『第六幕~B級ランク戦ROUND1/First Rank Battle of White Girl』
今回からワートリの醍醐味、ランク戦の章の解説となります。
英題は要するに「白の少女とランク戦第一戦」となります。そのままですね。
さて、前回の章の最後で香取隊の今シーズン最初のマッチングが明かされました。
相手は荒船隊、漆間隊の二部隊ですね。
この組み合わせにしたのはB級中位の中でも樹里が参加した香取隊に対抗出来るチームというものは少なく、その中でもより彼女の性質を見せるに的確な相手であると判断した為です。
荒船隊は狙撃手三人チームという異色のコンセプトチームであり、尖った性能を持つ部隊です。
市街地Dのような天敵と言えるMAPでは脅威度が下がりますが、市街地Cのような高低差のあるMAPではかなり厄介な相手となります。
そして漆間隊は一人ワンマンアーミーみたいなトリガーセットをした戦闘員一名の部隊であり、漆間が顔を出す前から何とか使ってみたいとワートリ二次創作者なら誰しもが思っていたキャラクターです。
遠征試験編で本人のパーソナルが割と明かされたので、トリガーセットから戦い方は推測出来るので思い切って実装してみた形です。
多分、他に漆間を戦わせる描写をしたワートリ二次創作者は現時点ではいないんじゃないかなとも思う。
少なくとも本編で本格登場して以降に長編で採用した方は、恐らく殆どいない筈です。
前作でもキャラどころかトリガーセット、ポジションすら不明な状態で神田を出した私ですが、漆間の場合は立ち振る舞いや性格、トリガーセットまで判明しているのであの時より格段にやり易かったです。
漆間についてですが、原作では六田ちゃんの出自とかが明かされた影響で、大分彼の性根についても理解が深まったと思います。
金にがめつい理由、どう考えてもボーダー園出身の六田ちゃんの為でしょ、と誰もが思った筈です。
まあ、以前の「漆間くんがああいう事をするのは私の所為だから」という六田ちゃんの台詞から、ある程度何かあるなと察していた方は多いと思います。
ですが漆間が実は言動が素直でないだけで根は善性であると当時から察しており実際そうだったので、ああいう風に描写する事になりました。
余談ですが、漆間が原作で顔見せした時最初に思ったのは「ラノベ主人公みたいだな」ってイメージでした。
捻くれ屋で口が悪く、オペレーターと二人きりの部隊で尚且つ黒髪ロン毛のイケメン。
往年のラノベ主人公のイメージとなんだか重なって、そう見えて来る事が多々ありました。
そんな彼を主人公とした作品も面白そうですが、まあそれは置いておきましょう。
ともあれ、そんなこんなで漆間は割と直感も鋭そうなので、「何かある」と勘付く描写を入れました。
結構細かい所に気が付きそうな性格してますし、勘も鋭そうなイメージでしたので。
ちなみにマキリッサを絡ませたのは、ほぼ趣味です。
実はTwitter(現X)で二人を描いた漫画を良く出していた方がいて、その漫画を見てインスピレーションドバドバ湧いたので、その方とXでお話した時に「そちらの漫画を見て想像力が掻き立てられたのでこちらで今度漆間出す時にそちらの漫画のようにマキリッサと絡ませても良いですか」と許諾を取って今回の章でそれを出す事となりました。
打てば響く感じで、書いていてとても楽しかったです。
さて、そういうワケでROUND1の解説はマキリッサと二宮さんという絶対零度の雰囲気の解説席となったワケですが、樹里が初めてランク戦に出ると聞いて二宮さんが黙っている筈がないのでこうなりました。
口では色々言いつつもかなり面倒見が良いのが二宮さんなので、こうなるのが自然まであります。
そしてランク戦開始となりますが、今回のMAPは市街地Cです。
なんだかんだ、これは原作での玉狛第二の事実上の初陣のオマージュとなります。
狙撃手優位MAPで荒船隊とどう戦うのか、というのは面白い構図ですので、初戦に荒船隊を出したい創作者は多い筈です。
荒船隊は狙撃手三人チームなのでMAPや転送位置次第では格上喰いも充分有り得る部隊な上に、いざとなれば荒船が弧月
ワートリで集団戦、特にランク戦を描く際に重要なのは参加者全員のトリガーセットを覚える事、ではありません。
トリガーセットなんてものはデータを見返せばすぐ分かるので、やってる内に自然と暗記出来ます。
重要なのは、各キャラクターの性格やそれまでの経験、転送位置や周囲の状況から「そのキャラがどう行動するか予測」して「取り得る手札は何か」をシミュレートし続ける事です。
たとえば、半崎は狙撃技術は実は荒船隊の中でも群を抜いて高いのですが、反面「相手を狙撃で落とす」事に注意を向け過ぎて脇が甘くなる傾向があり、荒船隊の中でも落とされ易い隊員、という立ち位置になります。
分かり易く言うと、表面上の性格をダウナーにした狙撃手版南沢です。
南沢も実力はきちんとあるのですがそれだけに勇み足になり、隙を突かれて退場しがちなキャラです。
両名とも実力はあるので上位者の指揮下に入ればその有能さを存分に発揮するのですが、反面孤立すると独自の判断で動く際に足を前に出し過ぎてしまう為、生存率はあまり良くない、というキャラクターです。
ですが実力自体はしっかりと高いので、試合後半まで生き残れば原作最終ラウンドの南沢のように大金星を挙げる事も出来ます。
なのでこういったキャラは序盤で即刻退場するか、中盤から終盤にかけての切り札になったりと色々と描く幅が大きく作者の匙加減で活躍を調整出来るので、動かし易いキャラでもあります。
それから、各々のキャラの技術の高低もしっかりと描写しないといけません。
たとえば東さんがやった「空中での弾撃ち落とし」ですが、当真や奈良坂が同じ事をやってもさして違和感はないですが、極端な例を挙げると太一や出穂ちゃんがやった、ってなると違和感しかないのでちゃんとキャラの技術がどの程度のレベルなのかはしっかり把握して描きましょう。
原作を見れば技術の程度は割と理解出来るので、原作を読み込めばこれは問題なく可能な筈です。
それから、キャラのトリガーセットを変える場合にはきちんと理由を付けましょう。
例に挙げれば前作のくまちゃんは一度メテオラにしたものの結果を出せず、出水のアドバイスでハウンドに切り替えた、という経緯を経ています。
元々攻撃手のくまちゃんが一発で最適解を引くとは考え難い上、当時は部隊の状況が色々アレだったので、こういった仕込みの上で
同じように、今作では若村や三浦にスパイダーを持たせていますが、これを持たせる為に対樹里を想定した二宮隊による指導があったと言っても過言ではありません。
ちなみに二宮隊がスパイダーを教える事が出来たのは、鳩原が使っていたからですね。
作中では多少ぼかしましたが、犬飼達はそういった経緯でスパイダーの「使い方」を知っていたので、レクチャーが出来たというワケです。
香取隊を「香取だけのワンマンチーム」から「香取をエースとした部隊」に変える為には、こういった仕込みが必須でした。
基本的に香取隊は、香取を効果的に暴れさせる事で真価を発揮します。
今作ではそれに加えて高トリオンの狙撃手兼射手でもある樹里が加わっているので、このエース二枚看板を如何に効率的に運用出来るかが鍵となります。
その上でカメレオンとバッグワームの併用で姿を隠せる男子二人組には、ワイヤー陣の設置役という仕事を割り当てました。
両者共修より機動力が高くトリオンも上で単独戦闘能力も低くないので、個人の能力だけを見るのであればある意味で適役でもあります。
スパイダーと香取を組み合わせた時の凶悪性は原作最終ラウンドでも見せつけてくれたので、使わない手は無いと考えました。
こういった仕込みを欠かさない事で、低迷気味だった香取隊の戦力向上を成し遂げた、というワケですね。
それから試合の方ですが、市街地Cは狙撃手が上層部に陣取る事が出来れば上に上がって来る敵を発見して迎撃出来るので、狙撃手優位MAPとなっています。
上に上がるにはどうしても遮蔽物のない段々畑状になっている道路を通り過ぎなければならない関係上、どうしても上からの視線を遮る事が出来ないからですね。
ですが、カメレオンとバッグワームを併用すればこの問題は解決出来ます。
狙撃手は基本的にスコープを覗きっぱなしで索敵している筈なので、視認を防ぐ事さえ出来れば発見を遅らせる事が出来ます。
オペレーターの加賀美はただでさえ狙撃手三人チーム、要するに三人バラバラの位置に陣取っている味方をオペレートする為、かかる負担がかなり高いです。
狙撃手は一ヵ所に固まっていては真価を発揮出来ないので、基本単独行動となり三人全員が狙撃手である荒船隊は基本的にバラけて行動する事になります。
なので加賀美は三人の位置それぞれの周囲を警戒する必要があり、原作でもあったように
そんな中でカメレオンを使う為にバッグワームを一瞬脱いで切り替える、という行動はどう映るのか。
原作ROUND7で解説があったように、これは一見すると「敵チームのオペレーターの負担を増やす為のいやがらせ行為」と見られるワケですね。
三人バラバラに行動している荒船隊全員の動きを見ながら周囲の索敵をする中、そんな行動をされては咄嗟に「これは
最終的にチェックはするでしょうが、無意識の内に優先度を低く設定してしまう可能性も高いでしょう。
そういったヒューマンエラーの誘発も、この作戦が比較的巧くいった背景であると言えます。
その上で今回樹里が開帳したのが、「MAPの端から端まで届く超々遠距離狙撃」という凶悪な手札です。
今回樹里は転送運もあって下層に配置されたのですが、それを逆手に取り相手の射程外からカウンター
強化視覚で数キロ先の光景でもその場にいるかのような精度で把握する事が出来る為に普通は通らないような狙撃ルートでも狙う事が出来る上、「トリオンに応じて射程が上がる」特徴を持つイーグレットを装備する事で「少しでも射線が通るのならば数キロ先からでも平気で届く弾を放つ狙撃手」が爆誕するのです。
これは彼女の
高いトリオンの狙撃手と聞いて真っ先に思い浮かぶのは千佳ちゃんのような大威力砲撃でしょうが、そんな事をせずともトリオンに応じて射程が伸びるイーグレットを使えばこのような真似が可能となるのです。
千佳ちゃんが「人を直接狙えない」という枷があった為に砲撃ばかりが目立つようになりましたが、当然
但し千佳ちゃんには強化視覚はないので、樹里ほど射程は伸びないでしょう。
そういう意味で、これは樹里ちゃん固有のスキルと言っても過言ではないでしょう。
それでも狙撃手としての技巧や立ち回りは荒船たちの方が上なので早々見つかる事はないんですが、それならと開き直った樹里ちゃんによる爆撃が開始されます。
隠れているのなら、隠れる場所を全部吹き飛ばせば良い。
そういう単純明快な解答こそ、荒船隊のようなチームにとっては厄介なのです。
絡め手で勝負する部隊なので、一定以上の力を伴った正攻法でのごり押しに案外弱いワケですね。
ちなみに、狙撃手は部隊に一人いるだけでアドバンテージになる各所から引っ張りだこのポジションです。
「敵に狙撃手がいる」というだけで迂闊な行動は取り難くなりますし、攻めの手も遅らせざるを得ません。
但し、かといって狙撃手がチームに二人以上必要かというと、結論から言えば一人が適正です。
何故なら、仮に四人部隊であっても狙撃手二名では
今回の試合を見て分かる通り、狙撃手が二人いても実質的な近接戦闘が可能な人員が一名だけの荒船隊は、荒船が格上の近接戦闘者に襲われるだけで不利になります。
狙撃手は確かに不意打ちで点を取り易くフィールドの観測主にもなれるので便利な役職ですが、反面近付かれれば脆いという致命的な弱点を抱えています。
加えてライトニングを除いて連射は出来ず、原作ROUND2でやっていたように「狙撃での援護」というのは銃手や射手の援護に比べて弾が一発ずつ、しかも直線にしか飛ばないのでそこまで有効ではないんです。
それをするくらいなら姿を晦まして不意打ちで点を取る方が遥かにやり易いのですが、そもそも狙撃手は「最初の一発」を撃った瞬間位置が露見し、真っ先に狙われます。
一度ロックオンされれば原作での穂刈のように逃げ切るのはまず難しく、東さんという例外を除けば基本的に見付かればそれで終わりです。
狙撃手の性質を考慮する際に東さんは外れ値の例外なので、絶対に参考例にしないようにして下さい。
「東さんなら出来た」は、攻撃手全員に「太刀川なら出来た」と言っているのと同じようなものですからね。
というワケで、隊に一人いれば便利な狙撃手ですが、狙撃手二人体制になるとその分だけ前衛の負担が大きく増します。
なので狙撃手二人と近接戦闘者二名の構成である三輪隊は、二名の狙撃手の高い技術力と三輪と米屋の凄まじい近接戦闘力が合わさって初めて成り立つ編成である事を覚えておきましょう。
実際に狙撃手三人体制、事実上の前衛が一人だけという荒船隊に於いて、荒船が最初から弧月を抜く事をまずやらないのは此処に理由があります。
実のところ荒船隊で荒船が弧月を抜くというのは、紛う事なき緊急事態の応急処置のようなものです。
敵に見付かってしまった、或いはそのままではジリ貧になって詰む、となった場合に仕方なく荒船さんが弧月を抜く、というのが正直なところです。
なので「荒船が抜いた」は「劣勢時の苦肉の策」に等しく、荒船隊にとって出来るならば避けたい展開なワケです。
それをした時点で荒船隊は相当に追い込まれているに等しいので、最初から荒船が弧月を抜くのはまず有り得ない事を覚えておきましょう。
試合の話に戻りますが、今回樹里ちゃんが護衛なしで合成弾を連発したのは、漆間を誘い出す為でもありました。
樹里ちゃんは以前判明した通りカメレオンが通じないので、姿を消して近付いて来た漆間は即座に迎撃される、という寸法です。
実際は自分を警戒していないかのような挙動に警戒した漆間の判断により実現しませんでしたが、もし樹里ちゃんを狙っていれば漆間は落とされていたでしょう。
カメレオンは使用中よりも解除する瞬間こそ最大限周囲を警戒する筈なので、姿が隠れている使用中は周囲の警戒は疎かになりがちでしょう。
戦闘中カメレオンを使用するという事は「相手が視認出来る位置にいて、今から奇襲を仕掛けるタイミング」である事が大半なので、猶更です。
爆撃で混乱した中香取が荒船さんに仕掛けましたが、この時点でほぼ荒船隊は詰みです。
唯一の前衛が可能な駒を香取という大戦力で封じられた状態では、勝ちの目は殆どないでしょう。
そんな中、クレバーな立ち回りで漆間は点を掻っ攫って退場しました。
漆間はトリガーセットや一人部隊であるという事情ながら原作のランク戦でもしっかりとポイントを稼いでいるので、こういう立ち回りだろうと判断しました。
このくらいの事が出来なければ、一人部隊なんてやっていけないでしょうから。
その後は香取と樹里の連携で、荒船さんが撃破されて試合終了。
総評の中で明かされましたが、三浦が狙撃を回避出来たのは予め「カメレオンを解除する時は一度しゃがめ」と厳命されていたからです。
カメレオンを使って移動しているのは、当然いずれバレます。
そうなると解除の瞬間を狙われるだろうというのは当然予測出来たので、そのように指示を出していたワケです。
樹里との戦いや大規模侵攻を経て、香取の指揮能力は格段に上がっています。
今回はその片鱗が見えて来た、という事ですね。
さて、ROUND2のマッチアップが明かされましたが、二宮隊と王子隊という組み合わせです。
香取も言っているように、前期ランク戦では王子隊に嵌められる形で二宮隊と影浦隊というB級詐欺2チームの暴威を浴びてしまい、中位落ちとなっています。
その意味でどちらにも因縁があり、香取の戦意も大分上がっています。
しかしこの時点では、香取隊には重大な瑕疵が残っていました。
それは、「樹里の連携の不慣れさ」です。
樹里はこれまでソロで活動しており、連携をした経験が殆どありませんでした。
大規模侵攻で経験は出来ましたが、それでも香取という信頼する幼馴染が傍にいて精神が安定していたから、という面もあります。
特に樹里は若村に対するわだかまりを捨て切れておらず、未だ溝のある状態です。
それが王子の言うように、今の樹里の弱点となります。
また、若村の方もチームに貢献出来ているとはいえ、彼自身は「眼に見える変化や成長」がなければそれを実感する事が難しいタイプです。
これまで彼は碌に集団戦のノウハウを学ぶ機会がなかったので、集団戦のいろはを学んだだけでは「当たり前の事が当たり前に出来るようになった」というだけで、眼に見える変化はないように思えてしまっているのです。
実際は以前とは大分違ってスタートラインに立つ事が出来ているのですが、「自分が点を取り易くなった」等の分かり易い変化が無い為に実感が出来ていない状態です。
この擦れ違いが、次の試合の重大な瑕疵となるワケですね。
というワケで、次回はROUND2の章の解説から再開となりますのでお楽しみに。