改めまして、これにてワールドトリガー二次創作長編、「香取隊の狙撃手」完結となります。
445話という長い物語にお付き合い下さった読者の皆々様には本当に感謝するばかりです。
前作の421話を超える長編になりましたが、此処まで来れて本当に感無量です。
今回の物語は、那須隊の新メンバーを主人公として王道の絆の物語、群像劇を描いた前作の「痛みを識るもの」と異なり、どちらかというとワールドトリガーの「SF」の部分を強めに描き、セカイ系を意識しつつ作り上げた物語となります。
前作でワールドトリガーの二次創作の私なりの回し方、ランク戦や大規模侵攻の処理等は勉強出来ましたので、今作はそれを活かして色々と挑戦してみた形です。
有り体に言えば、私の大好きなEVAっぽい要素をガッツリ仕込みました。
樹里の見た目や描写はモロに綾波系のそれですし、住んでいるのがたった一人しか住人のいない古びたマンションというのも綾波のそれです。
第零章からサブタイトルでそれを隠さなくなったので、既に気付いていた方は多かったでしょう。
元来わたしはダークでSFな世界観が大好きな人間でして、ワールドトリガーの「少し厳しめな世界」という言葉をガッツリ描写するつもりで二次創作を書いていました。
前作では主人公である七海の他に
勿論ワールドトリガーである以上群像劇は描くのですが、ストーリーの最終目標を「樹里の救済」に据える事で物語に一貫性を持たせた形になります。
また、私はワートリ二次を書くなら那須隊の他に香取隊は絶対に描きたいと思っていたので、その想いを貫き通した形になります。
最初、このストーリーを描こうと思い立ったのはぶっちゃけ前作で香取隊を書いてて楽しかったってのもあります。
それでいて、那須隊同様明確な「改善点」がある部隊のサクセスストーリーを描いていくのは面白いだろうと思っていたので、最初に主人公のポジションだけ決めて他を肉付けしていった形です。
最初に問題となったのは、「どう完結させるか」でした。
私は長編を連載する時、必ず完結までの筋道を立ててから連載を開始します。
私が連載を開始した場合、それが出来上がっていると認識して頂いて構いません。
まず、「どう終わらせるか」をしっかりと考える。
プロットを考える時、これは絶対に決めます。
しかし、問題となったのはワートリが「現在連載中の作品」である事。
要するに、区切りの良い終わりどころが大規模侵攻直後くらいしかないんですね。
ですが、「前期ランク戦」を二度やるのは流石に二番煎じですし、何より今作では玉狛第二もきちんとランク戦で描くと決めていました。
しかし、遠征試験編は今まさに連載中であり、ROUND8が終わった後区切りの良い終わりどころがありません。
なのでどう終わらせるか悩んでいたんですが、「ROUND8の後にオリジナルの最終章を作れば良い」と思い至り創作仲間に相談して色々詰めながら何とかプロットを完成、連載に漕ぎ付けました。
そしてその最終章をどうするかについては、女主人公にする事、EVAっぽいSF要素を組み込む事で今作の流れが出来上がりました。
要するに、オリジナル近界国家の採用です。
但し、これに関しても最低限注意を払った事があります。
それは、「オリキャラを敵にしない」事。
これに尽きます。
二次創作に於いて、オリキャラを敵として出すパターンは多々あります。
しかし、基本的にこれは悪手であると考えています。
少なくとも、敵を追加するのであれば原作と密接な繋がりがあり、無から生まれたオリキャラではない。
これは守らなければ、正直白けるだけだと思っています。
だからネームドの敵キャラは用意しませんでしたし、ラスボスは徹頭徹尾「機械に操られた樹里」である事を徹底させました。
これは割と前の話になりますが、BALDR SKYというゲーム作品の二次長編を書いた時はラスボスは原作世界線の一つで死んだキャラの成れの果てとしました。
加えてラスボスの機体も、同シリーズの過去から引っ張って来ました。
こうする事でファンの心を掴み、ラスボスとしての格も備えさせる事に成功したワケです。
完全新規のオリジナル敵キャラは、二次創作では基本やるべきではないと考えています。
場合によってはそれだけで地雷要素ですし、原作破壊になりかねない暴挙であるとも思っています。
だからククロセアトロはあくまでも舞台装置として出して、「敵キャラ」として出す事はしませんでした。
人によっては他の意見もあるかもしれませんが、少なくとも私はこう考えている事だけはご留意下さい。
それから、香取隊の面々について。
まず、原作でもヒュースに散々心をブチ折られた若村ですが、私も彼を成長させるには一度徹底的に折る事が必要だと思って実行しました。
若村は原作の時点では独断専行という分かり易い粗がある香取の欠点をあげつらい、自分の現状から眼を逸らし続けていました。
そんな彼に第一に必要なのは、「自分の現状を直視させる事」です。
責任逃れをしたがる傾向のある若村ですが、根は素直で善人です。
だから、完膚なきまでに「自分の責任」で部隊が敗北したとなれば、そこでようやく自分の駄目さ加減を認識し、現実を見るようになります。
若村が成長するには、この過程が必須でした。
なので序盤で東さんではない位置の知れた狙撃手に返り討ちにされる、という分かり易い失態を演じさせました。
東さん以外の狙撃手は、近接格闘手段を持つ荒船や逃走手段を持つ隠岐を除き、近付かれれば詰みです。
なので若村は勝ち確の状況で自分の責任で行動する事に二の足を踏み、結果返り討ちにされて現実を識る事になりました。
それでいて、樹里の件がある為明確に「部隊を変える理由」が出来ている香取から叱咤激励された事で、吊り橋効果で無意識の内に香取に脳を焼かれて前に進む事を選びます。
一度折れた経験があったから、ROUND2で樹里との連携失敗で負けた際にも香取が即座にフォローに入った為に反発せずに素直に本心を吐露する事が出来たのです。
若村の成長とは、彼の個人戦闘力が上がる事では断じてありません。
チームの駒の一つとして動く事が出来るようになれるか、これに尽きます。
正直、彼に指揮能力はありません。
というより、基本的な視野が狭く、向いていません。
ですが、一つの事に対する集中力はきちんとあるので、指示された事をこなす気概さえ出来れば一つの駒としては成立します。
以前の彼はそれもまともに出来ていなかったのですが、犬飼の指導もあって個人戦闘力は何とかB級でやっていけるレベルはあります。
駒として動く事が出来るようになるだけで、大分使い易さが増す隊員なんですね彼は。
香取隊は、香取をどう暴れさせるかで全てが決まる部隊です。
今作はそれに豊富なトリオンと強化視覚という強力な武器を持つ樹里のエース二枚看板があるので、「エースを活躍させる事が出来れば勝てる」チームとなっています。
なので若村個人では非力でも、きちんとチームの駒として貢献出来れば充分なんですね。
そこを踏まえた上で、彼に出来る事出来ない事をきっちり分けて、役割を割り振ったのが今作の若村になります。
これだけで大分変われたので、原作でも成長を期待したいところです。
次に三浦ですが、こちらは単に気苦労がなくなった分本来のパフォーマンスを発揮出来るようになっただけです。
実は彼、機動力評価が8で香取と同じなんですね。
つまりかなり動ける枠で、原作ではチームメイトのフォローばかりに気を向けていたばかりにその能力を活かせる場面はありませんでした。
しかし今作では若村がきちんと駒として動けるようになった上に辻の指導を受けたので、本来の性能がちゃんと発揮出来るようになって活躍出来た、というワケです。
香取に関しては、樹里というやる気の原動力が今作では存在するので、根本のスタイルが違います。
原作では香取は華との友情を第一にして、尚且つチームメイトを身内扱いするも捻くれた形でしかそれを出力出来ていませんでした。
ですが今作では樹里という「三年も行方不明になっておきながら中々以前のように友誼を結んでくれない」という色んな意味でヤキモキさせる相手が現れた為、自分の中に明確な目標、指針が出来ました。
一度目標が出来て、尚且つそれが自分にとってなくてはならないものであるなら、香取は停滞を止めます。
元より情に厚い部分は見えていたので、今作ではそれが表面化した形ですね。
華さんは、「無理に変化を望んで現在が壊れるくらいなら変化はなくてもいい」という諦観思想が原作では見え隠れしました。
ある意味現実的と言いますか、彼女は徹底して悲観主義気味の現実主義で「他人に期待をしない」んですね。
「きっと出来る筈だ」「やれば出来る筈だ」という言葉を恐らく彼女は信じていません。
変わる意思を持たない者に強制をしても、出来る筈がないと諦めていたとも言えます。
その唯一の例外が、香取でした。
過去、父親から香取との接触を断たれてそれを諦めてしまった直後、香取は窓を「作る」という強引な方法で無理やり繋がりを保ちました。
あの時の経験は、きっと華さんの中で掛け替えのないものであった筈です。
彼女なら、出来ると期待しても良いかもしれない。
そんな気持ちすら、抱いたでしょう。
少なくとも、合理的な理由があったとはいえ自分の両親よりも香取を生かす事を選ぶくらいには彼女の中で香取の存在は重かった筈です。
なので、良くも悪くも華さんは香取次第と言えます。
香取が「やる」と言えばやりますし、「変えたい」と望んだなら受け入れます。
彼女は変化を強要しませんが、変化を受け入れる事は出来ます。
今作では香取がやる気MAXの状態になったので、華さんもそれに合わせただけとも言えるでしょう。
他のボーダーの面々についですが、気付いている方もいるかもしれませんが今作では前作で主役を張った那須隊は徹頭徹尾直接登場はさせませんでした。
大規模侵攻では那須さんの
今作では七海がいないので那須隊は変わりようがない上、私が那須隊を書くとどうしても「痛みを識るもの」の那須隊に寄ってしまう可能性があるので避けた形になります。
また、前作で散々活躍した太刀川隊、影浦隊へのスポットライトは控えめにしました。
代わりに王子隊、二宮隊へスポットを当て直した形になります。
王子隊は修を教導するならベストな相手で、ああいう動きをさせて違和感のないキャラとしてピックアップしました。
彼のテコ入れによって修の強化スピードがアップして、今作に繋がった結果となります。
個人的な性格の話でも王子隊と修は相性が良いので、師匠にするなら彼以外にない、ってくらいですね。
次に二宮隊の話です。
前作では二宮隊は「超えるべき好敵手」以外の役目を持ちませんでしたが、今作では樹里と直接の絡みがあり、前作の太刀川と似た立ち回りとなっています。
影浦隊は二宮隊にスポットを当てる以上、どうしてもユズルに関してもフォーカスせざるを得なかったので、ある程度光量を調節した形になります。
最終決戦では二宮の火力と千佳の支え、影浦の索敵能力は必須だったという面もありますが。
それから、今作の大規模侵攻は前作と異なりクライマックスではないので、大団円になり過ぎないように調整しました。
前作は最終章が大規模侵攻だったのでハッピーエンドで終わらせましたが、今作では序盤にあたるのである程度不穏な要素を入れつつ、今作の裏側で何が起きているのかを垣間見せる章としても使用しました。
「彼方の曇天」は、そんな章を象徴するサブタイトルになりますね。
今作の主人公の樹里ですが、最終的にラスボスにすると決まっていた以上ある程度
出水クラスのトリオンと、スコープ要らずの超々遠距離狙撃能力。
加えて射手としての優秀さと、香取隊に足りない要素を有りっ丈詰め込んだキャラクターとなっています。
ちなみにトリオンを出水と同じにしたのは流石に二宮と同じではあちらの立つ瀬が無くなるのと、流石にそれはやり過ぎだと判断した為です。
二宮は技術も凄いですが、分かり易い脅威としてトリオンの暴威があります。
彼と同じトリオンにしては二宮にボスとしての格が薄れてしまいかねないので、出水と同じ数値に落ち着きました。
そもそもトリオンで二宮を超えるのはワートリ二次創作としての難易度が格段に上がるので、基本おすすめしません。
「小南を落とす」「東さんを落とす」と同じくらい、安易にやっちゃ駄目な事だと思いますので。
前作では東さんを落とす際には「部隊全員と引き換えの相打ち」として格を保ちながらそれを行う事が出来ましたが、逆に言えばそれくらい気を遣わないといけない事であるというのは留意するべきでしょう。
ちなみに樹里のトリガーセットは、自分がもしワートリ世界でトリガーセットを組むなら、という想定の一つの解答でもあります。
基本は狙撃手として動きつつ、必要に応じて射手にスイッチする。
そんな感じが良いなという好みも入ってたりします。
ちなみに
ネーミングもちゃんと「武器名でありカクテル名」という法則にはきちんと則っていますし、効果も追尾する貫通弾って事で想定出来るので無理のない仕上がりになったのではないかと。
後で前作同様各話解説裏話を書くので、詳しくはそちらにて。
それから、今後の展望についてお話します。
まず、第一としてワートリ二次創作はこれで終了となります。
書きたかった香取隊と那須隊はどちらも書けましたので、ある程度満足出来たというのが一つ。
第二に、一次創作での連載を計画中であるというのがあります。
なので次回作は初挑戦となる一次創作となります。
内容としては、ダークギャザリングや呪術廻戦から大きく影響を受けた洒落怖異能バトルものです。
都市伝説の話そのものの具現である忌霊と、自らに封じた忌霊の力を使って戦う忌述士による伝奇系の物語となります。
タイトルはまだ決まっていませんが、「忌譚回遊」っていうワードを軸にして何か考える予定です。
既に下敷きは出来ているので、今後は裏話やアフターストーリーを描く傍らこちらの連載準備を進めて参りますので、連載したら読んで頂けると幸いです。
さて、香取隊の狙撃手はこれにて完結となりましたが、裏話やアフターストーリーは色々書くのでそちらもお楽しみに。
少々長くなりましたが、これにてあとがきとさせて頂きます。
では、改めてこの物語にお付き合い頂いた方々に盛大な感謝を。
私はこれからも作品を書き続けますので、ご愛読願います。