香取隊の狙撃手   作:デスイーター

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総評/ROUND2

 

 

部隊得点生存点合計
二宮隊224
香取隊2 2
王子隊2 2

 

「ここで決着…………! 試合は4:2:2で二宮隊の勝利ですっ!」

 

 綾辻のアナウンスに、会場が沸き上がる。

 

 怒涛の展開を前に息を呑んでいた分、その盛り上がりはひとしおだ。

 

 しかし、純粋に派手な戦いを前に興奮していたのはC級のみ。

 

 正隊員は一様にこの試合中明らかになった香取隊の課題を前に、何かしら考える素振りをしている。

 

 一般的な正隊員は、年齢不相応に落ち着きを持ち価値観も成熟している事が多い。

 

 故に起きた内容を客観視し、改善点を洗い出し次に繋げる作業を得意としている。

 

 考え方が刹那的な子供のそれではなく、大局的に物事を見る大人の視点なのだ。

 

 だからこそ、今回明らかになった香取隊の課題に対して思うところがあるのだろう。

 

 ランク戦は、大規模侵攻のような()()に備えて力を付けるべく戦闘経験を蓄積する場だ。

 

 それ故に負ける事自体は問題ないが、そこから何も学ばないようであれば意味が無い。

 

 経験を糧にする事こそ、ランク戦で培うべき主軸なのだから。

 

「しかし王子隊長はきっちり点を取っていきましたが、あれは狙ってのものだったのでしょうか?」

「十中八九そうだろうな。王子の狙いは最初から、木岐坂の近くにいた三浦の方だったというワケだ。消去法で配置したのだろうが、それを読まれて利用された形になる」

 

 まず、と前置きして風間は話し始める。

 

「先程は王子は二宮と犬飼、香取を相手にするリスクを避けて木岐坂を狙ったと言ったが、そちらにもリスクが無いワケではない。どころか、相当な危険を伴う選択肢と言える」

「樹里ちゃんは二宮くんよりはマシというだけで、決して正面から相手をしたい駒じゃないものね。火力が高くて、()()()()。加えて接近戦も出来ないワケじゃなくて、とにかく手札が多いんだもの」

「加えて今回は木岐坂が完全に王子を待ち伏せする形になっていたからな。案の定というべきか、万全の準備を伴って迎撃して来ている。あのまま攻め続けていても、果たして木岐坂を落とせたかは疑問が残るな」

 

 風間の言う通り、二宮と犬飼、香取が揃っている最悪の鉄火場よりはマシというだけで、樹里も相応に厄介な相手なのだ。

 

 トリオンの高さから来る火力は驚異的だし、身のこなしも攻撃手と比べてそこまで見劣りするものではない。

 

 更に副作用(サイドエフェクト)によって何処までその()が届いているか分かったものではなく、狙撃と射撃の両方を扱う関係上とにかく手札が多い。

 

 そんな相手が待ち伏せている場所へ向かう事が、危険でない筈がない。

 

 案の定樹里は罠を張って待ち構えていたし、王子は地形を利用した攻撃に苦戦していた。

 

 風間の言う通り、あのまま奮闘し続けていても樹里に刃が届いたかは疑問が残るところである。

 

「だからこそ、王子は最初から伏兵として配置されている三浦をこそ狙っていたんだ。少なくとも、木岐坂を狙うよりはやり易いからな」

「では、王子隊長は三浦隊員があそこにいる事を最初から承知していたという事ですか」

「そうだ。あの状況で三浦を配置するなら、あの近辺しかないからな。香取の増援に向かわせても、意味がない以上はな」

「意味がない、ですか」

 

 そうだ、と風間は頷く。

 

「あの一帯は、二宮の手で障害物が根こそぎ吹き飛ばされていた。少なくとも、二宮を旋空の射程に入れるには姿を現す必要があるくらいにはな。弧月しか攻撃手段を持たない三浦を向かわせても、出来る事はなかった筈だ」

「そうね。あそこじゃ二宮くんと犬飼くんが香取ちゃんに向かって弾を撃ち続けていたからカメレオンを使って近付こうものなら流れ弾に巻き込まれたでしょうし、あの二人なら三浦君が姿を現した瞬間集中砲火で落とす事も出来たでしょう。若村くんのカバーがあれば分からなかったけど、もうそれは望めなかったしね」

 

 二人の言う通り、主戦場であった二宮・犬飼・香取の戦っている場所の周辺は二宮によって障害物が吹き飛ばされていた。

 

 故に旋空の射程に収める為には姿を晒して近付く必要があったし、使用中他のトリガーが一切使用出来ないカメレオンで近付こうにも弾幕が飛び交う中でそれをするのは自殺行為に他ならない。

 

 だからこそ、あそこへ三浦を向かわせても意味がなかったのだ。

 

 若村のような中距離火力を持った仲間の支援があればまた話は変わってくるが、それもない以上徒に駒を消費する行動でしかない。

 

 故に、あの場へ三浦を向かわせる選択肢は客観的に見て無いと断言出来たというワケだ。

 

「となると、配置すべき場所は木岐坂の近く以外にはない。確かに木岐坂は強力な駒だが、やりようが無いワケじゃないからな。万全を期すという意味では、間違った行動じゃない」

「結果的に見れば、それを読んだ王子くんに利用されてるんだから間違いと言えなくはないけどね。あくまでも結果論だし、どちらが正しかったかは断言しないでおくわ」

「そうだな。結果だけ見れば王子にそれを利用されているのだから瑕疵がなかったワケではないが、他に取れる選択肢が多くない以上は単に間違いであるとも言えないな」

 

 それを王子に読まれて三浦を落とされた結果となったが、これをミスと言えるかどうかは些か疑問の余地があった。

 

 他に取れる選択肢がほぼ無かった以上は、単に間違いとも言い難い。

 

 それだけ、あの場で取れる選択肢は多くはなかったのだ。

 

「強いて言えば辻がやったようにまだ姿を見せていなかった蔵内の迎撃の為に配置するという選択肢はあったが、真っ直ぐ木岐坂の下へ向かっていた王子と違って何処に潜んでいるかは予測し難かっただろうからな。確実性を選ぶという意味では、取り難い選択肢だったろう」

「しかし、それならば何故辻隊員は蔵内隊員が攻撃をした直後に奇襲出来たのでしょうか? 位置が分からないという意味では、香取隊と条件は同じ筈ですが」

 

 確かに綾辻の言う通り、蔵内の位置が分からないという条件は辻も香取隊と変わらない。

 

 なのに何故彼があそこまで迅速に蔵内を奇襲出来たについて、疑問に思うのも当然だろう。

 

「それは簡単ね。辻くんは最初から、樹里ちゃんのいるあのビルの近辺に潜伏していたんだもの。だから蔵内くんが合成弾を撃つという目立つ真似をした直後にそこに急行して、奇襲で一刀両断したワケ。勿論、蔵内くんが隠れている場所にある程度目星は付けていたでしょうからね」

 

 だが、その答えは即座に明示されていた。

 

 蔵内が援護の為に使用した合成弾、誘導炸裂弾(サラマンダー)

 

 それこそが、彼の位置を割り出す()()となっていたのだ。

 

「王子が木岐坂を、ひいてはその近くに隠れている三浦を狙うだろう事は二宮隊も予測していただろうからな。蔵内のトリオン量を考慮すれば、どのあたりに潜伏しているかは予想もし易かったろう」

「ビルの上を直接狙うには、ある程度近付く必要があるしね。実際蔵内くんはビルのすぐ傍の建物に隠れていたワケだし、近辺にいると当たりを付けていれば合成弾を撃った瞬間それを目印に急行する事は造作もなかったでしょう。あの誘導炸裂弾(サラマンダー)は、外から見れば相当に目立っていたしね」

 

 少し考えれば、王子が樹里を狙って動くだろう事は推察出来る。

 

 だからこそ二宮隊は彼のサポートの為に同行するであろう蔵内を仕留めるべく、辻を派遣していたのだ。

 

 二宮程のトリオンを持たない蔵内では、80階建てのビルの最上階付近を攻撃対象にするには相応に近付く必要があった。

 

 故にビルの近辺を張っていればその網にかける事は造作もなく、合成弾と言う目立つ攻撃をした瞬間にその場へ向かって奇襲をかける事も辻の機動力ならば容易である。

 

 結果としては思惑通り、蔵内を点にする事に成功出来たというワケだ。

 

「香取隊がそこまで読めていれば或いはそちらに三浦くんを向かわせる選択肢も取れていたでしょうけれど、そこは今後の改善点としておきましょう。洞察力という点では、他二部隊に負けていたという事でもあるしね」

「そうだな。木岐坂は確かに強力極まりない駒ではあるが、B級上位は単に強い駒を使うだけで勝てるような環境ではない。今回は、それが眼に見える形で響いた試合となったな」

「若村くんが早期に落とされたのが、本当に致命的だったわよね。銃手である若村くんが生きているだけで、取れる選択肢はかなり増えたでしょうし。中距離火力を持つ仲間一人の有無っていうのは、それだけ重要なのよ」

 

 加古の言葉通り、今回は若村が早期に落とされたのがとにかく致命的であった。

 

 彼が生きていれば三浦と共に香取の援護に向かわせる事も出来たし、或いは共に樹里の近くに配置して蔵内や辻を狙う択も取れたかもしれない。

 

 それだけ小回りの利く銃手の存在というものは重要であり、更にスパイダーをセットしていた以上出来る選択肢は無数に存在していた。

 

 今回はその重要な駒を失った事が、相当な形で響いたワケである。

 

「香取隊もあそこから奮闘したけど、若村くんを失った穴は埋めきれなかったワケね。努力や根性でどうにかなる範囲は、そう多くはないわ。太刀川くんが良く言っているように、気持ちの強さだけじゃ勝負に勝つ事は出来ないもの」

「想い、気迫というものはあくまでも接戦の際に多少踏ん張れる範囲が広くなる程度の効果しかないからな。そもそもの戦術的、戦略的な面で負けていれば勝負の土台にすら立てない。精神論だけで勝てる程、現実は甘くはないからな」

「けど、香取ちゃんが二宮くん達相手にあそこまで頑張れたのは気持ちの強さ故でしょうからね。だから一概に否定する事は出来ないけれど、それでも土台の部分で負けていれば勝てないのは一緒よ。根性だけで勝てるのは、残念だけどフィクションの中だけの話だからね。創意工夫や日々の努力がなければ、まず舞台に上がる事すら出来ないわ」

 

 想いというものはあくまでも最後の一手を後押しするブーストにはなるが、それだけで勝てるようなものでもない。

 

 具体的な戦術を構築し、尚且つそれを実現出来るだけの日々の努力と創意工夫があって初めて気持ちの強さは実を結ぶのだ。

 

 根性論だけで勝てるような、甘い現実は何処にも無い。

 

 想いを押し通す為には、その為の下準備と積み重ねが必要不可欠なのだから。

 

「そろそろ、総評といきましょうか。二宮隊は、癪だけど特にこれといった改善点は見当たらないわね。強いて言えば樫尾くんに獲物を横から掻っ攫われた事と香取ちゃんをすぐに落とせなかったくらいだけど、前者は想定の内でしたでしょうし後者は香取ちゃんが想像以上に頑張った結果で戦術的なミスじゃないからね」

「そうだな。あそこでの犬飼の動きを見る限り、樫尾に若村を落とされる事自体は想定していた筈だ。恐らく、無理に自分で落とす事に拘る必要はないと指示が出ていたんだろうな」

「あの場での最優先事項は、若村くんをどういった形であれ脱落させる事だったでしょうからね。それに、自分で若村くんを落とす事に拘っていたら樫尾くんにそこを突かれる可能性もあった。そういう意味でも、あれは仕方のない場面だったと言えるわ」

 

 二宮隊は今回、目立ったミスをしていない。

 

 樫尾の点を掻っ攫われた事と香取を早期に落とせなかった事が瑕疵ではあるが、前者は二人の言うように確実性を重視した結果であるし、後者は香取が想定上に頑張り過ぎただけだ。

 

 流石に単騎で尚且つ周囲に障害物のない状況であそこまで粘られるなど想定しようもなかった筈なので、あれは単に香取がおかしかっただけだ。

 

 想いだけで勝てないという現実に真っ向から喧嘩を売るような、そんな孤軍奮闘具合であったと言って良い。

 

 つくづく、才能の権化のような少女なのであった。

 

「辻くんも、余計な欲を張らずに自分の仕事だけを完遂しているしね。本当、名字がKじゃなかった事が悔やまれるわ」

 

 

 

 

「ふん、たとえそうであっても辻はお前にはやらん。あんな性悪の所に、こいつを預けておけるものか」

「まー、ガールズチームに入るのなんて無理だもんね。辻ちゃん」

「あぅぅ」

 

 辻は隊室で二宮の天然発言と犬飼の揶揄に対し、しどろもどろになっていた。

 

 突然加古に言及を受けた事で百面相をしていた辻であるが、その女性恐怖症故に樹里の追撃が出来なかった何も言えない。

 

 如何に二宮に許容されているとはいえ、何も思わないワケではないのだから。

 

「でも、本当に香取ちゃんがあそこまで粘るとは思わなかったもんね。いやぁ、才能ある子だとは思ってたけどあそこまで化けるとは」

「元から、才能自体は途轍もなく高かったからな。それが停滞を止めれば、ああもなる。当然の帰結だ」

「という事は、二宮さんはあれを予想してたって事ですか?」

「単に、そういう可能性もあるだろうと思ってはいただけだ。想定以上に抵抗出来ていた事は、認める」

 

 二宮隊から見ても、矢張りあの香取の孤軍奮闘ぶりは凄まじかった。

 

 障害物なし、二宮と犬飼の二人がかりという最悪の状況下で、まさか香取があそこまで粘るとは予想外にも程があった。

 

 あの二宮でさえそれを認める発言をするという事は、相当である。

 

「あとは、今回の課題をどう解決するかだ。それ次第で、あいつらの今後は変わって来るだろうな」

 

 

 

 

「王子隊は、結果としてみればそこまで悪くはないわ。ただ、樫尾くんを香取隊に落とされた事自体は想定外だったでしょうからそこは要検討だけどね」

「そうだな。香取隊の底力を、見誤った結果とも言える。若村の件でガタつくと考えたのかもしれないが、想定が甘かったというのは確かだろう」

「けど、その後できっちり三浦くんを落とす工程を考えて完遂出来たのは流石よね。エースがいないという点をきっちりフォロー出来るだけの、戦術家としての勝利と言えるわ」

 

 王子隊は、樫尾を香取隊に落とされたという想定外こそあったものの概ね理想的な立ち回りは出来ていた。

 

 三浦を落とす手際は鮮やかであったし、最後に王子や蔵内が落とされた事も必要経費として計上してあった筈だ。

 

 概ね、瑕疵の少ない立ち回りであったと言って良いだろう。

 

「二宮隊の狙いを読んで疑似的な共闘を行ったのも、悪い判断ではなかった。強いて言えば、樫尾を香取隊に落とされたのが多少響いてはいたな。結果として二点取れたとはいえ、場合によっては香取隊に点で負けていてもおかしくはなかっただろう」

 

 

 

 

「すみません。やっぱりあれは」

「さっきも言ったように、あれはぼくのミスだ。君が気にする事じゃないよ、カシオ」

 

 王子隊室で、香取隊に落とされた事に言及を受けた事で再び落ち込む樫尾に王子はそう言って声をかける。

 

 彼としてもあれは自分のミスだと思っているので、必要以上に樫尾に負担をかける事は本意ではないのである。

 

「君は、ぼくの指示通りに行動しただけだ。指示を出した以上、責任はぼくにある。欲をかいた結果、それを巧く突かれてしまったワケだしね」

「ああ、だからお前がそこまで気にする事じゃない。納得が出来なければ、今回の失敗を次に活かせば良いだけだ。ランク戦は、()があるんだからな」

「はいっ! 精進しますっ!」

 

 二人のフォローで持ち直した樫尾を見て、王子はにこりと笑う。

 

 そして、ふぅ、とため息を吐いた。

 

「今回はしてやられた部分もあるけど、次も負けてあげるつもりはないよ。今後どう君達が成長していくのか、楽しみではあるけどね」

 

 

 

 

「香取隊は、とにかく最初の若村の脱落が最後まで響いたな。あれが、試合の趨勢の殆どを決定付けたと言って良い」

「あれだけは明確に、香取隊のミスと言えるからね。序盤でいきなり一人落ちるっていうのは、相当に試合に響くものだもの」

 

 二人は最後に香取隊に対して、言及を始めた。

 

 今回の試合では矢張り、若村の早期脱落が最後まで影響を与えた形になる。

 

 兎にも角にも、あれがとにかく致命的だったのだから。

 

「若村は目立ちはしないが、隊の中では重要な役割を持った駒だ。今回見せたように工作も仕掛けられるし、何より小回りの利く銃手であるというのが大きい。若村がいるだけで、戦術の幅は相当に増やせる。それだけ、中距離火力の持ち主の有無というのは重要なんだ」

「香取ちゃんもハンドガンは持ってるけど、あくまでもサブウェポンとしての運用だし何より弾数じゃアサルトライフルとは雲泥の差だからね。射手と違ってすぐに攻撃が出来る中距離火力持ちだし、目に見えない所で役に立つものなのよ。銃手っていうポジションはね」

 

 二人の言う通り、若村は目立たないだけでただ生存しているだけでそれなりに仕事がこなせるポジションにいるのだ。

 

 即応的に多くの弾を撃てる突撃銃型(アサルトライフル)を持った銃手というのは、味方の援護から不意の遭遇戦への対処等出来る事にかなり幅がある。

 

 役割上そこまで派手な活躍をする事はないが、いて困る事はなく銃手が一人いるだけで小回りが大分利くようになるのである。

 

「ああ、そうだな。銃手というのは、決して目立つポジションではない。サポーターとしての最高峰である犬飼が隊のバランサーとして活躍しているように、目に見える功績よりも目に見えない支援の方が重要な役回りだ。そこを意識して動けば、また違ったものになって来るだろうな」

 

 それを説明すべく二人は言葉を尽くしているが、これは若村へのフォローといった意味合いも強い。

 

 若村は今回の失敗が相当に堪えているであろうし、第三者の評価というものは時として何よりの特効薬となる場合もある。

 

 身内ならば慰めているだけと思われる内容であっても、特に関係の無い第三者からの客観的な意見ならば素直に受け入れられる場合もある。

 

 風間達としても無為に若村が潰れる事を望んでいるワケではないので、このくらいの気遣い(フォロー)は当然やっておくのであった。

 

 主に樹里の事を気にかけている風間の意向であるが、それを察せない程加古は鈍くはない。

 

 彼女は才覚溢れる上に自分の隊の加入条件である「K」の名字を持つ風間には相当に甘い部分があるので、自然と彼の思惑に加担する事を決めたのであった。

 

「木岐坂とチームメイトとの連携の課題を、どう解決していくか。それが、今後香取隊がどうなるかの鍵となるだろう。そこを改善しない限りは、B級上位で戦っていくのは厳しいだろうからな」

「そうね。チームメイトとの即席の連携が出来るかどうかは、かなり重要だもの。まあ、既に実感しているでしょうからこれ以上は言わないわ」

 

 勿論、釘を刺す事は忘れない。

 

 フォローはするが、事実は事実として受け止めて貰う必要がある。

 

 配慮はするが、だからといって対応を甘くする事はない。

 

 相手の為を想うならば、手心を加え過ぎるのは却って毒となるのだから。

 

「総評はこれくらいだな。構わないか?」

「はい、お二人ともありがとうございましたっ!」

 

 綾辻がそう言って総評を締めくくった二人に礼を告げ、前に向き直る。

 

「では、これでB級ランク戦第二試合を終了致します。順位は今夜の夜の部が終わり次第通達されますので、連絡には目を通されるようお願いします。皆さま、お疲れ様でしたっ!」

 

 綾辻のアナウンスと共に、ROUND2が終了する。

 

 会場は熱気に包まれたまま、幕を閉じるのであった。

 

 

 

 

「────────お疲れ様。じゃ、早速で悪いけれど」

 

 香取隊、隊室。

 

 そこではテーブルの前に立つ香取が、集まった部隊の面々を見回していた。

 

 若村と樹里は下を向いているが、知った事ではないとばかりに少女は口を開く。

 

身内会議(はなしあい)、するわよ」

 

 香取の号令で、俯いていた樹里と若村が顔を上げる。

 

 華はそれを、無言のまま複雑な表情で見守っていた。

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