『第四幕~嵐の前の幕間/White Girl and New Wind Blows』
この章は文字通りの嵐の前の幕間、大規模侵攻前の最後の準備期間となります。
英題の「White Girl and New Wind Blows」は直訳で「白の少女と新たな風」となります。
樹里の参入もあって色々な変化が訪れた結果、大規模侵攻の運命がどのように変わっていくのか。
それを暗示していく章でもあります。
まず、章の一話目では樹里を部隊に迎えてウッキウキな香取が出て来ます。
彼女からしてみれば大切な幼馴染がようやく手元に戻って来たような感覚なので、そりゃもう有頂天になってはしゃぎまくります。
とはいえ、樹里の側は香取のあまりのハイテンションについて行けず、辟易としています。
まあ、相手が香取でなかったら無視一択レベルの所業ではあるので、樹里としてはこれでも相当寛大な対応をしているつもりです。
なので狙撃手訓練を口実に抜け出した時も、本人としては当然の対応だったりします。
基本的に迫れば退くけれども離れると寄って来る猫のような子なので、佐鳥くらい距離感調整が絶妙でないとちゃんとしたコミュニケーションが成立し難かったりします。
香取と華は幼馴染補正である程度見逃しているのと、人間として彼女達が大好きなのでああいった対応になっています。
華の場合はそのあたりきちんと理解しているので、ある意味で適切な距離感を保てています。
その上で理詰めで逃げ道を塞いで来るので、大好きでありながらも天敵であったりもします。
まあそれでも、かつて引っ込み思案で根暗だった自分に底抜けに明るい笑顔で接してくれた香取の強引さには救われていた部分があったりしたので、三人の絆は本物です。
だからこういった対応も一種の「甘え」であるワケですが、気安さと表現する事も出来ますね。
また、この話の中で千佳の壁撃ち抜き事件を知る事になった樹里ですが、実はこの時名前は知らずとも「基地の壁を撃ち抜いた新人狙撃手」に彼女は興味を抱いていました。
基地の壁は樹里でも中々撃ち抜けるものではないので、それを成し遂げたという事は自分よりもトリオンが上である可能性が高い。
つまり将来有望なトリガーハッピー候補がやって来た、と内心ワクワクしていたのです。
実際出会った千佳はそんな彼女とは対照的な性格だったので、後の奇行に繋がっていくワケですが。
次の「白の少女と白い少年③」では修が緑川とやってどうなったかがダイジェストで描写されています。
此処で修が緑川に一矢報いる事が出来たのは、王子の教導のお陰ですね。
元から修は連敗し続けた末にとはいえ、風間さんと引き分けるだけの度量があります。
しかも原作と違い王子の訓示を受けている状態であれば、緑川と一度戦った瞬間「正攻法じゃまず勝てない」事は瞬時に察せたと思います。
なので最後の試合を除く全てを「見」に回り、最後の一試合で一矢報いる事に全力を尽くしたというワケです。
修はこれを「格上に無理筋でも一撃入れる」為の訓練であると割り切り、それが周りにどう見られるかは勿論無視しています。
元から他者からの評価には一切頓着しないタチなので、こうなるのも当然ですね。
そこに王子の教導によるクレバーさや頭の回転の強化、駆け引きのいろはを習得しつつあった事で何とか形になったようなものです。
これが勝たなければいけない勝負であれば論外ですが、そうでないなら自分の成長の糧であると修は幾らでも割り切れます。
伊達にペンチメンタルと呼ばれてはいませんのでね。
ちなみにそういった結果になりましたが、修に悪意を以て戦いを仕掛け晒し者にした事は事実なので緑川は遊真にきっちりおしおきを受けました。
その戦いを見ていた樹里が途中でおかしくなったのは、当然ながらククロセアトロにいた頃の記憶が僅かにフラッシュバックしたからです。
彼女の左目に埋め込まれた
この時点では記憶処理の影響でその仕様が半ば封じられていますが、ククロセアトロが集積したデータの中に遊真の情報が僅かながらにあった為、本来の機能が作動しかけてこのようになったワケです。
とはいえそこまで注目していた相手というワケでもないので、「年少ながら腕の立つ傭兵がいる」くらいしかデータはありませんでしたが。
ちなみにボカシ部分は表示するとこうなります。
────────敵戦力を計測。既存データと照合。結論、対象は
これが発動しかけたのは樹里が遊真を「どう倒そうか」と思考した為であり、要するに「敵」認定した為に搭載された機能が稼働しようとしたワケですね。
このように、彼女のブラックボックスが発動する為の条件は「既知のデータの敵個体との接触」と「対象に対する敵意」となります。
要は敵意を以てブラックボックスに内蔵されたデータ内の対象の人物に接触した時、この機能は発揮されるワケです。
該当の検索機能は記憶処理をされた後であっても当人の闘争心が高ければ高い程発動する確率が上がるようになっており、あくまでもボーダー内で戦う分には問題ありませんでしたが、近界に類する存在との戦闘は当然相応に敵意も増しているのでそれだけこれが暴発する危険が高くなります。
この時はまだ遊真の戦いを観戦した為に「どうやれば倒せるか興味が湧いた」程度であった為、この程度で済んでいます。
しかし後程遊真とランク戦で何度も戦り合う事になったので、実はその度にこれが発動する危険があったりしました。
ただ、後のヴィザ戦で本格的に稼働した後だった為、誤差の範囲でしかありませんでしたが。
ちなみに佐鳥はこの一部始終を見ていたのである程度「なんかヤバい」と察してはいましたが、所持している装置のデータでも樹里のバイタルに大幅な乱れ等はなかったので、「気にはなるが今は経過観察するしかない」と判断しています。
機械で分かるのはあくまでも樹里のバイタル等の情報なので、開発室を以てしても解析不能だったブラックボックスの中身は不明なままな為、様子を見るしかなかったという事でもあります。
ククロセアトロは人体実験を厭わない国家だった為その技術レベルは非常に高く、ある種異次元の域に達しています。
しかも設計論理が常軌を逸している場合も多く、全うな神経では解析も無謀です。
「その方が出力が高くなるから」という理由で5割の確率で暴走が発生するような機構であっても迷いなく組み込むのがククロセアトロなので、安全も損得も果ては結果さえ彼等にとっては考慮の外です。
ククロセアトロにとって重要なのは「より性能の高いものを作り続け、それを稼働させる」事なので、その過程での安全性やそれによって齎される結果さえも一切頓着しません。
マッドサイエンティストのような知的好奇心というよりも、「手段を目的どころか
各々が決められた行動を行い、その意味を考える事もしない。
情緒が存在せず、己が定められた役割を全うする事を全てとする。
これが彼等ククロセアトロの生態であり、そんな破綻者達の作り上げたものを真っ当な精神の人間が解析しようというのは中々に無理があったりします。
そういった理由もあり、この時点ではボーダーはククロセアトロについて殆ど情報が無いに等しい状態です。
バイタルチェックもそれが分かり易い変化だったから実行しているだけで、他に手段がないからでもあったりします。
次話の「侵攻の足音」では原作の大規模侵攻前の会議と同じような流れで進みますが、此処でも王子の薫陶を受けた修の変化が際立ちます。
まず、修はこの時レプリカがアフトクラトルという国の名を告げた瞬間、鬼怒田さんが動揺した事に気付きました。
流石にポーカーフェイスに慣れている迅さんの動揺までは察せませんでしたが、何よりも遊真がその反応を見て何かを察している風であったので、「何かある」と勘繰ります。
その上で「攻めて来るのはアフトクラトルかキオンの二択」と聞いた時、前述の反応から「もしかしてアフトクラトルには何かあるんじゃないのか?」と考えてレプリカにああ質問したワケです。
結果として当然ながら、この二国であれば近界最大の軍事国家であり侵略戦争を繰り返しているアフトクラトルの方が侵攻して来る可能性が高い、という情報を引き出すに至ったワケです。
原作ではこれを確定出来ずに「もしアフトクラトルなら角が生えている」という情報は共有出来ましたが、ラービットの情報までは共有出来ていませんでした。
レプリカがこの時点で聴かれた事以外答えていないのは、恐らくボーダー上層部への不信が拭えなかったという面もあるでしょう。
契約だから協力はするがある程度情報は秘匿しつつ、いざという時の交渉カードにしたい。
そういった考えがこの情報の小出しに繋がったのではないか、と思っています。
また、レプリカの言い方のニュアンスからしてラービットが実用化されているかどうかまでは分からなかったので、不確定情報故に明言をしなかったという可能性も考えられます。
ですが聞かれた以上答えないワケにはいかないので、レプリカからこの返答を引き出すには修からの質問が必須だった、というワケですね。
次の話では王子と水上のやり取りだとか修と遊真が王子と会う話だとかで、そこまで重要な回ではありません。
まあ、遊真としては隊長として仰ぐ修の師匠がどんな人間か見極めたかったというのもありますが、その彼をして王子の評価は「有能そうだけど変な先輩」というものに落ち着きました。
ネーミングセンスはぶっちゃけどうでもいいですが、「胡散臭いけれど悪意は感じないし修に対しては大分好意的であるが好意の表し方がなんだか変」という観察結果だったので、半ば判断を保留にした形です。
とはいえ修に悪影響を与える類の人間でない事は察しており、なんだか波長も合ってそうだと見たのでこれ以上の干渉は止めておこう、となりました。
王子自身頓狂な性格はしていますがクレバーさは遊真とも通じる部分があり、傭兵としての遊真として見た評価は低くありません。
むしろ割と高い方なので、ああいった反応になったワケですね。
「香取葉子Ⅱ」ではほぼ全編に渡って香取と樹里がイチャついてるだけですね。
但し、ここで樹里の若村に対する偏見や敵意が取れていない事が描写されており、今後の懸念点が提示されてたりはします。
「侵攻前夜」では迅と三輪の対談が主ですね。
嵐山にいわば冷水を浴びせられた事で感情を波立てず迅と向かい合う事が出来るようになった為、三輪はようやく本音で彼とぶつかる機会を得ます。
迅から近界民の正体や現実を聞かされ、彼の中の常識や価値観がアップデートされた結果、原作後半の「落ち着いた三輪」モードになりました。
三輪は偏見や思い込み、姉を救えなかった事に関する自己嫌悪等で迅に対して憎悪をぶつけるしかありませんでしたが、一度客観的な視点を得る事が出来ればこのように冷静になる事は出来ます。
根が割と善人で良い子ちゃんなので、一度我に返ればこうなるのも早い、というワケです。
これで迅と三輪のわだかまりは解消されて、ある種万全の状態で大規模侵攻を迎える事となりました。
『第五幕~大規模侵攻/Second War of White Girl』
大規模侵攻の章です。
英題の『Second War of White Girl』は「二度目の戦争と白の少女」、つまり第二次大規模侵攻の事を現しています。
大量の
記憶処理でそのあたりの記憶も封鎖されているのですが、当時と同じ大量の
断片的な台詞の全文は「逃げて、逃げて樹里!」「お前だけでも、早く!」となります。
当然樹里の母と父の言葉であり、この直後二人は瓦礫に押し潰されて轢死します。
樹里は瓦礫の下敷きになって血の海と化した両親を見て狂乱し、その隙を近くに潜んでいたククロセアトロの仕込みが行われていたトリオン兵に突かれて連れ去られます。
記憶を封鎖されているとはいえそんな最悪の記憶を思い出しかけたので、コンディションは最低に近かった樹里ですがそれを押して参戦する事となりました。
なお、此処で佐鳥が樹里と離れて行動をする事になったのは、迅の指示が絡んでいます。
迅はこの時点で、樹里がこの大規模侵攻中に暴走する未来すら視えていました。
たとえば市街地で市民が大勢犠牲となって樹里の記憶を極限まで刺激した上で親しい誰かが亡くなる、または連れ去られるような事態になれば彼女の精神は破綻し、衝動的に記憶封鎖が解ける可能性がありました。
彼女の暴走の引き金は主に精神的なショックに依るものであり、精神的に追い込まれた上で過去の辛い記憶を呼び覚まされれば一発で暴走します。
なので佐鳥にはいざという時彼女を
大規模侵攻中に彼女の暴走が起これば加速度的に状況は悪くなり最悪の未来の到来も充分考えられた為、この役目は必須でした。
なので侵攻中は基本的にずっと、佐鳥は樹里を見守る事の出来る位置で待機していたワケですね。
そして侵攻が始まるワケですが、ワートリ二次創作での大規模侵攻でも特に重要となるのはラービットにどう対処するかです。
ラービットはA級クラスの戦闘力を持ち、更に「量産機」であるという初見殺し要素の塊のような性能をしています。
装甲は堅く、「トリオン兵は1体1体は雑魚である」という前提認識のある隊員達ではやられるのも無理はありません。
トリオン兵は基本的に、正隊員にとっては雑魚です。
モールモッドですらB級中位以上にとっては「単独で倒せるのが当たり前」な相手であり、トリオン兵の脅威はあくまでも数の暴力であり、単騎の力ではないというのが共通認識でしょう。
そうでなければ小荒井も「モールモッドの方が強いんじゃないの?」なんて煽りはしない筈です。
ですがラービットは上記の通り単騎でA級に匹敵する個体であり、普通のトリオン兵を相手にする感覚で挑めばまずやられます。
そして、硬い装甲というのもネックでこれをどうにか出来る手段というのはある程度限られます。
簡単なのは、
前者はほぼ二宮さんのようなトリオン強者限定ですが、後者の場合も言う程難易度は低くはありません。
旋空は先端に行く程切れ味が上がる効果があり、つまり最大威力で旋空を敵に当てるには的確に対象に先端付近を当てる必要があります。
それが当然のように出来るのが太刀川や生駒と言った旋空の名手達であり、原作で村上が苦戦していたラービット複数体を瞬殺した事からもそれは明らかです。
事実として、この後三浦が旋空を使用しますが、先端が外れて撃破し損ねます。
しかし樹里が急所であるカメラアイをアイビスで狙った事で、撃破成功。
シャッター機能を持つ歯での防御も、樹里のアイビスであれば撃ち抜けるであろうという想定でした。
ラービットの装甲で堅いのは主に腕と背であり、歯の部分はある程度硬度はあるでしょうが少なくとも腕より硬いという事はないでしょう。
なので、三浦の旋空で隙を作り樹里の狙撃を叩き込むという連携でどうにか攻略出来たワケです。
此処で攻略のノウハウを掴む事が出来たので情報は共有され、香取隊は対ラービットの遊撃部隊と化しました。
その過程で諏訪隊を助けに行ったりしたワケですが、年下女子に抱えられて移動する若村達の羞恥心は犠牲になりました。
香取は身内判定した相手には彼女基準で甘くなるので、あれを素でやっています。
以前の樹里の絡んだゴタゴタで香取の事を評価し直した若村にとっては、たまったものではありません。
吊り橋効果というかギャップ効果に依るものですが、無意識の内に香取に対して「案外話が分かるし頼りになる好ましい女子」であるという考えを抱いており、それがこうして態度に現れた形ですね。
香取にとっては別段どうでもいい事なので頓着していませんし、今後二人が特別な関係になる可能性も低いと言えるでしょう。
しかし少なくとも三浦よりは可能性としてはマシな部類ではあるので、こうした関係性を描くのも面白いのではないかと思って描写しました。
前作でユズルと茜ちゃんの関係性で色々弄ったのと、似たような感じですかね。
その他もA級部隊による助力によってラービットが次々撃破されていき、ようやく本番である人型
まず、此処に至るまでにラービットにどの程度やられているかが大規模侵攻に於ける分水嶺の一つでしょう。
ラービット相手に攪乱されているようであれば、今後の人型戦が辛くなります。
なので少しでも後の負担をやわらげる為に、ラービットのスムーズな対処は必須と言えるでしょう。
ワートリ二次創作では大規模侵攻を描く前に、少なくとも「ラービットの倒し方」だけは考えておくべきです。
撃破に必要なのは「二宮クラスの
少なくとも主人公部隊には、このいずれかの手段が欲しいところです。
それでいてラービットを単独で撃破出来ない部隊には他の雑魚トリオン兵の駆除やC級の護衛をして貰う等、役割を分けましょう。
そうする事で最良の労力でラービットを撃破しつつ、人型を引っ張り出す事が出来ます。
ただ、その前には当然イルガーによる特攻があります。
前作同様、今作でも基地に続いて市街地を狙いました。
これは市民というより、そちらにいるであろうC級を狙ったものです。
アフトクラトルには前作と違い原作同様C級に
これはある程度防がれる前提であり、ボーダーの出方を見る為の一手です。
ぶっちゃけると、アフトクラトルはラービットに搭載されたキューブ化機能を使って大量にC級を攫っていく予定なので、むしろそれが利かない生身に戻られたら困るワケです。
なのでこれは防がれる前提の攻撃であり、市街地への特攻という無視出来ない攻撃を行う事でボーダーの戦力を散らし、その間にパ・ドを用いた索敵でC級を発見する事でした。
此処で目論見通りC級の居場所を発見した事で、ようやく人型が出て来る事になります。
初期マッチングは風間隊VSランバネイン、生駒隊VSエネドラ、香取隊VSヒュースとなります。
ですが戦いが始まる前に、B級下位部隊は今回どうしていたか、の話になります。
彼等は大規模侵攻直後より、C級の護衛に回されていました。
B級下位部隊は本編で描いた通り、モールモッドの相手すら危うい部隊もいるので正直戦力としてあてに出来るか甚だ怪しいです。
ですが少なくともC級よりは強いので、
しかしラービット相手にはどうする事も出来ず詰みかけていましたが、荒船隊の到着で持ち直した、と思いきやモッド体の出現です。
近界のトリガーの能力を搭載したモッド体相手では流石に荒船隊だけでは如何ともし難く窮地に陥りますが、冬島隊と三輪隊の援軍到着でどうにか出来た形になります。
キューブにされたC級達は、速力特化の緑川と黒江の幼馴染コンビが運搬に回る事で敵に回収される事を防いでいます。
この二人は小回りが利く上に小柄で発見され難く、こうした輸送任務には最適な存在です。
向こう見ずな側面のある黒江も幼馴染の緑川と一緒にすれば「自分がしっかりしないと」と思わせる事で自動的にブレーキがかかり、良い感じに任務をこなしてくれるでしょう。
弓場隊に関しては弓場銃の早撃ちとラービットは相性が良いと考えての起用です。
あの速度で早撃ちすればシャッターが閉まる前にカメラアイに撃ち込めるでしょうし、機動力も低くないので対ラービットに於いてはある意味適切な駒と言えるでしょうから。
次の話で茶野隊の失態で修がフォローに入ってますが、原作で描写された後先考えない向こう見ずな性格や立場を考えればこうなるのも普通に有り得るかなと。
根付さんのテコ入れでB級になれたであろう二人組ですが目立った功績は勿論なく、ランク戦でも鳴かず飛ばず。
この現状をもどかしく思っていたからこそ、原作で「人型
まあ当然彼等の実力でそれが出来る筈もなく、こうなったワケですが。
厳しいようですが、ワートリの世界で何の策もなく格上で挑んだ者に未来はありません。
実力者達でさえきちんと作戦を考えて戦いに臨んでいるというのに、ただでさえ色々足りない弱者が足掻くには修レベルの開き直りと度量と発想力が必要です。
気合いだけでどうこうなるようなエモーショナルな世界ではないので、ちゃんとロジカルに戦いに臨む必要があるワケですね。
そのロジカルの戦闘の極地の一人であるハイレインは、戦力の薄い個所に一気にラービットを投入するというガチ戦術を使って来ました。
小南の到着で盛り返せるか、という所ですかさずヴィザを投入です。
ヴィザは基本的に、「出せば勝つ」という規格外の駒です。
ボーダーの隊員では1対1ではまず相手にはならず、少なくとも時間を稼ぐには遊真クラスの能力が必要です。
ちなみに原作で遊真が単独撃破出来たのは、彼だけに出来る隠し札があった事もそうですが、ヴィザ側に積極的にこちらを倒す気がなかった点もあります。
原作ではヴィザ翁の役目はあくまでも足止め、要はあの場で必ず遊真を倒さずとも時間さえ稼げれば良い、というある種余裕のある状態でした。
そんな状態でも一歩間違える、どころか刹那でもブレれば勝てなかったあたり、その規格外ぶりが分かるでしょう。
さて、ボーダー側の最強戦力の一人である小南ですが、ワートリ二次創作を行う上で彼女は「基本的に落とす描写をしてはいけないキャラ」です。
この分類のキャラは小南の他に迅さん、東さんが該当します。
全員原作で一度も脱落描写のないキャラクターであり、そういったキャラは余程の事がない限り二次創作であっても簡単に落としてはいけません。
この鉄則が破られた瞬間、読者から見放されるというのも普通に有り得るでしょう。
特に小南は原作では落ちるどころか被弾した描写すらないので、彼女がダメージを受ける際も相当気を使わないといけないでしょう。
少なくとも、ヴィザクラスの規格外の相手か相当にイレギュラーな事態が必須であると考えて下さい。
重要なのは「基本的に」落としてはいけないのであって、「絶対に」落としてはいけない、ではない事です。
実際、前作では東さんは主人公部隊全員と引き換えの相打ちという形で、迅さんは散々脅威を見せつけた上で情報アドバンテージを失い実態が露になった後での決戦でようやく、という形でどちらも格を落とさずに脱落させる描写をするのに相当気を遣いました。
東さんの場合は位置が割れたり攻撃手に詰められた程度で落ちるのはまず有り得ないですし、場合によっては「落ちても仕事が出来ればOK」と割り切って自分の仕事をした後に「後は落としていいぞ」で半ば割り切って落とさせてくれる場合もあります。
彼の場合ランク戦でも隊員というより試験管、監督官という側面が強いので、ランク戦であれば隊員の成長に繋がると考えればそういう動きもしてくれるでしょう。
ですが小南の場合、彼女が出撃するケース自体何らかの一大事に違いないので、基本的には負けてはいけない戦いばかりになります。
なので彼女をその場から排除する為には原作でやったように市街地を狙って守りに行かせた理、何かで遠方に飛ばす等の絡め手が必要になります。
今回は小南自身の生存本能の高さを逆手に取り、咄嗟の迎撃姿勢を取った隙を突いて背後の標的を奇襲した形になります。
当然このような真似はヴィザクラスでなければ難しいのですが、手段の一つとして覚えておきましょう。
さて、次はヒュース戦となります。
大規模侵攻に於いて、最善に近いルートを目指すのであればヒュースは基本的に真っ先に落としておかなければいけない駒になります。
何せ、彼の援護能力は半端ではありません。
なので誰か他の人型と組まれた瞬間脅威度が跳ね上がってしまうので、孤立させた上で真っ先に撃破する必要があります。
そういう理由があったからこそ、原作では迅さんがタイマンで時間を稼いだと思われるので。
だからこそ前作同様、最初の戦闘にしたワケですね。
アフトクラトル時代のヒュースを攻略するにあたって重要なのは、「ボーダーのトリガーによる初見殺し」です。
当然ながらこの頃のヒュースはボーダーのトリガーにどんなものがあるかは知らないので、ラービット戦で出していない手札はそのまま初見殺しとして使用出来ます。
ラービット戦で開帳した手札はアフトメンバーには情報共有されている筈なので、ラービット戦を描く際にはそこも注意しましょう。
今回はその中でも、若村のメテオラと樹里のライトニングがそれに当たります。
銃手トリガーでメテオラを使うのは後は嵐山さん等くらいな上、トリオン兵相手にはそこまで有効な手でもないのでヒュースにとっては未知の攻撃に近かったでしょう。
加えて、対人戦特化のライトニングは装甲の堅いトリオン兵相手に使う者はおらず、アフト側もその仕様は知らなかった筈です。
これまでトリオン兵に戦闘を任せきりにしていた弊害が出た、とも言えますね。
ちなみに当然、早期に敗北した時点でアフトクラトル側はヒュースを置いていく以外の選択肢がなくなりました。
アフト側にとってはあくまでも傍目から見て「意図しない置き去り」でなければ自分達に瑕疵が出来てしまう為、一度遠征艇に連れ帰ってしまった時点でその目論見は破綻します。
なので、序盤にヒュースが脱落すれば問答無用で彼の置き去りは決定されるでしょう。
基本的にヒュースが置き去りにされないパターンは「千佳が連れ去られてしまった」場合のみなので、当然二次創作でそんな真似が許される筈もない以上ヒュースが置き去りにされるのは確定事項と言っても過言ではありません。
ハイレインの性格からしてある程度情があったとしても、領主としての判断を優先するでしょうからね。
次の戦闘はランバネイン戦です。
言うまでもなくランバネインでは、こういった戦場では厄介極まりない駒です。
凄まじい威力の砲撃を連射出来る上、飛行能力も持っているというクソ仕様。
加えて本人も頭が回り、ただの脳筋では決してない。
こういう駒は単純明快な動きをして来る分、崩す隙が少なく厄介です。
なので今作では風間に加えレイジ、諏訪といった21歳組に王子隊を加えた編成で挑みました。
21歳組の共闘を描きたかったという事と、トリガーの性質故です。
ランバネインは対多数で最も威力を発揮する駒であり、それは本人も自認しているでしょう。
加えて視野も広いので、波状攻撃やゲリラ戦等で何とか隙を作ってそこに一撃をねじ込むしかありません。
その最後の詰めは、菊地原達にやって貰いました。
ゲリラ戦で処理能力を圧迫した上で、透明化からの奇襲。
シンプルではありますが、レイジの圧倒的火力と一糸乱れぬ連携でそれが実現出来た形です。
ランバネインは「シンプルに強い」敵なので、絡め手を考えるよりかはどう攻撃を通すかを複数パターン考えて波状攻撃をかけていくのが最も効率が良いと思います。
それでも一歩間違えれば負ける相手なので、どう描写するかは書き手の腕が問われると思います。
次の戦闘は、エネドラ戦です。
こちらはランバネインと異なり、「如何にギミックを解き明かし対処するか」に尽きる相手です。
その上で生駒隊をぶつけたのは、水上がいたからです。
水上なら相手の動きを見て、泥の王最大の初見殺しである気体ブレードの存在に気付くと考えたからです。
しかし生駒隊だけでは火力が足りないので、二宮隊を送り込みました。
二宮さんは遠征試験のアンケートで一緒に行きたい隊員の内一人に、水上を指名しています。
つまりそれだけ評価をしているという事であり、二宮さんであればああいう言動をするだろうとシミュレートしたまでです。
倒し方については、忍田さんがやった事を部隊総出でやるような感じです。
まずは邪魔な外殻を吹き飛ばした上で、露出した核を狙う。
有り体に言えば、これだけです。
それには二宮の火力と、水上の正確な指揮が必須でした。
その上で、神速の抜刀斬撃である生駒旋空で決める。
最初にエネドラが生駒さんを侮った言動から、このフィニッシュに気付いた読者の方もいたようですね。
エネドラは思った事を結構口に出すので、台詞から展開を暗示するやり方がやり易いです。
大規模侵攻でエネドラを倒す時には、どうやってギミックに気付き攻略させるか、を考えていけば自然と書けると思います。
それから気を付けないといけないのは、エネドラは頭はしっかり回るタイプであるという事を失念しない事です。
軽挙な言動や行動が目立つエネドラですが、軍人らしく戦術的な思考はきっちりこなしますしクレバーさもあります。
原作でも特大の隠し玉の気体ブレードを最も威力を発揮するタイミングで開帳したり、コアのダミーを生成、忍田さんの攻撃に対し臨機応変に対応して反撃に繋げたりと狡猾な面はちゃんとあります。
今作に限って言えばククロセアトロ戦役での経験があるので、通常のエネドラよりも慎重さがある状態でもありました。
しかしトリガー
そして次は、ヴィザ戦と並んで大規模侵攻最大の難所、ハイレイン戦です。
ハイレインの黒トリガー
その上本人も東さんクラスの指揮官なので、絡め手も平然と使って来ます。
自分のトリガーの能力に驕らず、ラービットという兵隊もきっちり活用する。
回復能力があるからと慢心はせず、常に「負け筋」を考慮に入れる。
下手に能力自慢の相手より、よっぽど厄介でしょう。
今回はヴィザと組む事で、その凶悪さを存分に発揮させた形となりました。
ヴィザは単独で遊撃する時は割と余裕ある立ち回りをしますが、ハイレインと共に「作戦行動」に臨む以上その動きに遊びはありません。
結果としてヴィザという特大の「何でも斬れる剣」を自在に振り回すハイレインという悪夢のような構図が完成し、あのような地獄絵図となります。
ちなみに此処で修と柿崎隊を会わせたのは後の展開を作る為のちょっとしたアクセントで、そこまで大きな意味はなかったりします。
ハイレインを正面から攻略する場合、「手数」はやはり必須です。
特に射手トリガーや銃手トリガーのトリオン強者をちゃんと揃えられるか、というのがかなり重要になって来ます。
問題となるのは、その数とハイレインの巧みな運用方法です。
黒トリガーなので当然出力は高く、原作でも分かる通り夥しい数の生物弾を一挙に操作する事が出来ます。
なので少なくとも出水クラスの射手がいないと物量で押され、そもそもまともに戦う事が出来ずに終わります。
しかもハイレインは目立つ生物弾をばら撒いておいてトカゲ型等の視認性に難のある生物弾を密かに放ち奇襲する、等の絡め手も平然と使って来ます。
加えてマントの内側にも生物弾を盾として仕込むという徹底ぶりであり、自分のトリガーの性能に驕る事もないので隙は殆ど視当たりません。
ハイレインを正攻法で倒すには出水と二宮が揃った上でガイスト烏丸、太刀川クラスの実力者が必須となるケースが多いでしょう。
しかしそんなハイレインの天敵といえば、やっぱり修になります。
「戦場の真っただ中でトリガー解除」という頭おかしい真似が出来るのは、恐らく彼だけでしょう。
そしてそんな唯一の隙を的確に突けるのは、恐らく遊真でしょう。
そういう経緯で、今作で実現した「生身の修を盾にした遊真の特攻」という字面にすると色々おかしい作戦が完成したワケです。
修ならやるだろうという信頼の下、此処で二宮さんや東さんとのコネクションも作っておく、という狙いもありました。
今後この一件でC級に英雄視される事にもなるので、色々な役目を果たした一戦と言えるでしょう。
ちなみにミラに関しては、基本的に直接戦場に出すのはリスキー過ぎるので今回は出しませんでした。
原作でも「ラービットや人型との戦闘で割とボーダー側の戦力が削れている」「ヒュースがまだ倒されておらず、金の雛鳥を確保出来れば貴重な戦力である彼を手放す必要がなくなる」「既に残っている戦力はトリオン兵を除けばヴィザと自分達だけであり、敵の練度を見る限り自分だけでは不測の事態が起きる可能性が拭えない」等の条件が揃って初めて、ハイレインに同伴する形で出撃しています。
今作では「ヒュースが既に倒されており金の雛鳥の確保の有無に関わらず彼を手放すのは決定済」、「そもそも金の雛鳥の居場所に見当がつかず、ヒュースの置き去りが決定している以上「神」はエリン家当主を据えるので全面戦争をしてでも確保したいというワケではない」「精鋭揃いの味方が次々とやられている相手に対し、万が一にも失う事の出来ないミラを戦場に連れて行くのはリスクが高過ぎる」等の観点から
ミラは黒トリガーの利便性故のサポーターとしての性格が非常に強く、そもそも戦闘能力は二の次というかアフトクラトルとしては可能な限り直接鉄火場には連れて行きたくない人員でもあります。
なので原作のように「多少のリスクを負ってでもミラを同伴させる価値がある」とハイレインが判断しない限りは、彼女の出撃は見送られる筈です。
ハイレインは東さんと同じで「如何にリスクを回避出来るか」を最重要視するタイプの指揮官なので、そのあたりの判断は慎重寄りになるので条件が揃わない限りミラ出撃は無いと考えた方が良いだろうというシミュレート結果が出た為それに従ったまでです。
ミラ本人の戦闘能力も他のアフトメンバーと比べればそれほど高いというワケでもないので、出撃させないのがまあ安牌でしょうね。
最後の戦いは、矢張りヴィザ戦です。
基本ヴィザは、どれだけ盛っても構わないと思っています。
「ヴィザ翁なら出来る」と考えて書けば、大体その通りになります。
大規模侵攻で最大の強敵なので、徹底して盛り上げる事を意識しましょう。
忍田さんと太刀川の師弟コンビの共闘は、これくらいしないと足止めすら難しいと判断したまでです。
また、ラービットを残していたのはヴィザにラービットという「足枷」を着ける事で少しでも優位に持ち込む為です。
ヴィザの前ではラービットでさえ、足枷と成り得ます。
作戦遂行の為にはラービットを防衛しなければならない、という縛りを設ける事で翁の意識を少しでも守勢にさせるというハンデを与えたかったという理由もあります。
まあ、それに気付いた途端に速攻でラービットを見捨てたあたりヴィザも大概なのですが。
ヴィザを打倒する上で必須なのは、サークルブレードに重石を付ける事です。
そしてそれが出来るのは遊真か三輪の二択なので、ヴィザを相手にする時はこのどちらかのメンバーが必須と言えます。
また、烏丸のガイストが最も有効的に使える相手もヴィザでしょう。
原作ではある意味で相性最悪と言えるハイレインと当たってしまった為にそこまで活躍は出来ませんでしたが、攻撃手段が斬撃一辺倒であるヴィザ相手には適役と言えます。
それでも単独では届かず、最後は香取達による波状攻撃の果てに樹里が狙撃で決める予定でしたが、これでも一歩届きませんでした。
ですが、ククロセアトロでも要注意対象としてデータに刻まれていたヴィザを強い敵意を以て見据えた事で封じられていた機能が暴発。
そしてこの瞬間、今作の大規模侵攻終結条件である「樹里の正体がアフトクラトルに露見する」という項目を達成。
まだ戦える状態であったヴィザは退却し、侵攻は終結となります。
「ホワイト・コール」は文字通り、「白の呼び声」。
今後の展開を暗示するサブタイトルであり、「
「彼方の曇天」は文字通り、彼方に見える曇り空という否応なく不吉を暗示させるものとして選んだサブタイトルです。
内容としても、戦争は終わったものの後の課題が幾つも浮き彫りになるようなものとなっています。
今回の大規模侵攻は前作と異なり、原作同様序盤に位置します。
なので終章として扱った前作と違い、ハッピーエンドにはなり過ぎない結果にする必要がありました。
ここで前作同様完全無欠なハッピーエンドにしてしまうと、その後が蛇足に思えてしまうからですね。
ですが、ネームドの死亡や行方不明など誰も望んではいません。
なので考え無しのモブC級数名の喪失、という後味は悪いがそこまで胸糞でもない、という結果に落ち着きました。
基本的に、原作生存キャラ死亡は悪手です。
原作で生きているネームドキャラを死なせる、悪い扱いにする、というのは二次創作では決してやってはいけないタブーです。
艱難辛苦を乗り越える為の一次的なものであればいいですが、それでも「取り返しのつかない喪失」はさせるべきではありません。
読者の中でも「原作生存キャラ死亡」というタグを見た瞬間、回れ右をするといった方はいると思います。
味方が死んだ後の主人公の葛藤や辛い記憶を乗り越える姿を描きたい、というのは一次創作でやるべき事であり、ファンのいる二次創作でやるべき事ではありません。
原作死亡キャラであればその最期を演出するのは悪い事ではありませんが、原作で生き残るキャラを二次創作で取り返しのつかない形で無暗に死なせてしまうのは基本的にタブーである、と覚えていて下さい。
ちなみに記者会見等では修が色々やっていますが、彼が自覚的にやったのは記者会見でのアピールくらいで、C級からの英雄視による影響は考慮の外です。
前述の通り彼は他者から見た自分の評判に一切頓着しないので、C級にどういう眼で見られているかも知らないか興味がないんでしょう。
それに気付いていた根付さんですが記者会見等での立ち回りを見て「将来有望」とある種考えて修に注視していく事になりますが、これは遅いか早いかの違いでしょうね。
原作でも大分根付さんは修に対し、ツンデレ上司をしていますから。
この後マッチングが明かされてあれこれありましたが、そちらは次章の解説に回します。
次回はようやくお楽しみ、ランク戦のROUND1の章の解説となります。
お楽しみに。