香取隊の狙撃手   作:デスイーター

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 今作の各章解説と裏話です。

 完結記念に順番に書いていきます。ではどうぞ。


閑話/information
各章解説・及び裏話/序章~1章


 

 

 『序幕~白の少女の見る世界/Opening of White Girl』

 

 始まりの章です。

 

 この章は主人公である樹里の紹介、及び彼女の周囲を取り巻く人間関係を簡潔にお伝えするものとなっています。

 

 第一話では彼女のパートナー役として抜擢した佐鳥と軽いラキスケイベントを挟みつつ、樹里ちゃんの可愛さを全開で表現したつもりです。

 

 今作で女主人公をやると決めた際に、まずパートナーである異性役は誰にしようかと考えました。

 

 結果、即断で佐鳥に決定しました。

 

 佐鳥は表向き飄々としていますがあの東さんと同期の狙撃手黎明期を生き抜いた存在であり、抜け目のない部分や情に厚い部分も多々あります。

 

 それでいて「モテたい」とか言いながら実のところ紳士で、敢えて三枚目をやれるメンタルもあり、責任感もきちんとあるので相手役に最適だと思い抜擢しました。

 

 前作の七海同様、相手の女の子に対する好意はしっかり自覚しながらも、過去からのしがらみにより一歩を踏み出せない。

 

 そんな関係性を描くにあたって最適な人格だと判断したので、彼を言うなればもう一人の主人公、パートナー役として選びました。

 

 本当の意味でのもう一人の主人公は香取になりますが、ワートリ原作が修を始めとした数人が主人公であるとされている通り、この物語は樹里、佐鳥、香取の三人の主人公による物語であると言えます。

 

 また、主人公といえばという事で、原作主人公である修の強化イベントもこの初期段階で実施しました。

 

 そう、王子への弟子入りですね。

 

 あとがきでも書きましたが、修らしい成長を早期にさせるのであれば、王子が適役だと考えています。

 

 修は戦闘能力の面を鍛えても、雀の涙程度の差しかありません。

 

 彼が伸ばすべきなのは戦略面、そして盤外戦術や交渉力の方です。

 

 やり方さえ覚えてしまえば持ち前のペンチメンタルで何があろうと突き進むし度胸もとんでもないので、その能力を生かした持ち味を伸ばすには誰が最適か考えた際、王子しかいないと判断しました。

 

 王子は修と思考が似ている事が言及されており、尚且つ頭脳も明晰で他人の心理を見抜くのが得意です。

 

 対人関係の交渉スキルも高く、話術も達者。

 

 これらの技術ツリーを修に伝授すれば、原作直近での修の成長を先取り出来るだろうとシミュレート結果が出た為このようになりました。

 

 また、修がレイガストを使っている限り自力でB級には上がれないだろうとすぐ分かる筈なので、射手トリガーの伝授もハウンド使いである彼なら適任です。

 

 C級ランク戦というのは、基本射手トリガー無双です。

 

 自動的に相手を狙ってくれるハウンドの物量を捌けるレベルの近接タイプか、トリオンが多くよりハウンドを高い出力で撃てる者が勝つようになっています。

 

 そして、現状C級である程度勝っている隊員は圧倒的に後者が多いと思われます。

 

 ハウンドの便利さ、手軽さに脳を焼かれてしまったC級は他のトリガーを試す選択肢など頭からなくなり、ハウンド脳のまま()()()()()()()ポイントを稼げます。

 

 しかし、不定期にやって来る遊真みたいな「デキる奴」が来た瞬間、それらのハウンド脳のC級隊員はポイントの貯金箱として潰されます。

 

 恐らくですが、そういった「デキる奴」に当たらず運良くB級に()()()()()()()のが今のB級下位だと思っています。

 

 間宮隊はその最たるもので、三人で追尾弾(ハウンド)撃て()()強いだろうという解説で分かる通り、彼等にはそれ以外の戦法が何一つありません。

 

 「三人でハウンドを撃つ」事だけに固執して、サブプランが何もないんですね。

 

 それは恐らくC級時代、その方法で勝ててしまったが故に他の戦法を学ぶ機会がなかったものと思われます。

 

 言うなれば、若村のようなものです。

 

 彼は香取というB級上位シード権が手元にあってしまったばっかりに、チーム戦術を試行錯誤しながら学んでいくべき段階をすっ飛ばしてB級上位まで来てしまった為、全うなチーム戦術を学ぶ機会がありませんでした。

 

 それと同じように間宮隊はC級時代ハウンドを雑に撃つだけで勝ててしまったが為に、他の方法を知らないのです。

 

 他のB級下位部隊も、恐らくは似たり寄ったりなのでしょう。

 

 運良く「デキる奴」に当たらなかったからB級にはなれたけど、「チームでどう勝つか」という戦術の素養がまるで無い。

 

 或いは、地力が低過ぎる上に勝てるようになるにはどうすればいいかやり方が分からない。

 

 このどちらかであると考えられます。

 

 恐らく根付さんの介入でB級になったであろう茶野隊なんかは、ぶっちゃけそれ以下です。

 

 リボルバー型ではない二丁拳銃という火力不足で尚且つ体捌きに優れているワケでもない二人組が、集団戦で勝てる筈がありませんから。

 

 とまあ、C級やB級下位がこんな感じなのですが、修は王子からちゃんと「戦術」を学ぶ事で同じ間違いを犯さずに済んでいます。

 

 原作では出水から射手としての戦い方等を学んだりしていましたが、「指揮官」として経験の豊富な王子からの指導を受ける事で、一足跳びに成長出来たワケです。

 

 彼の成長が今後重要な要素になって来るので、これは外せないイベントでした。

 

 また、「バトル・オブ・エモーション」、要するに「感情の戦い」では樹里が若村の悪口を香取に向かって告げるという特大の地雷を踏み抜いた事で、香取と樹里の間でチーム戦が勃発します。

 

 自分が貶すのはいいですが、他人に身内を馬鹿にされる事は断じて許容出来ない香取は相手が樹里だろうと容赦しません。

 

 頭に血が上り過ぎて却って冷静になり、無意識の内に学習していた指揮官としての立ち振る舞いを土壇場で発揮して若村と三浦を引き連れて樹里と佐鳥に挑みます。

 

 香取はこれまでも樹里に個人戦を挑み負け続けているので、まともに戦っては勝てないと分かっています。

 

 なので工業地帯という狭く合流がやり易いMAPを選ぶ事で、三浦との連携で速攻で樹里を落とす作戦を画策しました。

 

 相手が樹里一人であれば、これでどうにかなったかもしれません。

 

 但し、今回は佐鳥という後衛がいた事で計算が狂います。

 

 必殺の連携を躱された上、樹里を警戒し過ぎるあまり距離を取ってしまい、樹里による爆撃乱舞が開始されます。

 

 樹里の強さを知っていたが為に慎重になり過ぎてしまい、失態を演じたワケですね。

 

 トリオン量という武器がある樹里にとって、相手が距離を取ってくれたのは僥倖でしかありません。

 

 唯一の射程持ちである若村は佐鳥を狙いに行った事が分かっていたので、安心して合成弾を撃ち続けられたのですから。

 

 このあたりは各キャラの性格や現状を考慮してシミュレートした結果です。

 

 また、この試合でやらなきゃいけなかった事が一つあります。

 

 それは、若村に「自分でも自覚出来るレベルで失態を犯しチームの敗因となる」事です。

 

 この時点での若村は原作と変わらず、自分の何がいけないのかを理解出来ず、他人の粗を探して責任を押し付ける悪癖ばかりが目立っていました。

 

 しかしこの試合では「位置が割れた狙撃手に近接で負ける」という大失態を演じてしまいます。

 

 こうなると流石に言い訳も出来ず、「自分の失敗で負けた」と自覚せざるを得ません。

 

 こうして「自分が今のままでは駄目だ」という事を自覚させる事が、若村の成長では必須となります。

 

 それが分からなかったからこそ、原作最終戦では指揮を任されたにも関わらず何も出来ずに潰れちゃったワケですから。

 

 要は原作最終戦で香取が若村にやった事を、此処でより分かり易い形でやった、という事です。

 

 ここまであからさまに「自分の所為で負けた」となれば、流石に現実を直視せざるを得ません。

 

 勿論若村はこのままでは潰れるだけですが、そこですかさず敬愛する師匠である犬飼のフォローが入ります。

 

 若村は沈んだ状態から自力で立ち上がれる程器用ではないので、こういったフォローが必須だったんですね。

 

 原作でも「今日のシミュレーションでは勝てた」「半崎がフォローを入れてくれた」というプラス要素があったからこそ、ドン底から立ち上がる事が出来たんだと思います。

 

 要するに彼は鞭だけでも飴だけでも駄目で、的確に両方を使わないと成長出来なかったという事です。

 

 また、香取の方も迅の差配という名の偶然で出遭った風間から指導を受ける事になります。

 

 香取は土壇場での事とはいえラーニングした指揮能力はしっかり発揮出来ていたので、風間がそれを後押しする事できちんとした「指揮官としての能力」を開花させます。

 

 これは今後のランク戦を勝ち抜くには必須の行程であり、風間に「隊長の役割とは何か」といういろはを教わる事で成長の為の下地が出来たワケです。

 

 樹里の方も試合に勝ちはしたがこのままではいけない事は分かっていたので、それを見詰め直す機会となりました。

 

 序章ではまず、主要人物に失敗を経験させ、今後の成長の糧とするフェイズでもあります。

 

 そういう意味で、重要な章だったと言えますね。

 

 ちなみに章題である「白の少女の見る世界~/Opening of White Girl」は、そのままの意味です。

 

 白の少女、即ち樹里が現在見ている世界と物語の序幕(オープニング)を飾る章なので、こういうタイトルになった次第です。

 

 

 『第一幕~白の少女と異邦人/Encounter of Stranger』

 

 次は第一章、原作時間軸に突入する章です。

 

 この章題の「異邦人」とは言うまでもなく遊真の事であり、英題の「Encounter of Stranger」は直訳すれば「異邦人との邂逅」になります。

 

 遊真と言う異邦人、近界民(ネイバー)がやって来て物語の歯車が回り始める章ですね。

 

 この章ではまず、原作と同じか類似の流れである場所はダイジェスト、及びカットしています。

 

 二次創作を書く以上、原作とどう変化しているかが重要であって、全く同じ展開であれば書く意味は一切ありませんから。

 

 基本的な流れは原作とそこまで変わりはありませんが、樹里が遊真が戦闘している場面を強化視覚で目撃してしまった為に一連の騒動に巻き込まれる事となります。

 

 原作通り、この後に控える黒トリガー争奪戦で迅さんは嵐山隊に協力要請する事が確定しています。

 

 なので佐鳥は原作通り出撃するんですが、彼が秘密裏の作戦に出撃すると知った以上樹里が黙っている筈がありません。

 

 そういう未来を迅さんが見てしまったので、止むを得ず彼女を争奪戦に巻き込んでいく流れです。

 

 ワートリ二次創作者がまず悩むのは、「主人公をどうやって黒トリガー争奪戦に巻き込むか」だと思います。

 

 原作通りのままでも迅が危なげなく勝っている以上、主人公がしゃしゃり出ると過剰戦力になるだけです。

 

 また、この黒トリガー争奪戦は非常にデリケートな背景の上での戦いなので、わざわざ主人公をそれに介入させる理由付けが必須となります。

 

 前作では七海が迅さんと親しい間柄であった上に上層部ともグルになって参加と相成りましたが、今作では樹里は迅さんとまともな関係性を築いていません。

 

 直接話した事すら殆どなく、どういう人間かも人伝にしか知らないレベルです。

 

 今作では前作と違い、主人公陣営と迅さんは意図して距離を置いています。

 

 香取隊が第一次大規模侵攻の被害者が複数人いる部隊な上に、樹里も自分から交友関係を広げていくタイプではない為当然ではあります。

 

 裏では樹里の事で色々と気を揉んでおり佐鳥とは色々関係がある迅ですが、敢えて樹里とは距離を取っていました。

 

 これは実のところ樹里に仕込まれた「爆弾」がどのような条件で起爆するか不明であった為、万が一にも迅が近くにいた時にそれが爆発して彼を失うような事態になるのを避けるべく、上層部が厳命したという裏話があります。

 

 ボーダーにとって迅の喪失は何が何でも許容出来ない損失であり、それだけは避けなければならない以上仕方のない措置でした。

 

 だから迅さんは作中で樹里に干渉する時は、佐鳥という仲介役を介していたワケですね。

 

 佐鳥は後程説明がある通り、樹里の監視役兼精神安定剤です。

 

 記憶処理を受けた後でも樹里は佐鳥への好感度を維持しており、尚且つ佐鳥自身が彼女から距離を取る事を拒んだ為、監視役という体で傍にいる事を許された形になります。

 

 ちなみに樹里に心を許されていながら監視役という立場で彼女に近付いた事に対し佐鳥は負い目を感じており、一歩を踏み出せない一因ともなっていました。

 

 だからこその半崎等に対するあの態度であり、煮え切らなかったのもそれが理由です。

 

 それから、度々出て来る「白の少女」というサブタイトルは、正確には「木岐坂樹里(ククロセアトロの実験体)」となります。

 

 「木岐坂樹里」ではなく「白の少女」というサブタイトルの時は、まだ全貌を明かしていない樹里のブラックボックスを暗示しており、巧く行っているようでも不穏な要素は見え隠れしている、という意味で付けたタイトルになります。

 

 逆に「木岐坂樹里」というサブタイトルになっている時は、樹里の裏側を多少なりとも描写した回となっています。

 

 今作では「白」という色を、徹底して不吉な要素として取り扱って来ました。

 

 後程出て来るククロセアトロのイメージカラーであり、第一次大規模侵攻で多大な被害を出したトリオン兵の色もそもそも白であり、樹里の運命を狂わせた研究者達の色でもあります。

 

 そういう意味で今作で「白」という色が強調された場合、基本的にその意味はネガティブなものとなっています。

 

 樹里の透き通るような美貌でさえ、後の曇天を暗示していました。

 

 見れば分かると思いますが、樹里は綾波レイに多大な影響を受けた造形をした正統派綾波系キャラです。

 

 EVAでも白という色はアルミサエル然り量産機然り割と不吉な要素として取り扱われており、今作はそれに倣った形でもあります。

 

 章の最後で迅が遊真に尋ねていたのは、言うまでもなくククロセアトロ、というよりも樹里を攫った国を知らないか、という内容です。

 

 個人名は避けて言及したものの、この時点では国の名前さえ分からない状態だったので、遊真も思い当たる節がありませんでした。

 

 もしも仮に「ククロセアトロ」という名前が分かっていれば、この時点で遊真から情報開示は出来ていました。

 

 正確には、レプリカからですね。

 

 遊真自身はククロセアトロに行った事はありませんが、レプリカは雄吾経由で得た知識の中にその国の情報がありました。

 

 雄吾は独自の伝手でククロセアトロは怪しいという考察に至っており、レプリカにも「注意すべき近界国家」として断じて立ち入らず、関わらないよう命じていました。

 

 その為遊真も国の名前自体は聞いた事があり、ククロセアトロという名前さえ出せれば情報は開示出来ていたというワケです。

 

 多少長くなりましたが、今回はこのあたりで。

 

 次は二章の解説から再開します。

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