じゃないからね」

「だな。状況がほぼ香取隊有利に働いた結果とはいえ、充分な戦果だろ。気になるのは、木岐坂が護衛も付けずに一人でいた事くらいだが────────」

 

 そこで、当真はチラリと二宮を見る。

 

 あの時の様子からして、恐らく彼は樹里が護衛も付けずに一人でいた────────────────つまり、漆間への明確な対策を打たずにいた理由を知っている。

 

 だが、どうやら彼はそれを語るつもりはないらしい。

 

 となれば、その理由の内容にも推察が出来る。

 

(多分、木岐坂の副作用(サイドエフェクト)関係なんだろーな。俺の予想通りの内容なんだとしたら、マジであいつ奇襲殺しにも程があんだろ)

 

 当真の識る樹里のサイドエフェクトの情報は、遠くのものを肉眼で見えるかのように視認出来るという程度だ。

 

 しかし、もしも。

 

 その能力の恩恵が、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 彼女が護衛も付けずに一人でいた理由が、説明出来てしまう。

 

 これが正解かは分からないが、この場で二宮が応える気が無い事だけは分かる。

 

 自身の辿り着いた答えに戦慄しながら、当真はため息を吐くのだった。

 

「じゃあ、総括といこうか。二宮さん、お願い出来ますか?」

「良いだろう」

 

 それまで二人に総評を任せていた二宮だが、最後にもう少しは仕事をしろとばかりに真木に総括を任され、静かに頷く。

 

 自身で解説を引き受けておきながら他二人に比べて明らかに発言数が少なかったのは確かなので、彼女の声色には棘が含まれていた。

 

 しかし、二宮は何処までも自然体だ。

 

 あの真木に圧をかけられていながらも微動だにしていない時点で、度量が────────────────というより、天然の図太さが違う。

 

 自分に一切の非はないとばかりの態度を貫き通しながら、二宮は口を開いた。

 

「荒船隊は、もう少しMAP選択を考慮すべきだった事に加え、木岐坂の集団戦での性能を甘く見ていた。この二点に尽きる。奇策に走れとは言わないが、工夫のしようはあった筈だ。堅実な動きを否定するつもりはないが、それは他の策を模索しない理由にはならないからな」

 

 あくまで私見で、しかし決して間違ってはいない評価を二宮は下す。

 

 冷徹に見えて感情で動く男ではあるが、私情を交えたとしても評価自体を覆す事はしないのが二宮だ。

 

 感情的に動く事と、厳然たる事実を告げる事は背反しないのだから。

 

「漆間隊は、少々慎重過ぎたきらいはあるが不利な状況下では巧くやった方だろう。欲を見せて木岐坂を狙いにいかなかったあたりは上出来だ。一人部隊という制限の中では上々の動きだったと言えるだろう」

 

 そして、試合の経緯からあまり良い感情は抱いていない漆間隊に対してもその評価は変わらない。

 

 彼はあくまでも、客観的な評価のみを口に出すのだから。

 

「香取隊は、木岐坂を巧く使いこなしていたな。長大な射程の狙撃と、火力の高い爆撃の二面攻撃という二つの武器を活かす為の作戦がしっかりと実行されていた。ただ、爆撃の制御がまだ甘い。やりようによっては初手で漆間を封殺して、若村を生き残らせる事も出来ただろう。火力頼りのごり押しだけでは、いずれ限界が来るぞ」

 

 それ、お前が言うのか、という色んな面々の心の中の突っ込みはさておいて、二宮の言は間違っていない。

 

 射手から狙撃手に転向した樹里の未熟を揶揄する側面が無いとは言わないが、指摘自体は真っ当なものだった。

 

 そもそも、二宮とて単に高いトリオンによる火力任せ一辺倒というワケではないのだ。

 

 彼は単に盤面を整えた上でごり押しをするのが最も合理的に勝てる手段であると理解しているからこそ、力押し傾向の強い作戦を取る事が多いだけなのだ。

 

 他の道を選ぶよりも勝率が高いのは事実なので、そういった面が強調されがちなだけである。

 

 尚、それを隊室で聞いていた樹里はぶすぅ、と頬を膨らませていた事を追記しておく。

 

「ありがとうございます。さて、どうやら向こうの試合も終わったみたいだね。ROUND1の全試合終了により、順位の変動が起きたよ」

 

 

部隊順位得点
二宮隊 1位21Pt 
影浦隊 2位19Pt 
生駒隊 3位16Pt 
弓場隊 4位14Pt 
王子隊 5位13Pt 
香取隊 6位13Pt 
東隊 7位12Pt 
諏訪隊 8位10Pt 
鈴鳴第一 9位9Pt 
漆間隊 10位9Pt 
玉狛第二 11位8Pt 
那須隊 12位7Pt 
荒船隊 13位5Pt 
柿崎隊 14位5Pt

 

 真木の言葉と共に、変動したランキングが表示される。

 

 その内容に目を見開き、息を呑む者。

 

 当然と言わんばかりにふんぞり返る者等、様々であった。

 

「香取隊は今回の試合で上位に復帰。代わりに鈴鳴が中位落ちだね。そして、特筆すべきはこの玉狛第二っていうチームか。今期初のランク戦参加で、一気に8得点を重ねて一発で中位に上がって来た。こりゃ、色んな意味で眼が離せない部隊になりそうだね」

 

 上位に復帰した香取隊も然る事ながら、玉狛第二という新人(ニュービー)の存在もまた無視出来なかった。

 

 だが、C級の面々は隊長が()()修である事に気付き、にわかに沸き立っていた。

 

 修は大規模侵攻に於いて真実ヒーローのような活躍を見せており、C級の多くの者達が彼を英雄視していた。

 

 その者達からすれば自分達の推しがランク戦でも活躍し始めたのを見て、盛り上がらずにはいられないのだろう。

 

 ミーハーな色が濃いC級にはありがちな、しかし間違っているとも言い難い評価であった。

 

 ちなみに修のファンでありながら玉狛の試合ではなくこちらに来ているのは、B級下位相手の試合では大したものは見られないだろうという一般論ではあながち間違っていない偏見と、噂に昇る程の樹里の美少女ぶりに興味を持った為という割としょうもない理由であったりする。

 

 バレたら色んな所から大目玉を喰らいそうな魂胆であるが、学生気分の抜けていないC級などこんなものである。

 

「今期のランク戦は、色々と荒れそうだね。さて、次の対戦組み合わせも出たようだね────────ほぅ」

「…………!」

「おいおい、こりゃあ」

 

 そして、真木は次の試合の組み合わせを見て目を見開いた。

 

 同じくその内容を確かめた二宮は眼を細め、当真は肩を竦める。

 

 何故なら、次の試合は────────。

 

「────────香取隊の次の対戦相手は、B級5位の王子隊。そして、B()()1()()()()()()だ。中々、興味深い組み合わせになったね。二宮さん」

「…………ふん」

 

 ────────この場にいる、B級部隊の頂点に立つ部隊のリーダー。

 

 二宮匡貴が率いる、二宮隊との試合であったのだから。

 

 こうして、最後に波乱の予感を残してROUND1は終わりを告げる。

 

 香取隊は二試合目にして、B級ランク戦に於ける最難関とも言うべき相手を引き当ててしまったのであった。

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